推しの子 ルビーちゃん大勝利√ 作:ルビーちゃん可愛いやったー!
ある所に不幸な少女が居た。
少女は難病にかかり、物心がついた時から病院で暮らしており、同年代の子供のように学校へいく事も出来ず、友達も居ない。ただ一人、病院で両親を待つだけの日々を過ごしていた。
そんな少女だが、小学校高学年の年頃になると病状はより悪化し、まともに歩く事も出来なくなった。両親は日に日に悪くなっていく少女を見捨て、最低限の会話のみを義務としてこなし、直ぐに去って行く。さらに病状が悪化し、いつ亡くなってもおかしくなると面会にすら来なくなった。まるで興味を失ったかのように。
少女に残されたのは両親に買い与えられた大好きなアイドルのグッズだけ。
親に見捨てられた事を信じられず、少女は親に愛されるため、言われた通りにいい子にしていた。薄々、愛されなくなったことを感じてはいたが、人の助けが無ければ生きていけない少女に出来る事なんてなく、病気に向き合い、健気に、仕事だから仕方ないと、お見舞いに来ない両親に対して理解があるように振る舞う事、周りに迷惑をかけない事が彼女に出来る唯一の事だった。
世界に触れる機会もまともに与えられず、少女の世界のほとんどを占めていた両親は既に少女を見捨てている。だが、少女はいつかきっと振り向いてくれると信じて待ち続けた。
余命幾ばくもなくなり、体調が良い日というものがどんどん少なくなっていく中で、少女は一人の研修医の青年と出会う。
少女は最後に1度だけでもいい、大好きなアイドルを生で見たいと病院を抜け出そうとしていた所を発見された所から関係が始まり、それから医者と患者というよりも兄妹に近い関係にまでなった。親から見捨てられた少女にしてみればたった一つのつながりであり、将来、結婚しようなんて言い出すくらい、その青年に懐いていた。
将来、少女がアイドルになったら推しになる。
そんな約束を交わして、明るい未来を語り合う日々は少女にとっての救いであり、ただ死を待つだけの日々に彩りを与えていた。
それでも少女の寿命は短かった。
「せんせぇ……これあげるよ」
最後に、少女は自らの宝物を差し出した。それは好きなアイドルのキーホルダー。少女が愛して止まないアイドルのたった1回しか行けなかったライブの思い出の品。
「私だと思って大切にしてね」
死を目の前にしても両親は現れず、見捨てられた少女は、そのことについて嘆きも泣きもせず、なにかを青年に残そうとした。
「分かった。ずっと大事にする。ずっとだ……」
青年はそれを受け取った。何も持っていない少女の最後の贈り物を一生大事にすると誓って。その事に少女は最後に心の底からうれしさがこみ上げてきたのを感じていた。
「えへへ、せんせ、だあいすき……もし生まれ変わってもきっと……」
そう言って少女は亡くなった。そしてこの話は本来であれば、ここで終わるはずだった。
少女は短い人生はこうして終わり、青年は心に傷を残しながら人生を生きていく。それが運命の悪戯か、少女は憧れのアイドルの子として生まれ変わる。
これは不幸だった少女が転生し、アイドルを目指す物語。
「よしよし、いい子でちゅね。瑠美衣」
「ばぶぅー! (きゃー!!! アイ可愛い! 本当天使!! 最高!)」
そのはず……多分。
*****
side:ルビー
キラキラ光る大きくて綺麗な瞳、艶々な黒髪、しみ一つない白い肌。この世で一番綺麗な顔を選ぶとしたら、私は目の前の人を絶対に選ぶ。そう思っていたアイドルがより綺麗になって目の前に現れた時、私はこう思った。
死んだと思って目が覚めたら天国に居た!!!!
そう思うのも無理ないと思う。というか、全人類の夢と言っても過言ではないアイの顔面ドアップを見るという夢が叶ったならそう思うのも仕方ない。さっきまでせんせとお話をして、その後、死んじゃったのかと思ったら、推しのアイドルの顔があった私の気持ちを考えて欲しい。
そして、それだけじゃなくて推しのアイドルがめちゃくちゃ可愛がってくれて、おっぱいくれて、抱っこしてくれるとかもうヤバない?! もう最高すぎて失禁しそう! というかした!
それでも優しく抱きしめてくれる天使だよ。ほんとヤバいよ。天国最高!!
それから寝る→おぎゃる→寝るという天国のサイクルを続けて、もうずっとここで暮らしてもいいかもしれないと思っていたけど、そこは天国じゃなくて病院だったらしい。
たしかにそんな感じはしてたけど、アイに甘えられる生活の方に目が行きすぎてて気にしていなかったし、その天国が、私がさっきまでせんせとの最後の別れをしていた病院だったと気がついたのはアイが退院してタクシーに乗った時だった。
結婚を約束した運命の人との涙の別れを済ました後、どうやら私はその病院でアイの娘として転生したみたい。
かつて夢見たアイのような顔に生まれ変りたいという夢がアイの子供として生まれ変わったことで叶ったんだって気がついた。えっ? 死んで天国に来たわけじゃ無かったの? アイに子供? となったけど、頭のいい私はすぐに分かった。
これはあれだね。若くして運命の人とお互いに愛し合いながらも結ばれずに亡くなった私に、神様がチャンスを与えてくれたに違いないってね。
今まで恨んでばっかりだったけど、なーんだ。こうやって救いをくれるなんてやるじゃん。
つまり、そういう事だね。
神は言っている。アイドルになってせんせと結ばれろと。
せんせもアイの事滅茶苦茶好みって言ってたし、その顔で責められたらイチコロに決まってる。もちろん一番はアイだけど、アイの娘なら、世界で二番目の美人に育つに違いない。というかなる!
そして、アイドルになって、せんせに推して貰って、引退したら結婚して、ラブラブな新婚生活を過ごして、今度こそ幸せな人生を送るんだ!
なのに、なんでせんせはアイの担当じゃないの! それだったら、すぐにここがせんせの居る病院だって気がついたのに! 運命の再会になったのに! もしかしてこの病院辞めちゃった? それで居なかった? それなら病院にせんせの連絡先を教えて貰わないと!
あれから何年も経ってる事を考えると、これからあと16年。せんせもそうなったら40代!アラサーどころかアラフォー! それまで独身で居てくれるか心配だから、電話を早めに確保してせんせに連絡を入れないと。
私が16歳になるまで待ってて! せんせ好みの顔に生まれ変わってお嫁さんになりに行くよ! って言わないと!
そう決意を固めた私は、アイ、いや、ママの携帯を確保する事を考えつつ、おぎゃって、ばぶって、おっぱいを吸うことを事を楽しむ事にした。
「ルビーどうしたの? お腹すいた? おっぱい飲む?」
「ばぶ~!!! (飲む~!)」