お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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千織さんの安心した顔で改めて死ねる

 

 

 

 

 やべ、ちょっと寝てしまったようだ。この程度の出血で情けない。

 

 意識が覚醒してきた俺が目を開けると、白い天井が見える。多分病院か。

 

「…あら、起きたのね。気分は悪くない?」

「……あ、はい。大丈夫です」

「それなら良かったわ。体の傷もウチが治しておいたからあとはちゃんと食べて寝て血を作ってね」

「わかりました。ありがとございます。………ところで」

「なにかしら?」

「なんで貴方がここに?」

 

 俺が寝かされているベッドの横に座っていたのは1人の女の子。水色の髪をふたつに括り、頭から角のような触角がふたつ伸びている。

 

「あら?ウチがここにいたのは単なる偶然よ。たまたま休みで"上"に出てきたの」

 

 そう言い、メロピデ要塞看護師長、シグウィンさんはニコッと微笑んだ。

 

「そういえばリオセスリ君は元気ですか?最近会ってないんですよね」

「元気よ?公爵の方も貴方に会いたがっているわ。…なんだか面白いことになってそうだしなって言ってたわね」

「なんで向こうはこっちの状況知ってんだよ…」

 

 苦笑いしながら身体を起こすと、傷はほとんど治っていた。相変わらずすごい治癒能力だな。

 

「この治癒力はどちらかと言うと貴方の特殊な身体が原因だと思うわよ。……特にその、肌が黒くなった脚にはとても興味があるわ」

「怖いこと言うのはやめてくださいね。あとこれは最近流行りのソックスですってば。肌にフィットするんです」

「はいはい、そういうことにしておくわね」

 

 シグウィンさんは道具をカバンの中にしまうと椅子からひょいと飛び降りた。看護師の帽子を被り直して病室の外をちらりと見る。

 

「あれ、そういえば俺ってどのくらい寝てました?」

「ん?…確か…3日だったかしら」

「ああ、3日ですか。………………3日ァ!?」

 

 俺はベッド上で跳ね起きた。近くにあったクローゼットや棚を見るが服が入ってない。慌てている俺に、シグウィンさんが首を傾げる。

 

「何をそんなに慌てているの?」

「だって3日の寝てたって、映影祭はっ?」

「映影祭って、確か撮った映像の作品の大会よね?貴方のところがフリーナ賞を取ったのを新聞で読んだわよ?」

「…あ、終わってた……」

「さて、ウチはお邪魔ね。傷も治ったことだし失礼するわ。さっきも言ったけどまだ貧血は症状として残っているから、しっかり食べて血を作ってちょうだいね」

「あ、はい。ありがとうございました……お邪魔とは?」

「今にわかるわ。それと……初めて見たけど素敵な瞳ね?」

「…え、アッ」

 

 そっか3日寝てたってことは当然コンタクトも取られてるか。……目を閉じてる人間からどうやって取ったんだ?

 

 俺は深く考えるのをやめて、病室の棚の引き出しなどをゴソゴソしていると、なんと偽装コンタクトが入っていた。シュヴルーズさんかな?嫌でも、これ新しいやつだわ。……ってことはもしかして。

 

「……ペルヴィ姉?」

 

 多分、見舞いに来てくれたんだろうな。ありがたく装着したところで。俺は廊下を歩く気配を感じた。……シグウィンさんが言ってたのはこれか。相変わらず感知能力どうなってんだよ。

 

 一体誰だろうか。さすがに稲妻のメンバーは帰っちゃったし、グザヴィエさんかな?誰だとしても、どんな顔で会えばいいんだろうか。絶対あの爆発のあと大変だったわけで、そんな中グースカ眠りこけてた俺は罪悪感を覚えた。

 

 と、とりあえず、どうしよう?(思考停止)

 

 俺がわたわたしている間に足音が聞こえて、扉が開いた。

 

「……」

「………千織さん」

 

 俺の病室を訪れたのは、まさかの千織さんだった。俺が迷った挙句に扉を開けてあげようとしたっていう何に気ぃ遣ったわからない行動をした。彼女はドアノブに手を差し伸べた格好のマヌケな俺を見て、目を見開いている。

 

「………起きたのね」

「は、はい。すみません3日も寝ちゃって。映影祭は終わってもう店はやってますよね?今すぐに戻って……え」

「…」

 

 俺の焦りながら捲し立てたセリフは、俺の胸元に添えられた手でピタリと止まった。そんな行動に移った千織さんはちょっと安心したような顔で。

 

「……あんまり心配させないでよ」

「ア、すみません」

 

 え、何その顔初めて見た可愛い。

 

「…身体はもう大丈夫なの?」

「はい、あとはちょっと血が足りないので。とにかく食べろと言われました」

「…はぁ、貴方…あの後どんだけ大変だったか知らないでしょ?」

「えと、爆発の後処理のことですよね。すみません3日も寝てて「そっちじゃなくて」

 

 はて?じゃああとは何が大変なんだったんだろ。フリーナ賞取ったからその後の劇団の勧誘とか?

 

 俺が目をぱちぱちさせていると、大きなため息を吐いた千織さんは腰に手を当てて俺の胸に指をさす。

 

「君を運んでる時に気を失ったから、元素で止血してたのが解かれたのよ。血が滝のように出てて宵宮が泣きそうになってたんだからね?」

「え」

「それで血が足りなくて緊急手術になって、貴方の血液型が珍しすぎて輸血も出来なくて。……とりあえずあんたが庇った宵宮には会いに行ってあげなさい?自分を庇った人が目の前で死にかけるとか、トラウマものよ」

「ま、マジですか?…すみません千織さんの服に俺の血が着いちゃいましたよね……べ、弁償を」

「だから、貴方は自分の心配をしなさいってば!」

 

 俺は千織さんに両肩を掴まれてベッドに座らされる。

 

「と、とりあえずわかりました……って、稲妻から来た人たちってまだ帰ってなかったんですか?」

「そろそろゲンコツ落とさなきゃわからないかしら?」

「……あ、はいすみません俺のせいですね」

「…貴方のせいじゃなくて、貴方のおかげ、よ。あんまり自分を下げる人は私は好きじゃないわ」

「肝に銘じておきます」

 

 っても、とりあえずどうしようか。シグウィンさんからは何時でも退院できるって言われたし、みんなを待たせるのも悪い。もう出ちゃおうか。

 

 それを千織さんに伝えると、彼女が持っていた紙袋から服がでてきた。病院の白装束で出歩く訳には行かないからとても助かった好きです。

 

「はいはい。早く着替えちゃいなさい」

「え、まだ何も言ってないんですけど」

「顔で丸わかりよ」

 

 おお、言葉にしなくてもわかるなんて、これはもうあ、すみません。早く着替えるんで後ろ腰に差した刀の柄をトントンしないで?

 

 シンプルな黒のワイシャツとスラックスに着替えて、最後に腰に風の神の目を着けた。それを見た千織さんが口を開く。

 

「貴方、いつからそれを持っていたの?」

「最近ですよ?千織さんを支えてぇ!って願ったら落ちてきました」

「うわ、聞くんじゃなかったわ。しかも風って……いやらしいわね」

「何が!?」

 

 こんな感じでテキトーな嘘をついて退院の準備を終えた。荷物はほとんどないので手ぶらだ。千織さんが持ってきてくれた紙袋を俺が持ち、病室を出た。

 

「…ええと、それでみんなはどこに?」

「ホテルに集まってるから今から行くわよ」

「えっ、ちょっと心の準備が…!」

 

 そう言いながらも千織さんに首根っこ掴まれるという新手のご褒美を受けながら、ホテルに引きずり込まれると全員揃っていた。

 

 俺の顔を見た途端に立ち上がって詰め寄ってくる。

 

「クレイさんっ、良かった!起きたんやな!」

「クレイさん、お身体は大丈夫ですか?」

「まさかキミが3日も目を覚まさないなんてね。さすがにちょっと焦ったよ」

「ちょ、みんな一気に喋らないで?」

 

 どうどうとみんなを抑えて1人ずつ相手をしていく。どうやらかなり心配をかけてしまったようで、庇われた宵宮なんかはちょっと涙目で焦った。

 

「ほんま良かった……。病院に運んでる時に血が止まらなくて…あの時は肝が冷えたわ…」

「あはは、ほんとお世話になりました。でもまぁ、俺はこうして生きてるし、もう気にしないで?」

「うん…、ほんま、ありがとうな」

 

 宵宮を宥めたあとも、旅人や綾華から質問攻めにあった。

 

 神の目の授かり方や、元素の扱いが上手いなどのちょこちょこ核心に迫る質問が飛んできたのでのらりくらりとかわしながらここ3日間で会ったことを聞いてみたら、なんと俺が起きてから打ち上げと写真撮影を行う気だったらしい。

 

「俺のためにそこまでしなくても」と口に出しそうだったが、突然握りこぶしを作った千織さんが目に入ったので辞めておいた。だからなんで俺の考えてることわかるんスか?

 

 

 

 

「それじゃ、改めてっ!フリーナ賞受賞にっ、……乾杯!!」

 

『乾杯!』

 

 全員で写真撮影を終えたあと。フリーナ様がホテルに掛け合い、大量の料理と酒を注文した。大きなテーブルに所狭しと並んだ料理を前に呆然としていると、肩をシュヴルーズに叩かれる。

 

「お疲れ様だな」

「ああ、そっちも。そういやあの2人は?」

「ん、今頃仲良く要塞入りしてる頃だろうな。私としては裏で調査してた事件も一件落着して大満足だ」

 

 もそもそとフライドポテトをぱくつきながら言う。シュヴルーズは俺にグラスを差し出してきた。

 

「そういえば酒は飲めるのか?」

「まぁ一応。体質的に毒とかそういうのは効かないから酔うこともないんだけど…」

「…あの召使といい、君達の一族は一体どういう身体なんだ?」

「さぁ?俺も知らない。親の顔とか見たことないし」

 

 まぁいいやとグラスを合わせ、一足に飲み干す。うーん、甘くないジュース。これなら普通にフォンタ飲んだ方がいいな。

 

「ほらっ、クレイさんっ。いっぱい食べて血ぃ作らんと!」

「お、ありがとう」

 

 宵宮が笑顔で結構な盛りの皿を俺の前に置いた。それをありがたく頂きながら、映影祭の話を聞いていた。

 

 なんか、こういうどんちゃん騒ぎもかなり久しぶりだな。最後にやったの……えっと、ロシの密輸組織のパーティに潜入した時だったっけ。…これカウントしちゃダメじゃね?

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると騒ぎもだいぶ落ち着いてきた。お酒が進んで眠り出した女子陣に布団をかけて戻ると、席に座ってワインを飲んでいる千織さんが目に入る。赤ワイン飲んでるの似合いすぎて目がどっか行きそう。

 

「千織さんもお酒飲むんですね」

「たまにね。飲める歳になったのもこっちに来てからだし色々忙しかったから、ちゃんと飲んだことはそんなに」

「そういえば、千織さんっていくつなんです?」

「今年で21よ」

「え、年下だったんだ……」

 

 めちゃくちゃ意外だった。なんなら年上だと思ってたし、仕草が大人すぎるのよ。というかその歳でファッションブランド立ち上げて店出してんの?凄すぎない?

 

 千織さんは頬杖をつきながら目を細めた。何その顔可愛いんだけど(2回目)。

 

「あら、じゃあ私が君に敬語を使うべきかしら?」

「さては酔ってますね千織さん」

「ふふ、別に今くらいいいのに」

「千織さんが敬語使うところなんて想像できないですね。ヌヴィレットさんにもタメで話しそう」

「まぁ、もし千織屋に客としてきた場合はそうするわ。お客の身分がなんであっても客は客、平等よ」

「流石すぎる」

 

 相変わらず好みの信念だ。ここでなら俺でも普通でいられる、そんな気にさせてくれる。そこで俺はいつもの調子で。

 

「はぁ、マジで好きですわ。ほんと結婚して欲しい」

「………いいわよ?」

「まーた辛辣な返しですね。さすがの俺も…………今なんて?」

「冗談よ」

「ちょっ!?それは酷いっすよ!?」

「…ふふ、はいはい」

 

 えぇ…なんかこんなにリラックスしてる千織さん初めて見た。まぁ、久しぶりの宴会らしいし、羽目を外したかったとか?にしても今のはびっくりした。心臓止まるかと思ったわ。

 

「……ねぇ、クレイ」

「あ、初めてちゃんと名前呼んでくれた」

「そう?……まぁいいわ。貴方…そろそろ裁縫の方をやってみない?」

「喜んで」

「だから、いちいち返答のチョイスが気持ち悪いのよ」

 

 

 やっと、服屋として戦力になれる時が来たのかも?






酔った千織さん絶対かわいい

千織さんの内心デレ率Part2

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