お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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例えるなら、糖分の大砲


千織を直視出来ねぇ

 

 

 

 

 静寂となった俺の部屋の隣、風呂場からシャワーの音だけが聞こえてくる。

 

 俺はテーブルの腕で手を組んで、そこに顔をつけている。

 

 ………え?

 

 俺の悩みの種と言えばただ1つ。今日ウチに来て、何故か今俺の部屋で風呂に入ってるあの店主のことについて。

 

 思えば、最近の千織さんはどこか様子がおかしかった。仕事中もめちゃくちゃ視線感じるし、なんか距離も近いし。ただまぁ、そこら辺はこの前の一件で「ただの店員」から「千織屋を支える仲間」へ評価が変わってくれたからかとひとり納得していたんだ。

 

 でも、……それにしてもやっぱり様子が変だ。特に今日の千織さんは

なんだか……なんだろう、凄く可愛いというか…、優しいというか…。それに、途中のバックハグ的なものはなんだったんだろうか。本人は「つまずいた」って言ってたけど、どう考えてもその場の嘘っぽい。

 

 そこまで考えたところで、ある考えが浮かび上がり顔が熱くなる。

 

「……もしかして、千織さん…」

 

 …………俺の事好きなんじゃね???

 

 俺の脳に稲妻が走る。………が、そう思えたらどれだけ幸せだろう。千織さんが俺に惚れてる路線で考え始めたが、やっぱり釈然としなかった。

 

 だって、俺に惚れる要素………ある?

 

 ある日突然「惚れました!!結婚してください!!」とか言って千織屋に転がり込み。

 

 映影の事件では俺が犯人を刺激して宵宮に大怪我を負わせかけ、3日間入院し。

 

 果ては、俺のせいで舞い込んだ騒動を、自分で処理しきれずに千織さんに心配掛けた。そして唯一の長所と言えば、そこそこ仕事ができるくらいで、手縫いもまだエローフェさんにも及ばない。

 

 ダメだ。考えれば考えるほど俺ってロクでもねぇ……。

 

 箇条書きをすればダメな方が多い俺を千織さんが好き?んな訳ねぇだろ。今日だって食生活とかで心配されたし、合意の上とはいえフリーナ様の採寸取ったのもバレて怒られたし。要は同じ店を支える仲間として、裁縫を教えに今日も来てくれたわけだから、変な期待なんてするもんじゃないんだけど。……なんだけどさ。

 

 俺はちらっと風呂場の方を見た。

 

 だからって、こんな時間に男の部屋の風呂入るか普通?不用心すぎだろ。

 

 こんなふうにぐるぐると考えてた俺はよしと意気込んだ。

 

「悩んでてもしょうがない、いっちょ聞いてみるか」

 

 そう呟いた矢先、風呂場への扉が開いた。千織さんが出たな。

 

 俺は気合いを入れて、千織さんに質問をーー

 

「……ふぅ、ありがと。やっぱ広いお風呂はいいわね」

 

 生アッッッッッッッッ!!??(生脚)

 

 出てきた千織さんの「白」に俺のさっきまでぐるぐる悩んでた物が跡形もなく吹き飛んだ。

 

 出てきた千織さんの格好は、なんと丈長めのTシャツいっちょだったのだ。俺が前に試しで作ったチュニックみたいなやつで、俺の体格に合わせたから首元が大きく開き白い鎖骨が見えている。

 

 そして、千織さんはいつもの黒ストを脱いで生脚を解放なされていた。

 

 いやまぁ、オーバーサイズのせいで普段のスカート位の丈は確保してるんだけど、…えっ、あっ、いやっ、す、すご……(語彙力低下)

 

 もはや眩しい通り越して神々しい。千織さんって手袋もしてるから普段の露出はかなり少ない。そこにそんなラフな格好で来られたらもう俺死にますよ。

 

 なんで下履いてないの!?とか、え?このあとご帰宅なされるンですよね!?とか言いたいこと聞きたいことがもう全てどうでも良くなった。そして髪を下ろした千織も美人すぎてしんどい。つか結構髪長いのね。背中まであるじゃん。やっぱ編み込むのに結構髪使うんすね(早口)。

 

 千織さんはなんにも言えなくなって情けなく口をパクパクしてる俺に首を傾げた。

 

「…どうしたの?」

「…えうっ」

 

 やばい。ちょっと可愛すぎて直視できない。

 

「なんでもない」

「……ふふっ、なによ」

 

 かわい。

 

 背中向けてるから得られる情報は声だけなのに、攻撃力高すぎだろ。…ってそうじゃない。肝心なことを聞かないと。

 

「……その、そろそろいい時間だろ?家まで送るよって言おうとしたんだよ」

「……あれ、クレイ気づいてないの?まぁ、私も今言おうとしたんだけど」

「……なにが?」

「外」

 

 千織さんが窓を指差すので、外を見てみると。

 

 

 ザアアアアアアアアア!

 

 

「えっ、すげぇ雨」

 

 悩んでて気がついてなかったが、外は土砂降りの雨になっていた。傘を指しててもびちょ濡れになる勢いだ。目をぱちくりさせる俺に、体の前で腕を組んだ千織さんは言い放った。

 

「これじゃ帰れないわよ。……だから、今日は泊めて貰えないかしら」

「え」

 

 とめる?

 

「な、なんで今言うんだよ……」

「だって、お風呂入っちゃえば帰らせられないでしょ?」

「…隣のフリーナ様の部屋に」

「ダメよ。だって私あの子と面識あんまりないし、気まずいわ」

「男の部屋に泊まる方が気まずいでしょうよ」

「……だめ?」

「うぐふぅ!?……ど、どこで覚えてきたそんな顔…!?」

「この前ナヴィアに教えて貰ったわ」

 

 上目遣い髪下ろし首傾げ「だめ?」を千織さんがやるのは反則でしょうよ。俺はしばしの間唸り、ため息を吐いた。

 

「……わかったよ…。でも、とりあえず下は履いてくれ。目に毒過ぎ」

「あら、そんなに?」

「当たり前だろ。好きな人のTシャツいっちょだぞ。今も超我慢してんだから察しろ」

「…っ…」

 

 こめかみを抑えながら一気に言うと。千織さんの方から小さく声が聞こえてくる。

 

「……もういっかい」

「え?」

「もっかい言って」

「…………超我慢してる」

「その前よ」

「………もしかして、俺に好きって言われたいってこと?」

「まだ今日1回も言ってないじゃない。アレ聞かないとなんか気持ち悪いのよね」

「俺の世紀一打の告白を、そんな日課みたいに言わないで欲しいんだけど」

「………いいから」

「……嫌だ。恥ずかしい」

 

 ああいうのは流れで言うから良いんだろうが。そんな面と向かって言えとか、さすがに遠慮したい。

 

「……言わないと下履かないわよ?」

「別にいいよ。よく見たら着せれる唯一のスカートも丈ほぼ変わらないし。そもそも視界に入れなきゃいいだけだ」

 

 俺はそのまま風呂に逃げ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 風呂から上がったあとも、千織さんの格好はあのままだった。さっきはああ言ったけど目に毒なもんはやっぱり毒。

 

 突然なんだけど、千織さんの脚の話をしようと思う。

 

 美脚って色々な種類があると思うんだけど、千織さんの脚ってなんというか、絶妙なんだよ(伝われ)。太過ぎず細すぎずで、全体のバランスがよくスラッとしてるかと思いきや、黒ストに巻いてる謎のベルトでちょっと締まっててちゃんと柔らかさもあるんだよ的な?

 

 そしてそう、黒スト。千織さんの脚を語る上で欠かせないものだ。黒といえば収縮色。その色のストッキングが彼女の美脚を更にスラッと見せるのだ。

 

 つまり何が言いたいのかと言うと、俺が今まで見てきた千織さんの脚は収縮色によってスリムに見せていたもの。そして今の千織さんはそれを履いていない。元々バランスがいい中で黒ストにより細く見えた脚が白い肌によって量感が増したように見えるということだ。これによって「美脚」中での細めとむっちりめの両方を見ることが出来たと言えるということだ。最高かよ。

 

「………どうしたの?」

 

 そんなことを考えていたらいつの間にか千織さんが目の前に来ていた。首を傾げて聞いてくる顔はいつものものだが、格好と下ろした髪のせいで印象がガラリと変わって見える。

 

「……ん、なんでもないよ」

「うそ。脚見てたでしょ」

「なんでカマかけてくるかね…ごめん」

「……別にいいわよ」

 

 え、いいの?と目線が下に行きそうになるが気合いで彼女の顔に固定。ため息を吐くと俺は半目を向ける。

 

「……今日、本当にどうしたんだよ。いつもだったら今の蹴り飛んでくるとこなんだけど」

「…別に、店じゃ見れない貴方が見れたから遊んでるだけ。もう店でもタメで話していいのに」

「まぁ、そのうちね」

「……ふふ、言ったわね」

 

 なんか、この千織さんもいいなぁ。いつもより子供っぽいというか。リラックスしてるみたいだ。口調がどこか柔らかい。こういう千織さんもいいな。

 

 その後はマグカップ片手におしゃべりにふけった。そういえばこうしてゆっくり千織さんと話すのは初めてかもしれない。千織屋だと基本話しても服のことばっかだから、普通の世間話や食べ物、美味しいお店の話とかでこうして喋れるのはすごい嬉しいな。

 

「そういえば、逆に嫌いな食べ物ってあるのか?」

「嫌いな食べ物?……基本好き嫌いはしないけど…フォンテーヌのアレだけはダメね」

「あ、俺わかったかも」

「あら、本当?じゃあ同時に言うわよ。…せーのっ」

「「ハギス」」

 

 やっぱりか。ハモった俺たちはくすくすと笑い合う。

 

「ほら当たった」

「ふふ、なんでわかったの?」

「俺も嫌いだから。アレ調理工程長い癖に味ないからなー」

「本当よね。でもフォンテーヌ人は別に嫌いじゃないって人が多いみたいね」

「へぇ〜、ハギス好きな人に稲妻料理食べさせたらひっくり返りそうだな………って、やべ、忘れてた」

「どうしたの?」

 

 ダイニングの椅子を引いて立ち上がった俺に千織さんが首を傾げる。俺はクローゼットを開けて、愛剣を取り出した。

 

「まだ今日の手入れしてなかったなって」

「それ、エージェントで使ってる剣?」

 

 二振りの剣をテーブルに置いた俺は、頷きながら鞘から刃を引き抜いた。覗かせた白銀に千織さんの目線が吸い寄せられる。

 

「これ、ずーっと使ってる剣なんだよ」

「ちなみにどうして二刀流なの?」

「それ、千織が聞くか?」

「じゃあ、今度は私が当てていい?………剣2本持った方が強いから」

「…ははっ、あたり」

「……ふふっ、私も同じ理由よ」

 

 なんだこの空間、幸せすぎる。剣の手入れを終わらせると、今度は元素の話に移っていく。俺は千織さんに神の目を見せた。

 

「そういえば、かなり変わった風の使い方をしていたわよね。風の神の目を持ってる人は見たことあるけど、そのどれとも違ったわ」

「まぁ、物は言いようって話になるんだけどさ。風ってそもそも何かわかるか?」

「……ん、空気の流れ、とか?」

「そうそう。つまり空気が動けばそれは風になる。……ってことは俺の周りにあるものは全て動いてない風って認識するんだ。だから風を生み出して戦うんじゃなくて、周りの空気そのものを武器にできるってわけ」

「…なんか、普通な考えじゃないわね」

「留まってる空気が風じゃないって誰が決めたし、って話」

 

 千織さんに「見せて?」とお願いされたので俺は見せやすいようにベッドに移動した。部屋の間取りがダイニングテーブルの裏にベッドと机、みたいな感じになっているので、そのままやるより少し間隔に余裕がある。

 

 俺は手のひらの上に風のリングを生成した。

 

「風の輪っか?」

「これが基本。これで色々空間に固定できるんだよ」

 

 俺は手頃な長袖の服をほおり投げて袖の部分にリングを2つ飛ばす。それぞれの手首の部分に巻きついた風のリングはそのまま空間に固定され、服が宙に縫い付けられたように静止する。

 

「…へぇ、便利なものね」

「まぁ、圧縮の加減が難しいから難易度は高いんだけどな」

「…ふーん。…これ、私も触れーー」

「…うぇっ!?」

 

 俺が手のひらにもうひとつリングを作っていると、椅子から立ち上がった千織さんがこちらに寄って手を伸ばしてきた。俺の視界の下半分に千織さんの白い生脚が占領する。そして突然手が触れ合ったものだから驚いてリングを床に落としてしまった。

 

 さっきも言ったが、このリングは風元素を圧縮回転させているもの。それが俺の制御下を離れ床に落ちたらどうなるか。

 

 ーーー当然、開放された風が吹き荒れるわけで。

 

 フワッ。

 

「……えっ」

 

 床に落ちたらリングが崩壊。上向きの風が突如吹き荒れる。その風に煽られて、千織さんの着てい たオーバーサイズのTシャツの裾がいとも簡単に捲れ上がった。

 

 ーーーそういえば、さっき千織さんがお風呂に入ってる時に疑問に思ったことがある。……着替えは俺の借りるって言ったけど、下着はどうすんだろうかと。恐らく、千織さんの俺ん家訪問は突発的に思いついたものだと思う。だから用意する暇はなかったはず。……そして千織屋の商品に下着類は存在しない。………そう、表には。

 

 千織さんが来ていたシャツの裾が、彼女のへそ辺りまで一気に捲れた。そして初めて見たおへその下、千織さんの女性な部分を隠す、白いモノに俺は見覚えがあった。

 

 ………あ、アレ裏にあった昔千織さんが作ったっていうエロい下着じゃん。

 

 なんと言えばいいのかわからないが、横は紐のように細く、布の部分をギリギリまで削ったような純白のショーツ。くい込んでいる、とまではいかないが、細い横の部分が肌を凹ませて、彼女の柔らかさを伝えて来る。何より、ラフなTシャツの下からそんな扇情的な下着を履いていたということに驚いて、俺は呆然と千織さんの顕になった下着をガン見し続けてしまった。

 

「…ひゃっ!?」

 

 数瞬遅れて気がついた千織さんは、慌ててシャツの裾を抑えた。今まで見たことがないくらい彼女の顔が真っ赤に染っている。

 

 部屋の中に、痛い位の沈黙が到来する。ダラダラと冷や汗を流した俺はとりあえず床に正座した。

 

「………見た?」

「……申し訳ございませんでした」

 

 同じく裾を抑えて床に座り込んだ千織さんの言葉にすぐさま謝罪し、頭を下げる。

 

 数秒後、視界が床で埋まっている俺の頭上から小さい声が飛んできた。

 

「……別に、今のは私にも非があるし……顔を上げて」

「いや、でも。…ごめん」

「……い、言っておくけど…、た、たまたまだから」

「…え?」

「……今日、クレイのうちに行くって決めたから、着替えを用意出来なかったのよ…。…だから、店にあった前作ったやつを…」

「な、なるほど」

 

 なんだこの会話。お互いに床に座り込み、目を逸らしながら話してる相手が千織さんって今朝の俺に言っても絶対信じないわ。

 

「…とりあえず、この話はおしまいっ。……そろそろ日付が変わりそうだし、寝ないと」

「…そうだな」

 

 時計を見ると0時前。結構話し込んでたな。幸い寝床に関しては寝袋があるので心配ない。ベッドは当然千織さんに渡すので、俺は寝袋を取りに行こうと部屋を出ようとしたところで千織さんに袖を摘まれた。

 

「……もうちょっといてよ」

「可愛すぎか」

 

 いいですけどってやばい心強いの声が先に出てしまった。バッと千織さんの方を見ると、ぷいっとそっぽを向かれる。

 

「……何言ってるのよ…もう」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそれでこの前…千織?」

 

 千織さんがベッドに入ってまた少し話していると、彼女の相槌が途絶えた。ベッドを背もたれにしていた俺が後ろを見ると、布団にくるまった千織さんが丸くなって寝息を立てていた。ていうか寝る時丸まる派なんだ。可愛すぎだろ。

 

 ただ寝ている位置がベットの端なのでこのままだと落ちそうだ。俺は小さく「失礼しますっ」と囁くと千織さんの身体を持ち上げてベッドの中央に移動させた。思いがけず抱き上げてしまったけどめちゃくちゃ軽かった。むしろ、こんな軽い体にブランドの責任がのしかかっているのかと考えると、彼女に対して暖かい感情が湧いて出てくる。

 

 んんっ、寝てるし、大丈夫だよな…?

 

 俺はくぅくぅと寝息を立てる千織さんの耳に口を寄せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……千織、好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 顔を離すと、俺は羞恥心でゾワゾワする背すじを擦りながら部屋から退散した。

 

 

 

 

 

 だから、俺は………千織さんの真っ赤に染まった耳を見逃したことに。

 

 

 今はまだ気が付かない。




はよ付き合えよ。

千織さんは……

  • 卑しい
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