貴方は一般的な生徒である。   作:ホシのユメ

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日刊21位です!本当にありがとうございます!
追記6月11日追記
日刊5位です! 感謝してもし足りない……!
そしてとうとう赤評価で埋め尽くされた……本当に感謝しかできない……本当にありがとうございます!



「若葉ヒナタがいるんだから多少パワー盛るくらいはええやろがい」派vs「それやったら強くなりすぎるやろがい」派vs「でもよぉ……女の子がでっけぇしおもてぇ武器持ってるのってよ……ロマンあるだろ……」派の戦い。

勝者はロマン派でした。
今度こそ不定期投稿です(小声)
〘前回の誤字修正者〙
【ダルダルタルタル】さん、誤字修正サンクス!


六話 火力万歳、筋肉万歳

 ロマンとは何たるか。素敵性能とはなんたるか。

 それは「ロマン」を探求する際によく区別の困難なものとしてあげられやすい課題である。

 これらを貴方なりの定義で語るとするならば、こうなる。

 ──ロマンとは、貴方の定義上では「個人がそれに対して見出したフェチズム」の事を指す。

 これは個人によって変わるだろう。

 例えば「オトコのロマン」と言われたのなら、どういう想像ができるか。当然人によっても違うだろうがおよそ二極化できると考えられる。

 1つはフルアーマー化や暴走形態、現地改修にライバルとの合体必殺技といった「男のロマン」方面。もう1つはバニースーツやビキニ、彼シャツ、男装などの「漢のロマン」方面。

 後者の方面は貴方としては別にどうだって良いし、ネルに向けようがウタハに向けようが、それこそ自分に向けようが、実害さえ出さないなら好きにしていればいいと寄らず厭わずの立場を取っている(ただし友人のホシノにその欲を向けたなら誰であろうが問答無用で即殺する心意気である)が、前者に関しては大いに共感できる。

 貴方は暴走形態やライバルとの合体必殺技というシチュエーションは、それはそれは恐ろしく好みである。カッコイイではないか。

 そして現地改修や最終決戦に向けたフルアーマー化も素晴らしく好みである。設定がこじつけ気味だったとして、そうだとしてもカッコイイではないか。

 このロマンを否定できる人物というのはそういないはずだ。

 ──一方で素敵性能とは、貴方の定義上では「どれだけそのパーツの見た目や動作が優れているか」というものである。

 これもまた人によってポイントが異なり、例えばスリムな方が好みだとか、逆にマッシブな方が好みだという人もいる。ちなみに貴方は強いて言うなら後者である。前者も好きだが。

 こういった素敵性能の高い武器は、オブラートに包むと使い所が限られる傾向にある──ストレートに言うと実用性が終わっているか尖りすぎているものが非常に多い。だがだからこそ惹かれる人も多い、という訳だが。

 身も蓋もないことを言えば「カッコイイだけの武器を使える俺つえぇ……」「こんな不便な武器で勝つことができる俺かっけぇ……」という厨二病性の発露である。

 

 

 

 さて盛大に貴方の厨二病性を晒しつつも、つまるところ貴方にとってのロマンと素敵性能の関係性は【「ロマン」≒「素敵性能」】と考えてもさしつかえない。

 そんな訳で、貴方のロマンを突き詰めてみよう。

 何をどう考えても無くてはならないという必要性はないし整備時のパーツ分けが面倒になる排熱機関。だがあるからこそ『良い』。

 なぜも何も、あった方がカッコイイからである。

 こういうロマンの詰まった武器というのはデカければデカいほど『良い』。

 なぜも何も、デカい方がカッコイイからである。

 現実的に考えたらこんな「ゴミ」で「役立たず」な「ド産廃」など使うに一考する余地すらありやしない。だがそれで『良い』。逆だ。それこそが『良い』。

 なぜも何も、素敵性能がずば抜けて高いからである。

 つまるところ貴方のロマンとは素敵性能の高さ、純粋な大きさ、そして理論値性能の高さである。

 

 

 

 という訳で貴方は理論上1人で持ち運びと射撃が可能な戦車砲を製作するつもりであるというのを、今まで語っていたロマンと素敵性能云々のそれをかなり圧縮した上でユメへと伝えた。

 

『おバカさんだ!? 頭の良いおバカさんがいる!?』

 

 誰が頭の良いバカだ。貴方は電話越しにバカだという言いがかりに憤慨する。

 そもそもこれだって妥協案である。

 本来ならアハト・アハト──名砲として名高いドイツの高射砲『8.8cm Flak18』を魔改造して理論上一人で担いで射撃が可能なロマン極振り兵装を製作しようとしたのだが、どう計算しても重量が無理だとのたまった(その重量は実に7,407キログラム。人間を卒業しなければまず持てない)。

 渋々、本当に渋々、貴方でも脂汗を地に垂らし、過剰重量に歯を食いしばりながらもどうにか圧死しないで保持できる47ミリメートル口径の戦車砲へと切り替えたのだ(それでも閉鎖機含めて154キログラム、全備重量なら411キログラム。立派な人間卒業者専用の武器である)。

 この多大な妥協があっての案を頭の良いバカと言われては困る。

 なおアビドスでの貴方への陰口として代表的なものは「細いゴリラ」「人みたいなバケモン」、かのホシノからは「リトル・ゴリアテ」である。筋肉万歳。

 ちなみに射撃時の姿勢は脇抱えや肩担ぎなどではない、文字通りの意味で全身を使っての保持。両肩も両足もドッシリと構えての射撃体勢になることだろう。流石の貴方とてこれを片手で操縦できる人間ではなかった。

 

『実態がもっとおバカさんだった! 頭の良いおバカさんじゃなくってロマン大好きなおバカさんだった!』

 

 誰がロマンバカだ。嘆くように言葉を吐き出すユメに貴方は憤慨した。

 ロマンバカは確かに否定できまい。戦車砲を個人用の武器にするなどまずもってとち狂った発想だ。

 だがカッコイイではないか。最終手段の一撃必殺感があるではないか。火力万歳。

 

『それで拭えないおバカさんみがあるよ!? スミカちゃんの言うロマンに傾倒しすぎだよ!?』

 

 自分は断じてバカではない。それだけは多少ある胸を張って断固と述べる。

 仮に貴方がバカだったとして、その場合だと名誉含めアビドス生徒会内でよく集まっている三人衆──梔子ユメ、小鳥遊ホシノ、還来地スミカは『ただのバカ』『真面目バカ』『ロマンバカ』のアビドス三馬鹿トリオになる訳なのだが。

 

『ただのバカって、そんな、いやでも……ひぃん……』

 

 ……まあ自分が自覚して、それをどうにかしようとしているだけ貴方が見てきたバカより億倍は優良である。それは褒めておいた。

 実際貴方が見てきた例は治そうともしないし、そもそも気付かない。

 

『えへ、そうなの? そっかぁ、えへ、えへへへへ……』

 

 チョロい。あまりにもチョロすぎる。

 貴方はあんまりにもチョロすぎる性格が心配になってきたし、ここまで他人にゲロ甘な態度で理不尽と畜生まみれな世間で生きられるのか不安にもなってきた。彼女の今後的にも、周りへの被害的にも。

 梔子ユメは本人が知らないだけで特大級の厄ネタである。なにせかの「暁のホルス」こと小鳥遊ホシノが敬愛してやまない相手であり、また「(妙な2つ名が付いていたらしいが記述しない)」こと貴方も一応は世話になっている人物である。

 そんなユメに何事かあったと聞けばまずホルスが黙っておらず、また主にホシノへの義理の為に貴方も立ち上がる。

 そうなるとなんやかんやあってその企業は潰れる。倒産という揶揄でも物理的にも。が、いつもそうできるとは限らない訳だし、企業もそうなると運営を恐れ始めるだろう。

 人を買う企業など潰れて然るべきだが、それはそれとして社会は企業という歯車が、またその企業にも人間という歯車があってこそ成り立つ訳で。それがゴタゴタになると貴方にも被害が出る。

 貴方のように「舐められたら殺す」メンタルを持て、もしくは近しい関係だろうが全て敵とみなせ、とまでは言わないが少しはものを疑う姿勢を持つべきだろう。懐に潜り込もうとする敵はこういう甘言を使うのだから。

 

『……本当に? もしもその人が心から褒めてたら?』

 

 と、ユメが貴方の理論に言葉を放つ。打って変わってユメの声色は真剣である。なればと貴方は真面目な態度で言い返す。

 ──そんなことは有り得ない。

 人の放つ言葉はそのほぼ全てが自己利益のための思惑が絡まっていて、賢しらに人をだまくらかして利を得ようとしていると。

 

『でも、ホシノちゃんのことは受け入れてるでしょ?』

 

 当然だろう、小鳥遊ホシノは特例だから。貴方はそこらの畜生と見知った畜生と、古くからの付き合いとでは歴然の差があって当たり前であるから。

 小鳥遊ホシノは、()()()()()()だから。

 

『……そっか!』

 

 安堵のような、しかし不安も入り交じったような声色でユメは納得するような言葉を発した。雰囲気も和らいだので、折角ならと貴方は聞いておきたいことを聞いた。

 して、テスト勉強の調子はどうなのだと。アビドスに期末テストなどというものがあるかどうかはさておき、また貴方が教えられるようなものではないとはいえ、一応として知っておきたかった。

 

『……あっ』

 

 駄目そうだ。

 この調子だとまた補講を受けてひんひんと嘆く未来があるに違いない。乾いた笑いを発しながら天を仰ぎ、目頭を抑えて小さく呻いた。

 ユメが今するべきは廃校対策ではない。勉強だ。

 

『そう、そうだね……それじゃあ、またね!』

 

 貴方の言葉にやや躊躇うような態度を見せつつも、まあそうする予定はあるらしい。貴方はほうと一安心して、ではまたと貴方も返して通話を切った。

 ──明日も明後日も明明後日も、変わらない日常が続くと思って。

 

 


 

 

「バカだろお前」

 

 バカとはなんだ。貴方は美甘ネルの言いがかりに憤った。

 最近では割と関係性が近しい(ただし貴方の中での分類は変わらず『友達を名乗る一般不審者』であるし、バケモン扱いでもあり、またそれに相応しい対応をしている)美甘ネルだが、にも関わらず貴方のロマンは理解できなかったらしい。

 ちなみにウタハは慣れた。別の言い方をすれば見習ったともいう。

 

「そりゃあお前、戦車砲を一人で担いで一人で撃つってバカみたいな案をバカって言わねぇなら何をバカって言うんだよ」

 

 そろそろバカという単語のゲシュタルト崩壊を引き起こしそう(この段階で「バカ」という単語は25回使われている。貴方にとっての素敵性能、およびロマンが傍から見ればバカバカしいからと言うのが主軸だろう)な繰り返しの数だが、貴方からしてみればバカは美甘ネルである。

 貴方は知っている。美甘ネルの出席日数はかなりギリギリであり、また遅刻の常習犯であることを。これでテストでもやらかしたら夏休み返上で補講が確定することを。

 貴方はそれを丁寧に、ともすれば煽りにも取られかねない口振りで──というより、普通に煽りが目的でねっとりとネルに囁いた。

 

「ほぉう? そんならあたしがてめぇがあの夜の時に歌歌ってたってのを周りに言ったって良い訳だよなぁ?」

 

 ニヨニヨと口角を上げつつも、青筋が見え隠れするネルに閉口せざるを得なかった。

 このままではまたミレニアム名物『還来地スミカの犬神家』の再公演になる事が目に見えていたし、事実ネルの腕は貴方の腰をしっかりとホールドしていた。いわゆるジャーマンスープレックスの出始めである。前回も大体同じ要領で地面に植えられていた。

 貴方は知っている。地面の味は不味いことを。プラスでかなり痛いことを。

 よせ、早まるのは良くない。暴力は野蛮だから穏便に言葉の範疇で終えよう。とは言ったが。

 

「だったらちっとは言葉を意識しやがれぇぇぇっ!」

 

 まあ貴方の説得とも言えない説得が果たして通じる訳もなく、ものの見事に貴方は犬神家の再演をする事となった。

 煽っていいのは、その後に煽られるかぶん殴られる覚悟のある奴だけだ。貴方はその信念があるので、今回の事に関しては貴方の自業自得であるという認識はしていた。

 それはそれとしてやはり屈服奉仕性癖持ちのマゾヒストメイドというデマをいつかぶちまけなくてはならぬ。貴方は埋まった地面の中で密かに決意した。

 

 ──夏休みが、始まる。




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