貴方は一般的な生徒である。 作:ホシのユメ
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〘前回の誤字修正者〙
【夜叉。】さん、【アイムチキン】さん、誤字修正サンクス!
アビドスから帰ってきて早々に先輩方から詰められ、いよいよ叱られる時期でも来たかと思ったその瞬間にスコープの出来云々について幾度と問われ、中学校時代の作品と答えたら散々調べられた挙句、将来有望だと現学年ではウタハにつぐ開発を担う段階に駒を進めた生徒。
つまりは貴方である。
何かやった訳でもないのに、なぜこんな事態になったのだろうと貴方は思っている。
なにせ急に起きたことだったのだ。争いの方面で目立ってしまうようなことをした覚えはない(仮にそうだとして、スコープに関しては問われないだろう)し、面倒臭がりな性分なのもあってよく部屋に置いていく銃を先輩方に見せた覚えもない。当然言いふらしたりなどは1度たりとて記憶にない。
強いて言えば白石ウタハが「……もしかして銃を持ってないのかい?」と聞かれた時に、たまたま部屋が近かったので持ってきて現物を見せたというその位だが──まさしくそれではないか? 貴方は訝しんだ。
恐らくそうだろう。その一つ以外に思い当たりが無いということはきっとそれだ。さも無ければ先輩方が貴方以上の気まぐれ人間か思いつきで質問するタイプの人間だろう。
……困ったことに反論しようにもできない、というのが日頃の貴方のエンジニア部に対する印象であるとしか言いようがない。
「根は良いし優しい人ではあるが、頭はおかしいし発想がぶっ飛んでるヤベー奴らの集まり」。少なくとも貴方がエンジニア部という部活に対して持っている偏見であった。
なおその認識だと貴方も必然的に頭がおかしくて発想がぶっ飛んだヤベー奴になるのだが、そこは考えていなかったらしい。
まあさて、そんな事はどうでもいい。
エンジニア部の開発側として立った貴方は、久しぶりに手をこまねいていた。
理由は彼女たちが謳う「ロマン」、引いては貴方の開発しようと思っている物である。
──ロマン。
貴方にもロマンと感じるものが無い訳ではない。
一撃特化の砲撃兵装や近接武器、通常の人類には到底扱いきれない大火力もしくは超加速の兵装などのまるで実用性の薄いロマンも重々承知している。むしろそれこそが素敵だ。大好きだ。
貴方も所詮は元男の子であり、心持ちが男の子であるということはこういった実用性の薄くて素敵性能*1の高い、カッコ良さが売りな兵器をとても好むという訳だ。
だが問題としては、これが果たして先輩方および同級生たちに響くのだろうかという所である。
前もって「好きなものを作ってみたらいいんじゃないかな」ということを聞いているが、貴方は知っている。こういう事を言う人物は軒並み『自分が好みな範囲内で』という前置詞がつくものだ。貴方はその事実を前世の小学校時代で深く心に刻みつけられている。
いや、まさか基本朗らかで貴方から見てよく分からない妙な改造をしたりそれをロマンと称したり、はたまた素敵性能に傾倒するような、火の玉ストレートに言うなら思いつき改造オンリーな先輩方がどこぞの教師の屑にして自己中の鑑のような発言をするはずがない──予想するなら「うんうん、それもまたロマンだね」と同調するだろう──と考えられるが、それでも心の予防策は必須になると思っている。
今にして思えば自分が優位に立って気持ち良くなりたいだけのそいつは某パチモンと同等かそれ以下の汚物で、そんな奴の言うことなんて安価なトイレットペーパーよりも薄い言葉の羅列でしかないのだが、当時の貴方はそれはそれは深く傷ついたものだ。
なのもあって何も想定せず、心の思い通りにして作ったものを「つまらない」「面白みがない」「価値がない」などと鼻で笑われ一蹴されてしまったら、心の脆い貴方はしばらく寝込んでいられる自信がある。
だからこそ心の予防策として今までの発明品を詳しく観察し、どうにか先輩方が好みそうなものを当てはめて制作してみようとしているのだが。
──何度見ても理解できぬ。
机に突っ伏しながら、思わず貴方はそう言葉を零す。
控えめに言って実用性があるのかどうかさえも疑わしい何かを発明したかと思えば、時折正気を取り戻したかのように真っ当に有用なものも制作する。極端なまでにロマンか思いつきに傾倒したものもあれば、ただ実用性オンリーなものもある。
これでいったいどうやって傾向を調べれば良いというのだ。何なら良くて何なら悪いのだろうか。何ならロマンがあって何なら無いのだろうか。彼女たちが謳うロマンとは何なのだろうか。生きることにロマンが必要なのだろうか。自分の場合はどちらかと言えば素敵性能だからロマンではないのだろうか。そもそもロマンの定義とは何だろうか。
うごご。
何かロマンの探求者というか、哲学者じみた発想へと逸れかけている貴方の思惑の最中。
「やあ、どうしたんだい?」
ガゴンッ! と大袈裟なほどに大きな音を立てて向き直すとそこにはまたしても白石ウタハ。最近は貴方のことを友達と呼ぶようになった生徒である。
他がそうするのはどうだっていいが、少なくとも貴方が友人と心から呼ぶのは小鳥遊ホシノただ一人。
他は『友人』ではなく妙に『距離が近しい他人』。母や姉、家を名乗る一般不審者ならぬ友人を名乗る一般不審者である。
とはいえ助けにならない訳でもないだろうと貴方は話しておく。開発側に回されたのだが、おこがましいだろうから先輩方の作品を模──ではなく、参考にしようとしているつもりだと。
「んー……何が理由かは知らないけれど……多分、模倣したような発明をする方が余程『つまらない』って評価を受けると思うよ」
……そういうモノだろうか。渋い顔で話すウタハに貴方は首を傾げる。
というのも貴方は、自分好み以外を病気的に否定する自己中に筆頭して、ダブスタ、レイシスト、ソシオパス*2と、アニメや特撮といったもの以外で畜生な性格ではない、いわゆる真っ当な人間を見かけた試しがないのだ。
いやまあ今まで貴方が目にしてきた大人、というか現実に会った人(キヴォトスだけでなく日本の方をも含めても!)はその大半がろくでもない最低なクソ野郎ばっかだからなのかもしれないが。
利益目的の裏切りも気まぐれの理不尽も経験したという今までの人生経験上、貴方は根本の段階からあまり人を信用していない。信用する前にまず疑うが身についている。
そういった、いわゆる『性悪説』をモットーに掲げて生活している貴方。
「それに言うだろう? 制限された思考からは新しい発明は生まれない! 失敗は成功の母! 常識を破らずして革新は起こせない! そうだろう?」
正直ウタハのその言葉自体もあまり信用していない。
そういう甘言で誘っておいていざ失敗したり本当に常識破りなことをしたら「そんなことは言っていない」「お前が勝手にやり始めただけだ」と手のひらドリルで袋叩きにする、貴方曰く「ドリラー畜生」な人は片手で数えられないほどの数はいた。
ウタハは恐らくそのクチではない(むしろ自分から常識破りをしていく方だ)し、学校や企業などによくいるダブスタ畜生でもないだろうが、しかして疑うに越したことはない。
とはいえまあ、たまには乗ったっていいじゃないかと貴方は納得したように頷いてみせる。
事実ニコラ・テスラもその当時の常識に囚われないことでテスラコイルやネオンサインなどの多様な発明をしてきたし、ダーウィンの進化論も宗教的な「当たり前」を考慮しなかったからこそ今の進化論が特別に有力視されている訳で。
常識の方はともかく、先輩方の当たり前に則ってなければならないという必要性もない。
……だろう。恐らくは。たぶん、きっと、めいびー。
それにそういう奴だったならこの自分という人間を舐め腐りやがったという事なのだから、舐め腐った奴をぶっ殺してアビドス砂漠に埋めればよろしい。
貴方はそう心の中で唱えて精神安定を目論む。……魂の形が鎌倉武士なことには最早何も言うまい。
今の貴方は線引きボットである。
正確には設計図作成ボットである。
思い立ったが吉日と即時行動、ついでにウタハも巻き込んだ貴方だが、いくら思いつきメインで生きているとて流石に設計図も作らずに作り始めるというたわけはしない。そのたわけをした先輩方の末路を貴方は知っている。
具体的には開発品が爆発四散した。死んではないが結構なダメージで数日入院とのことらしい。
よく死んでいないなと貴方は思っていたが、ゼロ距離で対物弾(使用したのはそれを撃ちだせる拳銃。対物弾を射出するが分類上は拳銃である*3)を頭部に当てても脳震盪だけで済んでいる(実証例は仮面ファイターエキサイト)ようなトンチキ耐久が多いこの世界では今更の話かもしれない。
そういえばと思い出していた貴方をよそにウタハはこちらを覗き込み、「へえ、見た目はシンプルな感じなのか」と意見が飛んでくる。それに反応して回想から戻る。
ひそかに見えたウタハの設計図にはまたトンチキなものが写っていたが貴方は見なかったことにした。ケチャップを撃つスナイパーライフルなど知らない。知りたくもない。
「……うん? 所でそれは?」
と、丁度引いていた図面の1つを垣間見たウタハは貴方に問う。
それは貴方の好みの作品シリーズの内の1つ──その模倣である。
答えれば、ほんの少し「それはどうかなぁ?」と言いたいような疑わしい顔。
違うのだ。こればかりは貴方の心的内情が関わっている。
──貴方はその作品が好きだ。理不尽と無常に苛まれながら、それでも折れることなく戦うその姿が。そしてそれを叶える純白の人型兵器が。
そしてそれが叶えた奇跡を、画面映しの絵越しにだが確かに見た。
「それでも」と言い続け、ただ耐え忍びながらも進み続けた結果、人の微かな願いが叶うその事実を。
制作しようとしているものはその模倣でしかないが、確かに自分の根幹に根を張っている存在なのだ。
「ほうほう、それは随分と熱が篭ってるじゃないか!」
貴方はとうに見切りを付けてアビドスを出奔した身である。ホシノやユメ(それと冗談であろうが、その他のアビドス在校者たち)は未だに貴方を学校が違うだけの廃校対策委員会の一員だと言ってはいるが、それは詭弁だろうと貴方は思っている。
アビドスに在籍していないのなら、その時点でどれだけ関係性があろうとも他人に他ならない。危機を被ることがないから安全圏から野次を飛ばしている、ただ関係性が一般と比べて随分と近しいだけの他人でしかない。たとえ一人と友人であってもだ。
「あの、話がズレてきて……」
後先の見えないアビドスと心中できるほど、強くはなれなかった。奇跡を信じることができなかった。「それでも」と言うことなんてできなかった。
だから、そうはなることのできなかった貴方の代わりに在し、どうかホシノ含めアビドスにいる彼女たちの、はたから見れば微弱もすぎる願いが叶ってほしい。
よって貴方はこう名付けている──【RX-0-
「……へ、へぇ……」
こんな事を語ると見直したを通り越して引かれた態度を取られた。理由は分かるが解せぬ。
まあそんな意味合いもあるがメインは素敵性能とロマンであると、若干不満ながらも笑って茶化すようにして締めくくる。
とはいえ今図面を引かれているそれは貴方が1年を通して制作する予定のものであり、今回制作する予定のものではない。
OSや制御機構の勉強もしなくてはならないしそれ単品では物足りない。某緑色に光ったりする構造資材は「できたらいいな」レベルの段階。
なので貴方の最初の発明はレールガンにしておきたいと決めていた。
ついでだからとウタハにも見せておく。
「へえ、これがスミカが作るつもりの発明か……うん、うん?」
レールガンである。
電力稼働だし、その力で磁石じみた特性を持つ弾を射出する。
なあんだ、立派なレールガンじゃないか。
「……レールガン? 本当に?」
レールガンである。
確かにバズーカじみた大きさや20mm越えの口径、撃ち出すものを考慮するならパイルキャノンという方が正しいだろうが、定義上はレールガンである。
なあんだ、立派なレールガンじゃないか。どこに問題があるのだろうか。
「これパイルバンカーじゃないか!? ラトムズとかで出るタイプのパイルバンカーじゃないかこれは!?」
レールガンである。
電磁力で
反論を言うのは構わないが試作レールガンの杭の錆にする。いいね?
「綺麗な笑顔で物騒な事を言うねスミカ!?」
アビドス暮らしの頃のような、物騒な発言を繰り出した貴方にウタハのツッコミが炸裂した。