貴方は一般的な生徒である。 作:ホシのユメ
(゚д゚)……
(゚д゚).;:… (゚д゚...:.;::.. (゚;::: .:.;: サラサラ..
この先、はっちゃけがあるぞ
〘前回の誤字報告者〙
【SF】さん、【リア10爆発46】サンクス!
──夏休み。
期末テストを乗り越えた先にある甘美な響きのそれは、貴方が今までに経験したことのない長期間の休みである。
ちなみに期末テストの結果だが、貴方は余裕をもって突破し、ギリギリだったネルは補習になっていた。
それを貴方が意趣返しでおちょくった結果、今度はミレニアム名物『天井から生える生物、還来地スミカ』が展示されることとなった。
誰が言ったか「ネルとスミカの天丼芸」とのこと。貴方はこんな暴力の果てにある人の業を持ち芸にした覚えはない。
まあ、そんな些末なことははっきりいってどうでもよい。
さて、『今までに経験したことがない』だと少々語弊が生じるだろうか。
厳密には「ここキヴォトスでは1度も経験したことがない」であり、また別にアビドスが年中無休などというトンデモ鬼畜自治体だった、などという話ではない。
単純に貴方が休みと認識するには、あまりにも忙しくて休んでいられない時期が多かったのだ。
理由はホシノ(の賞金稼ぎ)かホシノ(の強制同行アルバイト)かホシノ(の討ち入り)。そうでなければユメ(のガバの尻拭い)かユメ(の思いつき)。ごく稀にネフティス中学校、もしくはアビドス高校との付き合い。
夏休みを奔走に費やされるのは二度と……とまでは言わないがもうしばらくは、具体的には1年ほどは遠慮しておきたいというのが貴方の本音。
だがしばらくは安泰だろう。ホシノと貴方とでは所属している学校が違うし、ホシノが過去に言っていた通り距離が遠い。呼び出されたとなればどのような状況どのような事態どのような状態であっても駆けつけるつもりにしろ、以前のように猟師の猟犬がごとく気軽に連れ回される、という事は格段に減ると貴方は考えている。
そんな訳でか、貴方は完全にだらけきって約1ヶ月間の休み全てを趣味に回すための計画を企てていた。
朝は今まで積んでいたプラモを組んでポージングを取らせたりブンドドし、昼は部活動とロマンの探求に勤しみ、夜は様々なジャンルのゲームに走る。当然その日の気分によってもルーティーンは変わるし、時たま持ちキャラでゲーセンを荒らしたり旅に出たりをしておきたい。
事実貴方はこの夏休みが始まる数ヶ月前からどこへと旅にいこうかと貴方らしくもない、予め旅先に行く場所を考えていたのだ。曰く百鬼夜行は温泉や観光名所が多いだとか、曰く山海経は食べ物が美味しいというのを聞いている。
当然道順は決めておらず、その時々の貴方の気分次第、思いつきでどうするかといった所だが、見ておいても損はしない名所は予め抑えてある。どこかを期に旅に出て、1人で過ごす時間を楽しみたいという考えだ。
外付き合いなど知らぬ存ぜぬ顧みぬ。俺はこの1ヶ月間だけ生徒を辞めるぞ、ホシノーッ! と言わんばかりの決意に、貴方は酷く満ち溢れていた。
…………ただまあ、顧みるつもりはないという気概ではあるが、友達を名乗る一般不審者──ウタハを筆頭にネル、アスナ(ネル経由)、チヒロ(ウタハ経由)、コタマ(チヒロ経由)、その他貴方の友達を名乗る不審者に捕まったら日本人的感性で拒否することもできずに振り回される未来が見える見える。
正確には一人でいたい、というより一人でも出来ることを一人でやっていたいが本音な貴方は、夏休み初日まで関わりたいとは思わぬの一心でホシノから以外のモモトークの通知を一時的にミュートに切り替え、さっさとゲームを起動した。
……ちなみにだが貴方当てのモモトークは2件来ていた。1つは音瀬コタマから「今謝ります。盗聴器しかけました」という内容、1つは一ノ瀬アスナから「お友達を気に掛けてもいいと思うよ?」とのこと。
前者に対しては「何か話題を作っておきたいって思いでやりました、反省してます」との釈明もあったのでデコピン(ただし手加減するとは言っていない)1発で済ませることにし、後者に関してはメール上では意識しておくように見せかけつつ、内心では断固お断りの態度であった。
話は変わるのだが、貴方はこれでもゲームが相当に上手い方である。
その実力のほどは過去の経験も合わさって上の中──FPSやTPSなら勝利の常連であり、格ゲーならレジェンド帯上位。
もし大会に出場すれば準々決勝までは安定して駒を進められ、ツキが向いていれば決勝まで、運命が味方してくれたなら優勝できる程度の腕前はある。
寡黙で自己主張の薄い、しかし腕はトップクラス中のトップクラスなネッ友の一人「UZQueen」には随分と劣る(とはいえ貴方の愛用キャラである投げキャラならタコ糸並みの太さの勝ち筋がある。発作である思いつきによるガバプがなければ)が、その点では貴方は既に割り切っている。
何せ本人から来たメッセージの曰くでは『頑張って1フレームまでは見えるよう努力したんです』との事だった訳で。
1フレームとは60分の1秒、秒数に直せば約0.017秒となる。(一般キヴォトス人ではないという前置きになるが)人間の反射の速度は平均で0.2秒、限界でも0.1秒であり、彼女もしくは彼の言う通りならその限界を余裕でぶっちぎっている、ということになる。
当初の貴方は某プロの格闘家よろしく「お前は何を言っているんだ」と理解が追いつかずに三度見し、理解したあとも頼むから格ゲー星人ではなくホモ・サピエンスにもできる話をしてくれと一人嘆いた記憶がある。
その貴方もユズクイーンに負荷の強い調教をされた今となっては4フレーム、つまりは約0.068秒までなら反射で二回転コマンドを入れ込むことができるようになった。
別の言い方をすれば人間からゴリラへの認定試験の合格へと一つ駒を進めた。
してその調教されきった反射を「なんか遅くない? まだ短縮できる余地あると思わない?」などとほざくホシノのイカレ具合には知らんぷりをしていた。おそらくホシノは例えるなら
事実はゲームよりも奇なり。
『いっけぇユズクイーンッ! ジーエスカスプをぶっ飛ばせェッ!』
『悪魔より悪魔してるクソゲーマーを叩き潰せェーッ!』
さて、現在のゲーム画面では優勢だった貴方は一転、いつも通り思いつき由来のガバによって劣勢に追い込まれていた。
貴方、もとい貴方がゲームをする上での名義である「GSksp-90」(ksp-90はただ文字を埋めるためだけに付けた。カスプの謗りに関しては面白いかつ事実と思っているので許容している)はネッ友から非常に妥当性のある罵詈雑言を受けている。
なにせネッ友からは「カスの殿堂」「相手せず反応しない事が勝利する方法」と呼ばれるまでに敵を不愉快にする戦い方、いわゆる害悪戦法に手を染めてきたからである。
例えば角待ちショットガンや芋砂、そこから派生した芋神、ガン待ちにハメコンに引きゲーなど。
予め許可を取るなどで味方をも巻き込んで不快にはさせなかったが、敵は皆等しく不快にし、台を叩かせ、台を蹴らせ、コントローラーを投げさせた。プラスで罵詈雑言も。
その上貴方は敵が不快になっていることに悦を見出すようなドブより汚い性格をしているので、どれだけ罵倒されようがファンメをされようが、効かないどころかやはりこれは通じる技だと嬉々としてその戦法にのめり込むというドブ以下な性格が滲む──どころか染み出てそのまま垂れている。
一応貴方の理論武装として「相手を不快にさせれば判断力がストレスで圧迫され、動きが単調になる。そこを継続していれば結果的に自分の勝利する確率が上がるから」というのがある。
事実その戦法で格上にも勝った事があるし、またキレて物に当たった結果コントローラーか壁、もしくは机が壊れたなら相手に金銭的ダメージを与えられ、更に貴方の愉悦を満たせるので一石三鳥なのだ。
貴方にとっては勝つに当たっては極めて合理的な選択をしているつもりである。
その裏には「相手がブチギレている所を見て愉悦していたい」という性悪もある訳だが。
これで普通にやっても強いから余計に腹立つ、というのは一部ネッ友からの弁である。
ちなみにそんな戦法を貴方は現実世界でも採用しており、変わらない悪意と変わらない不快を敵とパチモンに提供し続けている。
さて正当性のある暴言には強い癖して正当性のない暴言には弱いという還来地スミカに眠る永遠の謎はさておき、貴方はより劣勢へと追い込まれている最中。にも関わらず貴方を応援する声は1つたりとてない。寧ろ罵詈雑言と負けろというコールがより強まっているように聞こえる。
どうしてユズクイーンばかりを依怙贔屓するのか、そこまで自分に負けてほしいか。叫ぶようにして問いただす。
『エル・パサ使いだから定期』
『同文。頼むから使うのを辞めるか引退でもして♡ しろ』
あまりにも思い当たりが多すぎて泣いた。
簡単に説明するなれば、エル・パサとはつまりキヴォトス版エル・フォルテである。
更にエル・フォルテの方を説明するなれば、弱いし操作難度は高いのにクソムーブを備えているクソキャラである。
細かく説明するのであれば、コマンドで打ったダッシュから派生技の不愉快プレスと不愉快投げ、大パンループで容赦なくハメ殺す、大変手とコントローラーと敵の脳血管によろしくないキャラである。
これの存在を知覚した貴方は誰が見てもわかるくらいの満面の笑みで意気揚々と練習に勤しんでから実戦に投入し、幾多もの罵詈雑言と数多の台蹴り台パンコントローラー投げを感じ取っては悪魔のようにゲラ笑いしていた。
今思えば普通にカスであった。今もカスだろうと言われたら1ミリも反論できない。実際貴方はエル・パサを擦っている時に(オブラートに包まれつつも)ホシノに言われ、何も言い返せなかった。
つまるところ日頃の行いのツケが今になって回ってきただけである。
──と、ここで勝敗が決した。結果としては貴方の負け。2本先取でも2対1で貴方の負けという結果。
『えぇ〜なんですってぇ〜? 相手をイラつかせたら自分の勝つ確率が上がるですってぇ〜? あらあらあら負けてるじゃないですかヤダ〜!』
『ほらほら画面見てくださいよ! リョウ、WIN! エル・パサ、LOSE! ユズクイーンの勝ちでェ! ジーエスの負けェ! アッハッハァーッ!』
そしてその結果が出た瞬間にここぞとばかりに飛んでくる煽りの数々。
これらの言葉は全てプロレスであることはわかっている。貴方もプロレスでネッ友を煽り散らかしたりする時はざらにあるし、煽り合いが過ぎて最早このグループの様式美と化している。今ここにいないもう1人とて立派な煽りカスのゲロカスなのだから、ある一種ここの伝統とも言えよう。
なにより煽りは舐めではなく立派な戦略的行動。相手の判断力を落とすというのは立派な戦略である。
男に、そして元男である貴方にも「お前逃げんの?」が特効レベルで効くように、煽りはゲームで負けた人間に対して良く効く戦略である。今回はその番が貴方だけだった話だ。
貴方は深く理解していた。
それはそれとして虎の威を借りなければ煽ることさえできない雑魚の子狐2匹は勝った時に100倍返しにして煽り返す。屈伸煽りと死体蹴りと口頭煽りで小狐共の机とコントローラーと部屋全体をオシャカにさせる。
頭で理解していても心はしっかりと温まっていた。
そんな気配を察してか、はたまた見ているだけで相手するのも嫌になったのか。『じゃあ私落ちるわー』『乙、じゃあウチも落ちる。ほなのー』とだけ言い残して子狐と断定した2人はノンコード──キヴォトスに言うディスコードの通話から退出していった。
逃げるな──! この判断を生涯後悔することとなるだろう──! と貴方は強く訴えるも時すでに遅し。通話欄にはいつも通りミュート状態であるユズクイーンとミュートではない貴方だけの静寂が広がっていた。
カツ、カツ、カツ。時計の秒針が進む音だけが僅かに響いている。
この空気を一体どうしてくれようか。とりあえずあやつらは責任として不快ムーブを徹底的に押し付ける刑罰でもくれてやろうか。それとも投げ地獄か、あるいは角待ちショットガンか芋砂ヘッショの目に合わせておくべきか。
今の(推定)逃げがあったので万倍返しにするつもりで、一体どんな目に合わせてやろうかと思惑を飛ばしていると不意にメッセージが飛んできた。
『あの』
『本当に』
『すみませんでした』
何かと思えば謝罪のメッセージであった。あまりにも純情で謙虚で、煽り精神など欠片も感じられないそれに一周まわって笑いすら起きる。
本当に偶然遭遇し、本当に偶然フレンド申請が通り、本当に偶然こんな場末のサーバーに加入してまだ半月も経過していない。
ある意味ではこんな反応も妥当であり、だからこそ一般的にこんな煽り合いの環境など終わりも終わりと明確に理解できる。
だからこそ、貴方はこう言う。
あえて言おう。奴らがただ単にアレなだけだと。
更に言えばちゃんとプロレスであって、本気の罵倒ではないということは頭でしっかりと理解できているので心配する必要はないと。
そして奴らが負けた時に煽り散らして不快にさせる自分もしっかり同じ穴のムジナなので、これで申し訳ないなどと思わないでほしいのだと。
『どうして最後の事を言っちゃったんですか?』
当然だろう。
貴方は右頬を打たれたら左頬を差し出すような聖人ではない。
むしろ右頬を打たれたら正当防衛を盾に全力全開で顔面に拳をねじ込むタイプの一般人である。そこに悪行を重ねた人間というのもあれば倍率ドンだ。
その部分を勘違いされては困るという貴方なりの親切である。世間にここまで優しい人はいないのだ。
『それはわかります』
『エル・パサを好んでるから、その』
少し間を置いて。
『容赦ない人なんだろうなって』
既に見抜かれていたらしい。
安心したと同時になんだか解せない。
なんでさ。独りごちた声が、部屋に虚しく鳴り響いた。
ネッ友その1:スミカを「カスプ」呼ばわりした方。トリニティ出身トリニティ通い。角待ちショットガンと芋砂が嫌い。煽りカス。
ネッ友その2:スミカを「悪魔より悪魔」呼びした方。ゲヘナ出身ゲヘナ通い。1度アケコンを投げて壊した事がある。煽りカス。
ネッ友その3:出てない方。ゲヘナ出身ヴァルキューレ通い。普段出してはいけない暴言をしっかり吐けるので居心地が良いらしい。煽りカス。
UZQueen:ユズクイーン。入ってみたのは良いけど空気感があまりにも緩すぎる(オブラート表現)ので困惑気味。純情な良い子。
ただしこんなんでも煽り合い抜きで真面目にチームプレイしたらかなり強い模様。