陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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ネタバレ? プロローグ含めた16話目にして初アトミックです。

通算UAが10万を突破しました。ありがとうございます


15話 陰の実力者は真の最強を示したくて!

 

「──その必要はない。時は満ちたのだから」

 

「──! バーサーカー……!」

 

ランサーが槍を折ろうとしたその刹那、シャドウは未遠川へと到着した。

 

(なんか良い感じのことやられて見せ場取られちゃうのは勘弁なんだよね。ランサーは相変わらず良い顔しようとするし)

 

「おっそいじゃんかバーサーカー! こっちはもう色々大変だったんぞ!」

 

ウェイバーが捲し立てるようにシャドウを問い詰める。シャドウは気にする様子もないが、すぐに切り替えたウェイバーは更に質問を続ける。

 

「おっと、そんな話は後だ。バーサーカー、お前の宝具はあの化け物を一撃で倒せる、いわゆる対城宝具なのか?」

 

「──たいじょう宝具?」

 

(たいじょう宝具ってなに!! 打ったら退場する的なあれ? ス⚪︎ラか! まあ間違ってはないかなぁ、立つ鳥跡を濁さずってね)

 

「──問題ない」

 

するとシャドウは空高く舞い上がっていってしまった。

 

「ったく! あいつ人の話を最後まで聞けってんだよ! いや、そもそもバーサーカーにそんなこと言っても仕方ないのか……」

 

ウェイバーが頭を抱えていると、セイバーたちは大きな震動を感じた。

 

「──今の震動は?」

 

「恐らく、ライダーの固有結界が限界に近づいている予兆だろう」

 

「──ライダー……」

 

ウェイバーは下唇を噛みながらライダーの身を案じていた。するとウェイバーの元へ一人の英霊が現れる。

 

「──ヘタイロイが一人、ミトリネス。王の身になり代わり、ここに馳せ参じてございます」

 

ウェイバーはやや緊張しながらもライダーのマスターとして毅然とした態度で応対する。

 

「──これから合図を待って、指定された場所にキャスターを放り出せるように結界を解いて欲しい……できるな?」

 

「──可能です。しかし時は一刻を争います故、早急に願います」

 

ウェイバーたちがそのようなやり取りをしていた頃、川を小舟で進んでいた衛宮切嗣は異変を察知していた。

 

(──セイバーが一向に現れない。それどころか何故バーサーカーが空に居る?セイバーの槍の呪いは解除された様子もない。まさかバーサーカーがキャスターを仕留めるのか?──ぼくの計画が悉く邪魔をされる。実に腹立たしいが、キャスターを倒せるならこの際、贅沢は言ってられないか)

 

切嗣は予定通りに信号弾を放った。半分は破れ被れだったが、後には引けない。

 

「─! あの光だ! あの光の真下!」

 

「御意」

 

信号弾を確認したウェイバーはミトリネスに指示を出す。伝令役のミトリネスは即座に姿を消し、暫くするとライダーの固有結界が解除された。つまりキャスターが再び地上に現れたのだ。

 

 

 

──空を舞うシャドウが考えていたことはシンプルだった。突如現れた怪物を倒した謎の英雄という陰の実力者らしい登場と幕引きができることに対する高揚感、この世界に来て初めて放つ切り札の威力を知りたいという僅かながらの期待感だった。

 

 

──────

信号弾が放たれた時、間桐邸に帰っていた間桐雁夜はシャドウの言葉を思い出し、右手を掲げて未遠川の方角へ突き出した。雁夜の令呪が赤く光りだす。

 

「──令呪をもって渇望する。バーサーカーよ、真なる最強を俺に示せ!」

 

令呪が発動するとシャドウの身体を魔力が帯び始めた。サーヴァントを縛り、強制的に従わせることのできる3度限りの命令権、それが令呪だ。御三家の一角である間桐が組み上げた呪いであり、強力な英霊を御するための防衛手段でもある。もちろん単純な魔力供給としても効力は十分である。

 

剣に魔力に込めるとキャスターの怪物の範囲をシャドウの魔力が覆う。魔力が螺旋を描くよう剣に集約し、刀身には複雑な紋様が幾重にも顕れる。そして令呪による魔力の高まりを感じたシャドウはニヤリと笑いながら口を開く。

 

 

 

「──かつて、核に挑んだ男がいた」


「男は肉体を鍛え、精神を鍛え、技を鍛えた」

 

「だが……それでも届かぬ高みがあった」

 

「──主神の魔槍、神の雷、騒嵐の颶風、人の身では決して抗えぬ御業」

 

「しかし、僕は諦めるわけにはいかなかった」

 

「だから修行を重ねた果て……一つの答えにたどり着いた」

 


「核で蒸発しないためには……自分自身が核になればいい……!」

 

「──真の最強を、その身に刻め」


「これぞ我が最強」

 

 

 

「アイ」

 

 

「アム……」

 

 

 

アトミック

 

 

 

魔力を剣に凝縮させて振るうことで放たれた一撃はキャスターの海魔を呑み込んだ。圧倒的に鍛えられた魔力の粒子が巨大な爆発となって未遠川を紫紺の閃光が包んだ。

シャドウの宝具「夜天を征くは我が紫紺の原子(アイ・アム・アトミック)」は核と同等の爆発力を持った一撃、長い研鑽の末に辿り着いたシャドウの切り札であった。

 

「──は!?」

 

強烈な光の波動を受けたキャスターは海魔の中でその光に手を伸ばそうとする。

 

「──こ、このひかりは……」

 

その光に魅せられていたキャスター、ジル・ド・レェの頭の中に浮かんでいた情景はかつて自らが神とも等しきほどに崇めていたジャンヌダルクであった。

 

「──間違いない…… この光は、ジャンヌと共に歓喜の祝福を得た輝き……」

 

情景の中のジャンヌは振り返り、優しく手を差し出す。その様を歓喜の涙を流しながらジル・ド・レェは自らの手を伸ばす。

 

「──私は……いったい……」

 

シャドウの一撃を持って、海魔の化け物は完全に消滅した。核すらも越える魔力の放出、紫を帯びたその爆発で大地、大気の全てが震えた。

 

この紫紺の光を見ていた者たちの反応は様々であった。

 

 

「──すごく綺麗……」

 

窓の外の強烈な光で目を覚ました桜はその美しさに見惚れていた。それがシドの魔力であることも含めて、天上の輝きを見たかのような顔を浮かべていた。

 

 

物陰から戦況を見つめていたケイネスはその輝きに面を食らったかのような、それでいてどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

「──根源というものがあるとすれば、あのように美しいのだろうか。一片の淀みもない完璧な魔力だ。美しさを通り越して神々しいとすら感じる──世界とは、まだまだ広いな」

 

 

そして大橋の上から英雄王ギルガメッシュもまたシャドウの宝具を見つめていた。征服王イスカンダルもまた、固有結界を解除し、橋の上でこの様子を見ていた。

 

「──見たか征服王。あれがバーサーカーの演目だ。中々に珍妙であろう?」

 

「──お前さん彼奴にやたらと入れ込んでおったが、あれの正体に気づいておったのか?」

 

「戯け、あんな道化自体に興味はない。愉快なのはそこへ至る道筋と奴の在り方だ」

 

「──あぁ何となくだが分かったわ。あの一撃を放つに至った奴の選び取った道、狂い果てねば、まず出来ん芸当だわ」

 

「どんな人間でも多かれ少なかれ大望を抱く。望みが大きすぎた者、器が小さすぎた者と多々居るが、あれはその望みのためにそれ以外の全てを不要と切り捨てたのだ。犠牲にしたのではない、必要が無かったからと断絶した、気狂いという他ない」

 

「──何がやつをそこまで駆り立てる?見る限りまだ少年、そんな孤高の道を選ぶ理由が見えん」

 

「さあな、知ったところで大した意味はあるまい。形は違えど、あれとセイバーが選び取った道は同類だ。自ら孤高の道を征き、人の身では成し得ない大望を背負った者共だ。違いがあるとすれば、己を犠牲にしたか、己以外を犠牲にしたかの差だ」

 

「──それで? 貴様がバーサーカーを道化と評するその心根はなんだ? 話を聞く限りじゃ、バーサーカーは自ら苦難の道を選んだ英雄であるように聞こえるが?」

 

「──(おれ)が見るに、あれの願いとやら既に叶えられているはずだ。だが当人は素知らぬ顔だ。夢と語ることすら生温い空想を抱きながら、現実というものを知りすぎている。だからこそ奴はその境界を見定めることができない。既に叶ったもののために児戯を繰り返し、友も栄誉も捨て去る憐れさ、道化と呼ばずして何とする?」

 

ギルガメッシュの言葉は痛烈にシャドウを見抜いていた。人類最古の英雄王にして世界の総てを視た男の言葉にイスカンダルは納得した様子だった。

 

「まぁ、セイバーのやつの輝きはまた別の機会に取っておくとしよう。愉快な余興は歓迎してやる。ではな征服王、万全な状態の貴様を倒してこそ意味がある。今宵の消耗には目を瞑ろう」

 

そう言ってギルガメッシュは笑い声と共に霊体化して去っていった。

 

「──やれやれ、どこまでも見透かしおって」

 

イスカンダルは困ったように頭を掻くとチャリオットに乗って帰還した。こうして未遠川の決戦は終幕を迎えた。

 

 

 

 

──────────

 

バーサーカーの宝具によってキャスターが討伐されたことで間桐雁夜は中立地帯である教会を訪れていた。「キャスター討伐に貢献した者には追加の令呪を与える」という取り決めの元、申告を出した上での訪問だった。

 

「──お待たせして申し訳ない。流石に今夜は少々取り込んでおりまして……」

 

聖杯戦争の監督役にして聖堂教会の司祭である言峰璃正はやや疲れた表情を浮かべて雁夜と対面した。キャスターの海魔出現による隠蔽工作その他諸々、考えるだけでも頭の痛い案件だった。

 

「いいや、大した時間ではありませんよ」

 

「そう言って頂けるのはありがたい」

 

「──それで、俺……私の申告についてお尋ねしたい」

 

「──貴殿のサーヴァントがキャスター討伐において最大の功を挙げたことは監視役からも報告を受けています。──宜しいでしょう。キャスター討伐の褒賞として、令呪一画を授けます。さぁ間桐殿、右手を出しなさい」

 

雁夜は右手を差し出す。言峰璃正がその上に自身の右手を重ねて言葉を紡ぐ。

 

「──みな、この杯から飲め。これはその罪が許されるようにと、多くの人のために流す私の血。──契約の血である」

 

璃正の腕からは歴代の監督役の手に委ねられてきた預託令呪が消失し、雁夜の右手には先の戦いで失った一画が蘇った。雁夜はそれをやや驚きながら見つめていた。

 

「──それでは引き続き、マスターとして誇りある戦いを」

 

雁夜はそれに軽い会釈だけで返答はすることはなく、足早に教会を後にした。

 

璃正が一息つこうとした時、息子である言峰綺礼が現れた。

 

「──父上、大分お疲れのご様子ですね」

 

「──おぉ綺礼か。……流石に今日は疲れた」

 

「──無理もありません。予想外の出来事があまりにも多すぎましたから」

 

綺礼は父である璃正を慮る。

 

「時臣くんと計ったキャスター討伐もバーサーカーに掻っ攫われた上、それがよりによって同じ御三家の間桐とは。──間桐がここまで奮戦するとは予想外だ、報告では間桐の当主の姿が聖杯戦争開始時点から一度も確認できないらしい。何かとイレギュラーが多すぎるな」

 

第三次聖杯戦争でも監督役を務めた璃正が嘆息を漏らす。三次と比べてもイレギュラーの多い今回の四次聖杯戦争。キャスター陣営の起こした殺人事件、間桐陣営の思わぬ奮戦、聖杯戦争はいよいよ先が見通せなくなってきていた。

 

「──綺礼よ、此度の聖杯戦争はこれまでないほど混乱している。万が一ということもある。私にもしものことがあれば、お前が監督役を引き継ぎ、聖杯戦争を見届けるのだ」

 

そう言うと璃正は、令呪の受け渡し方法を綺礼に教えた。令呪欲しさに監督役に攻撃を仕掛けるマスターが現れる可能性もゼロではない、だからこそ預託令呪の受け渡し手段は歴代の監督役の間でのみに伝えられるものだ。如何に協力関係にあるとはいえ遠坂時臣すら知り得ない秘策であった。璃正は万が一を案じて息子である綺礼に託したのだった。

 

 

 

「──ありがとうございます父上──これは餞別として受け取っておきます」

 

 

 

 

その刹那、綺礼の黒鍵が璃正の身体を貫いた。完全な不意打ち、無論璃正は息子に刺されるなどとは微塵も思っていない、思うことすらあり得ないほど息子を聖人と信じて疑っていなかった。

 

「……ぐっ……ぐわぁぁ………き、きれ、い……」

 

強烈な痛みに声にならない呻き声を挙げながら璃正の意識は遠のいていく。八極拳の達人である璃正とて歴戦の代行者である綺礼の不意の一撃はどうしようもない。

 

暫くすると璃正は息絶えた。聖人と信じた息子に殺されるという最期はあまりに惨いものだった。

 

「──フッ、結局のところ、父もまた私の本質を理解出来なかったということか」

 

実の父親を殺した綺礼の顔は後悔や涙では無かった。

 

口角は上がり、何処かスッキリしたような、悪魔のような笑みを浮かべた男がそこにはいた

 

 





あのASMRを表現しようとした結果の文字効果。不評なら戻します。

セイバーの見せ場が……

シャドウの宝具は文字を当ててみました。厨二病解放で考えました
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