陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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基本タイトルは全部思いつきです


11話 王道の在処

 

「──私の願いは故国の救済だ。万能の願望機を以ってして我が故郷、ブリテンの滅びの運命を変える」

 

セイバーの口から語られるその願いに3人は苦笑、或いは失望の反応を示した。

 

(やり直す?聖杯が万能といっても限度がない? つまりタイムマシンに乗れるんでしょ。ドラ○もん呼び出す方が早くない?

そもそも所詮過去は過去だし、そんなものに固執するなんてね)

 

そして、この白けた空気と沈黙を破ったのは征服王であった。

 

「なぁセイバー。否、敢えてこう呼ばせて貰おう、騎士王よ。貴様、運命を変えると言ったか? それはつまり、歴史を覆すと?」

 

「その通り。本来ならば奇跡が起こっても成し遂げられぬだろう。だが、聖杯が真に万能の願望機であるのなら可能なはずだ」

 

その言葉に対して、征服王はどこか困った様に頬を掻き、アーチャーは如何にも面白いものを聞いたと言わんばかりに笑い出し、シャドウは心底呆れたように失笑を漏らした。

 

「あーー、つまり何だ。騎士王、貴様はよりにもよって自らが歴史に名を刻んだ行いを否定すると?」

 

「そうだ、何故それを訝しみ、笑う!?

剣を預かり、身命を捧げた故国が滅んだのだ。それを悼むのがどうしておかしい!?」

 

「おいおい聞いたかライダー?

この騎士王と名乗る小娘は、よりにもよって、故国に身命を捧げたのだとさ!!ハッハッハッ!」

 

「笑われる筋合いがどこにある!?」

 

征服王の問いに対する騎士王の答えにアーチャーは堪え切れずに大声をあげて笑い出す。

 

「王たる者ならば、身を呈して治める国の繁栄を願い、破滅から国を守る筈だ!」

 

「いいや違う。王が捧げるのではない。国が、民草がその身命を王に捧げるのだ!断じてその逆ではない!」

 

「何を……!?それは暴君の治世ではないか!」

 

「然り。我らは暴君であるが故に英雄だ。

だがなセイバー。自らの治世を、その結末を悔やむ王がいるとしたら、それはただの暗君だ! 暴君よりなお始末が悪い!」

 

「征服王。貴様とて、世継ぎを葬られ、築き上げた帝国は三つに引き裂かれて終わったはずだ。貴様はその結末になんの悔いもないというのか?」

 

「断じてない!余の決断、余に付き従った臣下達の生き様の果てに辿り着いた結末であるならば、その滅びは必定だ。悼みもしよう。

涙も流そう。だが決して悔やみはしない」

 

これまで仲裁側、サーヴァント間における橋渡し役に回ってきた征服王は騎士王の発言を悉く打ち伏せていく。

 

「ましてそれを覆すなど! そんな愚行は余と共に時代を築いた全ての人間に対する侮辱である!」

 

「滅びの華を誉れとするのは武人だけだ!

力無き者を守らずしてどうする!?正しき統制、正しき治世。それこそが王の本懐だろう!」

 

「で、王たるお前は正しさの奴隷か?」

 

「それでいい。理想に殉じてこそ王だ」

 

「──そんな生き方は人ではない」

 

「征服王。我が身可愛さに聖杯を求める貴様には分かるまい。飽くなき欲望を満たすために覇王となった貴様には!」

 

「無欲な王など飾り物にも劣るわい!!」

 

騎士王の言葉が征服王の逆鱗に触れる。

大らかな印象が強かった征服王が怒りを露わにして怒鳴る。

 

「セイバーよ。理想に殉じると貴様は言ったな。なるほど、往年の貴様はさぞや清廉にして潔白な聖者であった事だろう。さぞや高貴で侵し難い姿であった事だろう。だがな、殉教などという荊の道に一体誰が憧れる?焦がれるほどの夢を見る?」

 

征服王のその言葉に騎士王の眼に迷いが生まれ、明らかに動揺する。自らの生涯が走馬灯の如くフラッシュバックする。

 

「王とはな、誰よりも強欲に、誰よりも傲笑し、誰よりも激怒する。清濁を含めて人の臨界を極めたる者。そうあるからこそ臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に我もまた王たらんと憧憬の火が灯る」

 

「騎士道の誉たる王よ、確かに貴様が掲げた正義と理想は一度国を救い臣民を救済したやもしれん。だがな、ただ救われただけの連中がどういう末路を辿ったか、それを知らぬ貴様ではあるまい」

 

ブリテンの最後。

カムランの丘の戦い。

国は滅び、兵は屍の山を築き、血と亡骸で埋め尽くされた光景。その光景そのものが征服王の言葉を肯定する。

 

「貴様は臣下を救うばかりで導く事をしなかった。王の欲の形を示すこともなく、その正しさの為に臣下を犠牲にし、道を見失った臣下を捨て置き、ただ一人で澄まし顔のまま、小綺麗な理想とやらを想い焦がれていただけよ。故に貴様は生粋の王などではない。

己の為ではなく、人の為の『王』という偶像に縛られていただけの小娘にすぎん」

 

その言葉に騎士王は絶句する。言葉は出ず、苦悶と葛藤に満ちた表情を浮かべる。

 

そんな騎士王にシャドウは言葉を投げかける。

 

「──セイバーよ、貴様はどうして剣を取った? その剣に何を見た?」

 

「──どうして……剣を……?」

 

「──覚悟と決意を持ってその剣を取ったのなら、その結末は享受すべきだ。──赦されたいだけの女が今更それを悔いることに一体何の意味がある?」

 

 

「──お前の王道は、淡すぎる」

 

 

 

「フ、フフハハハハハ!!

ハッハッハッハッハハハハハハ!!

気狂いの道化の方が、よほど本懐を理解しているとは、とんだ三文劇よ。ハァ、中々の見世物であった。

騎士王とやら、貴様が臣下であれば道化として迷わず褒賞を与えるところであったぞ。貴様のその人の身に余る王道を背負い込み、苦しみに足掻くその苦悩、その葛藤。慰みものとしては中々に上等だ。これからも精々励むが良い」

 

 

アーチャーが突如として笑い出し、セイバーを扱き下ろしていた。

もはや王ではなく、道化だと。

征服王には願いを否定され、シャドウには赦されたいだけの女と嘲られ、アーチャーには王どころか英雄としても扱われていない。

頭の中で幾万の思考が回る。だがどうすれば良いのか、今のセイバーには答えが出せない。

 

「──!」

 

突如、只ならぬ気配にセイバーは構える。

マスター達とセイバー、征服王が目を向けた先の屋根の上に髑髏の仮面をつけた黒い人影が立っている。

 

「ウソ!? アサシン!?」

「──バーサーカーの言ってた通りか」

 

アイリスフィールが悲鳴混じりに言う。

雁夜はシャドウの言葉があったのもあり、内心は昂っているが、平静を装えている。

 

既に敗退した筈のアサシンが、全く結界にも反応せず、いつの間にか自身の拠点にまで入り込んでいたのだ。アイリスフィールの驚きと動揺はむしろ妥当であった。

 

そしてそのアイリスフィールの台詞と同時に、アサシンと思われる人物がその隣にまた現れる。それを皮切りに中庭を囲む様に何十人もの髑髏仮面の黒衣の人物が次々とその姿を現す。

 

「──これは貴様の計いか、金ピカ?」

 

「──時臣め、下衆な真似を」

 

やや怒気を含んだ征服王の言葉をアーチャーもまた呆れたように返す。

 

「──我らは分断された個。軍にして個のサーヴァント。されど個にして軍の、影!」

 

「多重人格の英霊が、自我の数だけ実体化しているのか……」

 

征服王のマスターたるウェイバー・ベルベットは大量に現れたアサシンに怯えながら状況を把握していく。ライダーに不安気な表情を向けるが、ライダーは狼狽えるなと宥める。

 

(やっぱり生きてたよアサシン! ぼくの陰の実力者としてのセンサーは間違ってなかった。しかも自分の人格を実体化するなんて益々、陰の実力者っぽいじゃん。まあ本体は弱そうだから、ネタだけ今後の参考にしようかなぁ)

 

アサシンの出現に警戒する者、訝しむ者、そしてテンションを上げる者と三者三様の中、征服王が言葉を発する。

 

「何にせよ我らの酒の席に交じりたいと言うのであれば歓迎せねばなるまい。宴の客を遇する度量でも、王の器は問われるのだ」

 

征服王は自身の持って来た酒樽から酒を注ぐと掲げて高らかに宣言する。

 

「さあ遠慮は要らぬ。共に語ろうというものは杯を取れ!この酒は、貴様らの血と共にある!」

 

するとアサシンの投擲したナイフが征服王の掲げた酒をぶち撒けた。アサシンから嘲笑が聞こえる。

 

「──なるほど。この酒は貴様らの血と言ったはず。これが貴様らの答えと言うのなら、是非もない」

 

ライダーの周りに魔力が集まり、征服王本来の姿へと変わっていく。強烈な風が吹き荒れる。

 

「セイバー、バーサーカー、そしてアーチャーよ。これが宴の最後の問いだ。そも、王とは孤高なるや否や」

 

「──王ならば、孤高であるしか──ない」

 

「ダメだな、全くもって分かっておらん。そんな貴様らには余が今ここで、真の王たる者の姿を見せつけてやらねばならん!」

 

魔力の昂りと共に世界は塗り替わる。

真夜中のアインツベルンの中庭から、見渡す限りの荒野、昼の砂漠へと。

 

「固有結界ですって、そんなバカな!?心象風景の具現化だなんて!」

 

アイリスフィールは驚嘆する。魔術師では無いライダーに固有結界を作り出すのは本来不可能である。

 

 

「ここはかつて我が軍勢が駆け抜けた大地。余と苦楽を共にした勇者たちが等しく心に刻み込んだ景色だ。この世界、この景観を形にできるのは、これが我ら全員の心象であるからさ!」

 

その地平に次々と勇士が召喚されていく。

その全てがサーヴァントであり、その数は数えるのが困難なほどだ。

 

 

「見よ、我が無双の軍勢を!

肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者達!

 

 

彼らとの絆こそ我が至宝!

我が王道!

イスカンダルたる余が誇る最強宝具

王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』なり!!」

 

その宣言と共に、勇士達は雄叫びを上げる。

声だけで大気が震え、大地を鳴らす。

 

征服王イスカンダルは寄ってきた黒馬、自身の相棒たるブケファラスに跨る。

 

「王とは! 誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!」

 

「『然り! 然り! 然り!』」

 

「すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、王!

故に王は孤高にあらず!

その意思は、すべての臣民の志の総算たるが故に!」

 

「『然り! 然り! 然り!』」

 

イスカンダルが王道を語れば、臣下である勇士達は声を揃えてそれを肯定する。

それは正しくイスカンダルの言う通り、彼と彼の臣下達の絆が偽りなく真実であることを示していた。

 

そんな軍勢に混ざっていたのが、シャドウ。

今はシド・カゲノーと呼ぶべきだろうか。

固有結界発動の動揺に乗じて、気配を断ちながら無双の軍勢の中にしれっと紛れ込み、勇士達と共に「然り」を叫んでいた。

 

(いやぁ、こんなにも沢山のエキストラを用意できるなんて王様は違うなぁ。エキストラに混じって、野次馬のモブAとして振る舞う、中々悪くないぞこれは)

 

「さて、では始めるかアサシンよ。

見ての通り、我らが具象化した戦場は平野。

生憎だが、数で勝る此方に地の利はあるぞ?」

 

その様にアサシン達は狼狽え、怖気づく。イスカンダルが剣を抜き、掲げる。

 

「蹂躙せよォォォォ!!!」

 

ブケファラスに乗ったライダーが剣をアサシンに向け、荒野を駆け出す。勇士達もまた雄叫びと共にアサシンへと走り出す。

 

それを見たアサシン達は絶望して抵抗を諦める者、怖気づいて逃げ出す者、最後の抵抗をする者に別れたが、勇士達に正面からの戦いで敵うはずもなく、次々に討ち取られていった

 

そして僅か数分。

アサシン達は1人残らず殺された。

それを確認したイスカンダルは軍勢の中心で声を上げる。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

軍勢が勝利の雄叫びを上げる。

それと同時に、固有結界は解けていき、元のアインツベルン城の中庭へと戻った。シャドウは軍勢の蹂躙に紛れて、元の位置に何食わぬ顔で座っていた。

 

「──幕切れは案外呆気なかったな……互いに言いたいことも言い尽くしたよな、今宵はこれでお開きとしようか」

 

「待てライダー! 私はまだ……」

 

ライダーの言葉にセイバーは待ったをかける。

 

「貴様はもう黙っとれ、今宵は王が語らう宴であった。だがセイバー、余はもう貴様を王とは認めん」

 

「なぁ小娘よ。いい加減にその痛ましい夢から醒めろ。さもなくば貴様は、いずれ英雄としての最低限の誇りさえも見失う羽目になる。貴様の語る『王』という夢は、いわばそういう類いの呪いだ。」

 

憐れむ様な目でセイバーに忠告し、チャリオットを召喚して自身の持って来た樽と自身のマスターを放り込み、自身もチャリオットに乗り込んだ。

 

「──バーサーカーよ、次会う時は戦場で貴様の宝具が見られることを期待しとるぞ」

 

「──時は満ちる、崩壊の時は近い」

 

シャドウのその言葉にライダーは僅かな笑みを浮かべるとチャリオットで帰還していった。シャドウもまた雁夜を抱え、空を飛んでアインツベルンの城を立ち去った。

 

「耳を傾ける必要はないぞセイバー。お前は正しい。故国に身命を捧げたなどと宣うその憐れな姿といい、言葉に詰まって苦悶する表情といい、実に愉快だ。ではなセイバー、事によるとお前は更なる我が寵愛に値するかもなあ、フ、フフハハハハハ」

 

アーチャーはそう言い残すと霊体化してその場から消え去った。

 

セイバーは1人、どうすれば良いか、どうするのが正解なのか分からずにその場に佇んでいるばかりだった。

 

「私は……一体……どうすれば……」

 

セイバーの嘆息が中庭に溢れる。アイリスフィールもかける言葉が見つからず立ち尽くすばかりだった

 





セイバーフルボッコタイム終了
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