陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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お久しぶりでございます。生存報告を兼ねての更新でございます。

幕間はこれで終わります。次回以降は不定期にはなりますが、5次聖杯戦争を進めたいと思います。改めてになりますが、よろしくお願いします。


幕間の物語・ロンドンからの招待

 

 拝啓、間桐雁夜殿。

 私が今から書き記すことは全て嘘偽りのない真実だ。とても信じられないかもしれないし、何を言ってんだ病院に行けと思うかもしれない。私もそう思うし何を言ってるのか分からないが、起こったことをありのままに記す。

 

 私はロンドンに帰還したが、そこで私の師でもあるケイネス先生、ランサーのマスターであった人物からエルメロイ教室の講師を任された。正確には押し付けられた。そして訳も分からないまま私には婚約者が出来た。この婚約者というのが最悪も極まる女なのだが、その愚痴は直接聞いて欲しい。

 

 ──単刀直入に言う。ミス桜をロンドンへ留学させないか?3年間の限定だが、間桐の魔術師として私の推薦の元で時計塔で学ぶことが出来る。私は既にエルメロイの派閥に取り込まれてしまった。逆に言えば私の直弟子であるのなら安全ともいえる。彼女が魔術師と何か目指すべきものがあるのなら、この留学は意味のあることだと私は思う。

 

 長くなってしまったが、是非検討して欲しい。

 

         ウェイバー・ベルベット

 

 間桐雁夜は早朝の郵便受けから取り出した手紙を読んでいた。そこにはウェイバーらしさと眉間に皺でも作っているのかと思えるほどに苦労している旨が綴られていた。

 

 今この間桐の家に魔術の師となれる者は存在しない。雁夜自身は一度は魔道の道から外れており、聖杯戦争に参加するための急造期間も僅か一年で基礎的な魔術を手解きされる時間も無かった。故にこの申し出はとても有り難かった。

 

 後は桜の意思だけである。間桐雁夜は桜に対して桜の希望を最大限尊重する方針を採っている。それは自ら手を下していないとはいえ、桜の実母である遠坂葵の死には自らが深く関わっているからだ。バーサーカーに始末を命じたのが自分である事実はもう拭えない。そんな罪悪感だけは今も燻っており、桜が望むようにしてやることが今の雁夜にとっては淡い贖罪であった。

 

「お手紙、ですか?」

「そうなんだ。ウェイバー先生がさ、ロンドンに留学しないかって。時計塔ってところで本格的に魔術を学べるんだ。──桜ちゃんはどうしたい?」

 

 雁夜おじさんは必ずと言っていいほど私に決定を委ねてくれる。私が魔術を習いたいと言えばわざわざウェイバー先生の所まで出向いて頼み込んでくれた。

 

 間桐の家に居たい。正確には遠坂に戻りたいとは思わないと正直に告げた時は、一瞬動揺はしてもすぐに受け入れてくれた。

 

 おじさんが何か私に後ろめたいことがあるのは分かっている。でもそれはおじさんが魔道から逃げたから私があんなことになった、というのとは違う気がしていた。 

 

 

 

 

 

───別に気にしなくても良いのに

 

 

 

 

 私の父親だった男は聖杯戦争で死んだらしい。どうでも良かった。私を間桐に売り払った男。私に地獄を与えた男が死んだところで何の感情も湧かなかった。むしろ生きていたのなら私は平静を保てる自信が無い。私の穏やかな心のためにも死んでくれていて良かった。

 

 そして母親だった女も死んだ。この死におじさんが関わっている。そう考えると色々と納得がいった。これもどうでも良かった。私を間桐に売り払った男を盲目的に愛した女。それが死んだと聞かされて湧き上がった感情が悲しみでも怒りでも無かった私は薄情なのでしょうか?

 

 

 

 

 違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

 

 

 

 私が誰の死をどう思おうが私の自由

 

 私はあれの死をそう思えない、ただそれだけのこと。

 

 姉さんとの再会は少なくとも今じゃ無い。姉さんにとっては父と母である人を亡くした今の遠坂に私の居場所は無い。私が居るべき場所はもうあんな所では無い。

 

 おじさんにある罪悪感を私はちゃんと使ってあげる。おじさんがそれで救われると言うのなら喜んでそれを利用する。

 

 

 

 

 だからおじさん。これからも仲良くしましょうね?

 

 

 

 

「──私は行きたいです。」

 

「そうか。分かった。行きだけは俺も同行する。その後は先生の所で世話になるんだよ。」

 

「おじさんも仕事、するんだよね?」

「え……痛いところ突くなぁ桜ちゃんは。」

 

 雁夜は今現在、働いていない。元々はフリーのルポライターとして生計を立てていたが、聖杯戦争の1年前に辞めて以来、その仕事はしていない。これはまだ幼い桜を家で一人には出来ないという点が大きかった。海外へ出張することも珍しくは無く、定時退勤があるような職業でも無かったからだ。それに間桐の家督を正式に譲り受けた今、ある程度は働かなくても問題は無かった。

 

 だが間桐雁夜は一般的な考えに傾向している。それは働かないことを良しとしないことだ。このままだと人間として駄目になると考えた雁夜は徐々に活動を再開していた。故に桜をロンドンに預け、自らは仕事に復帰するタイミングとしてウェイバーからの誘いは天啓にも等しかった。

 

 こうして桜の3年間の時計塔生活は始まったのだった。

 

 

────────

 

 ロンドンに着いた雁夜と桜は時計塔にあるウェイバーの私室へ向かっている。桜は期間限定とはいえウェイバーの弟子としてこの時計塔で過ごすことになる。それらの説明を含めて再会を約束していた。

 

 部屋に入ると、目に隈を作った青年が気難しそうな顔をしている。聖杯戦争から数年が経過しており、桜が最後に見たウェイバー・ベルベットとそう変わらないと思っていた。

 

 だが実際に再会したウェイバーはやはりどこか疲れている。日本で桜を指導していた頃とは比較にならないほど老けた印象があり、開口一番で言葉に詰まってしまった。果たしてこれは本当に先生なのかと。

 

「ひ、久しぶりだなウェイバー。げ、元気そうじゃない──」

「これが元気に見えるかね!?」

 

再会の感動も程々にいきなりこれである。雁夜としても話のキッカケついでの第一声だったのだが、かなり内心参っているなと察した。

 

「お久しぶりです先生。随分と老け……いえ大人になられましたか?」

「久しぶりだなミス桜。それと世辞は良い。今の自分の有り様は理解しているつもりだ。とにかく良く来てくれたな二人とも。」

 

「おやおや、噂をすれば来客かなぁ?おぉ彼女が噂の秀才かぁ。」

 

ノックも無しにドアが開かれると一人の少女が入って来る。

 

 陶器人形のような白い肌に純金の糸を思わせる細く真っ直ぐな髪。どこか儚げな印象だが、それを吹き飛ばすような強い焔色の瞳を持った美少女だ。

 

「えぇっと、どちら様かな?」

 

雁夜は問いを投げかける。

 

「おやぁ?まだ言ってなかったのかい?では自己紹介しよう。私の名前はライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。偉大なるロードエルメロイの婚約者(フィアンセ)だよ。」

 

 雁夜は理解した。手紙で言っていた突然出来た婚約者とは彼女のことなのだと。そして同時に目を疑った。婚約者というからには妙齢の女性だと思っていた。確かに美少女だが、桜とそう年齢の変わらない幼女が婚約者だと言われても唖然とするだけである。

 

「ウ、ウェイバー、お前そういう趣味があったのか……?」

「勘違いするな雁夜!断じて私の意向では無い!これは悪辣な陰謀なのだ!」

 

「──先生、先生のことは尊敬しているんですが……その……そういうのはちょっと……。」

 

「ちょっと待てミス桜!何か良くない思い違いをしている!話せば分かるはずだ!」

「おや、何も恥ずかしがる事は無いじゃないかぁ。私たちは正真正銘愛し合っているのだから。」

 

「お前は黙っていろ!これ以上事態をややこしくするな!友人たちに私が曲解されてしまう!」

 

 その後、何とか事情を説明する事が出来たウェイバーは何かの薬を水と共に思いっきり飲み終えると胃の辺りを抑えるのだった。

 

 

 

「そうか、お前も大変だったんだな。」

「同情するなら変わってくれ……。」

 

時計塔で講師を務め、婚約者も居るという字面だけなら成功者、順風満帆にも見える。だが、実際には自らの師に教室を半強制的に押し付けられ、その名目としてあの娘、ライネスと婚姻関係にあるだけなのだ。しかもあのライネスは雁夜から見ても相当な食わせ者、悪魔のような女だ。美少女で羨ましいなどという考えはそのエピソードで吹き飛んだ。

 

「とにかくだ。ミス桜に関してはロードエルメロイ2世の名に掛けて安全を保証する。安心して欲しい雁夜。」

 

「あぁ、桜ちゃんをよろしく頼む。俺はもう魔術に関しては彼女の力になれそうも無いからな。」

 

「そう自分を卑下するな。彼女が君に一定以上の信用を向けているのは間違いない。魔術師としての後見人は私だが、間桐桜の後見人は君だろう?」

 

「──ウェイバー……。そうだな、俺も俺で普通の人間としてちゃんとやらないとな。──改めて、桜を頼む。」

 

 

 

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