工藤新一を探しに服部平次が毛利探偵事務所に押しかけてきました。誰だこの人、そしてすごいなこの行動力。工藤新一なら小さくなってここに住んでるんだけど、言うわけにもいかないし。
探偵って新一くんとコナンくんと父さんしか知らないけれど、高校生探偵ってみんなこんな感じなのかな、知らなかった。
新一くんも好奇心と探究心は異様に強いし体が動くタイプだしなあ。その結果が江戸川コナンなんだけど。
「あんた、工藤新一がどこにおるか知らんか」
「知りませんね」
「気にならへんのか」
「たまに電話くるので生きてるのは知ってますし別に。あのホームズオタク結構生命力強めなので」
森谷という狂気系建築家の時とか、工藤新一として電話かけてきたコナンくんと喋ったりしたこともあるし、物理的にここに住んでいるのは江戸川コナンなので嘘は言ってない。そんな噂をしたらなんとやら、コナンくんが帰ってきた。最近はどうも風邪気味のようなので、今日も少年探偵団とは遊ばずに真っ直ぐに帰ってきたようだ。
「工藤と電話で何話してるん?」
「事件の話とか、ですかね……」
「あんたのことは話さへんのか?幼馴染言うたら、普通は雑談の一つも話すやろ」
「…………」
確かに。墓穴掘った。
あっ痛い。コナンくん私が悪かった平次くんの死角で脛蹴らないで。確かに!って顔しちゃったけど君の演技力だってどっこいどっこいでしょ。
そんな流れで工藤新一が近くにいると確信した、そんな平次くんは高校生探偵であるらしい。工藤新一が東、服部平次が西なのだと。じゃあ北と南と海外代表もいるのかな。
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平次くんと同時にやってきた辻村公江さんという人の依頼、息子の恋人の素行調査に平次くんが付いてきた。そしてコナンくんも。寝てなよと思ったけど平次くんが何言い出すかわかんないから不安らしい。確かに。
そして殺人事件が起こる。いや、なんでこのタイミングで起こるんだ。コナンくん体調最悪なのに。せめてもとコナンくんを抱っこして足代わりになる。定期的に鼻をかませたり、背中を摩って落ち着かせていたけど、流石に限界が来たらしい。
「キツイですか?」
「ああ……分かったぜ犯人が……」
「コナンくんこんな時でも推理やめませんね……一旦離脱しますよ。事件の解決は落ち着いてから方法を考えましょうか」
平次くんもなんか謎を解く鍵を見つけたのか結構な熱量を持って動き始めた。探偵って推理やめたら死ぬのか?マグロなのか?
とりあえず警察官に医者を呼んでもらい、空き部屋のベッドに寝かせた。万が一何か起こった時のために待機しつつ、濡れタオルで汗を拭いたりして看病してるけど、これ見るからにヤバそうな……うん?
「コナンくん失礼!」
直感的に服を一気に脱がせる。裸になったコナンくんが自分を掻き毟らないように、手に自分の手を噛ませて、唇を噛み切らないよう肩に口を当てさせる。一時間は超えたかと思うような数十秒の末に、面倒を見ている小学一年生が、大人を目前にした高校生へと戻っていた。
「……こういうシチュエーション、恋人同士でやった方が良かったんじゃ…………」
「うるせえな……でも、ありがとよ」
「どういたしまして、洋服です。私は外で待機しています。早めに着替えて部屋から立ち去った方がいいかと思うので、急いで」
流石に江戸川コナンがいなくなって工藤新一が現れた、を密室でやってしまったら不味い。幸い、医者が到着した直後だ。一度玄関で適当に話をして時間を引き延ばしてから部屋をのぞけば、コナンくんは居なくなっていた。
さてコナンくんを探しながら、突然現れた新一くんの存在にとても驚かなければ。平次くんに悟られた時のような墓穴は許されない大一番だ。
すう、と誰にも悟られないように一度深呼吸して、コナンくんの名前を呼んだ。
そうして適当に彷徨いていれば、新一くんが謎解きしていた。本当に探偵とは推理しなければ死ぬ生き物だなあ!死にかけながら推理をするな!死ぬぞ!
「新一くん!?」
もう純粋な心配から大声が出てきた。さっきまでの高熱自覚ある?汗がひどいので真っ先に駆け寄って支えてうわ熱い。さっさと推理終わらせろ、と新一くんを支えながら視線で訴えると、新一くんも頷いて推理を始めた。
ちなみに今回の殺人事件の犯人は依頼人の公江さん。そして今回素行調査を依頼した息子の恋人、幸子さんの生き別れた母親なのだと。
ドロドロしてるなあ。というか、母が娘と生き別れるってどんな気持ちなんだろう。そしてそうまでして公江さんを欲しがった辻村勲の執着、怖ぁ……。
そして、事件はとりあえず解決した。本格的に新一くんの体調がヤバめなので、体調不良を言い訳で部屋の外に押し出した上で、トイレかどこかに隠しつつ、平次くんを足止めする。うなれ私の言いくるめ。
この数十秒が効いたのか、新一くんは無事にトイレの中でコナンくんに戻った。セーフ。
……工藤新一から江戸川コナンに戻るって表現として正しいのか?これ。
「コナンくん、心配しましたよ」
じーっと強めに顔を見る。江戸川コナンも工藤新一も等しく心配なんだよこっちは。おいこら、えへへなんて小学一年生の顔で誤魔化すな。こっちは中身が長年の付き合いの高校生だって知ってるんだよ。
「……まず、部屋に戻って着替えましょう。それから、今度こそお医者さんに診てもらって、ゆっくり休みますか」
コナンくんを抱っこする。うん、やっぱりまだ体が熱い。流石に体力が限界を迎えたのか、コナンくんは私の腕の中で体を預けてぐったりと動けなくなってしまった。なるべく動かさないように気をつけながら、借りた部屋にコナンくんを戻した。
お医者さんの診療に付き添いながら、ふっと疑問が湧いた。何でいきなり工藤新一に戻ったんだろう。しかも短時間。
「ま、いいか」
どうせコナンくんが原因推理して突き止めるだろう。私のやることじゃないか。私は医者でも科学者でも探偵でも警察でもないのだから。
私のやるべきことといえば工藤新一の名前を出さないように目暮警部に話して、念のため平次くんの連絡先も交換して、コナンくんが元気になるまでのご飯の材料の買い出しに……。
やること多いな。
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コナンくんは三日寝込んで、四日めにようやく全快した。当然だけど平次くんは大阪に帰っていった。何だったんだ彼。
「それで、いきなり元の体に戻った原因はわかるんですか?」
「多分……あのとき俺は風邪をひいていて、あいつが持ってきた白乾児をもらって、飲んで」
なんつーもん飲ませたんだ平次くんは。そして酒のコードネームの組織は解毒剤も酒なのか?
「とりあえずあのお酒は没収します」
「は?なんでだよ!」
「あのお酒のなにがどう作用したかも分からないのに小学生に飲ませるバカになったつもりはありません」
「オメーそういうところ堅苦しいよな」
「なんとでもどうぞ。緊急事態まで取っておきましょう」
そんな感じで白乾児を没収した少し後、コナンくんは勝手にしまっていた戸棚から白乾児を持ち出して阿笠博士の家でがぶ飲みしたらしい。しかもほんの少しも戻れなかったのだとか。
「くっそー、二日酔いだぜ……」
「自業自得ではありませんか……?」
とりあえず朝ごはんは味噌汁に。学校には行くと主張したのでキツくなったらすぐに早退するよういい含めて送り出した。風邪じゃないから本人の主張を曲げて休ませるのもなあと思う。
とりあえず今日一日は辛いだろうけれどがんばれコナンくん。