極めて普通なファンタジーの話 作:多分きのこ
錆びた剣を携えて、平原に一人呆然と立つ俺。
見渡す限り平原で目立つ建物も何もない。
あるものと言えば燦々に照らす太陽と、大空を羽ばたく小鳥の囀り。
あと背中に背負った錆びた剣と、隣であくびをしている少女が一人。
それ以外は着用しているこの世界の服と、なんか中途半端に渡された五十枚のうち、奪い取られて残った十枚の銅貨だけ。
「どうしてこうなった」
いや、マジで。
なんでこんなことになってんの?
なんで俺は剣と金と女の子だけで、平原に放り出されてるんだ?
……いや、そのことに関してはよくわかっている。
わかっているんだが……ここに至るまでがあまりにも過ぎて、少々脳が理解を拒んでいる。
その原因の一因である、隣を歩く銀髪の少女へと視線を向けてみる。
「……? 早く行かないと、日が暮れるよ」
と、何気のない顔でそう言い放ったが。
そもそも、俺は街から出るつもりなぞ一切なかった、
頼んでもないと言うか、頼むつもりすらなかったのに。
俺との会話から何を勘違いしたのか、何をどう解釈したのか。
こいつは報酬金だと言って、俺からなけなしの金をぶん取り、俺を街から連れ出しやがったのだ。
そう考えると一発殴りたくなる、が。
俺は大人だ。
高校二年生は大人なはずだ。
大の男が少女を殴ると言うのは絵面的にもよろしくない。
だから、一旦、落ち着こう。
うん。
……よし、落ち着くついでに、これまでのことを簡潔に纏めてみよう。
俺は地球に住む普通の高校生。
それがなんのどういう理由か、突然異世界に転移。
視界がひらけたと思ったら、目の前にいたのは明らかに残念な顔をした王様とその家臣たち。
奴らは俺に色々説明したあと、「お前、異世界の勇者、世界を救う。そのためにオーブ集めろ。七個(要約)」と言い放ち、俺に錆びた剣と銅貨五十枚を押しつけて、城から追い出したやがった。
で、城から出てきた俺は、当てもなく放浪をして座り込んでいたところに、件の少女に「何してるの」と声をかけられ、行ってみることに。
そしたら隣町まで護衛する、とか言い出して、なけなしの銅貨四十枚を取られてしまったわけだ。
ちなみに残り十枚で中古の服を押し付けられ、元々来ていた学校の制服は売られてしまった。
うん、纏めたけど何回考えても意味わかんないわ、これ。
なんで金取られた上に俺の制服売られてんの。
一応俺の懐に入ったけど、よくわからない布だと言われて大した金にはならなかった。
なんか納得いかない。
……ダメだ。
何もかも理解できないし納得いかないし、そもそも事態が飲み込めてないし。
「……? 貰った分は仕事するから。安心して」
「あげてないが!?」
「……あ、取った分か」
「言ったなお前! 取ったって言ったな!?」
「…………」
俺がそれを問い詰めると、前を向いて黙りやがった。
マジでこいつ……。
……まぁ、ここでキレてもしょうがない。
取られてしまったものもしょうがないし、その分の仕事はしてもらおう。
とは言ったが、そもそも隣町に用事なんてないんだよな。
それにまだまだ道のりは長そうだし。
……よし。
ならばもう一度だ。
今度はちゃんと飲み込めるように、理解できるように。
俺は一からちゃんと思い出すことにした。