生物災害・真、艦隊蒐集大運動会 ~真これ五輪~(真)         ――捲くられた異聞奇譚――・・・暗黒時代〈みれにあむ〉編              作:George・笛吹けとる

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逸凡日本神壇星のじょおじです。
1年半の迷走期間を経てここに至ります。
当タイトルは一度投稿していましたが、どう考えても修正が必要でしたので改版です。
因みに4話ありました、忘れて下さい。

ようやく始まりを迎えることができます。
改めて、よろしくおねがいします。


改変前の事は知らない方が幸せなんですよ。
なぁ、童子よ。


序  第1話:今日の平安

淑人乃良跡吉見而好常言師芳野吉見与良人四来三   万葉集第1巻27番歌

 

   序

 

『日笠』という名は様々な国や地域に展開している、巨大な超集合的企業体の総称である。

食品、薬品、銀行その他あらゆる分野にその名がついた法人が存在する。

 

この大きな「かさ」には、その下にできる大きな影のように、様々なうわさ話がついて回る。

例えば国町々の行政機関との癒着や汚職。

例えば非人道的な人身売買、人体実験。

その他、陰謀説的な秘密集会の主催を執り行っているのが、創設者のひとりである大鶴共保その人なのだ。といったもの。

 

その本拠地の一つは広島県呉市にある、日笠重工だとされている。

ここでは自動車や鉄道車両、船舶、果ては銃火器の部品に至るまで各種の金属加工、鉄鋼製品を製造し、世界へと輸出している。

その中で一部の銃火器と車両、船舶その艤装類の売却先は同市にある呉海上自衛隊となっている。則ち自衛隊支給品装備と護衛艦、その兵装を主として取り扱う企業なのである。

呉港の船渠エリアこそがその所在地となる。

 

その一角、建物の一室にて行われていたのは、ある銃弾の開発だった。

 

「日の光は、確かに特効薬になるでしょう」

 

白衣の人物は電話口の相手に語っていた。

“日の光”という薬品を充填した弾薬。着弾し弾頭が砕けるとその薬品が対象へと注入されるよう設計されている。

 

「しかしまだ問題が」

 

二人が共有するモニターに、試験映像が流れている。

 

「……何だね?」

 

白衣の人物は頭を抱えた。

 

「艇と結合した細胞は……艇と共に死滅してしまいます」

 

射手によって放たれた弾丸に、実験台の動物は「ウゥ」と小さく呻き倒れる。

銃創の周囲から灼光し、灰燼に帰した。

そうか、と残して通話は切れた。

 

一方で江田島にある海上自衛隊士官学校。

白い将官服の人物はベレッタ・オートマチック・ピストルを構える。

5発の銃声が二重に鳴った。5枚のスチール・ターゲットが火花を散らす。

10発の薬莢が転がる音を立てた。

射撃場に歓声と拍手が起こる。

 

「あー、君達がこんな風に銃撃を行うことが必要な状況が来ない事を祈る」

 

ホールド・オープンした拳銃を台に乗せ、彼は言った。

 

「君達の職務は銃弾で敵を倒すことではない。銃弾の射程に敵を入れない事、それが国防だ」

 

 

 

 

第1話:今日の平安

 

 

山犬が吠えて煩いんですが――。

 

猿に引っ掻かれて怪我をしました。

 

キジがね、盗まれたんですよ……いえ記事です、新聞の――。

 

カエルだと思います……でも大きいんです。人が屈んだくらいありました。怖いです、駆除してください。

 

こちらは海上自衛隊です、そういった事は警察署へご相談下さいますようお願い申し上げます、はい。対応して貰えない……そう言われましても――。

 

例えばこれが最近の、否。いつものお悩み相談窓口でのやり取りだ。

 

 

「新しくきた子は君かい?」

 

白衣の人物は言った。

 

「そうじゃ、わしが水上機母艦、日進じゃ。ようけ世話になるけぇね、博士よ」

 

机の向かいで、紅白の水干――平安時代の衣裳に似る服に身を包んだ少女は言った。

 

「で……これが、軽空母の龍驤じゃ。わしらは何用で呼ばれたんね?」

 

「ちぃと待ちや、ウチは“これ”ちゃうで。まずウチが先輩だし、ここ来たのも、横須賀から遥々、まぁええわ紹介ありがと」

 

こちらも紅い水干姿の少女は、ややも遺憾を示したものの、博士の言葉を待った。

 

「君たちに頼みたいのは犬狩りだ」

 

「ん、なんて?」

 

龍驤は聞き返す。

 

「犬を狩る、犬狩り」

 

博士は答えた。

 

「いやね、檻から逃げちゃったみたいなんだよ、飼ってたのが全部」

 

「そげなんは、市役所に通報したらええ。わしらにはもっと他にやらんといけん事があるけ」

 

「せや、ここいらの人々を護るっていう大事な役目がね」

 

日進も龍驤も、犬を追うのに乗り気でない。

 

「でもさ、それだと市役所の職員たちが危険な目に遭うと思うんだよね」

 

「その犬は、そんなに狂暴なん?」

 

「そうだね、放っていると死人が沢山でるだろうな」

 

「それを先に言わんかいね! 何頭おるん、その狂犬は?」

 

日進はバシンと机のふちを叩いた。

龍驤もバンと両手をついて乗り出した。

 

「犬種を言いや、どっから逃げたの?」

 

「いや、断られると思ってなかったからさ。犬種はドーベルマン、まあ腐ってるからすぐわかるよ。数は」

 

「待ちぃ、待ちや、腐ってるってなに?」

 

「まあまあ、数は10頭だったけど今頃は野犬とかに感染して、生きてるのは20頭くらいかな。拡散地域は」

 

「感染? 拡散? それはどういう事じゃあ?」

 

日進も龍驤も、頭を捻っている。

 

「ウイルスでゾンビになった犬10頭が倉橋島に放たれてる。感染した他の動物や人が新たに動く死体になっていて、それを合わせると50体くらいの計算だ……屍骸ついばんだカラスとか含めなければね」

 

日進と龍驤は黙って聞いていたが、ゆっくりと理解してゆく。

 

「……今、人と言ったんけ?」

 

「あかんやん、治療法とかはないの?」

 

「まだ無い。それを研究するための犬だったんだ」

 

「じゃあ最悪、ウチらは人を狩るって事……?」

 

「そうだよ、ただの狂犬病ウイルスとは違う。噛まれたり引っ掻かれたりするとほぼ確実に感染する」

 

眉間を指で押さえる博士。

 

「こうしてはおれん、今すぐに艦隊を編成して駆除に繰り出さんと!」

 

「日進、わかってるキミ? ウチらまだ公認されてない存在なんやで。艦隊行動なんてして、“虐殺集団”だとか言われてみ、海軍組織設立なんて実現せんで?」

 

「分かっとる、じゃけぇ……だからこそじゃ! 早うしちゃらんと島中が食い尽くされてしまう! こんくに中がじゃ!」

 

「ウチは嫌やで、ゾンビ犬ならまだしも、人の形したものなんて例えゾンビでも殺すのは」

 

龍驤は静かに言った。

 

「龍驤……!」

 

「なんて言うつもりはないよ、日進」

 

龍驤は左手で刀印の相を作った。

指の先に水色の焔が灯る。

 

「なにが相手でも人は護るで、腐った犬ころなんてウチらふたりで充分や!」

 

右手に出現した巻物を空中に広げる。

『航空式鬼神召喚法陣龍驤大符』と描かれた飛行甲板に、十字型の紙片が浮かびあがる。龍驤はそれを手に取った。

 

「われ、そりゃあ式神け?」

 

「そ、この“偵察機”で島の中を隈なく捜索するで」

 

「おぉ! ほいじゃったら、わしも!」

 

「残念だけど、艤装の使用許可は下りないだろう。さっき君が言ったように機密だからね」

 

「心配いらんで、式神のまま飛ばすから。それに」

 

式神は薄く存在感を失い、影となって見えなくなった。

 

「ステルス機能つきや」

 

「それなら問題なさそうだ」

 

「せやろ、任せとき!」

 

龍驤は日進の佩楯甲板――鉄板をポンと叩いた。

 

 

広島県、倉橋島。一行は沖まで小型船で移動した。

無数の式神が舞い上がっていく。

島内最北端から最南端まで、龍驤は目を瞑り、偵察機を通じた視界で上空から町の様子を見渡した。

 

「どうやら、町中にはそれらしいのはいないみたいや」

 

「残るは山かのぅ」

 

上空から集まり戻ってくる式神を巻物に取り込みながら、龍驤は言う。

日進は現行の人的被害が発生していない事に安堵した。

 

 

「なかなか立派な籠じゃ……」

 

「そうやね、破られてるけど」

 

山間を歩くふたりは道の隅にある鉄の函を見やった。

扇で風煽りつつ言ったのは日進。

帽子のつばを触れながら答えた龍驤。

 

「足が丈夫いとも、こがいな山路は堪えるのぅ」

 

「ウチら空母ふねやもん、暑っちいし」

 

ごちる日進に、龍驤はうだる。

夜啼きする野犬を捕獲して欲しいという市民からの声に、保健所が設置した檻だろうか。

しかし鋼鉄製の檻は内側からひしゃげている。

周囲には血のついた毛皮が散乱する。

 

「近いな」

 

龍驤の言葉通り、それはふたりの前に現れた。

 

「ほぅ……ずる剥けじゃ」

 

毛も皮も剥がれ落ちた痛々しい姿の犬が、よだれを垂らして唸っている。

 

「さて……」

 

日進は扇をパチンと閉じた。

 

「狩るかの」

 

いつの間にか群れを成してやって来た犬達に取り囲まれながら、彼女は言った。

犬がふたりに飛び掛かる。

 

「っと遅いわ、いける」

 

龍驤は円を描き躱して犬の背中をはたき込む。

地面にたたき落された犬の背には十字型の紙片が貼り付いている。

 

「何しちょるん?」

 

突進してきた犬を、日進は足を突き出して蹴つり飛ばした。

犬は木の幹へとぶつかり、ドシャリと落ちた。

 

「あかん。形崩さんといてな、式で言う事聞かせるんや、狙うなら腸やで」

 

「わしもてごするけぇ、式神をわけてくれんかね?」

 

日進は横跳び後ろ飛びしながら言った。

 

「ええよ、ほら!」

 

龍驤は刀印を結んだ手を日進へと向けた。

式神は龍驤の手を離れて流れていく。

 

「ほれ、来い」

 

日進は扇を立てる。

その上に集まった式神を、彼女は手に取った。

彼女達はそれを1枚ずつ、犬を追わえてはその背に貼り付けていく。

その際に腸に対して胴体が裂けない程度の力を加えて無力化させる。

ふたりは四足動物の動きをも超える体さばきで獣達を圧倒していった。

 

普通なら動物は、こんな状況では本能で力量の差を察知して逃げ出すものだが、ゾンビ犬は違う。

群れで連携して狩りを行う点は生来の習性であるが、このウイルスの影響で変質した身体は生物としての本能的欲求のうち、食欲“のみ”を優先している。

宿主の脳はウイルスに浸潤され、その体はウイルスの餌となり、“食事”を通じてウイルスを増やすために乗り捨てられる。このことから科学者等から『艇』ウイルスという名が与えられていた。

 

「終いかの」

 

「いんや、お次はサルやで」

 

のたうつ犬を飛び越えてきたのは猿の群れであった。

周囲の樹上からも次々と飛び降りてくる。

元の知能が犬よりも高いからか、より連携のとれた動きで襲い掛かる。

だがそんな事はふたりには何でもなかった。

それよりも、こちらには毛皮が抜け落ちずにあり、式神を貼るところが尻か顔しか無かったので難儀することとなった。

 

これらの感染ザルは新陳代謝の異常促進の結果、筋組織が皮膚を突き破り露出していた。

そこを叩く方が、毛皮越しよりはいくらか有効打である。

 

「ふぅ、片付いたじゃろう」

 

「んじゃ、こいつら連れて帰ろうか」

 

龍驤は刀印を結ぶ。

指先に水色の焔が生じた。

痙攣している動物たちへ手をかざす。

 

「この血に於いて命令する。遵え」

 

焔の中に『勅令』の文字が浮かんだ。

 

「ほう……ほぅほぅ、お?」

 

動物達はビク、ビクと一段と激しく痙攣をし、各々が身体を起こし始めた。

龍驤は全てが立ち終えたところで、びっ、と刀印を振る。

犬と猿はそれぞれが一纏めになって並びを作った。

 

「じゃけん、帰るかの」

 

「ちょい待ち」

 

龍驤は刀印を振る。

犬の群れが一本の木に向かって駆け寄ってゆく。

根元には、一匹の犬が倒れている。

 

「すまんのぅ、めげてしもぉて駄目かね?」

 

「大丈夫や、こいつらに平らげてもらお」

 

ゾンビ犬達は屍骸を貪り喰った。

龍驤は焔の灯る手で残骸を掻き集める。

 

「残りは燃やして埋めとこ」

 

「わしの手も焼いてくれんかの、もうベタベタじゃ」

 

「お疲れさん、貸してみ」

 

ふたりは握手を交わす。

龍驤から日進へと焔が伝い、彼女達の手に付着した血のりが焼失していく。

 

「感謝じゃ、ありがとうのぅ」

 

「よっしゃ、ほんまに帰るで!」

 

ふたりは並んで歩き、その後ろに動物達が続いた。

しかし、彼女達を帰したくないモノが現れた。

それは木々の間を物凄い速さでかき分けて、ふたりの前に立ち塞がった。

 

「はて……こりゃあ何じゃろな?」

 

「見たとこカエル、いやゴリラ……何これ?」

 

それは身長180センチほどあろうかという大きさの爬虫類だった。

体中が緑色の鱗に包まれており、手足の爪は鋭く大きい。

 

「ギャアアッ!」

 

と、咆哮すると跳躍して距離を縮め、腕を振るった。

鋭利な爪は空を切り裂く。

ふたりは攻撃をすり抜けてそれの背後に回っていた。

 

「こいつウチの首とりに来よったで!」

 

「ほんに、狩人のようじゃ」

 

“狩人”は振り返りざまに腕を薙いだ。

ふたりは飛び退いて距離をとる。

狩人は爪を構えてゆっくりと歩き近づく。

 

「グァアアッ!」

 

振りかぶった腕を殴りつける。

日進が扇で受けた。

 

「ほれ、貼るんじゃ龍驤!」

 

「任しとき!」

 

龍驤が狩人の頭に式神をたたきつける。

刀印を構え、焔を灯す。

 

「この血に於いて命令する! したが……え」

 

式神はぺろん、と剥がれてしまう。

 

「どしたんね!?」

 

「あかん、鱗に貼っても意味ないわ、いてっ爪剥げそ!」

 

ゴツゴツとした狩人の体には式神が貼り付かない。

貼ったとしても、使役下に置くには至らない。

“血”を直接、触れ合わせることが必要である。

龍驤は鱗をめくり上げて式神をねじ込もうとする。

狩人はサッと後ろに跳んだ。

 

「なんや、式神を警戒してる!?」

 

「こやつにはそげな知恵があるんけぇ?」

 

狩人はゆっくりと歩き寄る。

次の瞬間、飛び込んできた狩人が爪を地面に突き刺した。

 

「もう一体きたでぇっ!」

 

「わりゃ、こやつらも群れじゃあ!」

 

更に一振りの爪を日進がよける。

木陰や樹上にもふたりを窺う狩人達があった。

 

「分が悪い、引くで!」

 

ふたりは走った。

狩人は追い駆ける。

 

「お前たち、手貸しぃ!」

 

龍驤が刀印を振る。

動物達が駆ける。

狩人を目掛けて一斉に飛びついていく。

狩人は軽快な動きでそれを躱して接近してくる。

猿達が樹木伝いに飛び移り、狩人の頭上へ飛び降りた。

猿の爪は鱗に当たるとギャイン!と弾かれた。

そこへ犬が飛びつき噛みつく。

ガチ、ガチとこちらも音を立てるだけだ。

猿は再度飛びつき今度は噛みつこうとした。

その腹を、狩人の爪が貫いた。

腕を振り、猿を投げ捨てる。

犬を蹴り上げながら跳んだ。

屍骸が転がる。

 

「駄目や、まるで歯が立たん」

 

「ほいじゃったら、直接焼き殺せんかね?」

 

「そんな火力はないよ」

 

「ほんに機銃でもあればのぅ」

 

「せやから承認されんと使われへんて」

 

狩人等は彼女達以外の動物には興味も示さず、ひたすらふたりを追跡し続ける。

 

「龍驤、わしゃあ良い策を思いついたぞ! われぇ、すまんが囮をやってくれんかね?」

 

日進は袖を捲って腕を見せた。

 

「やっぱそれしかないか、気ぃつけてや、麓で合流しよ」

 

ふたりは動物達の援護を受けながら、狩人達の追跡から逃れるのだった。

 

 

島の西端、日進は木陰に身を潜めていた。

一体の狩人が彼女を探して迫ってきていた。

 

「おどりゃあ! おとなしくするんじゃ!」

 

木の反対に回り、横から歩いてきた狩人の背に飛び掛かった。

ギャア、ギャアと叫ぶ口の奥へと式神を押し込む。

振り落そうと腕を振り回すが、届かない。

手を抜こうとした時、狩人は鋭い牙を閉ざした。

日進は悲鳴を上げた。

 

「この血に於いて命令する。遵え」

 

「いったたたた……! はれ?」

 

日進は引き抜いた自分の手を天高く掲げ、仰ぎ見た。

肘から指先までちゃんとある。

手の平についた狩人の歯形から唾液や血液が流れていた。

 

「ばっちぃーなぁ、消毒したるわ」

 

「龍驤、あやつらは?」

 

「撒いたで、ひとまず退散して応援呼ぼう。ウチらじゃ相性悪いわ」

 

龍驤は水色の焔を日進の傷へ当てた。

 

「犬猿はこいつらに食い荒らされちゃってる」

 

「こやつだけでも捕まってよかったのぅ、博士に報告じゃ」

 

龍驤は狩人を這わせた。

カエルかゴリラか、そんなよくわからない生物の背にふたりは腰掛ける。

狩人達は山を下るのだった。

 




小説が落ち着いたらね、挿絵をね、落ち着いたらね。
まぁ見てて下さいよ。そのうち、小説を書くから絵が描けないだのと言いだすに決まってるんですから。


優先順位がありますよね、文壇でそれ言いますかって話でしょ。なお画力……。
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