成り代わり娘の原罪   作:サブレ.

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第十五話:世紀末の魔術師【1】

「大阪でインペリアル・イースター・エッグを使ったビッグジュエルショー?」

「そうそう!もちろんおじさまもガキンチョも来るわよね?」

「行くと思いますが……インペリアル・イースター・エッグ、ビッグジュエルじゃないですよね?」

「そうね」

「でもビッグジュエルショー?」

「番外編みたいなもんよ」

 

それでいいのか鈴木財閥。まあタイトルいきなり変えたら混乱するし、やってることが宝石以外のものに変わっただけだからね。ちなみに今回は全面協力とはいかないまでも、本物の警察官が訓練も兼ねて警備隊に参加するそうで。

ビッグジュエルショーもだんだん規模がおっきくなっていく気がする。

 

「桔梗も来るでしょ?」

「もちろんです」

 

大阪といえば平次くんだ。和葉ちゃんも一緒に違いない。久々に会えるのは楽しみだ。

それにこれまでは海に行ったりはしたけど、基本的に関東圏でのショーだったし、西日本でやるのは初めてだから興味もある。

帰ったら、カレンダーに丸をつけておこう。

 

+++++

 

やって来ました、大阪。予想通り、今回は警備隊陣営として平次くんも参加するらしい。なら私は一観客でキャーキャー言わせてもらおうかな、コナンくんの足は平次くんに任せよう。

インペリアル・イースター・エッグ(今回のショーでの呼称は予告状からメモリーズエッグとなる)はつい最近になって鈴木財閥の倉庫から発見されたものなので、鈴木財閥の美術館で展示する前に宣伝を兼ねてショーに使うことになったという経緯がある。

なお、今回も暗号文がコナンくんと平次くん宛に送られてきているのだが、前半の日付の部分は二人揃って解いていた。あとは後半部分を解くだけ、らしい。暗号文を解かないと参加もできないとは恐ろしいショーだ。

リムジンで大阪市内を走り鈴木近代美術館へ。既に警備隊が配置されている物々しい雰囲気の中、バイクで平次くんと和葉ちゃんが合流。これで役者は揃った、ってやつかな?

 

「平次くん和葉ちゃん、お久しぶりです。こちらは我が親友(マイフェアレディ)の鈴木園子ちゃん」

「どうぞよろしく」

「なんや、ずいぶんギザな言い方するんやな」

「事実なので」

 

お互いに挨拶をしてから会長室に案内される。そこには複数名の客人が不機嫌そうに集まっていた。メモリーズエッグの所有権の関係者であるらしい。つい最近見つかったばかりのメモリーズエッグ、ショーに使われると聞いて苛立ちもあるのかもな。

ちなみに園子ちゃんのお父さんの横には、チーム怪盗キッドのマネージャーの藤代紫苑さんと、警備隊隊長の萩原研二さんが揃って立っていた。

 

「よお、よく来てくれたな。西の高校生探偵は初めまして」

「初めまして、服部平次くん。チーム怪盗キッド代理人(マネージャー)の藤代紫苑と申します。此度はよろしくお願いしますね」

「萩原さんに、紫苑さん」

「服部平次や、よろしゅうな」

 

メモリーズエッグの所有を目論む複数人のその横で、ショーの関係者である萩原さんが平次くんと握手をした。そのまま流れるようにむにーっとほっぺを引っ張られている。ビッグジュエルショー参加者の宿命だ。紫苑さんは父さんと挨拶をしている。紫苑さんちっちゃいし童顔だし、何歳だマジで。

 

「怪盗キッドはもう動いてるんですか?」

「K氏、J氏共に現地入りは既に終えている、とだけお答えしましょう」

「K氏とJ氏?って、なんなん?」

「怪盗キッド役の方の名前がK氏、アシスタントがJ氏。匿名なのでイニシャルでやり取りしているそうです」

 

父さんと紫苑さんがそんなやり取りをしている横で、私も和葉ちゃんの質問に答える。まあ私とコナンくんは怪盗キッド役が黒羽快斗って知ってるんだけど。

メモリーズエッグの商談関係は後日、ということで映像作家も含めて今日のところはお帰りいただいた。その後に改めてメモリーズエッグを直接見せてもらう。緑色のエッグは外装が外れるようになっていて、中には金色の家族の模型が埋め込まれていた。はえー、と素直に感心する。

インペリアル・イースター・エッグの解説を聞いたり、萩原さんが平次くんを含めた今後の作戦の打ち合わせをしたり。平次くんに化けられた際の行動パターンも作ったり符牒を決めたり大忙しである。毎回変装対策取らないといけないの大変だなあ。でも、とりあえず話はまとまった。収録は夜だし、一旦解散。

と思ったら、コナンくんが

 

「あの、紫苑さん」

「どうしましたか」

「その、蘭さんは来てないの?」

 

おお、滅多に見れない緊張モード工藤新一だ。そういえば藤代蘭さんを連れてくるってこの前言ってたな。律儀に覚えているあたり、コナンくんがどれだけその人に逢いたかったかわかるというもの。

 

「なあ、蘭って誰や?」

「コナンくんが過去に一目惚れした女性ですね。チーム怪盗キッドマネージャー藤代紫苑さんの妹さんですので、今日は大阪に来てないのかと期待しているようです」

「なるほど……」

「へえ、このマセガキも可愛いところあるんじゃん」

「あの工藤がなあ……」

 

和葉ちゃん、園子ちゃん、平次くんの三人が一斉に、温度差はあれど面白いものを見る目になる。わかる。

紫苑さんはこの前の約束を思い出したのか、あーと唸ってから少し目を泳がせた。

 

「ごめんなさい。本日は蘭は留守番です。末の妹が直前に熱を出したので」

「えー!」

「病院は連れてったの?」

「ただの興奮とのことで、解熱剤飲んで寝てれば治るそうです。なので任せました」

 

責める温度はないが、明らかに残念がっている声色に私を含めた高校生四人が笑いを堪えた。萩原さんが、じゃあお土産奮発しないとねーなんてのんびりした笑顔で言っているが、コナンくんには届いてないなこりゃ。

 

「くっそー!絶対キッドを捕まえてやるからな!」

「八つ当たりやんけ」

「頑張ってくださいね。まあ我らの怪盗キッドが負けるとは思いませんが」

 

キッドに八つ当たりするな。

紫苑さんは煽るな。

 

+++++

 

ショーに参加するのは探偵組だけなので、私たちは昼間は適当に観光したあと、巻き込まれないようにホテルに退避。毛利と鈴木特権で、警備サイドの無線を聞けるようにしてもらったので、最前線の緊迫感あるやり取りが聞けるようになっている。

お喋りしていたら、無線の向こう側が騒がしくなった。コナンくんの声や平次くんの叫び声なども入ってくる。

 

「来たわ、キッド様よ!」

「平次ー!負けたらあかんで!」

 

聞こえないとわかっていながらも、通信の向こう側に声援を送る。そっと窓から外を伺うと、警備員で押し留められているが野次馬となった群衆がキッドコールをしている。

元々今日収録が行われること自体は公表されてたので、ファンが集まってきたのだろう。このファンの群れすら利用するのが怪盗キッドなので、萩原さんは頭を痛めてそうだ。

しばらく夜空を眺めていたら、目に痛いほど真っ白な影が空に躍り出た。何かを掴んでいるので、おそらくメモリーズエッグの奪取に成功したのだろう。

 

「あ、怪盗キッドが空を飛びました!」

「本当!?」

「こっちです、こっち」

 

園子ちゃんを手招きして、ガラス越しに指をさす。悠々と空を舞う大きな白い鳥を思わせる姿に、園子ちゃんが再び黄色い悲鳴をあげた。和葉ちゃんも思わずといった様子で感嘆の吐息を漏らす。

しかし次の瞬間、怪盗キッドが何かに弾かれたようにバランスを崩した。そのまま翼をもがれた鳥のように、重力に逆らえず落下していく。

 

「……あれ?」

 

ザザ、と無線の向こう側の空気も変わったのを感じ取った。何か重大なアクシデントが起こったことは明白だった。

 

『こちら藤代紫苑。怪盗キッドにアクシデント発生を確認しました、ただちに収録を中止してください。繰り返す、収録中止!』

『こちらJ。怪盗キッドが何者かに狙撃された。通信傍受の危険性を鑑みて、怪盗キッドの現在地の座標開示は控えさせてもらう。これよりKの身柄保護に向かう!』

『こちら萩原研二。警備隊は見物人及び関係者の安全確保を優先。大阪府警に検問要請!』

『こちら江戸川コナン。今は服部平次と一緒にバイクでキッドの移動経路を追ってる。狙撃犯の狙いはメモリーズエッグの可能性が高いと思うよ』

 

警備隊は一部の警察官も参加してるし、コナンくんや平次くんや父さん、そして中心メンバーも事態を把握している。混乱はいずれ収まるだろう。

狙撃手による急襲という形で、今回のビッグジュエルショーは思いもよらない幕引きとなった。ああ、びっくりした。

黒羽くん、大丈夫かなあ。

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