成り代わり娘の原罪   作:サブレ.

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第六話:探偵全てがシャーロキアンではないようだ

新一くんがコナンくんになったのは事実としても、正直黒の組織とか会ったことないし実在するのかなあ、と思ったあたりでたまたまテキーラという組織幹部に遭遇、そしてうっかりで爆死させられていた。とりあえず黒の組織は実在することと、所属しているのは間違いなく人間であるというのが判明した。

 

そして今日は、コナンくんが勝手に応募したシャーロキアンが集まるシャーロックホームズフリーク歓迎ツアーとやらに参加中。父さん絶対興味ないだろうなと思ったので、適当に言いくるめてコナンくんと二人で参戦することにした。

私はアガサクリスティ派なので、最初から小学生のコナンくんの保護者役であることを明言してあとは相槌で留めている。なのでみんな和やかに談笑しているけど、定期的に私にホームズを布教してくるのはやめてほしい。あと強いていうならまだらの紐が好き。

そんな感じでペンションに到着、参加者と顔合わせをしたらこの間の高校生探偵服部平次くんがいた。この空間でシャーロキアンじゃないだけで生まれる親近感……!私はアガサクリスティ派で平次くんはエラリィクイーン派だけど細かいことは気にしない。

ホームズの格好をしたオーナーが自己紹介とスケジュールの確認を行う。そして提示される緋色の研究の初版本は、どよめきが起こるほどシャーロキアンにとって憧れの品であるらしい。

 

「本当は毛利小五郎さんもお招きしたかったのですが、どうしても都合がつかず……」

 

別に仕事はなかったんだけど、明らかに興味なさそうだったしメインゲストはコナンくんだし、万が一探偵が必要になってもコナンくんに加えて平次くんがいるなら大丈夫だろう。

ツアー参加者に問題が配られるのを見ながら、こっそり平次くんに話しかける。

 

「平次くんも解かれるので?」

「おう、一夜漬けしてきたで」

「それはお疲れ様です……そんなに新一くんに会いたいんですか」

 

謎を目の前にした新一くん改めコナンくんのアグレッシブさに頭を抱えたり呆れたりしたことは幾度もあるけど、この人の執着もなかなか強い。父さんを除く探偵ってみんなこんな感じなのか?

とりあえず、このホームズオタクというかフリークというかシャーロキアンの巣窟で唯一ホームズに関心が少なくても許される立場なので、適当にやらせてもらおう。平次くんはまあ、がんばれ。

 

「コナンくんも、問題解くのに集中するのはいいですけど適度に睡眠はとってくださいな」

「はーい!」

 

聞いてないなこれ。

 

+++++

 

翌日。

コナンくんは無事に1000問解き終えたらしい。よくやるよ。マニアとかオタクって凄いね。ちなみに平次くんはくたくたに疲れてる上に精神的な疲労も大きい模様。新一くんに会いたい一心でここに来たのに、会えないんだから当然といえば当然か。

君の会いたい人は目の前にいるんだけどなあ、と思いながらツアー参加者の皆様と平次くんの間にさりげなく割って入る。部外者同士仲良くしましょう。

 

「お茶入れ直してきました。お饅頭食べます?」

「おおきに。あんたも大変やなあ」

「平次くんがいなかったら心折れてた自信がありますよ」

 

ホームズに心酔してる訳じゃないのでこのノリが終始続くのは多少キツイ。

 

「ちなみにあんた、推理小説はなに読むん?」

「よく読むと言う意味では工藤優作さんの闇の男爵シリーズを。一番好きなのはアクロイド殺しですかね。アガサクリスティ派ではありますが、それ以外だとエドガー・アラン・ポーの黒猫など?平次くんは?」

「俺はせやなあ……」

 

こそこそ隠れるようにホームズ以外の話をする。いや、ホームズ嫌いじゃないんだけど、甘いものを大量に食べたらしょっぱいものとか辛いものが欲しくなるみたいな……。

そんな話をしていたけど、オーナーは未だ現れない。他のツアー客は日付が変わったあたりで痺れを切らして部屋に戻ってしまった。私とコナンくんと平次くん、大木さんと戸叶さんという二人組だけが残った。

暇だ。オーナー早く出てこい。

 

「もうこれ、オーナーさん探したほうが早くないですか?平次くん、お付き合いお願いします」

「でもこっち来るまで待ってて言われてるやん……」

「心筋梗塞、脳卒中……なにが原因で倒れてるかわかりません。そういったトラブルでなければ、それでいいではありませんか。精々私たちが最終推理クイズを不合格になる程度です」

 

ホームズオタクでもない私たちにとっては大したダメージにもならない。平次くんにとっても頷ける話だったようで、椅子から立ち上がった。コナンくんは今はツアー参加のホームズオタクなので残していく。何かあっても時計型麻酔銃とキック力増強シューズの二つが揃っているならなんとかなるだろう。多分。

で、手分けして探そうということで、ふと外の車が気になった。何かトラブルで車から出られなくなってたりしないだろうかと。世の中、自宅トイレに閉じ込められる事故もあることだし。

 

「オーナーさーん。いらっしゃいますかー」

 

車を覗き込む。オーナーさんが運転席に座っている。しかもエアコンはつけっぱなしだ。明らかに様子がおかしい。

 

「オーナーさん?金谷さん?」

 

……まずいな。死体なのかもしれない。まだ延命間に合う段階なのか?

とりあえず運転席のガラスをぶち破る。そのまま様子を確認して体を引き摺り下ろそうと体を乗り出したら、後頭部に大きな衝撃が来た。そのまま脳震盪でも起こったのか、ひどい眩暈と痛みで立つことができずそのまま地面にくずおれた。

 

「……!?っづぅ……」

 

ミイラ取りがミイラになるってこのことかよ。現在進行形で死体化目前なの笑えない。そのままぐっと体を持ち上げられて、そのまま外に運ばれる。

こいつぶつぶつ五月蝿いな、声覚えたぞ。

ざざーん、という不吉な音が近づいてきた。

……まじかよ。と思うまもなく、そのまま崖下に放り投げられる。そのまま肉体は、冷たい水面に叩きつけられた。

 

+++++

 

ざざーん、という音で目覚めた。無意識か偶然か知らないけど、崖下にある岩に引っ掛かる形で生還したらしい。

 

「えー……結構、高いなあ……」

 

頭は未だにクラクラする。殴られた場所に手をやったらピリッと結構な痛みが走って思わずうめく。傷口に当てた指を見ると血液で赤く染まっていた。

 

「あの、馬鹿犯人……」

 

とりあえず手を動かす。動く。足も動く。目の前には断崖絶壁が、すなわち壁がある。周囲をぐるりと見渡したら、ペンションの位置からは多少流されていたようだ。遠い。

どれだけ嘆いても、今の状況は変わらない。両手で頬を叩いて気合いを入れ直して、荒れる海に一度飛び込むと少し泳いで、断崖絶壁にたどり着く。

そのまま迷いなく、岩肌に指をかけた。

 

 

数十分かけて、そのまま崖を一気に上り切った。よくやった私、帰ったらお小遣いで高級チョコレートタルトを取り寄せることを許そう。

どうにか道路にまで這い上がる。暇だった道中を思い出す。この地点だと、駅に行って助けを呼ぶよりペンションの方がまだ近い。それにあの犯人、一回文句言ってやらないと気が済まない。

疲労で重たい身体を無理やり引きずって、ペンションまでの道のりを歩く。そして、ドアノブに手をかけた。あれ、念の為インターフォン鳴らした方がいいかな?

とりあえず一回鳴らす。誰も出てこない。おいこちとら怪我人だぞドア開けるくらい助けてくれたっていいだろう。

ドアノブを回す。あ、開いてた?そのまま靴を脱ぐのももどかしくそのまま廊下に上がる。声のする方に向かえば、コナンくんが眠りの服部平次ショーをしていた。犯人は、私を殴り倒した人を指している。

なるべくにっこり笑ってやった。血液と海水で濡れた私はさながら幽霊にも思えるのか、犯人の顔が真っ青だ。

 

「な、なんで……」

「殴り殺されそうになったんです。殴り返したくて戻ってきてしまいました。犯人さん?」

 

声一致。はい、私が証人です。こうして事件は解決した。全く散々なツアーだったよ。

警察と救急車が到着するまで私は濡れた服を着替えて、ベッドに寝かせられた。付き添いとしてコナンくんと平次くんが隣にいる。

 

「姉ちゃん、悪かったな。俺が離れなければ……」

「こうして生きていますし、私の代わりにあなたが襲われていたかもしれない。結果論です。気にしていませんよ」

「工藤も、ごっつ心配しとったで」

「工藤……?」

 

おかしい。今の工藤新一は江戸川コナンだったはず。そういやコナンくんがいやに静かだ。そう思ってコナンくんに視線を向けると、バツが悪そうな顔をしていた。

 

「服部にバレた」

「……あらまあ」

 

正直今は体調がよろしくないので、それしか言えない。でも、悪い人に引っかかってるわけじゃないし、今回のことで反省点が見つかればそれでいい気もする。

その後、救急車到着まで暇つぶしに事件の概要聞いたら、アイリーン・アドラーの解釈違いで殺人に及んだらしい。

オタク、怖ぁ……。

 





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