お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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今回エローフェさん視点→千織視点→クレイ視点と移っていく感じでお送りします。


最近、私の上司と後輩が甘すぎる件について

 

 

 

 

 どうも皆さんこんにちは。エローフェと申します。

 

 職業は千織屋の店員、最近好きな飲み物はブラックのコーヒーです。

 

 元々服飾に興味があった私はオープンスタッフを探している服屋を偶然見つけ、そこに入りました。店主の千織さんは怖そうだけど優しくて、技術もすごくて。……たまにお客さんを投げ出すのは正直勘弁して欲しいですが、充実した日々を送っていました。

 

 しかし、数ヶ月前、新しい店員さんが入ったあの時、私の日常は……というより、千織さんが変わり始めました。

 

 新しく入ったのは、髪も肌も白い男の人でした。なんでも千織さんに一目惚れしたそうで、なんでも前向きに仕事に取り組んでいました。細かい気配りもできるし、教えたことはすぐできるようになるまさに理想と言っていい人材に、私の立場が危ういとさえ思ったことがありました。

 

 そして肝心の千織さんなんですが、最初はつっけんどんな態度でした。まぁ、私としても千織さんが誰かに恋愛感情を抱くというのは考えられませんでしたし、正に「恋愛より仕事」な人でしたから。

 

 ですが、そうして日々を過ごしている間に、千織さんの態度が少しずつ変わり始めたんです。

 

 最初は「問題起こしたら叩き出すから」って言ってたのに、心配してお休みを渡したり、クレイさんがいない時に彼の話を出してきたり。私としては2人が仲良くなってくれて嬉しく思っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてっ、ファッションウィークの騒動が終わりっ!最近の千織さんがこちらになりまぁす!!

 

 

 

 

「……ねぇ」

「ん?どうかしました千織さん?」

「…今日、暇?」

「…っ、え、ええ。特に予定はないですが」

「…そう。それなら、仕事が終わったらちょっと付き合って欲しい場所があるんだけど」

「御意」

「……どこか聞かないの?」

「千織さんと一緒ならどこまでも」

「………ばか」

 

 あっっっっっっま!!!!!

 

 千織さんとクレイさんのやり取りを見ながら、私はコーヒーカップを傾けます。……おかしいですね。ブラックなのに…すっごい甘い。

 

 なんですかアレ。あの千織さんがクレイさんに背中を向けたと思ったら、赤くなった顔の口元を手で隠しました。そして仕事に戻るクレイさんの背中に熱い視線を送ってますよっ!?

 

 な、ななななんですかっ!?最近また2人に何かありましたねっ!?私気になりますっ!!

 

 そしてなんでクレイさんは気がついてないんですか!?めちゃくちゃデレてますよ千織さん!

 

「……っ」

「……お?」

 

 おほぉぉぉ!?(驚愕)

 

 ち、千織さん、まるで我慢出来なくなったみたいな感じでクレイさんの背中に抱きつきました!?仕事中ですけどぉ!?

 

 そ、そんなことも出来たんですか千織さん。

 

「……どうした?」

「ごめんなさい……またちょっと躓いたみたい」

「……あぁ」

 

 な、なんですかその可愛い言い訳!?しかも「また」って言いましたよ?

 

 あ、ああぁ……、千織さん、ここぞとばかりにクレイさんの匂い嗅いでるゥ!

 

「……ありがと、支えてくれて」

「お、おう。こちらこそ」

「ふふっ、敬語取れてるわよ?」

「あ、しまった」

 

 はぉ……フゥ〜↑(深呼吸)。

 

 まずいです。これは見てるこっちが先に尊死しかねません。

 

 私は、新しくコーヒーを入れ直すと、2人の方を見ないようにして作業を進めるのでした。

 

 

 

 

 

「…千織さん、最近よく躓きますね?」

「……ちょっとね」

 

 あ、ダメです。声でも死ねますねコレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、ダメだ。本当にダメだ。

 

 千織は手縫いをするクレイをじっと眺めて心の中でそう零した。クレイの部屋に泊まってから、さらにおかしくなったわねと千織は自覚している。

 

 千織のこの感情は彼女の中でとっくに結論が着いていた。

 

 

 ーーー千織は、クレイ・ウィンドルのことが好きなのだと。

 

 

 完全に自覚したのは「躓いた」などと嘘をついて彼の身体に抱き着いた時。千織の身体に電流のような甘いしびれが走り、同時に言いようのない心地良さがやってきた。

 

 最初は「千織や千織屋を一番に思ってくれているから」「仕事がとてもできるから」好きなのだと思っていた。しかし、近くで過ごしてみてその考えは間違いだった。

 

 証拠に、彼の服屋以外のことも考えることが多くなったからだ。ちゃんと朝ごはんは食べれているのか、千織に黙って危ない目に会ってないか………本当に千織のことが好きなのか。

 

 クレイは口でだけ「好き」とかいうが、行動にはほとんど起こしてこない。特に身体的接触はゼロに等しい。だから千織からいろいろと行動を起こしてみるがあんまり効いた様子は見えない。これが最近の千織の悩みの種なのであった。

 

 向こうもその気なら普通に告白して恋人に、という展開に持って行けるのだが、どうしてもクレイの真意がわからないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ」 

 

 千織屋が終わり、千織さんとの用事が終わった後。俺はバクバクうるさい心臓を抑えながら帰路に着いていた。

 

 ちなみに千織さんの用事は、家具屋さんに行くことだった。自分の部屋新しいのを買うのかな?とか思ってたんだけど、なんと俺の部屋に置く家具だったんだわ。

 

 まぁ、確かに殺風景な部屋ではあったけどさ。別にソファとか2人用のを買う必要なかったんじゃ?

 

 まぁ2人で並んで座れるから?まぁ役得だからいいけど……。

 

 ほんと、最近の千織さんは可愛すぎるんだよな。なんなの?俺のこと好きなの?……そうだったら嬉しいんだけどなぁ。

 

 ………仮に、千織さんが俺の事を好きだとしよう。でも、それを素直に喜べるか。要は「千織屋を大切に思っていて」「仕事ができる」というところに彼女が好意を抱いてくれたと言うのだったら、そこに「クレイ・ウィンドル」という要素は存在するのだろうか。

 

 日頃好きだ好きだと言ってはいるが、俺の本音はそこで止まっているのだった。だから…………いや、やめよ。

 

 俺はため息をつきながら、半目で振り返る。

 

「………いつまで着いてくるの?」

「なによ。ただお風呂入りに行くだけじゃない」

「昨日の今日すぎる」

 

 今度はちゃんと着替えを持ってきたらしい千織さんが腕に下げた鞄を見せながら言う。いや、どんだけウチの風呂にハマったの?

 

 確かにウチの風呂大きめだけど、男の家に連日風呂に入りに来ますかね普通。

 

 ため息をつきながらも俺の足取りは軽い。そりゃそうだろ。好きな人がうちに来るって言うのに嬉しくないわけが無い。

 

「わかったよ。帰ったらすぐお湯張るから」

「でもその前に。食品販売店に寄っていくわよ」

「え?」

「…いくらフリーナの料理でも、毎日パスタだと体に悪いわ。何か野菜も取らないと」

「……ま「丸かじりなんてしたら怒るから」………あい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、根菜をいくつかと肉を買って帰宅した。一人暮らしの料理のめんどくささは計り知れないのはよく言われたことだけど、一体何を作るんだろう。にんじんとじゃがいも、肉に玉ねぎ……うん、該当料理が多すぎてわからねぇ。

 

「じゃ、俺はお湯張ってくるよ。何を作る予定なんだ?」

「稲妻料理よ。…ほんとうはこんにゃくがあるといいんだけど」

「なにそれ」

「こっちの人が見たら驚くかもね。………あ、ハンガー借りていい?」

「おう」

 

 風呂に向かって歩いたままそう答え、お湯を汲み始める。千織さんが入るということで浴場内と脱衣所を軽く掃除し、部屋に戻ってくると同時に俺の目が潰れた。

 

 しっ、白ォォオオオオ!?(背中)

 

 何が起きたか説明しよう。

 

 …………山吹色の着物の下はそうなっていたんですね。……って説明忘れて心の声が飛び出してしまった。

 

 そりゃハンガー借りるって言ってたからそうなんだろうけど、千織さんはいつもの着物の上着を脱いでいた。俺もどういう構造なのかイマイチわかってないんだけど、千織さんの上着は前を閉めずにその上から帯を巻いている。だから仕事中は脱いでるところを見たこと無かったんだけど、家の中ということでラフな格好になられてご覧に入れられていた(語彙力低下)。

 

 上着の下の、灰色の着物はなんというか首のところだけで固定してるようなもので、背中とそして肩がフルオープン。キッチンにたって野菜を切ってるせいでこっちに向けられた白い背中が俺の目を穿ったのだ。

 

 しかも、うちから持ってきたらしい黒いエプロンを着用なされていて、なんかその、黒のエプロンの紐が見えながらも白い背中を隠すことはしてなくて。……控えめに言って絶景です。

 

「……っ、て、手伝うよ」

「あら、ありがと。じゃあ…おいもの皮を剥いてちょうだい」

「了解」

 

 なんだ「おいも」って。かわいいな一々。

 

 些細なリラックス千織さんに悶絶しそうになりながら横に並んで芋の皮を剥いていく。………やっぱ包丁より剣のが……いややめよう。

 

「……ふふっ」

「どうした?」

「いま、あなたの考えてることがわかって」

「そんなにわかりやすいかな?」

「……きみが、私の事やたら気がつくのと同じよ。多分相性がいいんでしょうね」

 

 え、なに?「相性良い」って、前なら俺が言って「んなわけないでしょ」と一刀両断されてたセリフなのに。まさか千織さん側が言ってくれるなんて。

 

 それに、なんか距離も近い気がするし。まぁそんなに広いキッチンじゃないけど、ちょっとズレたら肩が触れそうだ。

 

 芋の皮剥きが終わったので、芋を千織に渡して、冷蔵庫に野菜を取りに歩きながら、俺はちょっとドキドキさせられた仕返しに口を開いた。

 

 

「…俺と相性いいのは千織だけでいいよ」

「…っ」

 

 玉ねぎを取り出しながら何食わぬ顔で戻ってみると、千織さんはいつものすまし顔。……なんだけど。

 

「耳、どうした?」

「……え?」

「いや、その、赤いけど」

「気のせいよ」

「そう?」

「……そうよ」

 

 そうなんだ?

 

 

 その後は同じく皮をむいた玉ねぎとじゃがいも、人参を切って炒め、肉を投入してさらに炒めた後に、別の鍋で取ってた海草だし(初めて見た)を追加して調味料を加える。

 

「ほんとに海に生えてるアレ煮るだけで出汁が取れるのか?」

「ね、こっちだと信じてくれる人がなかなかいないわ。前に見せたナヴィアにも驚かれたし」

「水の国で内海あるのに、稲妻の方が海産物の扱い上手そうだな」

「そういえば内海って淡水なのよね。塩作れないじゃない」

 

 そんな会話をしながら、ふと横を見ると、俺はとんでもないことに気がついた。

 

 ……………え?

 

「千織さん」

「……敬称」

「あ、千織。………普段、人前で上って脱ぐのか?」

「……脱がないわよ。帯緩める必要あるし。締め直すのが面倒だわ……ふふっ、それがどうしたの?」

 

 くっ、俺が何を言いたいのかわかってる顔してる…!

 

「………いや、それならいいんだ」

「なんで?」

「……わかってて聞いてるだろ」

「さぁ?なんのことかしら」

「………いやその、……ソレ」

 

 俺は目を逸らしながらも、千織さんの。………横から3分の1ほど見えてしまってる女性の象徴に指を差した。

 

「……ソレも、オシャレっすか?」

「…そうよ?」

「……一般男性論だと、それはちょっと刺激が強いので…」

「大丈夫よ、別に」

「……まぁ、千織がいいならいいけど…」

 

 

 鍋を見るに、あとは煮込むだけらしい。なんか負けた気になった俺はお湯の様子を見に1回その場を離れた。

 

 

 

「だって、あなた以外には見せないし」

 

 

 

 

「……勘弁してくれ」

 

 耳に引っかかったその言葉を理解すると同時に、俺はしゃがみこんで顔を手で覆った。

 

 この時ばかりは、エージェントの耳を恨めしいと思った。

 

 これはもう、そうなのか?

 

 もしかして、本当に、………千織さんが、俺を?

 

 そうだったとしたら、どんなに嬉しいか。………だから、ちょっと確かめて見る必要がある。いまの彼女の呟きを拾わなかったらやろうとはしなかった事。

 

 失敗したら、本当に終わり。多分関係も遠のく可能性があるような事を。

 

「千織。あとは煮込むだけ?」

「ええ。ちょっと休憩しようかしら。……お風呂はできたのよね?入ってもいい?」

「ああ。…でもその前に、"ちょっと、一緒に座らないか?"」

「………別に、いいけど」

 

 ああ、もしかしたら本当に、もしかするかもしれない。

 

 千織さんだったら自分の意思を優先するはず。もともとその名目で来てるわけだし。その中で抽象的な俺の提案に乗ってくれた。

 

 千織さんは、スタスタとこちらによると、ベッドに座る俺の隣に少し間を開けて座った。

 

 

 そこに、俺はもうひとつ、踏み込んでみる。

 

 

「……もっと、こっち来て?」

「…っ、…………ぅん」

 

 真剣な眼差しで言ってみると、少しの間とともに

千織(・・)はこくりと頷いた。30cmほどの間が詰められて拳ひとつまで近づく。

 

「……もっと」

「……ひゃっ」

 

 こんなに勇気を出したことは、人生でもそうそうない。それ程の勇気を込めて千織の腰に手を回し、優しく抱き寄せてみた。拳1個ほどだった距離がゼロになり、俺と千織の身体の側面が密着する。

 

「……ぅ、……な、………ど、どう……したのよ…?」

「……こう、したかったから。……だめか?」

 

 もうここら辺からは俺も頭の中が真っ白で話してたと思う。目論見とかがそのまま口から出てる状態だ。多分、千織もそうなんだと思う。ここまでハッキリ赤面した顔を見るのは初めてだった。

 

 千織は俺の言葉に、少しの間目を泳がせていたが、直ぐに俺の事をじっと見つめてきた。少しの間だけ目が合ったが、ふいっと逸らされて、彼女の頭が俺の肩に乗って、もたれかかっているような感じがする。

 

 千織は再度、赤い顔で俺の顔を見て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───千織は、俺のことが好きだ。

 






………ッッッッ………ハァァアァァァァ(糖分を吐き出す音)。


書いてるこっちも大変なんですよ。

あなたは今回の話を読んで

  • 糖分で身体が痒くなった。
  • 糖分で身をくねくねよじらせた。
  • 甘すぎて叫んだ
  • 自らが吐いた砂糖で溺れ死んだ
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