お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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 千織さんも、我慢の限界だったんです。


 後輩ちゃんの容姿をここに記しときますね。

 後輩ちゃん(偽名:ソフィー)

 銀髪ボブ、碧眼、クレイの3歳年下。

 潜入任務のスペシャリストで、現在も5年間、駆け落ちした大手服飾メーカーの娘になりすましている。本来は何年かしたら死んだことにする予定だったのだが、服を作るのが意外と楽しくてそのまま続けている。

 任務中のクレイに助けて貰ったことがあってから彼に憧れてエージェントを目指し、今でも「先輩」と慕う。クレイが引退するのに1番反対し、千織屋の防衛の任務も唇を尖らせながらクレイの頼みならと渋々受けていて、今回の件で、クレイへ貸しを作った。


千織が襲いかかってきた!?

 

 

 

 

 あれから、数日が過ぎた。あの後も千織屋の周りを調べぬき、防衛体制を整えた俺は、依頼主んちでフォンテーヌ邸の地図を広げて唸る。

 

「…せーんぱいっ、さすがにもう進入路はないですよってば」

「いや、一応な一応」

 

 向かいのソファに座っていた後輩が呆れた顔をして言って来るが、俺からしたら手を抜きたくない事だし、念には念を入れておく。

 

 明日になればちょうど依頼の1週間は終わり、俺は千織屋に戻れる。

 

 

 …………戻れる、んだけど。

 

 

 

「なぁ、やっぱり千織屋の中までは入る必要なかったんじゃないか?」

「そんだけ外を調べたんだし、中を見ておくには越したことないじゃないですか。それに、店主さんにも会えたし」

「引っ付いてたお前のせいで極寒の視線だったけどな!?……あんな目で見られたの出会った時以来なんだけど」

 

 

 

 あれは、昨日の出来事。

 

 千織屋の外回りの把握は終わったので、あとはどうしても店内を見る必要があった。なので後輩と、その護衛の俺は買い物という体で千織屋に入ったんだ。

 

 俺としても千織に会いたかったし、任務中だけど話せたらなって思ってたんだけど。

 

「いらっしゃいませー、あ、クレイさん。こんにちは」

「どうも」

「………………」

 

 入店2秒後に飛んできた氷元素の視線に俺は表情を崩さずに内心で仏の顔をした。

 

 

 ………あー…………なんかすごい怒ってる……。

 

 

「わぁ…、また新しい服が増えてますね〜」

 

 そんな中で後輩は俺の手を取りながら普通に会話を始める。お前は勇者かなんかなの?ちらりと千織の方を見ると、俺の事を死んだ目で見てきている。さすがにマズイと手を離そうとするが、こいつどんな力で握ってきてんだよっ?後輩の親指が手首の点穴に入ってるせいで上手く力が入らない。

 

 エローフェさんに助けを求める視線をなげかけるけど、あなたはあなたでどうしたの?なんかすっごい興奮してない?俺たちと千織を交互に見て口元を押えている。

 

「とりあえず離せって。店のなか見て回るんだろ?俺はバックヤード見るから」

「…仕方ないですね」

 

 やっと離してくれたので気配消しながらバックヤードに向かう。多分、襲撃されるとしたら裏から来る可能性が高いので、確認しないと。

 

「……ここは、関係者以外立ち入り禁止なんだけど」

 

 すると、腕を組んだ千織が俺の前に立ち塞がった。こうして話すのは5日ぶりだから多少は嬉しい気持ちが出てくるのだが、千織の俺を見る目が初対面の時にまで戻ってる気がする。

 

「え、一応俺も関係者……?」

「……関係者?……へぇ?……日中から大手服飾メーカーのお嬢様と買い物デートしてる男が、千織屋の関係者ってわけ?」

 

 やっばい。このヒトものすごい怒ってる。もう人を見る目じゃないもんこれ。下手なこと言ったらそこの机の裏にある刀で斬り刻まれそうだ。

 

「や、任務だから……」

「……ふーん?それにしては依頼主と妙に仲がいいじゃない?籠絡でもしたのかしら」

「う、今日は棘が凄いですね」

 

 どうやらバックヤードに入れさせる気は無いようだ。このままだと埒が明かないので、後ろの後輩のアイコンタクトして踵を返して戻ろうとした時。

 

「……どこ行くのよ」

「任務ですが!?」

 

 服を引っ張られた感触がしたので首だけ振り向いたら、服の裾をちまっと千織が摘んでいた。身長差の関係で上目遣いの千織がどこかいじけたように言う。何その顔可愛いな。

 

「……そうですよクレイさん。今は私の護衛なのですから、私の傍にいてください」

 

 すると、反対側から潜入モードの口調で俺の手を取って引っ張ってくる後輩。腕を掴んだ後輩に対して裾を摘んでいる千織は引っ張り合いで分が悪く、指が外れてしまう。とりあえずちょっと勝ち誇ったような顔してるコイツにゲンコツ落としていいかな。

 

 俺が離れて行ってしまった千織の目がさらに細まる。彼女の周りのオーラは極寒を超えて、最早後ろに何かが見える。千織は俺の手を取って引っ張り返すと、腕を組んで口を開いた。

 

「ねぇ、本当に明後日には返してくれるのよね」

「……えぇ、そういう契約ですから」

「そう。…それならいいんだけど。貴方に1つ、言いたいことがあるわ」

 

 千織は俺に近づいて身を寄せると優しく俺の背中に触れた。すりすりと大切なものを触るような手つきで撫でながら、後輩を見据えて言う。

 

それ(・・)、私のだから、変な粉をかけるのはやめてちょうだい」

「……善処します」

 

 そう答えた後輩は俺に目で指示をしてくる。周りを見回すと他の客もいないので、俺は踵を返して店の入口に向かう。千織が俺を見てくるが、今度はちゃんと目を合わせて微笑み返すと、そのまま店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お待たせしました」

「随分かかったな。何してたんだよ」

「ちょっとした世間話ですよ。……さ、帰りましょう?」

 

 微笑んだ後輩は肩にかかる髪を払うと、俺の手を取って歩き出した。やはり、俺の背中に店から顔を出しているであろう千織の視線が突き刺さる。

 

「なぁ、本当になんの話ししてたんだよ」

「女同士の秘密です。………ねぇ先輩」

「ん?」

「千織さんのこと、好きですか?」

「超好きだぞ。それがどうした?」

「……はぁ、なんでもないです。千織屋には裏口がありませんし、バックヤードに窓もないので襲撃されるなら夜に正面からが有り得そうです」

「それか、俺らの家かだけど」

「まぁ、そこは大丈夫じゃないですか?元水神様も住んでるアソコならまずないですし」

「千織のとこだって有り得るだろ?人質目的とかで」

「………もう結婚して一緒に住んじゃえばいいんじゃないですか?そして私がそこに養子に入ります」

「嫌すぎる」

 

 俺の即答に頬をパンパンに膨らませて抗議してくる後輩の頭をぐりぐり撫でる。歩きながら話してたので千織の視線はもう感じない。撫でられた後輩は、恨めしそうに俺を見た。

 

「……それ、昔からやってきますよね」

「お前昔からそれ好きだったろ?」

「でも公道の面前でおめかししてる乙女にやることじゃないですよ。そういうところを直さずに千織さんに愛想つかされて早く私のところに来てくださいっ」

「……申し訳ないけどお断りします」

「…ばーか」

「子供か」

 

 俺は謎に後輩に腕をどつかれながら帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということが昨日あったって訳だ。はぁ、あんなんだともう戻るのもちょっと怖いんだけど。下手したら千織屋に戻ったあともデレる前みたいな辛辣千織が復活して…………。

 

 

 ……………それもいいな。最近の千織可愛すぎて目に毒すぎるし、この前なんかバックヤードで抱きつかれたし。店では辛辣だけど、オフの日に会ったら甘えてきて…っていうのも最高だ。むしろ二度美味しくね?

 

 などと馬鹿なことを考えていたら、部屋の奥から何かが飛んできた。反射的に風元素で受け止めると、俺の荷物だということが分かる。

 

 訳が分からずぱちくりと瞬きをしていると、後輩が半目で俺を見ながら口を開いた。

 

 

「……先輩、もう帰っていいですよ」

「え?」

 

 

 俺は瞬きを高速化させながらカレンダーを見るが、流行り7日にはまだ1日残っている。俺はとりあえず荷物を背負いながら彼女に聞き返した。

 

「一体どういうことなんだ?あと1日残ってるだろ」

「ええ。でも調査自体は今日で終わる予定だったんです。………明日は、ただの自由時間の予定でした」

「……なんだそりゃ。……で、いいのかよその自由時間ってやつは」

「………ここで1日油売ってるよりも、早く帰りたいんでしょう?」

「まあ、そうだけど…」

 

 後輩は腰に手を当ててずんずんとこっちにやってくる。身体が当たるまで近づいたところで、優しく俺の体に腕を回した。

 

「………だって、あんなの見たら、返さない訳には行かないじゃないですか」

「ホントに昨日何話してたたんだよ」

「………貴方の事をどっちが好きか、ですよ」

 

 この言葉の意味することに、驚きは無い。前からこういう方向の話は度々聞かされていたからだ。俺は胸に顔を埋める彼女をどうしていいか分からずに手を下ろした。

 

「……私もできる限りの貴方の好きなところを言いました。………でも、千織さんは、私以上に沢山言ってて……中には、貴方のダメな所も挙げてました。「そういうところをひっくるめて全部が大好き…」だそうです。そんなこと言われちゃったら、もう……」

「……ソフィー」

「そっちで呼ばないでください」

「…アリス。……ごめんな」

「謝らないでくださいよ…ばーか」

 

 アリスは俺から離れると目元を拭ってグイグイと俺の背中を押してくる。されるがままに出口まで押されると、背中をべしべし叩かれた。

 

「じゃ、またな。……色々本当にありがとう」

「貸し1ですからね」

 

 あっかんべーをする後輩に見送られて彼女の部屋を出た。今いる場所は令嬢の家らしく立派な屋敷だ。各種手続きを済ませて依頼を完了させ、屋敷を出る。帰る途中に後ろを向いたらアリスが窓から手を振りながら投げキッスをしてきたのを微笑んで手を振り返す。

 

 時刻はもう日没だ。このまま千織屋に行って会いたいけどもう店はしまっているだろう。明日に改めて行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで6日ぶりの自宅。任務の時はこれよりもっと家を開けてた事もあったけけど、千織屋に入った影響か酷く久しく感じた。

 

 当然鍵がかかっているので解錠して中に入…………ん?

 

「お?」

 

 あれ、俺入る家間違えた??

 

 家から漂ってきた、俺のものでは無い香りに目をぱちくりとさせる。明かりがついていた部屋の内装は記憶のものと一致するけど、何より匂いが別物になっている。

 

 俺は恐る恐る部屋に上がって奥を覗き込んだ。

 

 

 

「………………かっわ」

 

 奥に置いてあるベットの上に、この香りの主が丸まって眠っていた。

 

 多分帰ってきてここに座ったら眠くなってしまったんだろう。いつもの山吹色の衣装に包まれた身体を猫のように丸めて、あどけない寝顔を浮かべている。

 

 前に会った時が極寒の視線だったこともあって、これを見た俺は心臓の部分を抑えてズルズルと崩れ落ちた。

 

 ………つーか、もしかしてずっとここで寝泊まりしてたのか?

 

 彼女を起こさないように周りを見渡すと、なんだか家具が増えているような気がした。特にテーブルの上に置かれた千織に似た人形と、それに寄り添う俺に似た人形がじっと俺の事を見つめてくる。

 

「…よくできてるなこれ」

 

 俺の人形もそうだけど、こっちの千織人形がめちゃくちゃかわいい。指で突っついて見ると、ちゃんとほっぺが柔らかい。本物も触ってみたいけど、この前のこと怒ってたらどうしようとか、寝てるのに起こしちゃったら申し訳ないとかでできそうもない。俺は千織人形を持ち上げてじっと眺める。

 

 

 

 ────そんなことを考えて、油断してたんだろう。俺は、後ろで起き上がった千織に気が付かなかった。

 

 

 

 突然、自分の真後ろに気配を感じた。部屋に入る時にも感じた柑橘系の爽やかないい香り。自分の後ろに立つ人物が誰かわかった俺は人形を置いて振り向こうとしたその時。

 

 逆上せた顔の千織が俺に勢いよく抱きついてきた。

 

「…ち、千織…っうわっ!」

 

 抱きつかれた勢いで後ろに倒れそうになった俺は、身を捻って何とかソファに倒れ込む。床に後頭部を打ち付けなくて良かったと息を吐き、下を見ると千織が俺の胸に顔を埋め、ぐりぐりとこすり付けている。あまりにも可愛らしい動作に思わず頭を撫でようと手が伸びて、顔を上げた千織と目が合った。

 

「……っ、……クレイっ…!」

「ち、千織?…なんか様子がおかんむっ!?」

 

 なんだか熱がこもったような顔でじっと見てきたかと思えば、回していた腕を俺の頬に移動させた。まるで俺の存在を確かめるかのようにすりすりと撫でて、千織は我慢の限界とばかりに俺の唇を奪いに来た。

 

 千織の小ぶりながら柔らかい唇が俺の唇に押し当てられる。そのままソファに押し倒されて、唇を割って彼女の舌が入ってくる。それを迎え入れるように舌で絡め、俺も再会の喜びを行動で示した。

 

「ん、ちゅ、……んっ、くれい……ちゅ、んっ、ぅ…」

 

 いや、本当にこの一週間何があった!?

 

 確かに任務の前の千織は凄かったけど、ここまでじゃなかったぞ!?

 

 千織は息継ぎのために一旦唇を離すが、すぐさま顔の向きを変えてまたキスをしてくる。

 

 もう当たり前のように舌を口の中に入れて来るので俺も負けじと応戦。身体を起き上がらせて千織の身体を力の限り抱きしめる。

 

「……ちゅぅ…ん、……あぅうぅ」

 

 なにその声可愛すぎだろ。まるで撫でられてリラックスしきった猫のような可愛らしい声を上げた千織は、唇を離して今度は俺の首筋に顔を埋める。俺のシャツの首元を引っ張り肌を出させると俺の鎖骨あたりに吸い付いた。同時に俺の右脚を跨ぐように座った千織は身体を擦り付けて来る。

 

 千織は夢中になっているのか、編み込んだ髪が乱れ、服がはだけているというのに全く気にしないで俺の首筋に舌を這わせている。

 

 山吹色の上着が肩からずり落ち、スカートが捲れて黒いタイツに包まれた脚が惜しげも無く俺の視界に飛び込んで来た。

 

 千織は俺の首や鎖骨、耳に至るまで、まるで久しぶりにオアシスを見つけた砂漠の遭難者の様に一心不乱に俺の肌に舌を這わせる。さすがにくすぐったいので優しく頬を持って顔を離させるとノータイムで今度は指を咥え出した。親指や指の間を這い回る千織の舌に変な気分になりそうだ。

 

 あの千織のこの乱れよう。何か妙なものでも食べたのかとテーブルや棚を見るけど何も無い。千織はちゅぱ、と音を立てて指を離すと俺の顔を両手で挟んで自分に向けさせる。

 

「…どこ、みてるのよ」

「いや、千織…、さすがにどうしたんだっ?何か盛られたとか変なものでも……」

「クレイ、くれいっ……!んんっ」

 

 あーだめだ聞いちゃくれねぇ!

 

 再度キスをしてきた千織に諦めた俺はとりあえず応戦するかと舌を伸ばす。起き上がって対面座の体勢でキスをしていたところを今度は俺が千織を押し倒した。

  

 俺はキスを続けながら指の腹で優しく千織の耳の輪郭をなぞる。効果はてきめんで、千織の腰が反るのを確認しながら体重を少しだけかけて舌をねじ込んだ。もう千織の服が完全に捲れあがり、下着やらインナーやらがチラチラと見え始めているが、千織は隠そうともせずに熱を帯びた顔で身体を俺に擦り付けて来る。俺は唇を離すと、今度は彼女の耳を唇で優しく咥えた。千織から出る艶かしい声を塞ぐように口は指をねじ込んでおく。

 

「……ん、じゅ、……ぅあん、んちゅ、……あぅ…」

 

 同時に、千織の頭を抱き寄せながら舐めてない反対側の耳を手で塞いだ。こうすることで身体の中に音が響き、千織の身体がびくんと震える。

 

「……だめ、…あっ、クレイっ、ちゅ、……いくら、…ん、夢だからって……あぅっ…」

 

 ん?

 

 千織が指を咥えながら出した声に俺の動きが止まる。耳から顔を離して千織を見ると、目を瞑りながらも俺の指を離そうとしない。

 

「……夢?……千織?」

「ん、……だめ、やめないで……もっと……。……欲し…………え?」

 

 千織も夢の中にしては会話がアレだと気がついたらしい。根元まで咥えていた指を離す。彼女の舌の熱が残る指に銀の橋を繋げながら、完全に覚醒した様子で俺の顔を呆然と見ている。

 

「………え、……く、クレイ?……な、なんで……」

「……そりゃこっちのセリフすぎるだろ」

 

 とりあえずびちょ濡れの指やら首筋やらをタオルで拭いて千織の上から退く。彼女はようやく自分が何をしていたのかを自覚して、顔が真っ赤に染まった。

 

 世にも珍しい茹で千織が出来上がり、彼女はわたわたと慌てながら弁解を始める。

 

「ち、ちがうのよ?た、たまたま、そういう夢を見ちゃったと思って……」

「ほ、ほんとに?」

「ほ、ほんとうよ。わ、わたしがあんな……うぅ…」

「いや、そこは気にしなくていいよ。最高だったし」

「感想とか言わないでちょうだいっ、……ば、ばか」

 

 うぅっ。

 

 あまりの羞恥で顔を真っ赤にしながらの「ばか」は俺を葬る危険があることを自覚してください千織さん。揉み合ってるときに乱れた服をお互いに直し、千織が俺の前に立ち上がる。

 

「それで、……どうしたの?帰るのは明日よね?」

「ああ、それが1日早く終わって帰してくれたんだ。……千織は?ここで寝泊まりしてたのか?」

「…ええ。部屋も広いし、お風呂も大きいし…………便利だったのよ」

「最後謎に間が空いてたけど……」

「なんでもないわよ」

 

 そんな会話をしながらも、千織の手はぺたぺたと俺の胸板を触る。くすぐったくなって身体を離すと、その分千織も近づいてきた。

 

「あ、えと、千織」

「…ふふ、なぁに?」

「……ただいま」

「おかえりなさい」

 

 花が咲くような笑みを浮かべた千織は、改めて俺の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、あの人形はなんだ?」

「あれは"たもと"。私が最初に作った人形よ。横のはクレイをモデルにしてるわ」

「ああ、最初見た時驚いた。千織たもといいな」

 

 ソファに並んで座っていた俺は立ち上がって机に置いてあるたもとを抱き上げる。うーむ、何回みても凄い作り込み。この斜め上を見るすっとぼけた顔を含めて凄く可愛い。

 

 そんな感じで眺めてたら、背中にやわこい触感が。背中に抱きついた千織がたもとから意識を自分に移させるかのように回した腕に力を込めてくる。

 

「な、なに?」

「……たもとよりも私を見なさいよ」

「………」

 

 え、なにそれかわいい。初めて見たヤキモ千織の破壊力に俺は一撃で意識を持っていかれた。思わずたもとを置き直して千織を正面から抱きしめてしまう。

 

 千織の方も甘えるように俺の首筋に顔を埋め、すりすりと頬擦りをしてくる。そんな彼女にさっきの続きをしてしまいそうになるのをグッとこらえて、俺は話を本題に移す。

 

「……千織、話があるんだけど」

「あら、奇遇ね。私もよ」

「……千織が先でいいぞ?」

「……ん、クレイが先がいい」

 

 それじゃお言葉に甘えて。

 

 ハグを解いて、千織と見つめ合う。俺を真っ直ぐ見る赤みがかった瞳が揺れ、何かを待っているような気がする。

 

 俺は、任務で曖昧になってしまった話を持ってきた。

 

「……その、話したいっていうのは、俺たちの関係のことだ」

「…うん」

「……もう一度言うけど、……俺は、千織が好きだ」

「私も、クレイのことが好きよ」

「…そ、即答ですか。…で、さ。6日間も向こうに行っちゃった俺が言うのも本当におこがましいと思うけどさ。……千織…、俺と……」

「……」

 

 千織が何か期待するかのように待つ中、俺は決意を決めて口を開いた。

 

「──恋人になってください」

「いやよ」

「………………」

 

 ……………ん?

 

 あまりにも自然に言われたものだから、俺の思考の中が真っ白になる。え、今……俺、……振られ……。

 

「…恋人じゃ、いや」

「え?」

 

 続いて聞こえた千織の声に「?」の海から抜け出して彼女を見る。千織はそのまま俺を見つめながら、自分の胸に手を当てて話した。

 

「恋人じゃ、いや……って、どういうことだ?」

「………貴方、最初に私になんて言ったか、もう忘れちゃったわけ?」

「最初………」

「貴方、鬱陶しいくらいに私に言ってきたわよね。その中で「恋人になってください」なんて、1度も聞いたこと無かったわ」

「……あっ」

 

 そうだ。俺は最初に、開口一番に、彼女に頭を下げて言ったんだ。一緒に働く中、彼女の美しさにやられて、その度に─────

 

「────俺と、結婚してください」

「………ふふっ、やっと聞けた」

 

 俺の口が脳と連動してそのまま動いて出たその言葉に、千織は見惚れるような笑みを返した。俺の頬を優しく包んで、顔を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───末永く、よろしくお願いします」

 

 

 

 千織のキスを受け止めながら、俺は千織をもう離さないように力の限り抱きしめた。




次回、風呂。

次回お風呂回。意気込みは?

  • コーヒー待機厨です。
  • r15タグの限界に挑戦して欲しい
  • r18版…お待ちしてますっっっっっ
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