推しの子 ルビーちゃん大勝利√   作:ルビーちゃん可愛いやったー!

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第5話 芸能界のお仕事?!

 

 あれから1年が過ぎた。

 

 怪しい赤ん坊だった二人も立ったり喋ったりしても不思議では無い程度には大きくなった。なお、同年齢の赤ん坊は一言か二言喋るのが精々なので、普通におかしいのだが、天然のアイはヤバいくらいの天才だと思って特に気にせず過ごしている。

 

『なにか』を掴んでからの星野アイの勢いは凄まじかった。

 

 Twitterを通じて話題になった事もあり、その話題性を利用しようとアイドルとしての仕事だけではなく、モデル、ラジオアシスタントなどの分野の仕事の依頼が来るようになった。そしてそのチャンスを生かした事でただのトップクラスのアイドルからバラエティータレントやモデルなどの仕事も熟せると認知される事になる。そして、より大きな舞台への足がかりに繋がるテレビドラマの仕事というチャンスを得るまでになった。

 

「ママの初ドラマ楽しみだねぇ」

 

 ルビーはまるで主演になったかのように喜びニコニコと笑顔でアイに甘える。

 

「ちょい役だけどね~」

 

 アイはルビーの頭を撫でながら、そんなに喜ぶほど大きな仕事じゃないと言う。

 

「例えちょい役だとしても凄いよ。これで目立つ事が出来ればもっと良い役がくるかもしれない」

 

 それに対して、アクアは、これをきっかけに次の仕事が来るかも知れない。そんなチャンスを手にした事自体が凄いとアイを持ち上げていた。

 

 喋ることが出来るようになった三人はルビーを中心によく喋るようになった。ルビーはアイの一挙手一投足を褒め、喜び、凄いと全力でアイを持ち上げ、それに謙遜するように、そんな事ないよと言う。それに対して、どれくらい凄いのかを具体的に言ってアイを持ち上げる。

 

 そんな会話がずっと繰り返されていた。

 

 このままアイは快進撃を続け、女優としても評価されるはず!! そうなれば世間にアイの才能が認められ、売れっ子芸能人になる! 

 

 ルビーとアクアの二人はそう思って疑わなかったが、アイの登場シーンは殆どカットされてしまっていた。監督も「演技は平凡だが目を引く」と褒めていたのもあって納得のいかないアクアは、撮影の時に知り合い気に入られた時にもらった名刺の電話番号を打ち込み、文句の電話をドラマの監督にかけた。

 

「ちょっと監督! アイ全然使ってないじゃん!」

「あー、あれな。良い仕上がりだったのに残念だったな」

「じゃあ、どうして!!」

 

 アクアが激高する様に、良いものを出せば良い扱いをして貰えると思ってるなんて若いなぁ~と思いつつ、赤ん坊なんだから若いもなにもないかと五反田監督は詳しく説明をしだした。

 

「あの主演している女優は可愛すぎる演技派として売り込んでるって事は知ってるか?」

「テレビで見たことはあるけど、それがなに?」

「可愛すぎるなんて謳って売り出してる女優の隣にさらに可愛い女の子が居たらイメージ戦略的に問題になるだろ? こっちの方が可愛いなんて思われたら、当て馬になっちまう。アイが可愛すぎてその女優が食われたなんて結果になれば、今までの投資がパーになる。だから出来るだけカットするように連絡が来たんだよ」

「なにそれ」

「大手の役者の事務所の主役とぽっと出のアイドル事務所のチョイ役。どっちを優先するのかなんてわかりきってる。ま、事故にあったと思って諦めろ」

 

 事務所同士のパワーバランスで負けたから、そっちの方が優先された。そのことを説明されたが、アクアは、なら仕方ないなんて思えなかった。

 

「納得いかない」

「芸能界を夢みるのは良いが。芸能界に夢見るなよ。ここはアートではなくビジネスの場だ」

 

 そう言い切った後、五反田の顔が良いことを思いついたとばかりにニヤけた。

 

「そっちの主張も分かるし、悪かったとも思ってる。替わりといっちゃなんだが、アイに仕事をふってやってもいい。映画の仕事だ。文句ないだろ?」

「えっ、マジで」

「ただし、お前が出るのが条件だ」

 

 

 *****

 

 side:アクア

 

「ただし、お前が出るのが条件だ」

 

 その言葉を聞いて、ただ単純に面白そう……なんてだけでこんな条件を出したとは思えない。なにか狙いがあるはずだ。それはなんだ? 

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

 そんな事を考えていると、さっきまで演技がまったく使われなかったので演技が下手だったのかなぁと困惑していたアイを励ましていたルビーが声をかけてきた。

 

「あの監督にアイを使わなかった事に抗議の電話をかけたんだけどさ……」

「あっ! 私も言う! なんでママの事使わないか問い詰めてやる!」

「ルビー、話を最後まで聞いて……」

 

 憤慨するルビーを宥め、どういう経緯で使われなかったのかとか、俺が映画に出演するのを条件でアイをその映画に出演させる話をしてきた事など話した。

 

「つまり、ママが可愛すぎたから使われなかったってこと?」

「まあ、端的に言えばそんな感じ」

「なにそれ! ママは世界一の美少女なんだから同じ画面に映せば目立つのなんて当たり前! どんな役でもどんな場面でも主役になっちゃうなんて見れば分かるじゃん!」

 

 俺も大概だけど、ルビーのアイ信者っぷりはヤバいなと思った。

 

「二人ともどうしたの?」

 

 二人で話しているとアイが話しかけてきた。

 

「あっ、ママ! さっきお兄ちゃんが監督に電話をかけてなんでママを使わなかったか聞いたって!」

「えっ? アクア、いつ監督と知り合いになったの?」

「撮影をしているときになんか気に入られて名刺渡されたんだ」

 

 そう言って、さきほどの話を要約して伝えるとアイは花が咲いたような笑顔をしていた。

 

「アクア、映画出るの?」

「うん、出たら、アイの事も映画を出してくれるって……」

「うわぁ、映画館でアクア観られるんだ! 絶対に可愛いよ」

「いや、そっちはどうでもいいよ。アイが映画出られるって話の方が……」

「どうでもよくないよ! 映画館にも行って、DVDも買わないと! 撮影日っていつかな。見に行きたい!」

 

 そう言って、事務所のパワーバランスの事でドラマで使われなかった事とか、映画の仕事が貰えると聞いて喜ぶよりも、息子の晴れ舞台を喜ぶアイの姿に母親としての愛情を感じる。本当の息子ではない事に罪悪感を感じながらも、初めて受ける母親の愛情に口角が上がってしまう。いいおっさんが17歳の女の子になにを思ってるんだと自分でも思う。でも……

 

 アイとルビーがきゃっきゃとはしゃぐ姿を見て、監督の思惑はともかく頑張らないとなと思った。ちなみにアイは仕事と撮影日が被ってしまい来れないみたいだった。

 

 それから数日が過ぎて撮影日が来るまで、俺はミヤコさんに芸能界のルールなどの事を聞いて、うまくいく為に必要な事を聞き出した。

 

「小学生未満の子役なんて礼儀作法とかルールを守るなんて期待されてないですよ。ましては赤ん坊なんて泣いて騒がなければいいって思われてますし」

 

 そんな事を言われたが、だからこそ出来る事に意味があると思っている。

 

 俺の才能とやらは全て早熟な事によるものだ。試しに演技の本を読んでみて実践してみたが、ルビーと比べると月とすっぽんだ。自分に演技の才能なんて無いだろう。だから出来るだけの事をやる。

 

 周りの人とコミュニケーションを取って、なにを求められているのか?を理解して、その要求を満たしていれば足は引っ張らないだろう。アイの為に……そして、アイドルになりたいと言うルビーの為に、足を引っ張る事だけはしてはいけない。

 

 台本は読んだ。そして台本から大体の意図は分かる。俺に求められてるのは演技じゃない。なら、それ以外をやる。

 

 撮影現場でなにをやればいいのかはこの間のアイの撮影の時に監督から聞いた。

 

「新人役者に演技力なんて期待していない。画面に新鮮さをくれれば及第点」

「客に売れるか現場に好かれるかどっちかがなきゃ次の新人に席を奪われる」

 

 客に売れるかなんて分からない。だから……

 

「初めまして、◯◯さんですね。共演することになった苺プロのアクアと申します。この間のドラマ見ました。共演できてうれしいです。本日はよろしくお願いします」

 

 共演者はすべて調べた。

 

 その中で特に売れた作品、演技が上手くいったであろう作品を調べて、それを観てファンになったと言う。そうすれば……

 

「えっ、この間のドラマ観てくれたんだ。どうだった?」

「ええ、12話の涙を流したシーンをみてじーんと来てもらい泣きしてしまいました」

 

 話に乗ってくれる。少なくとも好意を持っている事は伝わるだろう。共演者との人間関係に問題がない事が一番大事というのはミヤコさんから聞いている。

 

 長々と拘束すれば迷惑に感じる事もあるだろう。だから短く、上手に相手を気持ちよくする。

 

 例えば小児科医はあまり儲からないし、その努力と仕事量に見合うだけの給与はない。よく病院でも赤字部門と足を引っ張っていると言われる事も少なくないし、それで潰されてしまうこともある。脱毛クリニックなんかに行けば毎日定時に帰れて1000万くらい軽く儲かるのに、そこに居る理由は子供の笑顔が見たいとか子供を救いたいとかの使命感などの気持ちだからなんて人は多い。

 

 子供から尊敬される。子供から認められる。子供の憧れになれる。タレント業についている人ならそんな職業についているというのはモチベーションになっている部分はあると思う。子供にはそれくらい力がある。

 

 その武器を使う。愛嬌なんかはどうしようもないが、愛想良く、礼儀正しく、賢い子供を演じれば、少なくともマイナスにはならない。中学生以上なら当たり前のスキルでも、年齢を考えれば異常で記憶に残るだろう。

 

 演技力が無くても次を貰えるような立ち回りをする。そして次を掴む。演技力は時間をかけてなんとかするしかない。そもそも子役の中でも賢い子でも3歳からで、4歳以降でも大多数の子が台本通りに言葉を発することすら危ういらしいので、それだけでもアドバンテージだろう。

 

 そして……

 

「となりの子は妹ちゃん?」

「はい! ルビー?」

「初めまして、苺プロのルビーと申します」

 

 一緒にルビーも挨拶に参加させることで一緒に顔を覚えて貰う。

 

 いつからルビーに芸能活動をするチャンスが来るのかなんて分からない。だから挨拶だけで顔を覚えて貰える今のチャンスも生かそう。数年後に一緒に働く機会があれば、それだけで会話のネタに困らない。

 

 現場のカメラマンやAD、派遣のスタッフの人の噂なんかも馬鹿にならない。そっちも手を抜かずに対応する。医療の現場でも看護師や看護助手、事務員さんとの関係を怠ったらすぐに問題が起こる。というか結託して問題が起きたことにされたり嵌められたりするので、好意的に思って貰うように立ち回るのは必要だった。港区女子より厄介と言われる看護士さんを相手にしていた経験がこんな時に生きるとは思わなかった。

 

「初めまして、有馬かなさん。共演することになった苺プロのアクアと申します。本日はよろしくお願いします」

「はぁ、ガキの相手は嫌なのよね。NGばっかり出して足引っ張らないでよね」

 

 だから……態度の悪いクソガキ相手に怒らない。問題も起こさない。笑顔で上手に受け流す。問題がある人間にもきちんと対応出来る事はプラスの評価に繋がる。

 

「なにあれ、態度悪!」

 

 この後の演技でクソガ……もとい共演者の女の子を大泣きさせてしまったが別に問題にはならなかったので良かった。

 

 この後、監督は「絶対おかしいだろ」とか言っていたが、俺は俺の出来る事をしただけだ。軽いノリで監督にルビーの事を売り込んだら、爆笑されたが仕事をくれたので上手くいったと思って良いだろう。

 

 

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