成り代わり娘の原罪   作:サブレ.

12 / 43
時計仕掛けの摩天楼は挫折しました。書けたら番外編扱いで投稿しますが予定は未定


第十一話:14番目の標的【1】

変な夢を見た。今より若い母さんが拳銃で撃たれて倒れる夢。ベッドから起きて、なんとなく嫌な予感が拭えないので、母さんに電話することにした。今日は母さんと父さんとコナンくんも含めて食事会なので不安は拭っておこうと思って電話した。朝早くだけど、母さんは電話に出てくれた。母さん、朝早いね。

 

『それでこんなに朝早くからかけてきたの?』

「ごめんなさい。でも、声を聞けて安心しました」

『いいのよ。あなたは昔から甘えるのが上手くなかったから、電話で弱音の一つも聞けるとむしろ安心するわ』

「そうですかね……」

 

母さんは生きてたし元気いっぱいだった。しばらく話して、今日のディナーについても確認して電話を切った。しかしコナンくんは私の電話の音で起こしてしまったらしい。ごめんな。

 

 

園子ちゃんと本のサイン会に行ってから、オープンカフェでランチ。昼間はコナンくんも父さんもそれぞれ個人でお出かけてしているので、私も多少気楽だ。

 

「今回も桔梗がお膳立てしたんでしょう?」

「そうですね。なんだかんだお互い気があるので、あの距離感を楽しんでいるんじゃないでしょうかね」

「アンタも物好きよねー」

「そうですかね」

「桔梗がいなきゃ、身を持ち崩してたわよ」

 

それでも人の恋路をつつくのは結構楽しい。それが一応両親のものだとしても。それに、私だってたまには父さんと母さんと食事くらいしたいもの。

そんなわけで選んだ店は沢木さんという、父さんと母さんの昔からの知り合いのソムリエがいるフランス料理店なだけあって美味しかった。

大きくなったらワイン美味しく感じたりするのかな。

ちなみに、父さんが女の人に目を奪われたことで、母さんは怒って帰ってしまった。全く、ある意味予想通りの展開で頭が痛くなるなあ。

 

「全くもう」

 

コナンくんが同じ感想を持ってるのが幸いだ。

 

+++++

 

翌日から、いろんな知り合いが襲撃に遭い始めた。父さんがかつて逮捕したという村上丈という犯人。その人の出所と同時に目暮警部を皮切りに次々と人が襲われていく。名前に数字が入っているのが特徴で、トランプに準えて十三から順に数字を下っていくのが今回の特異な点だ。

私は毛利桔梗なので名前的に狙われはしないが、母さんが病院に担ぎ込まれる事態にもなった。連絡受けた時は本当に心臓が止まるかと思ったよ……。

父さんは知り合いの警護のため帰ってこない。私とコナンくんは、二人で事務所でご飯を食べた。食べ終わって、食後のほうじ茶で一服。テレビは消した。

 

「コナンくん、相談に乗っていただけますか?」

「いいけど……あの、おっちゃんの件か?」

「そうですね。父さんが母さんを拳銃で撃ったこと、そのことを私は忘却していたこと。父さんが銃口を向ける原因になった犯人が、今回の事件の推定犯人である村上丈であること」

 

どうにも思考がまとまらない。母さんが撃たれる夢を見たということは、深層心理では覚えていたということだろう。私の記憶力も存外バカにできないかもしれない、なんて。

 

「なんで、忘れてたんでしょう……」

 

なかなか思考が混乱して上手くまとまらない。それに、父さんにだって名前に数字が入っている。父さんだって怪我をするかもしれないし、もしかしたら死んでしまうかも。それが怖い。

 

「父さんはなぜ、母さんに銃口を向けたのでしょうね。名探偵ならば、わかりますか?」

「……いや。オレにもわからねえ。ただ、おっちゃんがあの人を撃ったのが事実でも、それが真実とは限らねえと、思う」

「どういうことですか……」

 

よくわからないが、しかし誠実な言葉だとも思う。この男、慰めのために推測を事実や真実として語ることは絶対にしない男だ。私がコナンくん、すなわち工藤新一を名探偵だと評する理由もここにある。

 

「元気出せよ、桔梗。少なくとも、オメーの母さんは……妃英理さんは、おっちゃんを恨んでないだろ?」

「はい、そうですね。とりあえず今日一日は落ち込んで悩みます。全部受け入れるのは少し、大変なので。ちゃんと、明日の朝には全て噛み砕いて飲み込みます」

「思い詰めるなよ、桔梗」

「そうします」

 

理由もなく家族を、愛する人を傷つけるような、そんな人でないことはよく知っている。だからこそ、受け入れ難いのだけど。

落ち込んだまま風呂に入って、電気を消してベッドに潜り込む。流石に今日は嫌な夢を見ないといいなあと思いながら目を閉じようとして、はたと思い至った。

 

「……江戸川コナンにも一あるな」

 

+++++

 

とりあえず数字の一が狙われるまでにはまだ時間がある。コナンくんのそばを離れないようにしよう、と決意しながら起床。父さんと母さんの悪夢は見なかった。真っ先に顔を洗えば、特に寝不足になることもなかったいつも通りの顔が鏡に映った。

 

「父さん、帰ってきませんでしたね」

 

二人分の朝食を用意しながら呟く。大丈夫かなあ、心配だ。コナンくんはといえば、私の顔色を窺っていたが、いつも通りにキッチンに立った私を見て、ほっとしたように部屋に着替えに戻って行った。心配をかけてしまったなあ。

 

「コナンくん、朝ごはんを……コナンくん?」

 

じいっと、コナンくんが写真立てを見上げていた。プロゴルファーの辻さんのサイン付きの写真だ。直筆サインが入ったそれを、真剣な表情のコナンくんの瞳に写っている。

 

「何に気がつきましたか」

「辻さんの名前に数字の十が入っている!」

「わかりました。すぐに連絡して合流します。父さんへの連絡はコナンくんが。私は警部に連絡します。当然、一緒に来てもらいますよ」

「ああ!」

 

辻さんはヘリコプターの操縦を嗜んでいる。もし操縦中に何かあったとして、対処できるほど操縦に成熟しているのは警察探偵その他関係者含めて、コナンくんだけとなる。年齢に関係なく、とにかくコナンくんはいた方がいい人材だ。

すぐに服を着替えて上着を羽織り、バイクの鍵を持って探偵事務所から飛びだした。エンジンをかけて、コナンくんがヘルメットを被って私にしがみついたのを確認する。

 

「そうだコナンくん、昨日の話ですけど」

「……ああ」

「考えたら、私、当事者の父さんにも母さんにも話を聞こうとしてなかったんですよね」

「へっ。ああ、確かに」

 

私はあくまで傍観者。撃ったのは父さん、撃たれたのは母さん。そして、今の私は昔より成長しているし、物事を理解する力も発達している、と思いたい。

 

「第三者が諸々煮詰まったってどうしようもないじゃないですか。特にこんな事態が起こってる最中。だから、今回の連続殺人が解決して、母さんの身辺も落ち着いたら、改めて話を聞いてみようと思います。それまで保留です」

 

バイクを発進させる。受けた風は朝方ともあって少しばかり肌寒く感じられた。それがむしろ、昨日散々ぐるぐる回った思考が冷えたように感じられて心地いい。

そうして到着した先でコナンくんはこっそりと辻さんの運転するヘリコプターに乗り込み、そしてそのヘリコプターはコナンくんの機転により帝丹小学校のグラウンドに墜落した。いやー、念の為コナンくんを運んでおいて良かった。ファインプレー過去の自分。そして、MVPコナンくん。

 

「はやく、犯人捕まってくれないかなあ」

 

ヘリコプターを落とすとか、周囲の被害が甚大に過ぎる。父さんだって身も心も休まらない。いつもの日常が恋しくなってきたので、両頬を打って気合いを入れ直した。一番の安全圏の私が揺らいでどうする。

 

「よし!」

 

父さんとコナンくんのサポート、頑張るぞ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。