お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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今回出てくる他国の女の子達はゲーム準拠になってます。私のもうひとつの作品のヒロインでは無いのでご容赦を。


千織さんのお友達も素敵です

 

 

 

「……っ、ふぅ」

 

丑三つ時。俺は集中して操作していたミシンから手を離す。首を左右に捻るとゴキゴキとヤバめな音が鳴った。

 

何をしてるのかと言うと裁縫の特訓だ。色々工程がある中の縫製と言って切り出した生地を縫い合わせて服の形を作る工程。こっちだと主に千織さんがひとりでやってる仕事になる。まぁ千織さん以外がやったら千織ブランドじゃなくなっちゃうんだけど。

 

縫製と同時に裁断っていう、布を切り出す練習もする。これは元々得意なのもあって我ながら結構イイと思う。まだ千織屋の仕事は表しかやらせてくれないのもあっていざやるようになった時のために今のうちにやってるのだ。

 

いやぁ、やり始めるとキリないわこれ。千織屋から帰ってきてそのまま休まずにもう深夜までやってしまった。とりあえず千織屋の裏に置いてある服位は再現できるようにならないと話にならないから、色々独学でやってってる。

 

ちらりと横を見ると、前の仕事で使っていた一対の刃が置いてあった。

 

もうすっかり振らなくなったな。一応何か依頼がヌヴィレットさんから入った時のために手入れは怠ってないけどさ。

 

……もし俺が殺し屋って千織さんが知ったら、彼女はなんて言うんだろうか。

 

案外気にしないのかもしれない。「だから何?」って軽く流しそうな気がするし、即刻追い出されそうな気もする。殺し屋が店員の服屋とか誰が行くかってんだ。

 

彼女のことを考えると胸がドキドキする。千織さんのことを好きだという気持ちは今でも変わってないけど、あの人鉄壁すぎるんだよな。俺が何を言っても眉ひとつ動かさないし。まぁ千織さんの役に立てるだけで俺は幸せなんだけど。

 

「…さすがにそろそろ寝るか」

 

俺は軽くシャワーを浴びる。身体の水分を拭きながら、洗面台の鏡に向かった。

 

俺はおもむろに、ずっと瞳に貼ってある偽装のコンタクトを取った。これは水分や衝撃でも取れない優れもので、前の仕事の時にのみ外していた事によって仮面から取れる情報を「深紅のクロスが入った瞳」に限定させていた。

 

「……ペルヴィ姉に飛び火してそうでアレだけどな」

 

いずれこの瞳を千織さんに見せる時が来るんだろうか。……まぁ、その前にまず俺を見てもらわないと。今んとこ目すらあんまり合ったことないし、なんならあの迷惑客の時にしか名前呼ばれなかったし……。

 

俺はため息をつくと、明日に備えて床に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう。この前から話していたと思うけど、今日から千織屋は数日休むわ」

「はい。確か映影の撮影が今日からあるんでしたよね?」

 

翌朝、いつも通りに千織屋に行くと、腕を組んだ麗しい千織さんがそう言った。なんでももうすぐ行われる千霊祭で映影のコンテストが行われるのだとか。

 

俺が聞き返すと千織さんは頷く。話を聞くと衣装監督を勤める千織の補佐に俺とエローフェさんが入ることになるそうだ。

 

「とりあえず、役者を迎えに行ってくるわ。あなた達は後で合流してちょうだい」

「わかりました。役者さん、稲妻から来るって言ってましたけど、もしかして千織さんの知り合いですか?」

「ええ。昔お世話になった人たちよ。粗相しないでよね」

 

あの千織さんがねぇ。もしかしたら昔の千織さんのこととか聞けるかもしれない。ちょっと楽しみだ。

 

 

 

 

 

「そろそろ行きますか?」

「そうですね。道具を持って行きましょうか」

 

千織さんが迎えに出て1時間ほど。千織屋に残って映影の撮影の準備をしていた俺がエローフェさんに聞くと彼女は頷いた。

 

テキパキと小道具を準備していく俺を見ていたエローフェさんは微笑む。

 

「クレイさん、かなり仕事ができるようになりましたね。私も抜かされそうです」

「いやそんな事ないですよ?まだ裁縫関連の仕事はやらせてもらってませんし」

「それでも表の接客は私を超えてますよ?特に千織さんのフォローが毎回的確で見てて為になります」

「あはは…、まぁ俺もどっちかと言うと千織さん寄りなので…相手がどんな顔するかとかだいたいわかるんですよね」

 

なんだかんだ働き初めて1ヶ月程が経過した。その期間中働いてて気が付いたけど、この前みたいな客はちょこちょこ来るという事だ。ハイブランドだから金持ちが来るのはわかるけど、なんかこう、もうちょい我が弱い奴いないのか?難癖も大抵自分を優先しろ系だし、多すぎてマジででっかく「予約は先着順だっつってんだろうがボケェ!」の張り紙貼ったろうかと思った。まぁ千織さんに却下されたけど。

 

店を出て言われてたレストランに向かいながら話す。

 

「そういえば、クレイさんは千織屋の前はどんなことをしていたんですか?そこまで要領が良いとなると、結構凄い人なんです?」

「あ〜、前はなんというか、色々な所を転々としてまして。職種は色々やったんでそれを活かせてるのかなって感じです」

 

俺はそう言って少し話をずらして誤魔化す。まぁ転々としてたのは潜入任務だから嘘じゃない。うん。

 

それからしばらく歩いてレストラン「ホテル・ドゥポール」に到着した。受付に聞くと撮影団一行は2階にいるそうだ。階段を昇って吹き抜けになっている2階に行くと、千織さんと、稲妻の人が何人かいた。よく見ると見た事あるような人もいる。

 

「来たわね。皆、紹介するわ。今回撮影の裏方に入るうちの店の店員よ」

「エローフェです。よろしくお願いします」

「クレイと言います。男手か必要な時はどんどん言ってください」

 

2人して頭を下げると、主役を務めるらしい稲妻の男女がお辞儀を返してくれた。多分兄妹なのかな?どちらも顔が良すぎない?横の金髪をひとつに結った活発そうな女の子もバチくそ美人だし、その隣にいる……確か旅人さんもめちゃかわ。

 

もちろんそんな考えを顔に出さずに向こうの自己紹介を聞く。

 

「神里綾人と申します。よろしくお願いしますね」

「妹の綾華です。裏方は作品の縁の下の力持ちですからね、何かお力になれることがあれば、なんでもお声かけください」

「宵宮や!うちはこの映影に役者として参加する訳ではあらへんけど、お手伝いはするつもりさかい、よろしゅうな!」

 

挨拶を終えると、旅人さんと横の…パイモンとかいったっけ。ふよふよ飛んでる妖精みたいなのから視線を感じたけど、気付かないふりをする。

 

なんでかって、俺この子達と仮面被ってる時会ってるし。

 

前の仕事の時とは姿勢も歩き方も変えてるし、声も若干作ってる。風の神の目もしてないし、何より瞳の色がもろ違う。流石にバレることは無いと思うけど…。

 

「私がプロデューサーのグザヴィエだ。裏方に来てくれてありがとう。とても助かるよ…特に今は」

「…えっと、何かあったんですか?」

「ちょっとね。実はついさっき、この映影の制作費を出してくれていた人が財政難になっちゃったらしいのよ。撮影メンバーも機材も、脚本もあるけど肝心のお金がない、って状況ね」

「それは大変ですね…」

 

千織さんからの説明を受けて顎に手を当てる。っていうか、これ千織さんちょっと怒ってるな?元々の出資者にもだけど、ちょこっとグザヴィエさんにも矛先が向いてるような気がする。

 

「ちなみに、必要なお金はいくらなの?」

 

旅人さんがグザヴィエさんに聞くと、彼は答えにくそうに両手で指を1本と2本立てる。

 

「えぇっと、…12万モラ?」

「120万モラってところでしょうね」

「ええっ!?」

 

首を傾げたパイモンちゃんに俺が付け足すとびっくりしてた。反応がオーバーで面白いなこの子。

 

まぁぶっちゃけそれくらいなら俺が一括で払えるけど、それで終息はしないだろ。下手に口出しはしないでおこう。

 

 

 

結局、グザヴィエさんの貯金と千織屋からいくらか、そしてなんと神里兄妹がノーギャラでやると申し出てくれた。いやいい人過ぎないかこの人たち。なんか悪いし後でこっそり俺が積んどこうかな?

 

そして旅人さんはカメラマン、パイモンちゃんがスクリプターに決まった。監督の話になったけど、旅人さんが1人当てがいるみたいで、差し入れの千霊ムースを買ってグザヴィエさんと千織さんと一緒にホテルを出ていった。

 

取り残された俺たちはとりあえず役者さん達と親交を深めることにしようか。稲妻にいる頃の千織さんのことを知りたいし。

 

そんなことを考えていると、宵宮さんが話しかけて来る。

 

「なぁなぁ、クレイさん?でええか?」

「はい、宵宮さん…で大丈夫ですか?」

「呼び捨てでええよ!敬語も要らへんっ、クレイさんの方が年上やろ?」

 

おお、なんかこの子距離の詰め方が凄い。そんで顔が良い。これ稲妻の男の子たまったもんじゃなくないか?めちゃくちゃ勘違いさせてそう。

 

「じゃ、砕けさせてもらうよ。フォンテーヌ邸はどう?」

「めっちゃ綺麗や!建物もこっちよりも背がでっかくて大きいし、近代的っちゅう感じやなぁ」

「俺は稲妻に行ったことないからわからないけど、景色と……後は花火が綺麗って聞いたな」

「へっへーん!実はその花火、うちが作っとるんやで!」

「え、マジで?」

 

話を聞くとこの子花火を作る家の出身なんだとか。そんな話をしていると、神里さん達も声が聞こえたのかこっちに歩いてくる。

 

「ふふ、もう宵宮さんと仲良くなられたのですか?」

「あ、はい、話しやすいので助かりました」

「私たちに対しても砕けた態度でいいですよ?これから一緒に撮影をする仲間なのですから」

 

イケメンオーラがすんごい綾人さんに言われて、2人とも呼び捨てタメ口でいいとの事。いやあなた方稲妻じゃ結構な地位なんじゃ?

 

神里さん達の善人オーラに浄化されていると、綾華さん…綾華の格好に今更ながら目がいった。

 

「綾華の衣装、それ千織屋の服か?」

「はい、少し前に千織さんが送って下さったんです。一目でおわかりになるとは、凄いですね」

「…まぁ、いつも見てるからな」

「クレイさんは千織屋、好きなんやなぁ」

 

宵宮の言葉に頷く。勢いで行動した事だけど、今となってはして良かったって思ってる。毎日楽しい、千織さん麗しいし。

 

「戻ったぞー!」

 

響く声に入口を見ると、監督を迎えに行った面々が戻ってきた。えっと、連れてきた監督って一体……あ。

 

「…ん〜っと、この人たちが『二銃士』の映影を撮るメンバーかい?……あれ?君は…」

「いえ、人違いです」

 

列の最後に入ってきた、青みがかった白髪の少女が俺を見て目を丸くした瞬間、にこやかに否定する。

 

マジかよ。監督ってフリーナ様の事だったのか……。

 

速攻で否定した俺に目線が集まる。特に千織さんの伺うような視線がなんか痛い。

 

「そうかい?でも君、確かパレ・メルモニアに……」

「パレ・メルモニアには何度か行ったことがありますから、恐らくそこで顔を合わせたのでしょう」

 

フリーナ様のセリフを被せ気味にやんわり否定する。この人、俺が殺し屋時代にヌヴィレットさんから依頼を受ける時に何度か会ってるんだよな。しかも素顔で。今のやり取りで千織さんの視線が俺に固定されてるし、視界の端の旅人さん達もヒソヒソやり取りしてる。本格的に俺まずいかも?

 

「まぁまぁ、フリーナさん今は時間も押してますから、そこら辺の話はまた後で」

「ん、そうだね。…僕はフリーナ。この映影の監督を務めることになった。今の僕は一般人だから、固くならずに接して欲しい」

 

稲妻の3人もフリーナという名前を聞いてどういう人かわかったらしい。驚きながらも拍手を送ってくれている。

 

その後は軽く説明を受けて、この場は解散した。アクション監督は明日話を付けに行くのだとか。

 

旅人さんからちょこっと質問を受けたくらいで何とか俺の身分はごまかせた。明日から大丈夫かな…?

 

 

「……で?」

「えっと、なんでしょうか?」

 

ホテルからの帰り道。なんか如何わしい言い方だけど変な意味じゃない、うん。

 

帰り道が被った俺と千織さんが並んで歩いていると、何やらジト目を頂戴する。

 

「随分、あの子達と仲良くなったのね」

「え、嫉妬すか」

「バカ。変なことしなかったか心配だったのよ」

「する訳ないでしょうが。俺をなんだと思ってるんですか」

「……唐突求婚奇人?」

「……酷いけど間違ってねぇ」

 

肩を落としながら歩いている俺を眺めた千織さんは、何かを思い出したのかそういえばと口を開いた。

 

「君、私が綾華に贈った服を見抜いたって聞いたけど」

「へ?あ、はい。千織屋の服なら一目でわかりますよ。伊達に毎日並べてないですから。それに大好きですし、千織屋の服。いつか自分のを買います」

「…ふーん。…そ」

 

彼女の声に反応して顔を見るが、そこにあるのはいつものスンっとした美顔。あれ、ちょっと照れたような声が聞こえた気がするんだけど、気のせいだったか。相変わらず鉄壁な人だ。

 

「千織さん」

「…なに?」

「いい映影にしましょうね」

 

俺がおもむろにそう言うと、となりからくすくすと笑い声が聞こえてきた。えっ、笑った!?

 

「…そんなキメ顔で言わないでちょうだい。完全に今の監督か主役のセリフだったわよ?」

「へっ、いいや俺はそんなつもりでキメてなんかないですよ!?」

「…はぁ、全く…変な従業員を雇ったものだわ」

「今更ですか?」

 

後ろで腕を組んで俺の前を歩く千織さんを、フォンテーヌ邸の外壁から盛れる夕日が美しく照らす。

 

そんな彼女に思わず見惚れていると、振り返った千織さんはいつもよりほんの少しだけ柔らかくなった顔で。

 

「ええ、いい映影にしましょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お?そろそろ「もう付き合っちゃえよ!」コールが感想欄で始まる気がする…。

千織さんの内心デレ率

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