成り代わり娘の原罪   作:サブレ.

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第十二話:14番目の標的【2】

海洋娯楽施設アクアクリスタル。全体的に豪奢と言える巨大な建物に沢木さんと行ってみたら、そこには同じく旭さんに呼び集められた人たちが揃っていた。全員で合流してモノレールに乗ってアクアクリスタルへ。

沢木さん含め集められた四人は全員名前に数字が入っていたので、多分村上丈の関係者だろうな、というところで警護のためみんなで飲み物を飲みながら説明タイム。名前に数字の、共通点があることも再確認した。

 

「……………」

 

さて、江戸川コナンの『戸』に漢数字の一が含まれてること、言うべきか言わないべきか。言ったらコナンくんは唯一の小学生なので警護の度合いが高くなる。しかし、犯人がこの話を聞いてて、なおかつコナンくんをまだ標的に含んでいなかった場合、下手に口に出すことで標的に巻き込む可能性もある。

 

「どうした、桔梗」

 

父さんが私を覗き込んできた。考えてる時間はない。すぐに返答を口にする。

 

「いや……この中で私とコナンくんだけ、数字ないなと思っただけです」

「だからと言って油断するなよ。相手は殺人犯なんだからな!」

「はい、胸に刻みます」

 

とりあえず、こうしとこう。

しばらくワイワイしてたら、フォードさんがテーブルの下から紙を拾って見せてきた。ワインセラーからワインを飲んでていいよと言う旭さんからの伝言だったので、みんなでワインセラーを見学に連れ立って行く。そこで沢木さんがボウガンで撃たれかけた。ギリギリかわしたのでセーフだったけど、沢木さんの数字は8。

9をすっ飛ばしてるな、となった直後に旭さんの死体が発見された。

そして、アクアクリスタルのあらゆる脱出手段が封じられていることが判明する。

まずはここから出よう、ということで私とコナンくん、7の小山内奈々さんが念の為残される。まあ妥当だな……あ。

 

「コナンくん非常口探しに行かないで戻ってきなさい」

「えー」

「えーじゃなくて。私は近距離戦闘専門なので中距離で犯人取り押さえられるコナンくんいなかったら割と困ります」

 

あとコナンくん、1があるから離れられたら危ない。

そもそも陸の船なんて形容される八極拳、中国の武術の中でもかなり近接に特化してるので、ボール蹴って倒せるコナンくんの存在は割とありがたいのだ。その分技の破壊力は高めだけど。

コナンくんの手を引いて奈々さんのところに戻ろうとした瞬間、灯りが全て消えて真っ暗になった。

 

「停電?」

「何、なんなの!?」

「っ、マニキュア!?」

「夜光塗料!」

 

まずい、奈々さんがパニックになった。真っ暗で何も見えない。追いかけようとした途端、大きな悲鳴を上げて奈々さんが倒れる。

電気がついて、奈々さんが亡くなっている姿が目の前にあった。

くらり、と眩暈がしそうになったけど、直後にコナンくんが手を引いたのでついていく。奈々さんを守れなかったことを、責める様子はない。

目暮警部たちが対応する中、コナンくんに導かれるまま着いていく。

 

「何に気がつきましたか?」

「まず、村上は左利きだが犯人は右利き。よって村上は犯人じゃない。それから俺が床に置いたジュース缶を逃げる犯人が蹴った。足元にシミがある可能性が高い」

「なるほど。この集められた人間の中に犯人がいて、ジュースのシミが足元についていればほぼ確実に犯人であると」

 

相変わらず高い洞察力だ。コナンくんを連れて元の場所に戻り、さりげなく全員の後ろに立つ。やはり、犯人に目星は付いたようだ。頭の上で繰り広げられる会話に耳を傾けつつ、コナンくんの次の動作を待つ。

 

「カマでもかけますか?」

「ああ、そうだな……」

 

+++++

 

「皆さん、ミネラルウォーターをお持ちしました。一度一息つかれてはどうでしょう」

 

普段からお茶出ししてる私の言いくるめを見よ。全員にコップに入れたミネラルウォーターを配っていく。最後にコナンくんと私自身も手に取って一息。なんだかんだ私も緊張していたようで、水が美味しい。

さて、コナンくんは目的を達成したようだ。あとは何かを探し始めたコナンくんを、さりげなく自分の体を使って他の人からの視線の盾になる。どうやら納得いくだけの成果は得られたようでなにより。

そう思った瞬間、爆発が発生。一度は電気が消えた程度だったけど、二度目は窓ガラスが爆破されて海水がなだれ込んできた。驚く間もなく水の流れに押し流される中意識を保ち、なんとか上に這いあがろうとして、何かに阻まれた。

見下ろせば、自分の足が飾られてたフェラーリに引っかかっている。

……マジか。

血の気が引くとはこのことか。慌てて脱出しようとしたけど、呼吸が続かない。苦しくて力も入らずに、視界がブラックアウトした。

 

 

酸素が取り入れられた感覚で目覚める。まだ水の中だが、コナンくんがペットボトルで空気を持ってきてくれたらしい。そのコナンくんは車をなんとかしてくれようとして、私と同じように足が引っかかったけど。

やれやれ、ミイラ取りがミイラになるとはこのことか。けっこう猪突猛進だよねコナンくん。

そのまま顔を引き寄せて、唇を重ね合わせる。人工呼吸で空気を送り込む。幸にして、さっき空気をもらったばかり。

生き残るべきは私じゃなくて工藤新一の方だ。

コナンくんが目を開けたのを確認して、そのまま再び意識を失った。

 

+++++

 

あのあと、コナンくんが車を持ち上げてくれたことで体が浮いて、父さんに回収されてなんとか死ぬのは免れた。本当にありがとね。

でも二回も意識を失ったからか、異様に身体がだるくて力が入らない。アクアクリスタルからなんとか父さんに連れられて脱出したあと、自力で立つこともままらないほどだ。ぼんやりしてたら、白鳥刑事に横抱きにされてベンチに座らせてもらう。

疲れた。コナンくんは全部わかったようなのであとは諸々任せよう。犯人も探偵も警察もいるなら私要らないでしょ。

 

「まだ眠っているはずだ。あなたのポケットにその柄と同じ使い残したスペードのエースが!」

 

なるほど、江戸川コナンに1があるって指摘しなかったのは正解だったか。よかった。

私が工藤新一の足を引っ張るのが、一番、恐ろしい。

沢木さんがトランプをポケットから取り出して投げつけたのが、私の腕にぶつかった。犯行を認め自白する沢木さんの言葉が耳に流れてくる。

ぼんやりしていたら、腕を誰かに引っ張られて勢いで無理やり立たせられる。そのまま屋上に連れて行かれて、首元にナイフを突きつけられた状態で盾にされた。耳元で怒りと憎悪に身を任せた沢木さんが叫んている。

……そうか。そんなに困ってたのか。なのに話しかけることもせず、気づくこともできず。けど、喉を震わせることも気だるくてできない。そのままぼんやりと身を任せた。

 

「……あ」

 

揺れる床の中、沢木さんが拳銃を捨てるように命令する。コナンくんが、白鳥刑事の捨てた拳銃を拾って、持ってくるのではなく安全装置を外した。銃口が私を狙っている。

 

「ふは」

 

思わず笑った。その真実も暴いて教えてくれるのか。

やはり工藤新一は、稀代の名探偵のようだ。

そのまま銃弾は私の足を掠めて、ついに立っていられなくなった体は地面にくずおれる。そのまま地面に横たえられて、斜めのアスファルトをずるずる滑り落ちていくところを、コナンくんがなんとか掴んで引き留めてくれた。

お礼を言いたいけど、ダメだ口が動かない。

後で、たくさんありがとうをしないとね。

父さんが、母さんを撃ったのは、足を怪我させて人質としてのメリットを失わせるためだったなんて、私一人だと気づかなかっただろう。

 

 

こうしてアクアクリスタルから脱出を果たし、私は救急車で搬送、入院して帰ってきた。

父さんと母さんの仲は相変わらずだけれども、これも日常、ということで。

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