貴方は一般的な生徒である。   作:ホシのユメ

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〘前回の誤字修正者〙
【ホタテ土器】さん、誤字修正サンクス!

*一年ホシノが青春しているってさ。


三話 鎌倉武士イズム

 貴方はミレニアムサイエンススクールの在学生である。

 改め、貴方はアビドス自治区にある私立ネフティス中学校の卒業生である。

 とはいえしかし、貴方はいわゆるアビドスに対する地元愛だとか愛校心だとかといった類の感情は別に無い。むしろアビドス高等学校という末期の土地を、まだ綺麗な内に終わらせておくべきではないのだろうかと思っている節さえある。

 なぜも何も、砂と廃墟と僅かな人数。同じ砂漠まみれな環境のエジプトでもピラミッドや特徴的な文化、有名な遺跡などといった観光資源、そして人的資源があるというのに現在のアビドスにはそれさえも無い。昔はアビドス砂祭りというものがあったらしいのだが、今は行われていないのだから余計に何も無いが加速している。『何も無い』から『何か有る』は生まれない。空気からパン──いや、それ以上──真性の虚空からパンが作れない事と同じだ。

 ターン制RPGで言うところの、体力がミリの状態、かつ相手の体力がマックスで次のターンで自分が確実に死ぬような状態よりも詰みな環境で一体何が出来るというのだろうか。

 しかも在校生は旧友──小鳥遊ホシノを入れて数十名に過ぎず、その上で借金の金額は9億以上。

 重度の痛みを訴える終末医療患者にモルヒネではなく通常の鎮痛剤を投薬しているようなもの──つまり気休め程度にさえもなっていないような現状。

 こんな状態でなおもアビドス復興と旗を掲げていられるほど、貴方は理想論者でいられるような精神性など有していないのだ。

 何かの研究がアビドス復興のキッカケになればという思いなど何も無く、つまるところ本当にただ半分消去法的な形で選んだだけであり、本当にただアビドスに進学してイザベラ色*1の青春を生きるのが嫌だっただけである。

 身も蓋もないことを言えば、貴方はどうしようもない環境に見切りを付け、地元を捨てて安泰な所へと身を置いたというそれだけに過ぎない。そもそもネフティス中学校とて人数はかなり少なかった上、そのほとんども別の学園へと進学することを決めていた。言い訳がましいが、貴方もその1人に過ぎなかったということに変わらない。

 とはいえ、ホシノに顔すら見せないほど極度に薄情な訳でもない。そもそも貴方は特段アビドスが好きな訳ではなく(だが嫌いでもない。あくまでもフラットな感情である)、復興は到底無理だとキッパリと見切りを付けているだけであって、アビドスにいるホシノ個人は友人として好きである。

 ……もしくは一種の羨ましさも含まれているかもしれない。貴方は現実的に考えて無理だと考えたが、小鳥遊ホシノはそれでも諦めていい理由にはならないと理想を固持している。

 現実主義者は同じ現実主義者をバカにすることは良くても、理想主義者を愚弄することはあってはならない。貴方はそう考えている。

 現実主義者というのは、精神が弱いがゆえに理想論者になれなかった敗北者──そう貴方は、認識しているためだ。

 現実主義的に生きるなど、灰色も灰色な人生であることに違いはないのだから。

 貴方はそう、認識し続けている。

 

 

 

 まあ、ともかく。

 現在の貴方は愛用のマウンテンバイクで現在ホシノとその先輩が在校しているというアビドス高等学校の校舎へと道のりを進めていた。

 パタリパタリと羽織っている白のシャツジャケットと銀の髪がはためき、カーキ色のジーンズズボンと黒のTシャツが風になびく。シャツジャケット以外は制服のそれとほぼ変わりない貴方だが、あくまでも足として使っているだけなのもあって、本格的なサイクリング用の服装をすることはほとんど無い。

 一応パチモンの仮面ファイターを(大体はホシノが)ぶちのめして得た賞金でマウンテンバイクを度々チューンアップしていた結果、ご愛顧させてもらっているという理由でライディングウェアが送られていたのだが、あんまりにも使わないので現在はクローゼットの肥しと化している。

 まあさておき。

 貴方は道中、肉体的疲労感を乗せて息を吐く。いくら風が心地よいとはいえ、キンと射してくる日光に汗をかかない訳ではない。一度陽の射さない所へと体を落ち着かせ、そういえばやっていなかったなと道中にホシノへと向かっているという旨のメールを送りつつボトルホルダーに留めた水筒の中身を飲む。

 と、返信。

 

『うへへ、もしかして転校してくれたり?』

 

 流石に難しい話だろうと貴方は画面越しに苦笑を浮かべる。

 再度言うが、借金がいくらなんでも目処が立っていなさすぎるのだ。学校もろとも心中は貴方の思う所ではない。これを大体凝縮した旨のメーリング。

 

『怒るよ』

 

 それにlol*2と貴方は送る。ついでなので残念賞代わりにポケットティッシュでも持っていくことを決意しつつ、再びサドルに跨って漕ぎ始める。

 土産話はどういったものを用意しようか。ミレニアムの環境だとか、道中に買ったサブマシンガン用マガジンをそのままぶっ込んだ拳銃*3は話の種になりそうだ。

 そんな事を考えているうち、気付けば既に門前。考えに耽ると貴方はいつだって過程を忘れるものだ。

 海が如くにどこまでも広がる砂景色。所々見える廃墟。校舎こそ違えど、つくづく見慣れた景色だ。出迎えをしにきたのだろうホシノも含め、1月と数週間ぶりだが懐かしく思える光景だった。

 なお到着早々に脇腹をつねられた。ホシノ曰く「自業自得」だそうだ。解せぬ。

 そこからは適当な話題で会話を繋いだり(例の拳銃に関しては「意味ある?」の一蹴。火の玉ストレートすぎるので貴方は泣いた)生徒会本部に着いてからはホシノの先輩である梔子ユメに「久しぶりだねぇ〜!」と抱きつかれたり(ちなみに貴方にとっての梔子ユメは「ホシノの先輩」であり、良くも悪くもそれに留まっている)でそれまでのいつも通りらしい環境。

 数ヶ月前までは貴方がひっきりなしに経験した事象たちだ。出不精であり、ゲームと本が友達だった貴方でもこの頃は楽しかった記憶だと明瞭に覚えている。

 

「……つまり、その大オアシスには希少鉱物が埋まってる、って事ですか?」

「そっ!」

「……先輩! こうしている場合じゃないですよ! 今すぐにでも探しに行きましょう!」

 

 そう耽っている間にまたしてもトンチキな提案が既に2人の中で共有されている。ああ、これは軌道修正しないとまずいなと貴方は口を挟む。

 見つかる保証もなければ範囲も広い。仮に見つかった所で二束三文にもならないガラクタが関の山。行動のほとんどが徒労に終わる可能性の方がよほど高いだろうから、それならその時間で好条件なアルバイトを探した方がもう少し効率的。

 そう提案したはいいものの。

 

「でもやらないことにはわからないじゃん? それに、折角ならスミカちゃんもやってみたらどう? もっと早く結果が分かるかもしれないし、ホシノちゃんも見つけられなかったものが見つけられるかもしれないじゃん?」

「そうだよスミカ、ああだこうだと外から言っておきながら自分は手助けしないなんて、それって不誠実じゃない?」

 

 と、なぜか貴方までもが参加するという話に発展していた。思わずなんでさと言葉を零す。

 そもそも貴方はアビドス高等学校の生徒でもましてや生徒会の1人でもなく、ミレニアム・サイエンススクールのエンジニア部に籍を置いている1人。当たり前でもなんでもない完全な事実である。

 

「何を言ってるのさ、スミカも名誉アビドス高等学校生徒の1人だよ? ミレニアムにいるだけのアビドス生徒会だからね?」

 

 冗談めかしつつも横暴を振りかざすホシノにそんな訳がない、横暴反対と弾劾する。たとえどれだけ暇そうに見える貴方とて、そう暇を持て余してはいないのだ。

 ──トンチキな提案で事を引っかき回す梔子ユメ。先輩の言うことならと意気揚々と乗っかる小鳥遊ホシノ。現実主義的な発言でどうにか軌道修正を図り、だが結局トンチキ事に巻き込まれる還来地スミカ。貴方が通う場所を変えるまではよくあったこと。──ほんの少しだけ、懐かしい思い出たち。

 てんやわんやとする生徒会の中、貴方は思い出して、ほんの少しだけフフと心から笑い。

 刹那、和気あいあいとした雰囲気とはあまりにもそぐわない爆発音が鳴り響いた。

 

「ハッハァーッ! そろそろこの校舎もあたしたちフルフルヘルメット団に明け渡す時が来たんだよォーッ! 今のうちに荷物をまとめておくんだなァーッ!」

 

 ピキリと、貴方の額に青筋が立つのを覚える。聞き馴染みのありすぎる不愉快な声。聞き馴染みのありすぎる汚らしい口調。

 窓を覗けば思った通り。パチモンクソ野郎の1人、仮面ファイターダブリューだ。

 見た目こそどことなくカラーリングが左右半分こなライダーに似ている見た目だが、発言からわかる通りに中身は紛れもなくパチモンクソ野郎の仮面ファイター。ちびっこの憧れの対象どころかちびっこを泣かせる対象である。

 貴方からすればとんだ冒涜だ。

 何が「1人で2人分の力」か。何が「お前の罪はあたしを相手したことだ」か。

 ハーフボイルドとその相乗り相手は2人で1人分(拗らせた言い方をすれば2人で街のみんな分の力)だし、そうほざく仮面ファイターの罪は生存罪。生きている事そのものが罪である。

 なんなら仮面ファイターらパチモン共の行動は、貴方の好きに対する一種の舐め行為、いや、もはや舐め腐り行為と捉えてもよろしい。

 舐められたら殺す。貴方の常識である。

 仮面ファイター死すべし、慈悲は無い。

 貴方の古くから使っている銃器であるスナイパーライフル──彩色も装飾もストラップも一切無く、卒業間際のホシノに指摘されてようやく『インヒューマンズ・フィロソフィー』と名付けられた、ホシノ含めほとんどからは無骨を通り越して無機質だと言われている代物──、その引き金に指を掛ける。

 この事案に貴方も手を貸す事を伝えつつ、おおよその作戦の通達。

 小鳥遊ホシノと梔子ユメが雑魚、もといヘルメット団を殲滅し、そうして孤立したパチモンを貴方が徹底的に叩き潰してぶっ殺す。

 なるほど完璧な作戦である。殺害というキヴォトス最大のタブーに触れるのでまるきり不可能だということを除けば。

 

「スミカ、殺人はキヴォトスじゃ大罪だよ」

 

 もう慣れたと言わんばかりの顔で発するホシノに向けての貴方の反論。

 パチモン共がパクっている元ネタの更に元ネタを辿れば、主人公は怪人バッタ男である。元ネタと怪人の違いは与えられた力を弱き者の為に使うか弱き者に対して使うかであり、して目の前のパチモン共は弱き者(別に貴方たちは弱くないが)に対して使っている。

 つまるところパチモン共は自分自らを怪人だと喧伝しているようなものである。怪人は人とあるが、その実態など人の形をした害である。

 害になるものは早期に根元から断つ。そうした方が楽であり、また基本的な世間の常識である。

 仮に世間がそうでなくとも、少なくとも貴方の中ではそれが常識として成立している。

 

「スミカ。周り見てよ、周りを」

 

 そう言われて少しだけ見回せば、怯えた表情を浮かべるユメの姿。

 

「……だ、ダメだよ、人殺しなんて……ね?」

 

 ……そう言われればそうかもしれない──いや、全くもってその通りである。

 今のは頭に血が登りすぎたと貴方は自省する。いくら相手がどうしようもない、一生涯治ることない作品愚弄癖を持つ怪人共相手でも殺すというのはやりすぎだろう。殺してしまった事例というのは某兎戦車なライダーがやらかしてしまっているが、それでも故意的にではない訳で。

 キヴォトスではテロリズムや犯罪行為はなぜか許容されやすい傾向にあるが、殺害行為、および死という概念に関しては前世のそれ以上に忌避感が強いのだ。

 一発「しょうもない」理由でくたばっている貴方にとってはよくわからないが、それがキヴォトスでの常識である。

 ホシノが教えていた「周りの常識に合わせて動く」という事をたまに忘れてしまう。そうなって暴走することはやはり良くないことだと貴方は再び自省する。

 ぱちん、貴方自身の頬を叩いて強めの気付け。いつの間にか無表情になっていた顔に親しみやすいような笑みを浮かべる。

 

「それじゃ、頑張るよー!」

「わかりました、先輩!」

 

 ユメの発した掛け声にも一応合わせておきつつ、貴方はスマホとインナーイヤー型*4の無線イヤホン(好古的な貴方にとってみれば風情がないらしいが)を取り出し、BGM代わりにと好みばかりを集めた音楽のプレイリストから音楽──今回のスターターはヴァン・ヘイレンの『Jump』──を流し始める。

 嫌いな事から真正面に向き合うのにはある程度悪感情を鈍らせる麻酔がいる。貴方にとっての麻酔は音楽だった、というだけである。

 

 


 

 

「お、覚えてお、グギャッ」

 

 うるせぇ! その首置いてけ! とばかりにパチモンを引き摺っていたヘルメット団の1人に狙撃を脳天に叩き込む。これで気絶したのか、地面に倒れ込んだのを見届けてから貴方はようやく音楽の再生を止めることにした。

 結果は完勝。こちらは弾薬費以外は損傷無し、対して相手は壊滅状態。前線2人に火力支援と弾薬支援を行う貴方、敵対者デストロイヤーな小鳥遊ホシノ、ヘイトタンク兼ミリ削り役として十二分の働きをするユメを布陣にした理不尽の暴力編成なので勝って当然、という節もあるにしろ。

 しかしあのリーダー格──パチモン野郎、サブマシンガン用のマガジンを全部喉奥に叩き込んでもまだ呼吸が止まっているどころか気絶程度で済んでしまうとは。思わず潰れてもなお足をひくつかせるゴキブリを見かけたかのように顔が歪んでいた。

 流石にパチモンの1人を騙るだけはある。まあ呼吸が止まっていたにしろ気絶にしろ、どっちにしろ怪人ならぬ害人である以上はできれば再起不能、二度とパチモンを名乗れない体にするまでにはしたかったができないものは仕方がない。

 とはいえしばらくは尻から鉛玉と栄養の出涸らしの融合体が出る生活は逃れられまい。それを想像するだけでしばらくは単体でご飯が食えそうである。

 ちなみに敵が件の仮面ファイターのみと見なした瞬間に支援位置(SPECIAL)から前線位置(STRIKER)へと立ち位置を変え、移動の最中に低姿勢状態でかき集めた砂を顔面目掛けぶちまけて一瞬怯ませてから側頭部銃床(殺意全部乗せ)ぶん殴りアタックで地面へと叩き伏せ、そこから口の部分に無理やり突っ込んで弾切れまで撃ち続けるという貴方の所業にホシノは「うっわぁ……」とドン引きしていたし、ユメは怖がっていた。

 悪役じみた所業なのだから至極当然である。

 して懸賞金なのだが、今回は全額譲ることにしておいた。

 というのも、ただただ貴方がここでぶちのめす選択肢が選べなければしばらく気を塞いでしまう程には不愉快だったから、それを効率よくぶちのめすために手を貸してもらっただけ。貴方としてはあの冒涜者を殴れたのならそれで十分だったということだ。

 断じて可哀想だから今回くらいは譲ろうという憐れみの精神を持っていたからではない。そも憐れむというのは一種の舐め行為であり、「舐められたら殺す」精神の貴方にとってはやってはいけない事なのだ。

 自分がやられて嫌な事は他人にもやらない。現代社会での常識である。

 なおゲームでは積極的に嫌なことを押し付けるのが定石である。

 そこからは発掘作業になぜか貴方も付き合わされ(なぜかホシノとユメは競泳水着に着替えていた。ノリの悪い奴、という視線をホシノから向けられていたが普通は水着なんて持ってこないのである)、貴方の進言していた通り何も出てこなかった訳で。

 結局何も出てこなかったじゃないかとプリプリする貴方を落ち着かせるために柴関ラーメンを食べに行き、少し落ち着いた所で今回はここらの辺りで帰宅することにした。この時間帯ならまだ深夜前には着いているだろうという考えである。

 

「それじゃあねー! 良かったらまたおいでね!」

 

 貴方は首肯する。何も無いとはいえ、ホシノはいるし見ていて面白いのでたまに来る価値はあるのだ。

 それに柴関ラーメンも変わらない美味しさがある。貴方はこってりとしたものよりもあっさりとした味わいの塩派だが、そんなニーズにも幅広く対応している柴関ラーメンはラーメン屋として腕前がかなり高いのではないだろうか。

 後は思っていたよりもユメが見ていられないのもある。

 

「もし嫌になったらアビドスにおいでよ。歓迎はするからさ」

 

 それだけは丁重に断っておく。だから貴方は名誉アビドス高等学校生徒ではないし名誉廃校対策委員会でもない。

 なおひっぱたかれた。解せぬ。

 

 

 

 ちなみに帰宅の途中、貴方はやっぱり弾薬費くらいは貰っておけば良かったかもしれないと少しだけ後悔した。

 いくら弾薬が前世の現代よりかは格段と安いであるにしろ、別にタダではない訳だから。

*1
茶色がかかった灰色。由来はイサベル一世の願掛けとして身につけ続けた***。

*2
laughing out loud。海外でいう「草生える」みたいな意味。

*3
本当にある。P50というP90の50発入りマガジンをそのまま使用しているもの。

*4
耳を密閉しないイヤホン。ちなみに密閉するタイプのものはカナル型。




ちなみに還来地スミカの名前にもしっかり元ネタがあります。
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