陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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4話 影の実力者はプレリュードを奏でたくて!

 

 

「──よくぞ来た。今日一日この街を練り歩いて過ごしたものの、どいつもこいつも穴熊を決め込む腰抜けばかり。俺の誘いに応じた猛者はお前だけだ」

 

そう言って、ランサーは姫騎士へと不敵な笑みを向ける。

 

「その清澄な闘気、セイバーとお見受けするが、如何に?」

 

その問いに答える姫騎士もまた、似たような笑みを浮かべていた。

 

「如何にも。そういうお前はランサーに相違ないな?」

 

両名は対峙する。ランサーの眼がセイバーとそのマスターを捉える。

 

「──こう見えて私は人妻よ。女を口説くのは場違いで無くて?」

 

セイバーのマスターと思われる銀髪の女はやや不快そうにランサーに告げる。

 

「──すまんな、これは生まれついての呪いのようなものだ。貴女を拐かす気など毛頭ない。信じて欲しい」

 

「構わない、私としても貴公がそのような不埒者では無いことが、纏う空気で分かる」

 

そうして両名は幾らかの会話の後、戦闘を開始した。

 

シャドウはその戦いをコンテナ倉庫の最も高い鉄塔から見下ろしていた。

 

 

(うわ、やっぱあのランサーはそういうキャラか。人妻もイケるって……まあ人の趣味には口出さないけどさぁ)

 

 

そして、セイバーの剣技とランサーの槍捌きを感心しながら眺めている。これがサーヴァント同士の戦い、シャドウは確かにそう感じた。元の世界では全力を出せる相手は居ないに等しかった。「女神の試練」において呼び出されたヴァイオレットさんこと、アウロラが最も全力を出せた相手であろう。

 

 

即ちシャドウは戦いに退屈していた。

陰の実力者としてのロールプレイは好きだが、いざ戦いとなれば己の非力さすら履き違えた敵との戦いは味気なかった。

 

その空白が今日埋まろうとしている。

 

 

 

(凄い戦いぶりだなぁ、これがサーヴァントか。──完全に出るタイミングを逸したけど、どうしようかなぁ。あの一騎打ちに割って入る……うーん、プライド高そうだし怒られそうなんだよね。もう少し見てても良いけど、最初だし陰の実力者らしい登場には拘りたいんだよね)

 

繰り広げられるセイバーとランサーの戦いを眺めるシャドウという構図がしばらく続く。

 

(なんか場をぶち壊すようなキャラでも現れないかなぁ。戦いは良いけど、変化が無くてそろそろ飽きてきたし。それにこの戦いを覗き見してる人も居るんだよなぁ、魔力反応もあるし)

 

 

 

 

「AAAAAALALALALALAie!!」

 

 

「・・・・・・は?」

 

「・・・・・・チャリオット・・・?」

 

思わず素に戻って間抜けな声が出るシャドウ

 

 

「双方、武器を収めよ。王の御前である!」

 

 体格に相応しい大声で叫ぶ。

 そしてソイツは言う。

 

「我が名は征服王イスカンダル!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した! うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが・・・・・・矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。

まぁ、単刀直入に言おう、一つ我が軍門に降り聖杯を余に譲る気はないか? さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる!」

 

「な、何を考えてやがりますか!この馬っ鹿はあああ!」

 

ライダーのマスターであろう少年は涙目になりながらライダーを責めるが、当の本人は素知らぬ顔だ。

 

 

(なんか筋肉マッチョが大声轟かせて降ってきたんだけど……しかも真名を堂々と明かした挙句、一騎打ちに割り込んで仲間にならないかって、何から何まで陰の実力者ムーヴに反してる!まあ僕も出やすくなったといえばそうなんだけど)

 

 

「先に名乗った心意気にはまぁ感服せんではないが……何をしに来た征服王。理由もなく一騎打ちに水を差したとなれば、ただでは置かんぞ」

 

ランサーが苛立ちを込めて更に続ける。

 

「それにその提案は承諾しかねる。俺が聖杯を捧げるのは今生にて誓いを交わした新たなる君主ただ一人だけ!断じて貴様ではないぞライダー!」

 

「そもそも、そんな戯れ言を述べるために貴様は私とランサーの勝負を邪魔立てしたと言うのか?戯れ言が過ぎるぞ!それに私として一国を任せられた王だ、貴様に降るなど有り得ん!」

 

ランサーだけで無く、セイバーも怒り心頭のご様子。しかしライダーは懲りずに交渉を続ける。

 

「待遇は応相談だが?」

「「くどい!」」

 

懲りぬライダーに2人からツッコミが入る。

 

『いったい何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思ってみれば──よりにもよって、君自身が聖杯戦争に参加する腹だったとはねぇ。ウェイバー・ベルベット君』

 

「─!そ、その声は……」

 

『致し方ないなぁウェイバー君。君には私が特別に課外授業をしてやろうじゃないか。魔術師同士が殺し合うことの意味──その恐怖と苦痛、余すこと無く教えてやろう。光栄に思いたまえ』

 

ガタガタ震えて、見えない声の主に声にならない声を出して怯えることしか出来ないウェイバー・ベルベット。

 

……その肩に優しく、そして力強い大きな手が置かれ、見上げた先には野太い益荒男の笑顔。彼のサーヴァント、征服王イスカンダルが彼の好みに合わないやり口をするランサーのマスターを大声出して痛罵する。

 

「おう魔術師よ!察するに、貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターとなる腹づもりだったようだが、片腹痛いわ!余のマスターたるべき男は、余と共に戦場を馳せる勇者でなければならぬ。姿をさらす度胸もない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいぞ!わっはっは!」

 

見えない声の主は怒りの感情を押し殺し、苦虫を噛み潰したような声を漏らす。

 

戦いは止まっても熱は引かない、むしろこの一喝により、ボルテージは高まっていた。

 

タイミング自体は逃したが、場を荒らしてくれたライダーに乗る形でシャドウも戦場に飛び出した。

 

 

「──今宵の月は美しい、そして美しい夜に相応しい舞台が整った──」

 

鉄塔から飛び降り、倉庫を照らす街灯辺りでシャドウは停止した。

 

「ほぉ?その回りくどい言い回しといいその珍妙な立ち振る舞いといい、貴様もサーヴァントか?」

 

「その通りだライダー、先の見得と喝は見事だった。我の戦いに相応しい喜劇だっ」

 

「ハッハッハッ!そいつはちとこそばゆいなそういう貴様は何者だ、まさか真名を明かせぬ臆病者か?」

 

「我が名はシャドウ、陰に潜み、陰を狩るもの。此度はバーサーカーのクラスにて現界している。そして貴様らを葬る存在だ」

 

「な、バーサーカーだと!?バーサーカーが理性を持って会話をするなどあり得ない!」

 

セイバーが驚きながら問い詰める。

 

「──セイバーよ。この場合、HOW、どうしてかは問題じゃない。こうして言葉を交わしている事実は変わらない。事実をちゃんと拾いあげろ」

 

「してバーサーカーよ。交渉なんだが、余の軍門に降る気は無いか?さすれば朋友として厚く歓迎しよう」

 

「陰を生きるものに友は要らん。貴様は王道を征く者、光が濃いほど陰は強くなる。貴様の隣は我には眩し過ぎる」

 

(そもそもこんな益荒男と友達なのはモブ美学に反するしなぁ。マスターっぽい人が隣に居るし、彼も結構モブレベル高そうだから、友達枠は彼に任せれば良いよ」

 

「うーむ、それは残念だなバーサーカー。

では貴様はここで余らと一戦交えようという訳か?」

 

「──戦いとは会話だ。真に英雄だと言うのなら言葉では無く、覇を持って語らう他はない」

 

その言葉と共にシャドウはスライムソードを生成し戦闘準備に移る。それに呼応するようにランサー、セイバーも武器を構える。

 

張り詰めた空気が今にもはち切れそうになる。誰かが一歩でも動けば火蓋は切られる。

 

その膠着状態は更なる乱入者によって切り裂かれた。

 

「よもや、この(おれ)を差し置いて“王”を称する不埒者が、一夜のうちに二匹も沸くとはな」

 

黄金の光と髪と甲冑を纏った豪華絢爛なサーヴァントが街灯に降り立った。

 

(えぇ……ここでの新キャラ登場はシナリオに無いんだけどなぁ)

 

辟易とするシャドウであった。

 

 





風邪を引いたので、2日ほど更新を空けます。

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