陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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 お久しぶりです。
季節の変わり目で体調を崩し、治ったと思ったら扁桃腺をやられるというダブルパンチで参りました。生存報告を兼ねて更新します。


27話 再会、そして闘争

 

「じゃあ殺すね、──やっちゃえ、バーサーカー!!」

 

「■■■■■■■■■■■───!」

 

 イリヤスフィールの合図を受け、巨体の男は言語と呼ぶには稚拙だが、叫びと呼ぶには矮小な咆哮を轟かせながら突進してくる。3メートル近い身長、300キロはゆうに超えているであろうと肉体は単なる突進でさえ防御不可能な暴威に変える。その様は荒れ狂う災厄といっても過言ではない。

 

「くっ……!」

 

セイバーはそんな暴威の突進を正面から受け止める。剣の側面で相手の力を受け流す見事な立ち回りだが、圧倒的なパワーの前に引かざるを得ない。

 

 凛はそんな戦いを見届けることしかできない。とても人間が立ち入る隙など無い。セイバーが奮戦し、アーチャーも援護射撃をしているが、敵性サーヴァントにダメージを与えるには至っていない。何より驚かされるのは敵性サーヴァントの動きだ。

 

「さぞや名のある英雄なのだろう。我が剣の冴えを持ってしても貴方の太刀筋を崩すのは難しい。見事と言う他ない。」

 

「う、上手すぎる……!あれでバーサーカーとか冗談でしょ!?」

 

セイバーは素直な賛辞を送る。バーサーカーとは狂戦士のクラス。本来なら力任せの戦闘が基本だが、このバーサーカーは狂化していても身体に染み付いている剣筋や動きは変わらない。言語は話せずともその有り様は理性的ですらある。

 

「このっ!!」

 

凛は所持している宝石魔術を発動する。宝石などの鉱物に魔力を込めて行う魔術であり、所有者の念を溜めやすく、魔力を宿しやすいという特徴がある。強力だが、基本使い捨て。しかも元が宝石なだけにコストも掛かる。そんな代物を凛は切った。切らなければマズイ場面だと察していた。

 

「─────────!!!!!」

 

 宝石から放たれた魔術はバーサーカーを簡易的な檻に閉じ込める。重力か物量か、発動したタイミングからバーサーカーに自由な動きをさせない。その隙を突いてアーチャーの援護射撃が炸裂する。先程よりも威力の高い、確実に敵を殺すための矢だ。

 

 

『ドガガガガシャャン!!!!!!』

 

 凄まじい爆発音が轟き、辺りが土煙りやらに包まれる。凛とアーチャーが現状で可能な最大級の攻撃である。

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■■■■───!」

 

 男は立っていた。ダメージを受けたとは思えないほどに悠然に。

 

「ふ、不死身かあいつ……!」

 

 士郎も思わず本音が溢れる。今の攻撃が通用しなければあのサーヴァントを止める手段など無い。いや、あるにはある。だがそれは今ではないと士郎は考えていた。

 

「こうなったらマスターから──」

「落ち着け遠坂!あれに勝てると本気で思ってるなら冷静になれ!」

「何よ!随分と逃げ腰ね!」

「勝てる勝負を選べって言ってるだけだ!」

 

 マスターを排除する戦法は正しい。聖杯戦争におけるマスターの無力化は同時にサーヴァントの無力化も意味する。マスターからの魔力供給を絶たれたサーヴァントはアーチャーのような"単独行動"のスキルを持たない限り、時間経過で現界を保てずに消滅するしかない。

 

 魔術師同士の殺し合いという側面を持つ聖杯戦争においては当然の手段だが、バーサーカーのマスターであるイリヤスフィールはそこらの魔術師とは一線を隠す怪物だ。士郎は直感的にそれを察知したが故の制止だった。勝つ確率の低い相手に手の内を晒す必要はない。義父からの受け売りだった。

 

「ふーん。私に恐れをなして仕掛けてこないなんて殊勝な心掛けね、お兄ちゃん。何処かの名乗りもしないで不意打ちしようとした女とは大違い。」

 

 イリヤスフィールにしてはやや低い声が響く。戦況はバーサーカー陣営の圧倒的有利。しかし忘れてはならない。どんな戦場にもイレギュラーは存在する。そして存在自体がイレギュラーな陣営も存在することを。

 

 

 

 

 

随分と楽しそうですね。私も混ぜてもらえますか?

 

 霧の立ち込める夜。やや薄めの紫の髪、髪の色よりも澄んだ瞳を持つ少女が佇んでいた。やや低く凛とした声が戦場の三人に向けられていた。

 

 

──────────

 

「初めまして、イリヤスフィール。私は間桐桜。間桐と聞けばお分かり頂けるかと。」

 

「──そう。魔導の血筋を途絶えさせておいてよく臆面もなく姿を現せたものね。」

 

 イリヤスフィールの目は冷え切っている。興味も警戒も感じられないその声色にはゾッとするような圧を感じる。

 

「酷い人……。まあどうでも良いことです。だって御三家はもう私しか残らないんですから。」

 

 バチバチなやり取りが繰り広げられている。間桐桜と名乗った少女は自信満々な口振りだ。

 

「──桜……。」

 

「間桐……。あんた慎二とはどういう関係だ?」

 

「──あぁ、慎二お兄様のことですか。あの人は魔術とは何の関係もありません。というよりここ数年は会ってもいませんし。」

 

桜は大して興味も無いような口調で語る。名字こそ同じ"間桐"だが、住む場所も保護者も違う。士郎は今まで慎二に妹が居たこと自体知らなかった。慎二の家に遊びに行ったことは何度もあるが、そんな存在は確認できていない。

 

「まあその辺のことはそっちに居る人の方が詳しいと思いますよ?──()()()()()()()()()()()()()?」

 

 凛に対して向けられる冷たい視線。一雫の温もりさえ宿していないような、そんな瞳だ。

 

「と、遠坂?」

 

 士郎の疑問に凛は答えない。否、答える余裕が無いというべきだろう。生き別れの妹との再会は果たした。戦場で相対することも拒絶されることも覚悟はしていた。だが、実際に言葉にされるとその重さは何処までものし掛かる。

 

「──それで間桐さん。ここに何をしに来たのかしら?言っておくけど、あんただからって手加減は無しよ。」

 

「ふふっ。手加減だなんて随分と上からですねぇ。いつまでその立場のつもりです?」

 

 間髪入れずに凛はガンドを放つ。遠坂家の魔術刻印にあるルーン魔術で本来なら呪いの類、体調を崩させる代物だが、凛の練度なら壁に穴を穿つ程度は造作もない。それを人に向けて撃てばどうなるかは言うまでもない。

 

 

 

 

「──ふむ、ここが戦場の匂い、やはり懐かしいな。」

 

 そのガンドは届くことはない。突如として現れたサーヴァントによって完全に無力化されていた。というよりガンドを剣で斬ったのだ。一瞬の出来事だが、ガンドが途中で二つに分かれて軌道を見失った。

 

霧深い夜、霊園で奏でられしプレリュードとしては悪くない。さぁ今宵の宴を始めよう。」

 

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