毛利小五郎が名探偵としてもてはやされるようになり、依頼もぼちぼち舞い込んでくるようになった。ついでにコナンくんは少年探偵団とやらになった。
探偵増えたねえ。この町の事件の発生率を考えたら仕方ないのか?でもこの前園子ちゃんの別荘にお呼ばれしたときは米花町じゃなかったよなあ……襲ってきた犯人その場で叩きのめしたのは良い思い出だ。体格って案外簡単に変えられるものなんだね。
そんな感じでポアロでまったりしながら最近の事件を回想中。コーヒー美味しい。
「おい、桔梗。コナンの母親が事務所に来たから戻ってこい」
「……はい」
なんかすごく嫌な予感がビシバシする。
父さんに言われて、コーヒーを一気飲みして二階の事務所に行くと、確かに江戸川コナンくんのお母さんが待っていた。コーヒータイムが……。
私の立場としては反対とか違うとか言い出せないし、これどうしろと?視線で助けを求められてるけど、結構無理難題なんだけどどうしましょうかこれ。
とりあえず視線で、引き取られておけとアイコンタクト送っておく。ここで私が反論してもコナンくんと離れがたい女子高校生以外の何者でもないんだ、ごめんな。
とりあえず見送って、一度ポアロに戻る。ツーリング用の装備を整えた。バイク、強請っておくものだな。
「父さん、寂しさ紛らわせたいのでツーリングしてきまーす」
「気をつけろよ」
じゃあやるか……。
まあコナンくんのことだから、一旦脱走して阿笠博士の元に向かうくらいはするだろう。なので一度先回りして、遠くから阿笠博士の家を張っておく。張り込みは根気と積み重ねって父さんも言ってた、気がする。
待つことしばし、コナンくんが阿笠博士のところに逃げ出してきて、さっきの江戸川文代さんに誘拐されていった。これフツーに誘拐事件だと思うんだけど、毛利探偵事務所のやり取りで江戸川文代=江戸川コナンの母って証明されちゃったようなものだからなあ。
車に乗せられたコナンくんをバイクで追跡。あー、追跡メガネ欲しい……作ってもらおうかな今度……。
結論、連れ込まれたのはボロ屋でした。
もうさっさと制圧して良いかなあ。でもその前に江戸川文代さんと、彼女と一緒にいる仮面の男の正体暴いておかないとコナンくんに怒られそうなんだよなあ。
だめだ、ビミョーにやる気出ない。この感覚どっかで覚えがあるようなないような。父さんにはノリで遠くまで行きすぎたので一晩泊まって帰ると連絡済み。過去に同じことをやらかしてて良かった。
夜までその場で待ってみたけど、向こうの動きはなし。てか仮面つけたまま寝るって器用だね。
仕方ない、動くか。
「風邪引いたらお見舞いせびってやる」
ぐるりと周囲を警戒して、二人組のいる部屋を特定、そのまま窓を破壊する勢いで殴り込みをかけた。男の方に奇襲の勢いで肘打ちを腹に叩き込む。そのまま起きた女の人にも足払いをかけてから掌底を打ち込む。
……一応加減はしてるから。ちゃんと。
心の中で言い訳をしながら仮面を剥ぎ取り、マスクを剥がす。
ゲホゲホ咳き込んでるけどしるか。というか、やる気出なかった理由がわかった。
「……お久しぶりです、優作さん、有希子さん」
とりあえず呼吸整うまでにコナンくん連れてくるか。
+++++
「容赦ないな、桔梗くん……」
「しましたよ容赦」
近場のホテルに移動して家族会議with毛利桔梗開催。わーパチパチ。嬉しくない。
というか私の扱う八極拳は、技の射程が超至近距離である代わりに武術の中でも頭ひとつ抜けた威力を誇る。それを戦闘に慣れてない人に容赦抜きで放ったら人体が壊れてしまう。
コナンくんはめちゃくちゃ拗ねてるけど、拗ねたいのはこっちの方だ。外で何時間待たされたと思っている。
ちなみに二人が私の奇襲をモロに受けたのは、スナイパーばりに動かず気配を消してたのでまさか待機してたとは考えなかったかららしい。
忍耐と積み重ねって大事だね。
「いつから気付いてたの?」
「さっき変装剥いだあたりですね。やる気出ないなーとは思ってましたけど」
私は探偵じゃないんで、真実の探究とか割とどうでも良い。ただ工藤新一がピンチっぽかったんで助けに来た一介の幼馴染である。
ちょうど良い訓練にもなったし、課題も見えた。犯人追跡メガネほしいなとかは今回の件がないと思わなかっただろうし。
話を聞く限り、阿笠博士も共犯らしい。じゃあ私にも教えてよ……いや、これ私を巻き込むなよっていう警告も兼ねてたのか。
いや、言えよ。私は推理とか苦手なんだよ工藤家のコミュニケーションを基準に巻き込むな。
「桔梗くんは、私の闇の男爵シリーズ読んでないのかい?」
「読んでますけど……あーだから、そんなにやる気出なかったんですかね」
コナンくんと並んでジト目で夫婦を観察してしまう。大概愉快犯だと思うんだこの二人。
「さて、説得力が無くなってしまったが……新一に桔梗くん、外国に行かないか?」
「へ?」
なんで私も。と思ったら、例の組織から身を守るために日本を出ないかというお誘いだった。私は優作さんの誘いによる留学という形で。まあこの人のことだからコネクションは山ほどあるだろうし、父さんの説得もしてくれるんだろう。語学だって、一応英語はそれなりに修めているし。
なんでかって、大財閥令嬢と天才児を幼馴染に持ったらスペック高くならざるを得ないんだよなあ。
まあ、結論はすでに決まっている。
「せっかくのお誘いですがお断り申し上げます」
「え〜、どうして?」
「今日本を離れたら、取り返しのつかない事態を背負う気がするからです」
いや、違うな。もうとっくに取り返しのつかない事態にはなっている気がする。
なにが、なんて。言葉にはできないし。
私は探偵じゃないから、突き詰めようとも思わないんだけど。
「なので連れて行くなら新一くん一人にしていただきたく」
「オレだってやだね!これはオレの事件だ!オレが解く!父さんたちは手を出すな!」
うん、そういうと思った。探偵ってそういう生き物だ。優作さんも、有希子さんも最終的に息子の気概に根負けしたようで、コナンくんは毛利探偵事務所に戻ってくることに。有希子さんも養育費を渡したことで、めでたしめでたし。
「……なんか、やり返したくありません?」
「同感だな」
意趣返しとして、ありとあらゆる優作さんの出版関係者に優作さんの居場所を二人がかりでリークした。今頃執筆に追われていることだろう。
心持ちがスッキリしたので、途中で切り上げさせられたポアロのコーヒータイムを心ゆくまでやり直した。
食べ物の恨みは深い、思い知れ。今回コーヒーだけど。