黒羽くんにお礼代わりに依頼した腕時計の鑑定結果、特になにか仕掛けられている訳でもないただの腕時計らしい。ちなみにイミテーション、つまり偽物なので多少雑に扱ってもいいよとのこと。流石に何百万の物を持ち続けるのは恐ろしかったので、そこはちょっと安心。一応裏面の刻印も読んでみれば『I hope you stay well forever.』なんてありきたりの文言だ。
なんでピスコが私にこれを渡したのか謎は残るけど、イミテーションだから購入履歴から探ることも不可能。組織を探る当てとしては全く機能しないので、そのまま私が持ってることになった。
コナンくんは手掛かりが使えないと知って地団駄踏んでたけど、気持ちは分からなくもない。
そのしばらく後、コナンくんが洞窟で腹を射抜かれて病院に担ぎ込まれたり文化祭で事件が起こったりなんだりあった。いやー平次くんがいなかったらまた私が推理ショーやることになってたよ。ありがとう平次くん。平次くんは頼りになるなあ。
コナンくんは少し自重とか慎重とか覚えてほしい……でも動かなくなった結果、優作おじさんみたいに安楽椅子探偵される方が腹立つような。
まあ元々有希子おばさん似みたいなところあるしなあ。優作おじさんの性格に似たら、は?ってなるのかもしれない。
「新一くんはこのまま真っ直ぐに育ってくださいね」
「は?」
+++++
最近、新しい英語の先生が着任した。帝丹高校は、あけすけに言ってしまったら金のある私立なので結構自由なところがある。ゲームセンターで園子ちゃんとコナンくんと遊びながらそんな話をしていたら、噂をすればというやつか、例の新任英語教師、ジョディ・サンテミリオン先生が高難易度のシューティングゲームで高得点を叩き出して喝采を受けていた。
アメリカ出身だからこういうのも強いのか。
意外にやりこんでいるジョディ先生のおすすめで、グレートファイタースピリットというゲームをやることに。なんでもこれ、ダメージが装着した機器を通してプレイヤーに伝わってくるタイプのバーチャルファイティングゲーム、らしい。
「先に言ってくださいよ、びっくりしますので」
文句を言いながら、適度に腕を動かして相手をぶちのめした。いやあ、自分からやるゲームではないけれど、試して見たらなかなか楽しかったかもしれない。
「やりました。勝ちです」
「やったー!すごいじゃん!」
園子ちゃんが褒めてくれたのでありがたく受け取っていたら、ジョディ先生も褒めてくれた。しかし、画面に映し出された乱入者にはあっという間に負けてしまった。
「やっぱり、その道のプロには敵いませんね」
「悔しいけど、やっぱり強かった?」
「ゲームである以上、私の知ってる動きとはやはり違いますね」
乱入者はガラが悪かったので絡まれないうちに早めに退散した。ゲーセンにも派閥争いとか権威争いがあるらしい。治安悪いなと思わなくもない。
なおジョディ先生は普通にこの後レーシングゲームでやっぱりハイスコアを出していた。この先生運転も派手そう。
レーシングゲームの横で、私に乱入してきた人がもう一人の方と対戦を始めて、それが大きなスクリーンに映ったものだからつい目で追ってしまう。
と、思ったらさっきのガラ悪い乱入してきた人が死んでいた。治安が悪いゲーセンにも程がある。
駆けつけてきたのはお馴染み目暮班だった。ざわざわと野次馬が集まってくる。これは、今日も私が推理するパターンか。何回かコナンくんの代わりに推理したおかげで、“あの毛利小五郎の娘”としての知名度がそこそこあるのだ。
別に私は探偵になりたい訳ではないのだけど。早く新一くん元に戻って推理による知名度一手に引き受けてくれないかなあ、と毎回思う。
「コナンくん、大丈夫そうですか?」
小学生に寄り添うフリをしながら、捜査や推理、それらの進捗や手間取ってる部分がないかを確認。それと並行して私自身も、推理につながるかどうかも分からない違和感がないかざっくりチェックする。判断は警察かコナンくんに丸投げすればいい。
周囲を軽く歩き回るコナンくんの後について歩く。それからもう一度しゃがみ込んで、まずは犯人と物証を教えてもらい、イヤリング型携帯電話を借りた。さっと耳につけて準備完了。
さて、早くこの事件を終わらせてしまわねばなるまい。
「目暮警部、犯人わかりました。推理を聞いていただくことは可能ですか?無論、物証も存在します」
まずはこの現場の責任者たる目暮警部に報連相。許可を取ってから、推理を披露する。どうやってテトロドキシンを被害者に投与したのか、その犯人。死亡時刻を偽装したそのやり方まで。たまにコナンくんにお手伝いという名の修正やアドバイスを受けるのも忘れない。
うーん、何回やっても自分の意思で推理を披露するのって難しい。眠らせて勝手に終わらせて欲しいと思わなくもないけど、コナンくん私の時は口パクも眠りの名探偵もやってくれないの何故だ。
「犯人は、貴方です」
やはり、こう突きつけるのは慣れない。でも、犯人が認めなければならない現実でもある。警察や探偵が真実にたどり着くいつかは、必ずやってくるのだから。今回たまたま、私がその役目を負っただけのこと。
まあ、人生やりたいことだけやって生きていける訳じゃなし。慣れないけど割り切りはできてるので、探偵というか“真実を突きつける役目”自体の適性はあるのだろう。
そんな自己評価を下しつつ、事件は解決。犯人は連行されていった。
ちなみに、動機は妹のため。一人っ子だからか微妙にピンとこないけど、多分これは私が人生経験まだまだのひよっこだからだろうな。
世の中には妹のためなら命も惜しくない兄貴や姉貴がいるのだなあ。
「桔梗〜!やっぱりアンタすごいわ!新一くんも顔負けじゃない?」
「園子ちゃん、それは絶対にあり得ませんので強く否定させていただきます」
並んで帰りながら褒め称えられるという、ちょっと居心地悪い家路となった。
心から、あの推理オタク名探偵と並べないでほしいと切に思う。いや、肩を並べてサポートするのはやぶさかではない。しかし競い合うつもりは全くない。新一くんは選手、私はマネージャー、そういう感じで頼みたい。競い合う相手なら、探偵なら平次くん、怪盗なら黒羽くんがいるんだから。
「oh!謙虚なのですねー桔梗!日本人の美徳デスか!」
「いや、謙虚じゃなくて事実です」
そんな感じで褒め称える二人をなんとかいなしながら、駅までたどり着いた。テンション高いのは別に嫌じゃないんだけど、こう推理関係で褒め称えられると妙にむず痒いのは何故だ。
こういうところは父さんと似てないんだよなあとひしひしと感じるところである。