お願いします千織さんっ!こっち見てニコッてしてください!!   作:猫好きの餅

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今回から千織伝説任務のシナリオに入ります。ちょこちょこ脚色&改変があるので、ゲームで任務をプレイ済みだとわかりやすいかも。




千織さんのために覚悟を決めます

 

 

 

 

 

 

『今日から5日間の間に、千織屋が更地になることを予言する。

 

 

 まさかお前があそこの店員になってるなんてな。

 

 

 止めたきゃ止めてみろ。      白影?』

 

 

 

 ーーー俺の正体が何者かにバレた。

 

 俺はその手紙を持ちながら気配を探る。俺が家を出た時はポストに何も入ってなかった。だとすると俺が帰ってくるまでの15分程度の間に投函されたものだと言える。…が、それらしい気配は感じられなかった。

 

 関係者以外に誰にもバレてなかった俺の正体が、完全に看破された。家がバレている時点で、もうそれ以外の線を考えるのは無理があるな。

 

 そして、『千織屋が更地になるだろう』手紙にはそう書いてあった。

 

 何故5日間なのかは、恐らくファッションウィークの日まで千織屋を止めたい、そういうことだろう。……ただ、それなら店に直接送った方が……いや、それだと警察隊が警備に出て終わりか。俺の正体がバレてて、俺の千織屋への思いを知ればこっちに送ってくるのはうなずける。

 

 

「……俺が、千織屋に入ったから…………全部俺のせいじゃねぇか」

 

 

 ーーーこれは、俺1人で何とかしなきゃ。

 

 こうもなると、警察隊にも壁炉の家にも、パレ・メルモニアにも伝えられない。だって俺のせいだしな。

 

 俺は立ち上がると、裁縫の練習をする机を抜けて、クローゼットを開けた。

 

 そこには、白銀に煌めく二振りの片刃の剣と、黒装束に………白い仮面。

 

「………絶対に、千織屋に手出しさせるものか」

 

 俺は、覚悟を決めてカラコンを外す。

 

 俺は知ってる。どれだけ千織さんが服を作るのに頑張ってるのかを。どれだけ服に情熱を注いでるのかを。ファッションウィークに向けて、アイディアを考えて考えて。稲妻風の服をこのフォンテーヌで流行らせるのにどれだけ苦労しているか、俺は近くで見てきた。

 

 ……それを、壊そうだなんて。

 

 千織屋が襲撃されるのは、今日から7日間のどこか。流石に昼間はないだろう。となると深夜だが……7日間に1回とも限らないし、大本を叩きたいけど俺が現地を離れている間に出撃に来られてもアウト。そして昼間は普通に仕事。

 

 こりゃ、今までで1番高難度かもな。

 

 ……ただ、俺はもう千織屋の為に全てを懸けると誓った。

 

 瞑目していた目を開ける。黒装束に着替え、フードを被る。神の目をつけて、腰に愛剣を2本吊った。

 

 最後に仮面をつけて鏡を見ると、能面のような白い面に空いたふたつの穴から紅いクロスが入った瞳が煌めく。

 

「……絶対に、千織屋は俺が守る」

 

 

 

 

 

 

 

 とか、覚悟をバッチリ決め込んだんだけど、その日は襲撃来ませんでした。クソが。

 

 

 

 

 

「おはようございます」

「おはよう。元気になったかしら?」

「はい。昨日はありがとうございました」

 

 とか言ってるけどバチくそ嘘です。昨日は徹夜で千織屋を見張ってました。隈は隠してあります。

 

 「じゃ、昨日の分を挽回してよね」と裏に行く店主様を見送っていると、外から声が聞こえた。少しして扉が叩かれる。

 

「すみません、千織屋は今ファッションウィークに向けての準備のため、休店してまして……」

 

 お客さんかなと断りながら戸を開けて見ると、見知った2人組が立っていた。

 

「こんにちは」

「よっ!映影ぶりだな!」

「旅人に、パイモン?なんか用?」

 

 店に来訪したのは旅人コンビだった。話を聞くと千織屋の助っ人に来てくれたのだとか。

 

「昨日2人が来てくれてね。そういう話になったのよ」

「なるほど。旅人は裁縫は得意なの?」

「そりゃ旅人だからね。一通りはできるよ」

「こいつ、隙あらばオイラの服に刺繍しようとするんだぞ?『非常食』って」

「だって、行く先々でパイモンのこと聞かれるんだもん。用途…じゃなかった、名前を示しとくのはいい事じゃん」

「どっちも違うからな!?」

「仲良いね君たち」

 

 すぐ漫才始まるじゃん。俺らも行く行くはそういうコンビに…。

 

「ならないわよ」

「え、今無表情で考えてたのに」

「…なんか、わかった自分が嫌になったわ」

「一応すごいことだからそう悲観されるとですね」

「…そっちも仲良いじゃん」

 

 だよねぇ〜!旅人わかってんじゃん!ニヨニヨしてたら千織さんのローキックが飛んできた。くるぶし的確に狙ってくるのが怖いです。

 

「そういえば、発注した布遅いですね」

「確かにね。狛荷屋に頼んだから大抵時間通りに届くものだけど」

 

 今頼んでるのは稲妻産の布だ。依頼した配達会社「狛荷屋」は時間通り、荷物の品質の宝で有名なんだけど。配達員さんに何かあったのかな?

 

 みんなで店の外に出てみると、遠くからでででっと誰かが走ってきた。なんか箱に4本足が生えたような見た目で2本のしっぽと猫耳が生えてる。なんだありゃ。

 

「すみませんっ!とおしてくたざいっ!」

 

 と声が聞こえてきた箱がくるんと空中で一回転。煙と共に女の子に変身した。

 

「あれっ、綺良々じゃないか!」

 

 綺良々という名前の女の子はどうやら千織さんたちとは知り合いらしい。亜麻色のハーフアップの髪に緑色の猫っぽい瞳の配達員さんは2本のしっぽを翻して深くお辞儀を炸裂させた。

 

「す、すみません〜!配達に時間がかかってしまい…」

「貴方にしては遅かったじゃない。何かあったの?」

「そ、っ、それは〜っ、あ、旅人にパイモン?久しぶりだね!……っと、そっちの人は?新しい店員さん?」

「……まぁ、…そうね」

「え、なんで言葉濁したの千織さん」

 

 思わず突っ込んだ。普通に首縦に振るところですよ?なんで答えにくそうにすんの?俺はとりあえず配達員さんに向き直る。

 

「初めまして。千織屋の店員をやっている、クレイと申します。稲妻の人ですよね?千織さんとはお知り合いで?」

「初めまして!わたしは綺良々ですっ!狛荷屋の配達員だよ。千織さんとは昔からお世話になってるんだよね」

 

 挨拶して握手を交わすと、綺良々さんの服装が千織屋のものなことに気がついた。……相変わらず斬新なデザインだな。スカートに見せかけて前後が開いてる腰とか、猫の足まんまのソックスとか、とんでもないな。

 

「…え、えと、あの〜…そ、そんなに見られると恥ずかしいよ……?」

「…へ?あだっ!?」

 

 思わずまじまじと綺良々ちゃんの服を見てしまっていたみたいだ。後頭部に衝撃を貰った俺は我に返る。

 

「私の友達にその不躾な目を向けないでくれる?」

「ハッ!大変失礼しましたッ!!」

「わ、わたしは大丈夫だからっ!だからそんなに謝らなくても…」

「…やっぱ千織には頭上がらないんだな…」

 

 脊髄反射で頭をさすさすしてた体勢から流れるように土下座した俺に慌てる綺良々ちゃんと苦笑いするパイモン。くすくす笑う旅人。

 

「…で、話を戻すと…何があったの?」

「え、ええっとねぇ?ちょっとて、てん↓き↑が悪くて?マワリミチしたんだよねぇ」

 

 あ、この子さては嘘つけない子だな。イントネーションがとんでもないことになってる。なんかしっぽ荒ぶってるし。って、この足もしかして本物?

 

 目を瞬かせている俺を尻目に千織さんの視線がしっぽに行く。直後、綺良々ちゃんは自分の手でしっぽを鷲掴みした。

 

「ふーん?つまり、配達に遅れたのは綺良々が被害者で、それをやってきた犯人の名前を私には言い難い……ってとこらかしら」

「ゔッ」

 

 まぁ、そういう顔してたもんなぁ。その後狛荷屋という名前の配達の評価を盾に、千織さんは綺良々さんから犯人の名前を聞き出した。

 

「……えっとぉ……ユーサーって…名前なんだけど」

「…」

 

 わぉ、一昨日会ったわその人。千織さんはどうする。無表情のところを見ると、直談判するか考えてるところって感じだろうな。

 

 すると、千織さんが顔を上げる。あの半目は割と普通にキレてる時の顔だ。

 

「……クレイ、着いてきて」

「了解。旅人とパイモンは綺良々さんと店で待っててくれ。あとは何とかするから」

 

 

 頷く3人に見送られて、つかつかと歩く千織さんの後を追う。俺が言ったことで面倒にならないといいんだけど、女神からの、間違った店主からの指名とあらば逆らえない。まぁ、その時に考えよ。

 

 

 

 

 

「シュヴルーズ隊長?今仕事中かしら?」

「……お前が隊長呼びしてくる時は、ロクな事がない」

 まず千織さんが向かったのシュヴルーズのところ。彼女の顔を見た瞬間に口をへの字にするが、俺の顔を見たら「なんでこの人がいて私のところに来たんだ?」みたいな顔された。やめてっ。

 

「ちょっと、顔を貸して欲しいのよ」

「……はぁ、それを私に言えるのはお前くらいだ。……で、何をするつもりだ?」

「ある男が、私の友達から荷物を奪おうとしたの。だから目にものを見せてやるのよ」

「それで特巡隊の隊長を呼んだと?…通報してるのか自首してるのか分かり兼ねる」

「……監督を頼みに来ただけよ。過剰になりすぎないようにね?」

「はぁ、わかった」

 

 うわぁ、結構キレてんな。ため息を吐いたシュヴルーズが同情した目で見てくるが、俺が抱えてる物も大概なので目を逸らしておいた。

 

 

 

 

 

「ここよ。話をつけてくるから、ここで待ってて?」

「俺らは行かなくてもいいんですか?」

「すぐ終わるから。ちゃんと穏便にするわよ」

 

 そういい、千織さんはスタスタと家の中に入っていくのを見送っていると、あくびが出そうになる。…今日で通算二徹だからな。

 

「……何があったんだ?千織があんなに怒ってるのは滅多にないが?」

「……ああ、実は…」

 

 俺はさっきのことを彼女は説明した。シュヴルーズはこめかみを抑える。

 

「それは、千織も怒るわけだ…。アイツ、終わったな。これで5回目だ」

「…そんなにやってたのかよ」

「ああ、一度執律庭から警告されたほどだ。……それか、もう少し放置して君に依頼が行くようにした方が良かったか?」

「冗談じゃない。それに俺はもうそれやってないって」

 

 そんなふうにシュヴルーズと話していたら、人が飛んできた。その人物はお尻から地面に着地して腰を抑えてる。穏便に済ますとは。

 

「……ぐぅ、な、なんのつもりだ!?」

「……」

 

 なんか入ってった時よりもキレてない?能面のような顔をした千織さんは、尻もちを着いているユーサーの胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 

「……愚かの意味を知ってるかしら?」

「……はっ?」

「…何度も、何度も、何度も何度も。……くだらない事を繰り返すことを言うのよ。…前にも言ったはずよ。こういう卑劣なことは二度とするなって…。今度の私の友達の猫の毛に1本でも触れたら……次にお尻が着地するのは地面とは限らないから」

「おい、千織」

 

 シュヴルーズが声をかけると胸ぐらから手を離す。再度尻もちを着いたユーサーはシュヴルーズを見つけると千織を指差し声を上げる。

 

「け、警察隊員さんっ、今行われたのは暴力だっ!コイツを逮捕してくれっ」

「あーすまん、今こっちの男と話していて見ていなかった。事件にしたいのなら君の家で現場検証をしなければならないのだがいいか?君が何もしていないのなら別にいいだろう?」

「…ぐっ」

 

 ああ、向こうに背中を向けてたのはそういうことな。どうやら家には入れさせたくないみたいで悔しそうな声を上げたユーサーは引き下がる。

 

 すると俺と目が合った。

 

「…まあいい、……クレイくん。こんな暴力的な奴が店主だと働きづらいだろ?ウチに籍を変えることを検討してもいいと思うが?」

「この前も言いましたが、俺は千織屋から離れる気は無いです」

 

 その言葉に千織さんがピクリと反応した。それを見たユーサーはニヤリと笑った。切り口を見つけたとか思ってそうだ。

 

「貴方……コイツにまで手を出してたのね」

「…なんだよ。優秀な人材がいたら声を掛けておくのが普通だろう?……俺なら、彼をお前よりも活用出来る。…だから俺のところに来「だから行かねぇつってんだろ」

「ちょっ、クレイ」

 

 あっぶね。睡眠不足ところにコイツのせいでちょっと本気でイラッとした。思わず脚が出そうだったとこをシュヴルーズに言われて辞める。

 

「お前が人を蹴ったら阿鼻叫喚になるぞっ、威力を考えろ」

「悪いっ、止めてくれてありがと」

 

 呆気に取られていたユーサーに咳払いを1つ落とす。ぱんと手を叩いて千織さんに話しかけた。

 

「んじゃ、帰りましょうか。話は済んだでしょ?」

「…ええ。帰りましょ。…隊長もありがとうね」

「ああ。変な問題は起こしてくれるなよ?」

 

 解散して帰っていく俺たちを黙って見ていたユーサーを横目で見ると、なにやら口が動いた。風元素で空気の振動を拾って俺のところまで届けさせる。

 

「………これで終わると思うなよ」

 

 …やっぱこいつがあの手紙に関わってるってことか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、アイツに声掛けられたって本当?」

「…この前に1回だけ」

 

 帰り道、横を歩く千織さんに質問されたので答えると、彼女はじっと見てくる。な、なんでしょうか?顔可愛いっ。

 

「……クレイもあいつに変なことされたら直ぐに言って。今度は本当に叩きのめすから」

「…なんだかユーサーの方を心配しちゃいそうです」

「いいから、……わかった?」

「はい。俺が千織さんの言いつけを破ったことあります?」

「雇用を断ったのにゴリ押ししてきたわね」

「それはノーカンでおなしゃす」

 

 ああ、やっぱり千織さんと話すのは楽しいな。これを壊そうとしているやつが裏にいる。…って、まぁ俺のせいなんだけどさ。

 

 俺は自分より前を歩く彼女の背中をじっと見た。

 

 ……ファッションウィークが終わったあともこういうことは続くのだろうか。それに、ユーサーが本格的にしてきたのは、何かきっかけを掴んだかからかもしれないし、それがもし俺関連のことなら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………やっぱり、俺は千織屋にいるべきでは無いのかな。裏の人間が表に出て恋をするなんて、無理なんだろうか。

 

 

 と、そこまで考えたところで俺は頭を振った。今はそんなことを考えてる場合じゃない。もしユーサーがあの脅迫に関わっているとするのなら動きがあるのは今夜の可能性が高い。

 

 とりあえず、今は目の前のことだけを考えよう。

 

 

 俺はどうなってもいい。でも、千織屋だけは何としても守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

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