異世界の大司教とか仙人その他が内部保護者で、岩王帝君に拾われ留雲借風真君の弟子となった主人公が自分探しと称してテイワットを股にかけるお話。
グランサガキャラがいるけど、保護者枠にしてサブキャラです。
※現状読み切りなのであらすじは一旦超簡素気味です



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Q.何でまたグランサガ混ざり?
A.グランウェポンのみだから実質別腹ってことで

需要があったり気が向いたら続くかも?


仙人紛い、ダイナミック帰省を執行する

 

(今回の自分探しは果たしてどれくらいになったんだろうねえ)

 

奇天烈になりつつある時間感覚を何とか矯正しつつ、旅の期間を概算する。

結局今回も目的は果たせずではあった。

しかし、副産物として刺激になることが多数……そこは良きと言える。

まさに気ままな適当な旅路を描くのは、まさにロクデナシがらんどう仙人。

そんな存在は今、のんびりと上空を漂っていた。

『んー……あっちにいた頃を思い起こす空気になってきた。もうそろそろってところかな?』

 

長時間の浮遊、それも寝転がっての悠々自適とあらば身体も少しは硬くなるもの。

そのまま軽い柔軟をこなしつつ、真下に視界を移すと──雲を突き破りかねないほどの威容でそびえ立つ山々のてっぺんが。

璃月の西部、珉林と呼ばれる地域の奥地──彼の者の領域に既に突入していた。

西のフォンテーヌ側から飛んできているのはしょうもない理由からだが、それについては後述だ。

 

『ご苦労だったな、自由を司る大仙人。後はこの光輝たる『正義』の大司教に任せたまえ』

『アタシとしては、このままゆるっと風とともに登場でもカッコつくと思うんだけどねー……』

「それは前にやったから減点待ったなしだ。常に新しきに挑戦してこその生というもの、俺は止まらんぞ?」

 

一人しかいないのに何故複数の声が聞こえるのか。

腹話術をしているわけではない。

本当にそれだけの人数がいる、その場で見えないだけで。

異なる性別の声が同時に聞こえるが、そういう類いではない。

──彼の者の中には複数の何かがいる、本当に単純な話である。

 

『なあに、この私がついているから心配ご無用。『知識』を司る同胞もそう思うだろう?』

『あー、まあ保険もあるから大丈夫なんじゃない?どこか欠損したって『慈悲』にでも治してもらえばいいからね』

『まあ、どうせ身体的には杞憂に終わるだろうけどさ……ああもう分かった!とりあえず変身解くから備えておきな!』

 

今は神秘的鮮やかさを醸し出す、見目麗しき仙女の様相。

しかし、あろうことかその見た目を仮面に戻し……一気に黒主体の普通の青年に様変わり。

まるで変身が解かれたかのようだった。

すると、風に乗って優雅に漂う様も唐突に終わった。

そうなれば、その身は一気に急転直下。

自由落下なので加速は凄まじいが……黒一色のその表情は喜色に満ちていた。

むしろ狙ってやってる節があるのだから、状況のコントロールなど出来て当然。

狂気的に上がる速度も何のその、墜落予定地が見えても恐れなどなし。

そこから、どこからともなく眩く感じてしまうほどの白の仮面を装着すると──

 

「『俺たちこそが物語の主役!さあ、いざ帰還の時だ!』」

 

膨大な気と共に、一連の流れはそのまま眩い光の柱に。

その壮大かつ騒々しい様は、何かが降臨するが如く。

──否、実際この奥蔵山の頂にソイツは降り立つこととなった。

異世界における『正義』の大司教──光輝の天使そのものが。

 

「よーし、着地の加点は満点だな!」

『はっはっは、少し前の拍手喝采の大歓声が聞こえてきそうだ!』

 

見事なまでの無駄のない無駄に洗練された無駄な着地であった。

風を操る仙女から普通の黒だらけの青年、そこから眩き大司教の光臨。

情報量の雑多ぶりから、初見ならば大混乱待ったなしであろう。

しかし、そんなビギナーはこの奥地にいるわけがない。

このド派手なパフォーマンスはただの帰郷、この地はいわば彼のホームなのだから。

 

「……今度はそういった趣きの帰還か。もはや『奇行上等狂君』という名を与えてやってもいいのだぞ?我が随一の馬鹿弟子、炯閃(けいせん)よ」

「あー、やっぱ帰宅早々の師匠のバカ呼ばわりは効くなー」

「まるで手応えなしなところも変わらずか、この減らず口め」

 

一体何事かと、わざわざ仙府から姿を現した水と白の美しい鷺……その名も留雲借風真君。

人間の前では基本威厳ある振る舞いを崩さない彼女だが、この場では見事それは崩れる。

それもそのはず、何せ実質親子関係のような師弟関係なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああー、やっぱり地に足を着けるって素晴らしいわー。

『凧のように空を漂うのって仙人っぽくね?』ってことで、ルミドゥースハーバーから急遽やってみたわけなんだが……。

結果的に言うと、沈玉の谷に突入して暫くしてから飽きちまった!

それでも一度始めたことを投げ出したら中の異世界仙人に怒られるからと、頑張って退屈に耐えたわけだ。

 

「その結果があの盛大な帰還というわけか。いくらまだ日が高いといえ、あんな光柱が起きたら……はあ、今頃騒がしくなっておるだろうな」

「はっはっは、きっと璃月港の方で面白い感じで噂になってるかもね!でもそんなん今更だって皆流してくれそうだけど」

「このお騒がせ仙人め……何をしでかすにしても必ず一度止まれと、これまで何度も忠告しているだろう。まさか3歩で忘却の彼方なんてことはあるまいな?」

「いやいや鳥頭になるにはまだ早いですってば。それに師匠だってからくりやら仙術で試行錯誤しまくってるのにそこまで言っちゃいます?」

 

そういうのおまいうって言うんですよー。

まあだからこそ俺たちは親子みたいなものな気もしますけどね!

 

「妾とて止まる時は止まる。お前の場合はその択を考慮すらせぬだろうこの奇怪思考問題児め。いい加減その特攻精神を直せ」

 

なんてちょっと得意気にしていたら、ハリセンのように頭を叩かれました。

地味にちょっと痛いです、具体的に言うと確5くらいに。

っていうか、仙人が『つばさでうつ』やってどうするんですか。

翼は大事にしないと毛並みがダメになっちゃいますぞ師匠や。

そこは一旦人間形態になってゲンコツかましてくれる方が安全では?

 

「こちとら幾度となく肝を冷やされていてな。やられた胃に比べれば、後からどうとでも出来る毛並みなど安いものだろう?」

「あー、要するに死ななきゃ安いって?──というか、仙人でも肝とか胃ってやられるものなんですかね」

「……ああ、もうよい。何はともあれ、これで騒々しい日々に逆戻りか……先刻まで弄っていたからくりの完成は当分お預けか」

「おいおいそんな大げさな……何なら俺も手伝いましょうか?」

「……そう言ってまともにからくりが完成したことがあったか?」

「うわひでえ、俺だってその辺結構器用になってるっていうのに!」

 

少なくとも以前のような爆発連打は起こしませんってば!

その辺はモンドでもスメールでも、何ならフォンテーヌでも鍛えましたし!

せっかくの長寿、色々知識詰め込んでなんぼと吸収してきたのを舐めないで頂きたい。

 

「おい大司教たちと異界の同胞、寝ているわけではないのだろう?旅の最中の保護者のお前たちから何か無いのか?」

 

師匠の苦言を呈する先は、俺の持つ塵歌壺……の魔改造版。

本来ならば持ち運べる拠点という役割を担うのが普通なんだが……俺の持つこれはちょいと違う。

基本的な機能は変わらないんだが、とあるものが中に設置されていてな……。

その影響で、本来の家主である俺以外にも住人がいたりいなかったり。

師匠が声をかけたのは、その中でも常駐している顔ぶれだ。

 

『はて、そう言われてもな……彼をいつも通り、愉快痛快に正義を為してきただけだ!それを下手に食い止めるのは、我が正義に反してしまう』

『ほぼザキエルの言う通りなんだよねえ……私としても、この子のやりたい放題が無くなっちゃったらそれはそれで退屈しちゃうし』

『そこは自由な仙人様に同意だねえ。──それにしても、やっぱり666のモードは流石に無茶か?いや、上手いこと差別化すれば……』

 

暑苦しそうな口調の青年ボイスは『正義』を司る元大司教ザキエル。

放任主義と俺への信用が綯い交ぜな態度が心地良いお方は、『自由』を司る風の仙人セイラン。

適当に対話を済ませては、再度自分の開発に没頭するのは『知識』を司る同じく元大司教メズラエル。

俺にとっては長い付き合いの兄やら姉やら、それでいながらしっちゃかめっちゃか仲間でもある。

え、大司教って何?そもそも何で仙人が俺の中にいるのって?

えーっとだな、それには変な木とか巨大パワーストーンみたいなのが俺の壺という名の拠点の中にあって、それが云々……。

要するに、色々バックグラウンドがあるってことだ。適当にそう覚えておけばいい。

 

「まあ確かに、この馬鹿弟子は止まれないが悪行とは無縁。そこが摩耗で失われていないのならば……いやしかし、仮にも帝君に託された身でそれはどうなんだ」

「そこは俺を拾ったお方のように『あのやんちゃだった我が息子がこんな立派になって……!』でいいじゃないですかね」

「あの御方がそんな気色悪いことを口にするわけなかろう、都合のいい脚色をするな不敬者め」

 

いや、多分似たようなニュアンスで言ってくれると思うんですけど?

自分探しの旅に出る際に必ず会うようにしてるけど、大体微笑まし気に送り出してくれるし。

そもそも俺自身は本当に拾われただけで、そういう契約が無いからってのも大きいらしいけどさ。

まさに俺にとってはお爺ちゃんみたいな存在、それこそ岩王帝君!

 

「全く、真君の仰る通りです。可愛い弟弟子であるが旅を経てますます不良仙人となっては、私はとても悲しくて辺りを凍結させてしまいそうです」

 

そんな折に、俺でも師匠でも何なら壺の中の連中とも違う声が聞こえてきた。

……あれれーおっかしいぞー?

そしてこの透き通るような声は聞き覚えがありまくる始末……。

すっごい怖いけど、そのままだと凍らされそうなので仕方なく後ろを振り返る。

……そこにいたのは、やはり俺の親愛なる姉弟子であった。

 

「あー甘雨姉様……えーっと、とりあえずただいまでございまする」

「ふふ、おかえりなさい炯閃。いつにも増しておかしな口調ですが、どうしたのですか?」

 

それは、あなたがとってもこわいからです。

氷元素駄々洩れで、この空間の室温ガタ落ちですからね?

ああくそ、こんな時に寝ているのかよウラエルとタニエル……自力で頑張って耐えろってか。

 

「……えっと、なにゆえにそんなおこなのでしょうか?」

「別に怒ってはいませんよ?何も言わず勝手に放浪してしまった同僚を捕縛するという『仕事』に集中しているからそう見えるだけで」

「MATTE、それ仕事じゃなくて私用!まさかの秘書の仕事放棄ですか!?」

「……私が仕事と言うのなら仕事です、変に捻じ曲げないでください」

 

この甘雨というお方、普段は璃月七星の秘書業を務めていまして。

ちなみにその業務量はアタオカ全開、セルフブラック待ったなし。

璃月が誇る最凶ワーカーホリックとはまさにこの姉弟子のことを指すと言ってもいい。

尚、激務が祟っては虚言モードになるのが玉に瑕。

 

「そもそも俺はあくまで助力要員で、同僚になった覚えないんですが?」

「え、昔は『仕事するなら甘雨姉様とじゃないと絶対嫌だ』なんて可愛いことを言っていたのに……あまりに遅すぎる反抗期でしょうか」

「んな気持ち悪いこと言った覚えねえよ、黒くなったあまり記憶障害か?」

「何を言うか、妾はきっちり覚えておるぞ?」

 

この俺がそんな吐き気するようなことを言うはずないだろうに。

それこそ今すぐ天理が先攻ワンキルされるくらいあり得ない。

んでもって師匠、アンタまでしれっと同調するんじゃない事実改編は断固拒否させていただきます!

なんてアホなやり取りをしていたら、いつの間にか石机が目の前に。

おいおい、マジで尋問形式かよ。

 

「さて、いつどこで誰とどのように油を売っていたのかきりきり吐いてもらいましょうか。色々時間が勿体ないので虚言は一切抜きでお願いしますね?」

「仕事放ってでも土産話聞きに来たって言ってくれれば可愛いのになー、そのこわーい笑顔で何もかんも台無しだー」

「……尋問用に清心を用意した方が良さそうですね」

「堂々とした食の拷問宣言だなおいぃ!?」

 

箸休めになるかどうかだろそんなもん!

そこはカツ丼だろうが、自爆になるけど俺は知らん管轄外!

 

「食わず嫌いくらいで不和を起こすな、将来を見越してそれくらい妥協せんか甲斐性なしめ」

「え、何ですかその意味不明極まる言い回し……将来って何のこと?」

「……真君、お願いですから真面目にお願いします」

 

師匠も師匠でめっちゃ楽しそうにしてやがって……。

これまでもよく分からん茶々を入れてくるんだが、本当何なのだろうか。

しかも、事あるごとに甘雨姉様の黒度合いがマシになるのも解せない。

……突っ込んだらいけない気がするので、あえて何も言わないけどね。

 

「あー、じゃあ第一証人はザキエルでお願いしまーす」

『この私を一番槍にするとは流石ケイセン君、分かっているではないかっ!』

 

いや話したさ全開で貧乏ゆすりされるのが鬱陶しかっただけなんだがね?

こいつは本当に喋りたがりだからねえ……お陰で旅中でも静かになる時がありゃしない。

でもこの賑やかしのお陰で、旅の道中は退屈しなかったとも言える。

 

『聞いて驚かないでくれたまえよお二方!何と私とヘセエルの力を以てしてケイセン君はフォンテーヌでかなりの知名度を誇る演者になってしまったぞ!そう、すなわち我等3人は大スター、すなわちある意味の英雄となってしまったのだよ!』

「……えっと、炯閃?彼はどれくらい話を盛っているのでしょうか」

「残念、そこまで事実から離れても無いんだなこれが」

 

歌劇場を見て色々触発されてしまったのか、コイツとヘセエルがとにかく喧しくてなあ……。

俺自身も色々興に乗っちまっては色々なりふり構わず首を突っ込んでしまって、その結果評判が結構なことに。

何か巷ではあの色々と面白い水神の次点とかまで言われてたっけねえ。

そのお陰で色々な伝手も出来たから、そこは得したと言えばそうなんだけども。

今ではあの面白い水神とも普通にダチになっちまったしなあ。

……まあ面白いというかポンコツなんだが、その裏では色々背負ってるんだよなあのボクっ娘。

いずれ様子見にいってやらんとだよなあ……とある筋からも頼まれちまったし。

 

「……何ですか、その後ろ髪を引かれてるような表情は。まさかとは思いますがあちらに気にかかる異性が……?」

「え、顔に出てたか?──って違う違うそういうのじゃねえちょいとワケありのダチだから心配になっただけだ!」

「やれやれ、異性絡みの面倒ごとに首を突っ込むのも大概にしておけ馬鹿弟子。でないといつ寝首をかかれるか……いや、その前に凍結地獄か」

 

そこぉ!俺男女平等主義、普通に男も助けてるから!

最高審判官とかからも依頼来たりしたしさあ!

ああくそ、甘雨姉様の黒オーラが何故か復活しつつあるし……チェンジ!

 

「ああこら人の腕を握りつぶそうとすんな甘雨姉様!証言はまだあるんだぞ、はい次メズラエル!」

『この私を誤魔化すためのダシにしないでほしいんだけど。──同じくフォンテーヌの話だけど、銃を魔改造して業務効率を上げさせた。後はいつも通りスメールでちょいちょい臨時アドバイザーやったりとか……まあ、これでも元は『知識』を司る大司教、その本分のままに動いてただけさ』

 

メズラエルの場合、大体の場合はただの開発欲の暴走である。

一般的な銃の改造ってのは、とある伝手で特巡隊の隊長さんと友人になって俺が頼んだら軽くやってくれただけなんだがね?

スメールは……そこの七神がメズラエルと司るものが同じだから何となく長居してた。

最初は学者系ばっかで肌が合わないんじゃね?と思ってたんだがあらまびっくり、意外と話が分かるヤツが多くてな。

先輩風吹かせたがる御方と遺跡に閉じ込められての脱出劇とか、なかなかスリリングで楽しかったねえ。

……後で砂漠のオカンに盛大に怒られたけど、そんな黒歴史もいい思い出さ。

さて、残るはセイランの証言である。

 

『私からは残るモンドと稲妻の話をするべきなんだろうけど、特段何も無いんだよね……前者はせいぜい陰で治安維持を頑張ってる御仁を助けたり、吟遊詩人に酒奢ったりだったし』

「最近鎖国し始めたと聞く国で何も無かったというのか……?それはそれで奇妙だが」

『まあ、物騒なところっていう割にはってことで。この子のやり過ごし能力は二人だって知ってるでしょ?』

 

うんうん、セイランの要望でモンドに滞在したこともあったねえ。

これまた『自由』を司るってことで、まあ同類の気を感じたからこそだろうが。

ここでは大体自然体でいたと思うんだ、うん。

で、最後の稲妻についてだが……ここについてはとにかく色々大変だ。

今は鎖国状態らしいんだが、これについては別に大司教パワーでどうにか出来るからよしとして。

むしろ、普通に辻斬りがてらとビリビリ斬撃が飛んでくる方がおかしいと思うんだ。

そんな物騒な状態だから、唯一の安全圏である俺を兄君と呼ぶふるーい知人の下にいることがほとんど。

絶対ワケを知ってる感じなのが気になるが、今はその時じゃない気がするから聞かないでいたりする。

そっちについてはまあ、あんまり面倒になったら解決に乗り出してやろう。

 

「──なるほどなるほど、随分と楽しい休暇を過ごしたようですね?では、今日から私の補佐に復帰しましょうか」

「どこらへんに『では』でまとめる要素が?そういうゴリ押し良くないと思う」

「貴方を放置すると、それこそ盗られ──じゃなくて、多方面に迷惑をかけそうですので。貴方の為に仕事もたんまり溜め込んであります」

 

……アカンこのままだと無限残業編が開演してしまうぞ。

俺は帰郷してきただけだ、ここで気圧されて流されるのだけはダメ絶対。

惨劇回避のためにも、まずは姉様の内面状況把握はきっちりしてフラグをへし折らねば。

 

「何でそんなに俺を戻したいんだ?むしろいなくても回る様にしたってのに……実はどこかでしくってましたってオチ?」

 

ぶっちゃけこれくらいしか思いつかない。

やたらふざけている俺ではあるが、仕事となったら多少は真面目にはなると自負はしている。

姉様のあまりの仕事っぷりを見かねては『チキチキ残業耐久レース』を並走したことだってあるくらいだし。

……と、先程までの勢いはどこへやら甘雨姉様の周りに陰りが差してきた。

あれ、まさか地雷踏んだ?

 

「貴方がそんな失敗を残すなんてこれっぽっちも思ってません、そこだけは信用できますから。──その、引継ぎがあまりに用意周到過ぎて不安になったというか」

「毎度ながらあまりの根回しの良さから『もう帰ってこないのではないか』と情緒不安定になっていただけだ。ついでにこの娘、夜な夜なお前が使っていた部屋でいじらしくも──」

「ちょ、真君何でそれを知って……じゃなくて!えっと、いつ部屋の主が戻ってきてもいいように掃除!そう、掃除をしていただけです!」

 

……何だろう、今無性に『ええ~?本当にござるか~?』と尋ねたくなった。

まあ、真面目に触れてほしくなさげだからあえて何も言わないでおくが。

触らぬ神に何とやら……まあ七神は軒並み祟りなんてやらかさないけど。

 

「こ、こほん!──とにかく、貴方はいつもいつも唐突過ぎるんです!今回も随分と長いこと空けて、私がどれだけ心配したことか……私がこの地を離れられないのをいいことに楽しそうにして、本当いいご身分ですね!」

『清々しいまでの誤魔化し方だね!ここは朴念仁っぽく素知らぬフリだぞケイセン君!』

『いや口に出したらまるで意味無いでしょうが……』

 

漫才してる『正義』の天使と『自由』の仙人はさておきとして。

雑に纏めると俺が悪いってことでいいよなこれ。

ただ、俺が故郷を捨てると思われていたのは流石に心外である。

何だかんだ俺にとっての帰るべき場所はここ璃月だってのに。

働かざる者何とやらって稲妻の格言が咄嗟に出るくらいには情もあるさ。

こんなやりたい放題な俺を受け入れてくれた最初の場所だし、俺を拾ってくれたあの人への恩返しもまだやりきれてない。

まあ、未だ分からない自分のルーツも求めちまってるから言い訳は聞かないんだがね。

 

「だから甘雨姉様、手を離してくださいマジで腕がすっぽ抜けそうです死なないけど痛いものは痛いんです」

「……こうでもしないと、また人のことを煙に撒いてはフラフラと彷徨うでしょう?絶対に許しません」

「MATTE、いくら可愛い拗ね顔決めてもメキメキって音を出すのはいけないと思うのです」

 

姉貴分の可愛らしい一面を眺められるのは楽しいが、それでも腕一本は流石に割に合わない。

え、いっそどっかの零感よろしくで痛覚を無くせばいい?

相手の五感も奪えないのに出来るわけ無いだろんなこと。

 

「──いっそのことこの腕は引っこ抜いて、真君に位置を特定できるような義手でも作ってもらえば万事解決なのでは?」

「ふむ……作るのは問題ないのだが……此奴がその程度で止まると思うか?」

『はっはっは、違いない!流石は師匠、よく分かっておられる!』

 

仮宿の腕とプライバシー侵害の危機に少しは焦りを見せろ、このドアホ正義オタクめ。

お前も好き放題出来なくなるんだよ?分かってる?

 

『まあでも、甘雨の言いたいことも尤もなんだよねえ……最近は『せっかくだから』と更なる刺激を求めて龍やら何やらに喧嘩を売ってたし』

「「……は?」」

 

おいセイランさん、それ口外駄目って言ってたやつ!

土壇場で裏切るんじゃねえよこんにゃろう!

 

『それだけではないぞ!この間はとある友人から聞いた変な鯨に、あわよくば珍食材的土産にでもしようと挑んでいたな。奇妙な令嬢と何故か喧嘩になって有耶無耶になってしまったが……あれはなかなか血潮が滾ったな!』

『あー、ツルギで試し斬りしてたら変な異界に落ちたあの時かあ。あの世界はなかなか興味深かったねえ、また行きたいかも』

 

おいこらしれっと俺の新しめの黒歴史まで暴露するの止めろ。

あれは純粋な俺のミスとしか言いようがない。

そろそろ次の段階だろと、迂闊にツルギを解放したのはよろしくなかった。

少なくともこっち側に影響は残らんかったが、一歩間違えたら……ねえ?

 

「自分探しと言いながら随分とやんちゃしていたんですねえ……あっちこっちで異性の影があることも含めたら、もう有罪確定です♪」

「……もはや救いようがないな、この馬鹿弟子は。よし甘雨、今こそこの考えなしの手綱を遠慮なく、そして徹底的に握ってしまえ」

「まずは外に出る間もないくらいにちょうきょ……もとい仕事漬けにするところからですね」

 

ヤバいヤバいヤバい、甘雨姉様の背後にもはや打球でも曲げるおつもりな黒色オーラががが。

そのせいで周囲の気温低下がヤバいことに……ここをスネージナヤの隔地にでもする気か?

ファデュイが故郷懐かしさに飛んで来たらどうするんだ……いや、その前に矢の餌食かもなあ。

ついでに言うと、既に俺の腕が氷漬け一歩寸前で痛覚が限界突破寸前です助けて。

 

『色々やらかしまくったアンタが全面的に悪い。どうしてもって言うなら、その腕破棄して抜け出して、後からトカゲのシッポみたいに生やしてみたら?』

『義手くらい安全安心なものを私が作ってあげるよ?何なら100のモードがある最新鋭のものに挑戦しよっか?』

「お前らもう少し穏便な解決法を示せよ!?というかセイランが余計なこと言ったせいだろうが!」

『いずれバレるなら、いっそ早い方がいいでしょうに』

 

このスパルタとマッドサイエンティストどうにかしろー!

どっちにしろ引っこ抜かれるの前提、確かに何とでもなるんだろうが痛いものは痛いし嫌なんだよなあ!

しかもそのやり方、目の前の問題を先延ばしにしてるから後々響くの確定だし。

仮にも人の中を借宿にしてるくせに、言い草が酷すぎて泣けてくる。

ええい、かくなる上は──

 

「ザキエル、ちょいと俺の身体使え!致し方ないが正義執行だ!」

『何か正義とは程遠い気がしないでもないが、まあ確かにケイセン君の身の危険を感じなくもない──すなわち逆境!ならば跳ねのけなければだな!』

 

この元大司教やら異世界仙人はただの賑やかしじゃない。

俺の身体の主導権を渡すことで変身しては元来あった力を使えるとか何とか。

ザキエルならこの場を穏便に済ませて逃亡を図るくらいなんてことないはず。

そう、変身の時の強烈な発光で視界と気を逸らせば何とでもなる。

目立ちたがり屋なアホの子だからこその利用法。

悪く思うなよ甘雨姉様とついでに師匠、この程度はあっちの世界では日常茶飯事だ!あっちってどこだか知らねえけど!

 

「あら残念ですね……ザキエルが好みそうな、それこそ『正義』の大司教様々なお仕事はいっぱい残しているのですが……」

『なぬぅ!?そういうことなら仕方あるまい、悪いが変身は移動でキャンセルだ!』

 

変身を移動キャンセル、だとぉ!?

おいこらあっさり裏切るんじゃねえよ『正義』どこ行った!

 

「つうか甘雨姉様、取引で変身妨害とか人でなしの所業すぎねえか!?」

「え、私半分は人じゃありませんよ?何でそんな今更なことを……」

「『モンスターではない、神だ!』みたいな俺ルールならぬ甘雨ルールゴリ押しするなよ!」

 

もうこのテイワットに半仙ルール追加しちまえ!

おいこら天理今すぐやれ、じゃねえとツルギ持ってカチコミかけるぞおらあ!

 

「では真君、お馬鹿な弟弟子は私の方で再教育しますのでどうかご容赦を」

「今回こそは逃げられないようにするのだぞ。何ならお前の下で永久就職させてしまえ」

「ふざけたこと抜かすんじゃねえよこんのカラクリオタク師匠があ!」

 

永久就職とか、それやったらマジで俺の自由無くなるじゃねえか!?

っておい、俺を引っ張る力がめっちゃ強くなったし姉様どんだけ乗り気なんだよ!?

そんなにワーカーホリック的同志を増やしたいというのか?

どこまでも俺の夢(という名のフラフラ旅)を邪魔すると言うのかあ!

 

『この期に及んでよくもまあそんな勘違い出来るものだね……すっかり外堀も埋まってることだし、諦めたら?』

『ふむ、何だねタニエル?──ほうほう、『愛されてていいですねえ』とのことだ。まあ頑張りたまえケイセン君!』

 

うっせえ、俺はまだ自分探しを終えてないしそれが何より気に入らない!

だから絶対抜け出してやる!何が何でもなあ!

 





やってしまったが後悔してない。
『ザキエルがパイモンポジションならうるさくて楽しいんだろうなあ』という意味不明妄想が発端です。
そこから天使と仙人増やして、拾われたとか弟弟子とか色々足した結果がこれです、土下座はします。
甘雨がヒロインなのは、やりたい放題弟分に強く出たら可愛いよなーと思ったからそうなった。

以下色々紹介

炯閃(けいせん)
とある筋でモラを持ち歩く癖が無いあの神に拾われ、留雲借風真君に預けられ自然と弟子になった。
甘雨にとっては弟弟子、後の申鶴や漱玉から見たら兄弟子。
どこぞの世界の元大司教やら、若干異なる仙人やらその他諸々が内に住んでいるどこぞのペルソナ使いっぽい何か。
基本頭のネジが迷子、頭の中で電球が点いたら即行動、ひたすら口が減らないいつまで経ってもやんちゃなタイプ。
黒モード甘雨が大の苦手、でも姉貴分として懐いてはいる。
師匠仕込と塵歌壺にて確認できる変な木とパワーストーン紛いの恩恵で、仙人が如く元素力を変身込みで操ることが出来ては使い分けが可能。
一部変身では女性になったり見た目幼女にもなれるが、仙人の力の範疇ということで一切気にしていない。
あっちこっちフラフラしては気に入らないことに首を突っ込んで面白おかしく解決する暴君風来坊。
『気に入らないからどうにかする』がモットー、そしてやりたい放題の元。
自分の心のままに動いてはやりたいことを確実に出来るように果たす、地位だ何だ知ったこっちゃなしなブレーキ知らず。
『せっかくだから』なコンバット理論で色々喧嘩を売るバーサーカーでもあり、どこぞの執行官とはウマがあう。
実質故郷な璃月では拾われたことへの恩もあったりで何だかんだ精力的に動いており、仙人っぽい何かということで知名度は結構高め。
他国ではお騒がせ混じりながら結果的な善行多め、顔はめっちゃ広いグローバルヘルプ変身マン。
普段から飄々おふざけタフガイ(自称)っぷりが目立つが、仕事してたりいざやべえ事態になったらシリアスモードにもなる。
名前だけ出てきたちょっとしたギミックありの片刃剣が得物。

・甘雨
いきなりキャラ崩壊の被害にあった璃月七星の秘書。
炯閃の姉弟子であり、姉様と呼ばれるくらいには姉弟している。
弟分の奔放っぷりに振り回されながらもストッパーになる術も心得ている。
あまりに長いこと一緒にいて、仕事という苦楽を共にしているからかちょっと依存気味。本人がちょっとと言い張ってるからちょっと。
当の弟分はそんな姉心をまるで顧みず、あちこちフラフラの楽しくやりたい放題が故に心配やら奔放さと自分を差し置いて他者(異性なら尚更)と仲良くすることへの嫉妬やら羨望やら色々溜め込んでいる。
挙句命をポイポイ投げ出すような所業にまで手を染めているので、色々限界突破からの黒笑オーラ待ったなし。
今回は無事にとっつかまえたが、恐らく次抜け出されたらどうなることやらか
弟分がいない部屋で何をしていたかは師匠に聞いてくださ(凍結)

・留雲借風真君こと閑雲
師匠であり母親分でもあったり。
あまりに奔放すぎる問題児な弟子に胃を痛めている苦労人。
ただ、結果的にはいい方向のことを多く為している辺りにはにドヤっている。
バカな所業が過ぎるとつばさでうつとかダブルウィング待ったなし、そういうところもまたおかん。
甘雨の心境を鑑みては『はよ孫見せろ』と言わんばかりに色々いらんお節介も焼いているとか

・元大司教とか別世界仙人とか
グランサガサイドの面々、本作ではプレイアブルキャラじゃなくてこちらにスポットを当ててます。
あっちこっちフラフラするアホを焚き付けたり叱ったり助長したり、とにかくやいのやいの騒がしい方々。
未だ炯閃は摩耗とか起こってないのはこいつらのお陰とも?
今は塵歌壺の中で各々好き勝手に暮らしているが、元々は単に頭の中で響く変な声だったとか。
『正義』のザキエル、『知識』のメズラエル『自由』のセイランが主に出張るが『権力』とか『慈愛』とか『信頼』もちゃんといる。
基本性能はグランサガ準拠=天使の権能そのもの。
ただし魂だけの存在、いわばグランソウルそのものなので炯閃に憑依しないと表に出てこれないし力も振るえない。
思いっきり世界のルール外の存在だけど、文中にあるように認知してる現地人は結構いる。

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