「なんであなたがここにいるの?」
怪我で休んでから数日後。体調が戻ったのでトレーニングに復帰しようとしてトレーナー室を訪れたアヤベさん。するとそこにはこの前出会った不審者がいたのである。
「お!その様子だと体調、良くなったみたいだな」
向こうはこちらの質問を無視して話し始めた。
「いやぁ、こんなにも早く復帰できてこっちも安心したよ、これでデビュー戦に向けて集中することが…」
「ちょっと待って!」
一旦会話を止めさせるアヤベさん。
「だからなんであなたがここにいるの?そもそもあなたは誰?」
「…あぁ、そういえばまだ紹介していなかったね、自分は認識番号CC-6454、通称ポンズと呼ばれいる君のチームのサブトレーナーになったクローンだよ、アドマイヤベガ」
「何で私の名前を………ちょっと待って、サブトレーナーになったの!?」
「俺が彼になって欲しいと言ったんだよ」
そう言いながら部屋に入ってきたハシトレーナー。スズカとフェイト、そしてもう一人新たなウマ娘と一緒に入ってきた。
「…どうしてですか?」
不服そうに尋ねるアヤベさん。途中から来た三人も気になっていたようでトレーナの方を向く。
「俺は彼に才能があると思ったからだ!」
「…それだけ?」
「それだけ」
「えぇ…」
「嘘でしょ…」
「ヤバくないすか…」
「とんでもないですね…」
その場で教え子四人にドン引きされてしまったトレーナー。助けを求めるようにポンズの方を向くが、
「…まあ、正直に言うとだいぶ博打をしているなぁとは思っていますけどね」
庇ってもらえなかったのである。
「…ま、まあ、そういうことだから一応彼に自己紹介してくれ、じゃあまずはアヤベさん」
トレーナーからの指名にめんどくさそうな顔をするアヤベさん。けれど彼女の性格からこういう場面ではしっかり名乗ってくれて
「…アドマイヤベガ、高等部です、よろしく」
「サイレンススズカです、ベガ先輩と同じで高等部です、よろしくお願いしますね」
「ラピットビルダーです、私は二人とは違って中等部なんでよろしくお願いします」
「アルタイルフェイトです!あたしは先輩たちと違って中等部ですけどアヤベ先輩と一緒にデビューする予定です!よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく頼む」
一通り挨拶が終わり満足したトレーナからの爆弾発言が飛び出てきた。
「よし、それじゃあポンズにはアヤベさんとフェイトさんのデビュー戦を担当してもらおう」
『……え?』
こうしていきなり二人のデビュー戦を担当することになってしまったポンズ。ハシトレーナーはスズカの復帰を担当するので二人に集中してトレーニングさせることができないという理由らしい。ビルダーもまだデビューできるような状態では無いようでスズカのサポートにまわるという。
「二人ともちょっと来てくれ」
グラウンドでストレッチをしていたアヤベさんとフェイトを呼んだポンズ。本人からしたらいきなりとんでもないことを任されたわけだが命令という形で指示を受けているので最善を尽くそうと志した。
「ボスからトレーニング内容は聞いているな。」
「ボス?」
ポンズから飛び出た単語を不思議に思ったアヤベさん。
「ハシトレーナーのことに決まっているだろ?」
「普通に呼べばいいでしょ…」
「いやぁ、上官のことをそのまま呼ぶのはちょっとな」
ポンズの言うことに呆れるアヤベさん。一方フェイトは面白がり
「それ、なんかいいですね!アヤベ先輩もやってみたら…」
「や ら な い」
「え~」
これ以上話してはもっと変なことになってしまう気がしたアヤベさんはポンズに話題をふる。
「それで?トレーナからトレーニング内容は一応聞いてるけど」
「それなら良かった、じゃあそのままやってくれ」
「あれ?サブトレーナーさんからは何もないんですか?」
「今のところは俺からは特にない、ただトレーニングの最中に気になったところは言っていくからな」
そう言ってトレーニングを始めさせたポンズ。
「それじゃあアヤベ先輩!併走しましょう!」
「えぇ、いいわよ」
まず最初のトレーニングは二人の併走からで二人にレースの感覚を掴ませるとともにポンズにもレースとはどんなものかを実感させるためのものである。
「じゃあ俺の合図でスタートしてくれ、距離はコース一周してきてくれ」
二人の準備が出来たことを確認して
「よーいスタート!」
次の瞬間、勢いよく風を喰らうポンズ。間近でのスタートダッシュは体験したことがなかったが迫力が段違いだった。
「これがレース……!」
併走は各々の得意な走りで走っており、フェイトは先行しアヤベさんは追込の形になっていた。
(さすがはアヤベ先輩、後ろからの圧がハンパない、このまま飲み込まれるぐらいなら…)
追いつかれないためにペースを上げるフェイト。一方のアヤベさんは自分の走りに集中できていた。
(まだ仕掛けるのは早い、仕掛けるなら…ここ!)
第4コーナーを回ったタイミングで仕掛けるアヤベさん。その末脚はフェイトを捉えて並ぶことなく追い抜いていき、先にゴールした。
見事先着したアヤベさんだが内容に満足できていない様子だった。一方併走を見ていたポンズは
「いやぁ、実際に見たらなかなか新しい発見があるもんだね」
といって二人の走りの評価を始めた。
「まずはフェイト、君の走りは映像で何回か見せて貰っていたけど今日はちょっとかかってしまったのがよくなかったな」
「う~~ん」
「逆に今日みたいにかからずに自分のペースで走れればレースでも勝てるようになるんじゃないかな」
「本当ですか!?」
「そのためにももう少し先行以外の適性の子と走った方が良さそうだね、ボスに相談しておくよ」
「お願いします!」
次にアヤベさんの方を向いて
「アヤベはいい走りだったがまだ怪我が治ったばかりだから少しぎこちない感じだったから今後はフォームを意識したトレーニングをしていった方が良さそうだな、あとはフェイトを抜く時に少し近すぎたから接触しすぎないようにしていけ」
「……」
ポンズの評価を黙って聞いていたアヤベさん。
「こんな感じだがアヤベの方から何か気づいたこととかあるか?」
「……」
再び黙っているアヤベさん。心配したフェイトが
「あの~、アヤベ先輩?大丈夫ですか?」
「…ええ、大丈夫、ちょっと驚いただけ」
「驚いた?」
「だってあなた、トレーニングの事を学び初めてから少ししか経ってないでしょ、それなのにこんなに指示が出せるなんて驚かないはずがないでしょ」
「確かに!何でこんなにも言えるんですか?」
二人からの疑問に
「それは、ここ数日その事しか勉強していなかったら出きるようになるよ」
ポンズはサブトレーナーになってから今日まで1日のほとんどをトレーナー業の勉強に打ち込んできた。普通の人ならこれ程の事をしても完璧に覚えるのは無理だが彼はクローン、しかもコマンダークラスなので学習能力が半端ないからこそ出来る荒業である。
「まあ、とにかく二人の走り方は大体頭に入ったから改善すべきところを直してデビュー戦目指していこう!」
「はい!」
「はい」
アヤベさんたちがいる少し先でアヤベさんの同期であるナリタトップロードもトレーナーと一緒にトレーニングをしながらアヤベさんの方を見ていた。
「どうやら奴さん、すっかり復活したようだな」
そう言うのは彼女のトレーナーである沖田トレーナー。
「やっぱりアヤベさんはすごいですね!私も負けていられません!」
「おいおい、あんまり気負い過ぎるなよ」
なだめるトレーナー。するとトップロードがあることに気がついた。
「あれ?そういえばアヤベさんたちと一緒にいるのハシトレーナーさんじゃなくないですか?」
「ああ、どうやらサブトレーナーが新しく入れたってハシトレーナーから聞いたぞ」
「ええ!?そうだったんですか!?」
驚くトップロード。アヤベさんからは特に何も言っていなかったからである。
「おそらく向こうのチームの新しい作戦なんだろう、なかなか斬新な事をするよな」
「でもそれを言うなら私たちもそうなんじゃないんですか?」
「それもそうだな」
そう話している二人のところに近づいてくる人がいた。
「トレーニングの準備、完了しました、いつでもいけます」
そういった男はヘルメットに黄色のバイザーようなものをつけて所々黄色のアーマーを身に付けていた。そして何よりその男はポンズと全く同じ顔をしていた。
「ありがとうございます!コーディーさん!それじゃあ今日もよろしくお願いいたします!」
少しずつ彼女らの運命にクローンが関わるようになっていくのであった。
今回、新しく出てきたキャラや組み合わせがありますが今後も思い付いたら追加していくと思うのでよろしくお願いします。あと前回、デビュー戦を書くと言ったのですが収まり切らなかったので次回、必ず書くのでどうか楽しみに待っていてください。