貴方は一般的な生徒である。   作:ホシのユメ

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前話は悪いオタク心がはっちゃけすぎました。ごめんなさい。反省してます。
なのでお詫びとしてもう一話ほど根性で仕上げたので出します。
追記
とんでもねぇガバがあったので全力で書き直しました。

〘前回の誤字報告者〙
【えりのる】さん、誤字修正サンクス!


十一話 ホシノに負けてた人

『──もしもの話になるけどね? もしもだけど、どこかの学校に在籍していなくて、一文無しで、携帯電話もなくて……そして記憶喪失。そんな子を見かけたらどうするべきだと思う?』

 

 唐突に電話を掛けられてそう言われてもなと貴方は困惑した。

 今はキヴォトス一帯を巻き込み、今回は百鬼夜行にて実施された晄輪大祭が終わって月日が経ち、アビドスでは雪がそろそろ降ってきただろうかと(砂漠で雪が降るというのも中々変な話ではあるが)冬が本入りしてきた寒空の下で家籠りが加速してきた頃合。

 日頃怠惰である貴方はより心地良い怠惰のために気が早いながらも簡易的なコタツを作り出し、たまたまあったミカンを乗せてモチュモチュと食みながらFPSにて角待ちプレイでいつもの煽りカス共を弄んでいた時の話であった。

 ちなみに本来なら目玉であろう晄輪大祭に関しては何も言うつもりは無い。正確には何も言いたくない。貴方としては早急に忘れてしまいたいのだ。

 ミレニアム、下手をすればキヴォトスでも屈指の高身長である貴方がノリであまりにも合わないミニスカメイド服を着せさせられ、屈辱と恥辱で震えながら奉仕活動(配膳と萌えキュン、プラスで写真)をしていた記憶など真っ先に記憶から消し去って何も無かったことにしておきたいのだ。

 普段は割と畜生な精神性かつ嫌いな奴にも必要なら頭を下げられるタイプな貴方にも凄まじい程の生き恥であった。できることなら寮部屋に置いてある刀(代々受け継がれているものらしい)で切腹からのセルフ介錯をしたかった所だが、世間がそうさせてくれなかった。

 優しくもある意味では厳しい世界である。

 なおメイドと言えば定番である「おかえりなさいませ、ご主人様♡」と顔を真っ赤にして言う貴方を動画に取ってノンコード内にぶちまけやがった、偶然訪れていたらしいアホのゲヘナの煽りカス(バレた経緯は「声♡」だそうだ)は日頃の恨みの倍返しも兼ねてしっかりと壁に植えておいた。

 クソのネルとバカのホシノに関しては諦めた。アレは何がなんでももうしばらくいじり倒すと決めた時の顔であるし、そも戦力差的に無理だった。

 貴方は本当に恥ずかしかった。あの時ほど、より高い力を求めたことはないだろうなと自嘲する程度には。

 

『そう言われてもな、じゃないでしょうに! こっちは真剣にそんなことがあった! あったんだよ!』

 

 と、月日が経てども未だ消えない黒歴史に内心悶えつついるとホシノから声が飛んだ。ユメが死んだ後遺症が大きすぎていよいよ頭のネジがぶっ飛んで妄想しだしたかと半ば思ったが、どうも事実らしい。ホシノは貴方に下手な隠し事や嘘を言う事はなかったので事実と考えても良いだろう。

 そんなどこかのティーンズノベルじゃないんだからと貴方は茶化しを入れつつ、それならと少しばかり考え込むことにした。

 まずは保護する。保護した後は……どうするべきか。

 順当に考えるのであれば適当に名と携帯電話を与えてからどこかへの転入(最低ではアビドス、最上はミレニアムになるだろうか。最低の部分はホシノに怒鳴られそうだが)までは支援し、できたのならば一応相談を受けるかもしれないので連絡先を交換して、そこで終わりになるだろうか。

 まあ人道的に考えればこうなるだろうと貴方は推測する。

 

『……んー、まあ、そうかな。うん、スミカもそうだよね。それに【ユメ先輩ならそうした】だろうし』

 

 またしても繰り返した言葉に貴方は呆れた。心のそこから呆れた。ため息を付くほどに呆れた。

 

『なにさそのため息!? 悪いって言うの!?』

 

 とても悪い。非常に悪い。人類誕生からを含め、その上で類を見ないほどに悪い。貴方はわざと規模を大きくして話す。

 

『そこまで言う!?』

 

 そこまで言う。ホシノの言葉をオウム返しに、しかし毅然とした態度を取る。

 当然の話になるが、小鳥遊ホシノは梔子ユメではない。小鳥遊ホシノである。

 しかしそうであるにも関わらず、電話をする際に時々「クチナシ病(貴方命名)」を発症しているのが感じられるのだ。

 症例は「自分自身を『おじさん』と呼称する」「意図的に気を緩ませているようなトーンになる」「【ユメ先輩ならそうした】を中心に行動するようになる」である。

 貴方は最初にその現場を見たとき、凄まじく驚いた上で凄まじく呆れた。

 過去にどれだけ囚われているのかと。もう死んだ人間にいつまでしがみついているのかと。

 悪意云々欲云々とほざいては過去の理論と過去の人物に囚われている貴方がどうこう言えた口ではないし、その因果か不可視のドデカいブーメランが貴方の脳天にホシノのアホ毛が如くぶち当たった(現実で。死ぬほど痛かったそう)のだが、それはそれでこれはこれ。

 一度しょうもない死に方をした以上貴方は若干自分のことを軽く見ている節があり、自分がどうなろうがまだ良いが、ホシノが狂ってしまうのは勘弁だと考えている。

 いつ仮想の【ユメ先輩】を空想して暴走するか、見ていて危ういと不安になってくる──一切オブラートに包まないでハッキリ言うのなら見るに堪えない。さながら過去を侵食されているようで気が気じゃないのだ。

 ホシノはユメの代弁者ではない。アビドスの代弁者でもない。

 当然貴方でもない。ましてやその他の有象無象でもあることもありえない。

 小鳥遊ホシノは小鳥遊ホシノである。

 

『……うへ。そうだね。ごめん。でも流石にすぐは治らないや。でもまあ、少しずつどうにかするよ』

 

 こうは抜かしてこそいるが一旦沈静化したらしい。貴方はほうと息を吐いた。

 こんなんでも貴方が必死にケアをしてかなりマシになった状態である。一度部屋を訪れた際にうへうへ呻きながらユメの遺品を文字通りの意味で塵一つ残らず集めていた時は引いた。ドン引きした。マジ引きした。

 その後は捨ててもいいものと捨ててはいけないものを貴方の独断の元に有無を言わさず分別し、キレたホシノに地下深くまで埋められたが何度も説得したことでようやく少し和らいだ。

 こうして多少冗談を言えるようになって、ようやく貴方は一安心ができそうな所であった。

 

『それとミニスカのすが』

 

 貴方は電話をブツリと切り、同時に煽りカスらに断りを入れて(丁度貴方が仕返しをされた所なのでかなり煽られつつ)ゲームから退出した。

 やはり始末しなくてはなるまいか。

 貴方は立ち上がって刀を腰に挿し、それと試作レールガンとスナイパーライフル、その他諸々のリスペクト多めな開発品たちを担ぎ、勝てばよかろうなのだスタイルでホシノに討ち入りをかますことを決めた。

 なあに、この程度でホシノは死にもしない。貴方は一種の信頼をもってホシノを今持ちえる最大の力でぶちのめしに行った。

 

 

 

 

 

 アビドス最強の片割れに強襲を仕掛けて喧嘩を売った結果、ものの見事に返り討ちにあって砂の大地に上半身を埋めるはめになったアビドス最強のもう片方。

 誰であろう還来地スミカ、つまるところは貴方である。

 ミレニアムで度々行われている貴方の埋まり芸はここアビドスにおいても健在であった。

 初手最大出力試作レールガン(リオとの誓約があったがバレなければ犯罪ではない)はダメージになりこそすれ致命打にならず、多重連結爆弾は巻き付けたまでは良くてもパワーで引きちぎられ、盾内蔵散弾砲は丸ごとぶち抜かれ、十八番の引き撃ちも距離を詰めきられて敗北。

 これで1083戦1勝1分921敗160完封である。

 

「あのさぁ……やめてよね、真っ向から喧嘩売ったらおじ、私に敵うはずないでしょ」

 

 それはそうだがと貴方は返答できなかった。

 得た1勝とて広大な大地と資金力にものを言わせ、雪天の最中で偽装と本物を入り混ぜた芋神拠点の多重設置な害悪戦法を繰り返した果てに、ホシノに嫌気がさして降参した結果のもの。

 残りの1分も銃器や暗器、近接武器無しの完全素手オンリーな殴り合いでどうにかもぎ取った1分である。

 芋神戦法の時は貴方が普段使いしている資金がスッカラカンになったのでしばらくは前線に参加していた記憶があるし、殴り合いの時は後でユメに普段とは考えられない態度で双方ボッコボコの状態で正座させられて死ぬほど怒られたのが懐かしい。

 懐かしさを覚えると共にそろそろ砂の密度を耐えるのに疲れてきたので、できれば早めに引き抜いて欲しいのが貴方の所感である。(驚くほどのカナヅチだから習得した)息止めがいくら持つにしろ長時間いると流石に窒息するし、砂の味はもうよく分かったのだから。

 具体的にはジャリジャリしていて自然由来の雑味や靴底系のエグ味、コンクリ系の苦味が強い。つまり不味い。バカほど不味い。

 

「じゃあすぐに引き抜くよ……──ハイっとね」

 

 ずぼりと軽快な音を立てて引き抜かれる貴方。見慣れた景色と見慣れた砂の広がる大地。そして場所の移転された校舎──だがやはり何度か見かけていたもの。

 違う点といえば、ホシノの他にもう2人ほど追加されていることだった。

 

「えぇ〜っと……1年ぶりですね、スミカ先輩っ」

 

 傍から見ても高級品だろう服を見にまとい、ふわりとした雰囲気を漂わせるネフティスのお嬢。かつての貴方の後輩であった十六夜ノノミである。

 嫌ネフティス気味な貴方はうわと思いつつも礼儀正しく挨拶した。礼は人としてあってしかるべきものとよく聞かされていたので、貴方もそれに従った。

 

「……ん」

 

 その隣にいる、寡黙で小さく、見た覚えのあるマフラーを身につけ、貴方と似たような白髪を持つ、さながら子犬のような印象を持たせる子供。おそらくホシノが言っていた名無しの子供なのだろうと推測できた。

 同様に、貴方は挨拶をした。

 

「この人がもう1人のアビドスの人? ホシノ先輩に負けてたけど」

 

 全然違う。貴方は断固として否定した。

 それはそれとして負けてたという言い草になんだかイラついたので貴方は宣戦を布告した。

 

 

 

「それじゃあ最後の一人も集まったってことで……第1回、廃校対策委員会会議〜!」

「い、いぇ〜い!」

「ん、楽しみ」

 

 パチパチと2人の拍手が響き、名無しの子供もどこか期待しているような空気感の最中、だから自分はアビドス生ではないのだけれどとぼやいた。

 

「うへ、名誉アビドス生にして元名誉生徒会役員、現名誉廃校対策委員会が何か言ってる」

 

 だから違うであろうにと貴方は訴えたがいつも通りに通らず、仕方ないと貴方は黙り込んだ。

 という訳で名無しの子供(なお後から砂狼シロコという名前があると聞かされた)対貴方を終え、しばし休息したかと思えば唐突として始まったこの会であった。

 どうして自分はアビドスのこういう事にはよく巻き込まれるのだろうかと自問するが、ここに来たからという自答が返ってきたのでそっかぁとしか反応するしかなかった。

 ちなみに勝敗は貴方の勝ちである。詳しくは述べないが、勝因を言うなら貴方の銃ぶん投げで意表を付いたという点になる。

 つまるところ近づかれたときの(ホシノ曰く)しょうもない猫騙し戦法である。大人気ない。実に大人気ない。

 さておき。

 

「じゃあ本題を話すよ。まずアビドスってば、今はおじさ──わかったよ。今は私一人しかいない訳だけど、それが前提ね。スミカも知ってるでしょ?」

 

 聞いた覚えがない。本当に今初めて知ったことなのだ。

 他の人達は転校して行ったのだろうか? だとすれば賢明だが薄情なだと、驚きを表面に表しつつも、全く知らなかったと答──

 

「冗談でも知らないって言ったら地面ね」

 

 えず、知っている、よく聞いた覚えがある、それはもう鮮明に覚えていると貴方は大急ぎで弁明した。

 

「うわ凄い勢いで否定し始めた……まあ良いか。そんな訳で今からどうやってこの学校を廃校の危機から救い出せるのか、それじゃあ時間を渡すよー」

 

 と、唐突にして渡された時間に困惑を隠せずも、とりあえずはと貴方は真剣に考え始めた。

 ……しかしそうとはいえ、そう簡単にポンと思いつかないのが今回の問題点であった。

 どんな問題を解決するにしろ、何事も人手がいる。その人手が現在ではいない、いるとして──また仮に4人と仮定するにしてもたかが4人である。

 流石にこれを上手く成功させる方法などまずもってない。少なくとも現実的に見て、貴方はそう思った。

 と、一人が手を上げる。

 

「はいノノミちゃんどうぞ〜」

「はい、私はアイドル業をやってみるべきだと思います!」

 

 アイドル。アイドルね、と。貴方は2度復唱する。

 確かに一度大ヒットすればおよそ10億近い借金を返済仕切ることも不可能ではないと言えるだろう。

 だがそこまでの道のりを考えるとあまりにも難易度が高い。売れるにも時間は必要だし、自らを売り込むにも費用はかかる。機材も決して無視はできないし、衣装を調達するにも金額はいる。

 また貴方はこういう業界だと「枕営業」と呼ばれる闇──もしくは悪意というのを知っている。

 アイドルの世界とは人の業や悪意、妬み、嫉み。そして悪い意味での人の望みと人の夢が詰まったあまりに恐ろしい環境だ。

 はっきり言うなら宝くじの方がまだ見込みがあるだろうし、何よりホシノを業界の闇にまで巻き込みたくない。そういう一心で貴方は否定の意思を見せた。

 

「ですが……そうですか……じゃあ今度までにもう少し考えてみますね!」

 

 そういう事ではないのだが……まあ、理想を持つ分には問題ないだろう。貴方はとりあえず何も言わないことにした。

 と、その次。

 

「んっ! んっ!」

「はいシロコちゃん」

「それよりももっと早い方法がある。現金回収車両を襲えばいい」

 

 倫理観をドブに捨てたのかというような提案だったので貴方はすかさず反対した。

 

「なんで?」

 

 何でも何もダメであろう。道徳と倫理観と風紀に欠けている。それがまかり通るなら社会など実在しない。貴方はフリーダムよりもリバティの方が好きである。

 一体誰がこんな小さい子供をこんな蛮族にしたてあげたのだろうか。貴方は周囲を見回し、一人──もとい初代蛮族のホシノを見かけて納得したようにあぁ、と息を吐いた。

 それにピキリときたのかホシノは貴方に声を掛けた。

 

「で、さっきから否定してばっかだけど、そういうスミカはどうなのさ?」

 

 そう言われるとやはり思いつかないのが貴方であり。

 もうヤケクソだとばかりに何かの像でも建ててしまえば良いだろうと貴方は提唱した。具体的にはアレとかソレとかコレと──

 

「はいはいロボットオタクのスミカは黙ってようねー」

 

 刹那背後を取られ、ホシノに卍固めを食らった。

 呻き声を出しながらも貴方は訴える。

 なぜこれがロボ物だと断定したのか。そうでなく偶然被ってしまった可能性とてあるだろうに、いくらなんでも横柄ではないかと。

 

「だってこういう時に言うのはスミカの大好きで大好きでしょうがないロボット系か特撮でしょ? それに……あれは目がロマンに駆られた時の目をしてたしね。ロボット系のプラモデルについて聞かれた時の目だった。だから多分そういう類のじゃないかなってさ。というかその言いぶりだとわざとだね? そっかそっか、スミカは悪い人だね。じゃ、入れるね……」

 

 言うやいなや卍固めをより強く極めはじめたではないか。力を入れてどうする。緩めろ折れるとかなり本気で訴えつつ手で全力タップするが止める気配がまるでない。

 

「……あの、ホシノ先輩? その人って仮にも他の学校の人なんじゃ……」

「大丈夫だよノノミちゃん。スミカは多少雑に使っても問題ないから。それに、多少心から雑に使っておいた方が気持ちちょっとくらいは心許すと思うよ」

「それで良いんですか……?」

「いいんだよ、スミカになら」

「えぇ……?」

 

 貴方とホシノの触れ合いを嘘でしょとばかりに一歩引き下がったノノミとは対称的に「ん、スミカ先輩は少し雑に使ってもいい。わかった」と変なことを覚えたシロコ。

 今のところ教育に悪いのはどう考えてもホシノであろうがと叫んだが、聞く耳を持たれなかった。解せない。

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