成り代わり娘の原罪   作:サブレ.

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第一話:他人の後頭部を強打するな

江戸川コナンくんが居候として加わった数日後、沖野ヨーコちゃんが毛利探偵事務所に依頼にやってくるというとんでもミラクルが発生した。マジかあ、びっくりだよ。

依頼内容は探偵事務所としては定番とも言える、ストーカー関連。横を見るとコナンくんがウズウズしている。わかりやすいなあ。

 

「父さん、ついて行っていいですか?」

「あん?」

「ストーカー関連なら、一応は女性の私もいた方がいいかなと思うのですが。あと、小学生一人で留守番するのもなんなので、コナンくんも一緒でいいですか?」

「それもそうだな……邪魔はするなよ!」

「はーい」

 

コナンくんを向いてアイコンタクト。これで二人とも着いていける。

で、家に行ってみたら背中に包丁を突き立てた死体が発生していました。

鼻腔を血液特有の匂いがくすぐる。脳内はパニックになってるはずなのに、一周回って冷静だ。

 

「父さん、私の方で警察呼びますね」

 

返事を待たずに電話機のボタンを押す。このことは内密に、とか言ってるけど無理でしょ。殺人事件なんだから。

まずは警察呼んで、初動はこれでよしと。あとは……どう立ち回るのが正解なんだこれ。小学生の名探偵だなんて相手したことないんだけど。

到着したのは目暮警部だった。父さんがお世話になっております、と一度頭を下げつつコナンくんの紹介も済ませておく。とりあえず私は素人なので警部や父さんの後ろで会話を聞いてたら、いつもの調子で調査を始めていたコナンくんが、父さんに怒られて事件現場から放り出されていた。ポイっと物理で放り投げられたコナンくんを上手い具合にキャッチする。頭をさすっているコナンくんを見下ろして、やっぱり小さいな、と少し場違いな感想を抱いた瞬間、さっきの疑問の答えに辿り着く。

 

「……あー、なるほど」

 

つまり、コナンくんの調査がイタズラと誤認されたりしないように上手い具合にフォローするのが正解なのかこれ。確かに工藤優作さんのネームバリューだの高校生探偵の肩書きだのがない小学生は怒られる行為だなこれ。

とりあえず、現場からはコナンくんを連れて一旦離れる。会話聞かれたら困るしね。

 

「さてコナンくん、何かわかりました?」

「桔梗、ソファの下にイヤリングが落ちているんだ」

「オーケー、私が代弁します……父さん!」

 

コナンくんが見つけたソファの下のイヤリングの存在を父さんと目暮警部に伝達する。物理的な視線の違いを加味して、コナンくんの手柄であることも一緒に含めて伝えれば、よくやったとコナンくんが褒めてもらえた。

ネームバリューや肩書き、実績がリセットされたならばまた一から積み立てるのが一番手っ取り早い。小学生の立場ゆえにその実績が見逃されるならば、高校生の私が間に立てばいい。

急がば回れ、千里の道も一歩から。積立って大事だよね。

 

「で、コナンくんは分かりました?」

「いや、パズルのピースは揃ったが、」

「そうですか。では引き続き頑張ってください」

 

私はそういう証拠集めとか推理はからっきしなので得意な人と警察にお任せしよう。コナンくんの後を追いかけて、ちょろちょろしているのが大人たちの目に入らないように誘導する。

まあぶっちゃけ、沖野ヨーコさんは犯人違うと思う。あと池沢ゆう子も。

と、いうか。

 

「……本当にこの人、知らない人なんですか?」

「へ?」

「いえ、だって。この体格差で沖野ヨーコさんが刺すなら、知り合いそうだなあと……」

 

そこまで口にすると、沖野ヨーコが耐えきれないとばかりに、この死体となった男が元カレだと白状した。よし、証言ゲット。あとはコナンくんが上手い具合に真実へと誘導してくれれば、事件早期解決という奴だ。

と思ったら、コナンくんが父さんの頭を強打して無理やり寝かせて変声器使って推理披露してた。

 

「こんのバカ探偵……」

 

いや、確かに推理の説得感が一番出せるのは私よりも父さんだろうし、まどろっこしく誘導するくらいなら自分の推理を披露した方が早いと思うよ。その点は同意する。

だからと言って後頭部に物をぶつけるな。

ちなみに、肝心の真相は自殺だった。最初に部屋で死体を見た時に“突き立てられた”ではなく“突き立てた”と思ったのは正しかったらしい。交際をマネージャーの手で破局させられた元カレが復縁しようとした結果、色んなものがすれ違った末の顛末らしい。

人の愛って、人間を救いもするし壊しもするんだね、勉強になったよ。

 

「では、今日はもう夜遅いのでコナンくんを連れて一度帰ってもいいですか?事情聴取などが必要であれば後日ということで」

 

推理ショーが終わったのでコナンくんを回収。事件の真相も分かったし夜も遅いし、あとは父さんに丸投げしよう。幸い、私の主張は目暮警部にももっともだと受け入れられたので

と、いうか。

 

「さて、コナンくん。父さんや目暮警部の許可も降りたことですし、一度お家に帰りましょうか?」

「あはは……」

 

私の怒りに気付いたのか、コナンくんが逃げ出そうとするが腕をしっかりとわし掴む。残念ながら純粋な腕力や握力では工藤新一時代から私が上回っていた。ガメラ呼びされたこともあるのが懐かしい。

そうして先んじて帰ってきたので、父さんの後頭部に物をぶつけた件についてはしっっっかり言い含めさせてもらった。流石にこれは看過できないからね。

 

「……事態が逼迫している以上必要なのは理解します。ですが流石に乱暴すぎます。もっと穏やかな方法を考案できるまで私から新一くんへの協力は取りやめる次第です。場合によっては阿笠博士に突き返します」

「悪かったよ」

「それだけですか???」

「ごめんなさい」

 

謝罪が聞けたので、まあ良しとするか。

流石にコナンくんとしても、毎回父さんの頭に物をぶつけるのは非効率的だと判断するだろうし……と思ってたら、時計型麻酔銃とかいうものを手に入れてきた。これで父さんを眠らせて推理を披露させるというメソッドが確立していくことになる。

父さんが毎回後頭部強打する羽目にならないようで一安心だ。

 

 

「まあ、毎回ずっと父さんを眠らせ続けるわけにもいかないので、なるべく江戸川コナンくん自身の実績を積み重ねて、影響力を持ちたいところではありますね」

「そうだなー……」

 

高校生探偵の頃の自由さを思い出しているのだろうけれど、今の彼は工藤新一ではなく江戸川コナンなので仕方ない。小学生と高校生の活動範囲ってだいぶ違うしね。

まあ、脚くらいにはなると決めているので。幼馴染が困ってるのに放置できるほど薄情な性格はしていないはず。

たぶん。

 

「では、江戸川コナンとしての存在強度と実績の積み重ねのためにも、小学校頑張ってくださいね」

「オレ高校生なんだけどな……」

「江戸川コナンくんは六歳です。阿笠博士が色々準備してくれたのを受け取ってきてますよ」

 

大人には教育を受けさせる義務というものがある。

別に代わりたくもないので応援だけしておこう。がんばれ。

 

 

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