陰の実力者は聖杯戦争に巻き込まれて!   作:リゼロッテ

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追記: 誤字修正しました


5話 陰と光の邂逅

 

「よもや、この(おれ)を差し置いて“王”を称する不埒者が、一夜のうちに二匹も沸くとはな」

 

不機嫌そうに言葉を発する黄金のサーヴァントは街灯から他のサーヴァントを見下ろす。

 

見た目からしてキャスターの可能性は低く、アサシンは倒された。消去法でこの金ピカは三騎士クラスのアーチャーということになる。

 

「難癖つけられてもなぁ……イスカンダルたる余は、世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが」

 

「たわけ。真の英雄は、天上天下に我ただ独り。あとは有象無象の雑種に過ぎん」

 

傲岸不遜な態度と口調で言い切って見せた黄金のサーヴァントは、直後に左右の空間を陽炎のように歪ませて、ライダー目掛けて放つ準備を整える。

 

「我が拝謁する栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値はない」

 

すると攻撃準備に入ったアーチャーの視線がシャドウを捉えた。己と同じ視線に立ち、こちらを睨む男に怒りを隠せない。

 

「──誰の許しを得て(おれ)を見ている? 道化の狂犬めが……」

 

「フッ、己の名前を名乗れない真の英雄も居るのだなと、愉快なだけだ」

 

「──そこまで死に急ぐか、痴れ者の道化風情がッ!」

 

「せめて散り様で我を興じさせよ、雑種!」

 

アーチャーはライダーに撃つ予定だったモノをシャドウ目掛けて放った。

 

強烈な炸裂音と共に二つの武器が放たれる。

しかしシャドウは無傷だった。

 

「バーサーカーとは思えんほど、えらく芸達者な奴よのぅ」

 

「え?」

 

「何だ、気付かなかったのか坊主。彼奴は初撃の武器を掴んで、二撃目をその武器で打ち払ったのだ」

 

「フッ、古代神話の武器か。これほどの宝はそう拝めるものではないな」

 

(ま、武器は嵩張るからコレクションには向かないけどね)

 

アーチャーの投じた武器をやや嗤いながらまるで己のモノのように扱うシャドウにアーチャーは再び激昂する。

 

「その忌まわしい手で我が宝物に触れたばかりか、それを己が獲物としようなど……不敬極まる気狂いの道化が!もはや肉片一つ残してやる価値もない、許さんぞ!雑種―――――――ッ!!!!!」

 

「その小癪な手癖の悪さでもって、どこまで凌ぎ切れるか?さぁ、道化らしく足掻いて見せよ!」

 

アーチャーから砲弾の如く放たれる武器をスライムソードと掴んだ武器で去していく。バールで剣と渡り合ったこともあるシャドウに出来ない芸当ではない。剣の角度をズラして衝撃を吸収し捌く。アーチャーの射出も凄まじいが、それと互角以上に渡り合うシャドウもまた英雄と呼ぶに相応しかった。

 

(数は凄いけど、芸が無いなあ。もう少し緩急付けたり、自分で攻撃したりすれば良いのに)

 

「──どうした?真の英雄よ。借り物の力で我を倒せる気でいたか?」

 

「──貴様、我が宝物さえも愚弄するか!? 影ごときの犬畜生があぁぁぁ──!」

 

アーチャーは更なる武器の射出で徹底抗戦の構えだ。シャドウとの攻防による拮抗状態が続く。

 

 

 

 

 

「──拙いですね。ギルガメッシュは怒り狂い、本気で『ゲート・オブ・バビロン』を解放しようとしています。序盤はアサシンの諜報に徹するという我々の戦略的には些か拙いでしょう」

 

「──切り札たる必殺の宝具をこれほど衆目に晒すとは、何と愚かな……」

 

「──我が師よ、ご決断を」

 

「……やむを得んな」

 

倉庫街を遠く離れた遠坂家の工房と聖堂教会の有する教会内から状況を観察していた二人の男のやりとり。

 

そして二人のうちの片方、ダンディな紳士風の男は右手の甲を前にして己が胸にかざす。

 

『…令呪をもって奉る。英雄王よ、どうか怒りを鎮め撤退を……』

 

「……チッ、命拾いをしたな。道化!」

 

「雑種ども。次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い。そして、そこの道化、貴様は(おれ)が手ずから裁定を下す。努努忘れぬことだ!」

 

最後にそう吐き捨てるように言い残して実体化を解き、姿を消す黄金の甲冑をまとったアーチャーのサーヴァント。それまでの喧噪が幻想であったかのように輝きの残滓は消え失せて、後に残るは見窄らしい倉庫街だった場所の残骸のみ。

 

誰も予想しなかった形で、黄金と影の対決という絵物語じみた戦いはあっけなく終結した。

 

(えぇ……帰っちゃったよ?トイレにでも行きたかったのかな?)

 

「……何だったんだ、あの嵐みたいなやつは……」

 

「どうやらアーチャーのマスターは、アーチャー自身ほど豪胆な性格では無かったようだなぁ」

 

ライダーとライダーのマスターが話をしながら急速に静まっていく場を見つめる。

シャドウとしても今宵は潮時、何よりアーチャーとの戦いが中途半端になったことでこの先の実力者プレイをどうするかばかりを考えていた。

 

 

 

 

 

「──興醒めだ。今宵の演目はこれまでか」

 

「─!待てバーサーカー!よもやこの場から逃げる気か!?」

 

もはや戦いに興味無しと言わんばかりに吐き捨てたシャドウの言葉にセイバーが反論する。

 

「──美しき剣を振るう者よ、貴様こそ人形を偽りのマスターとして隠れ蓑にする女だ。卑怯──などとは言うまいな?」

 

「──!?」

 

セイバーとアイリスフィールは驚き、内心狼狽える。アイリスフィールがマスターとして振る舞い、本当のマスターは自由に行動するという戦略を何故かバーサーカーに看破されていた。しかもアイリスフィールを「人形」と呼んでいたことからもバーサーカーには彼女が人間では無い、「ホムンクルス」だとバレている可能性が高い。

 

(─── 一体どこから情報が漏れたんだ)

 

嘆息を込めて心の中で呟いたのは、高台に位置取り、マスターを狙撃しようと目論んでいた男。名を衛宮切嗣、セイバーの真のマスターでもある。

 

「──舞弥、そっちからバーサーカーのマスターは視認できるか?」

 

『いいえ。見当たりません』

 

「……まずいな……」

 

(バーサーカーのマスターは確か──間桐雁夜。間桐家を出奔し、それ以降はルポライターとして生きてきた一般人が突然聖杯戦争の1年前に戻って来てマスターに──明らかに不自然だ。間桐の切り札として今まで隠匿されていたと考える方が自然だろう。戦場に姿を現さない慎重さといい、魔力消費の激しいバーサーカーを十全に扱う様といい、中々の手練れと見るのが適切だろう。なまじ優秀な魔術師よりもこういう手合いの相手の方が厄介極まりない。そもそも、一体何故アイリがマスターでは無いとバレたのか……。バーサーカーがそんな芸当をするとは思えない。間桐雁夜の手腕と見るしかないだろう)

 

衛宮切嗣はそう思考した。

 

 

 

 

「──貴様! 私が、女だと、卑怯者だと言いたいのか!?」

 

「だとしたら何だ?剣を交えるのか?可憐な女よ」

 

「─黙れ!」

 

次の瞬間には、セイバーとバーサーカーは相対していた。セイバーの見えざる剣とシャドウのスライムソードが激しく火花を散らす。

 

「──見えない剣とは趣向は中々。──しかし己の剣も明かせぬ臆病者ではな」

 

シャドウの挑発にセイバーは怒りを露わにして力任せに剣を叩きつける。自らを女と、卑怯者と、臆病者と罵られることは騎士王として看過できなかった。

 

(あんな見え見えの挑発に引っ掛かるとは。

バーサーカーが撤退してくれるのなら、素直に応じれば良いものを……)

 

衛宮切嗣はセイバーに呆れたように心の中で呟いた。

 

 

 

再び始まる2騎のサーヴァントの熱戦。

これを良しとしなかったのは、眉目秀麗な男ランサーだった。

 

「悪ふざけはその程度にしてもらうぞ、バーサーカー。そこなセイバーは俺が取ると約束した首級。それ以上つまらん茶々を入れるというなら俺とて黙ってはおれ――――」

 

『何をしているランサー? セイバーを倒すなら今こそが好機であろう』

 

「我が主!? ・・・お言葉ですが、セイバーは必ずやこのディルムッド・オディナが誇りに賭けて討ち果たしてご覧に入れると約束いたします!ですからどうか、我が主よ! この私とセイバーとの決着だけは尋常に・・・」

 

『ならぬ。ランサーよ、令呪をもって命ずる。バーサーカーを援護してセイバーを殺せ』

 

「・・・セイバー・・・済まん・・・っ!!」

 

ランサーの押し殺した声が漏れると、セイバーに向き直り、攻撃を仕掛ける。

 

ランサーの槍がセイバーを捉える。1対2の構図となり、流石のセイバーも苦戦を強いられる。苦悶の表情を浮かべるセイバーと自責の念に駆られるランサーの戦いが激しさを増す。

 

「AAAAaaaaLalalalalalaie!!」

 

効果音じみた変な掛け声と共に雷鳴が走り、閃光が瞬き、3人の死合いに割って入る。

 

「全くもってなっておらん!ランサーのマスターよ。貴様がバーサーカーに加勢するというならば、余はセイバーに加勢する!さぁ、どうする?余とセイバーを相手取る覚悟はあるかあ!?」

 

この言葉に賛同するかのようにバーサーカーは距離を取る。

 

「──水を差された。幕は降りた」

 

「──くっ…!引き上げだランサー!」

 

バーサーカーが戦う意志無しと判断したのかランサーのマスターは撤退の命を下す。

 

「──済まないライダー」

 

「なぁに、戦場の華は愛でるタチでな」

 

ランサーがライダーに謝意を伝えると霊体化して撤退していった。

 

「──今夜はここまでみたいね」

 

銀髪の髪を靡かせてアイリスフィールが口を開く。

 

気が付くとシャドウも消えており、聖杯戦争の開幕は二転三転の寸劇となった。

 

 

『──今夜はもう撤退か?』

 

マスターである雁夜から念話が飛ぶ

 

「そうみたいだね。締まらない幕切れだよ」

 

『サーヴァントの戦いって凄いんだな……でも時臣のサーヴァントを撤退させたのは最高に気分が良かった!」

 

「あーうん、そうだね」

 

(サーヴァントの戦いってやつは分かったけどなんとも言えない終わり方だなぁ。やっぱり昼間の内に色々やる方が良いのかなぁ。でもそれだと……)

 

やや不完全燃焼のまま、思想に走る陰の実力者であった。

 





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