昔から───
「……い……おい! おいあんた大丈夫か!」
「……ぁ?」
「おい! 救急車はまだか!?」
「今呼んでるよ!」
けたたましいサイレンの音や、周りから聞こえる声。辛うじて見える範囲には、原型が無いほどぐしゃぐしゃになった俺のチャリと、その隣で壁につっこみ、煙をあげているトラックがあった
(……ああ、なるほどね)
思い出した。確か、コンビニの帰りに居眠り運転してるトラックにつっこまれたんだったか。周りには、俺のことを助けようとしてくれている人達が居るが……もう身体の感覚は殆ど無いし、痛みも感じない。つまり、手遅れってことだろう
(……終わりか。十八年生きたけど、最後は呆気なかったな。……あーあ。来世は呪術のキャラの見た目が良いなぁ。自分の身体で名シーンを再現とかしてみたい。……まあ、無理だろうし、呪術の世界には絶対に行きたく……ないけ……ど)
段々と意識が遠のく。思考もままならず、俺の意識は完全に闇に沈んで行った
───みたいな、一人の男の人生の記憶が
先程の様な死に際の記憶もあれば、普段の日常のような記憶もある。本当に、一人分の人生が記憶にある様な感じだ
僕が……七歳位の頃か。その時にこの記憶が頭に流れ込んできたけど、それはもう大変だった。まあそりゃ、七歳児の頭に十八年分の記憶が流れ込んできたんだ。頭痛で三日位マトモに立てなかったよ
記憶の男……まあ前世で良いか。前世の僕は、まあ所謂転生みたいなのを期待したらしい。記憶を引き継ぎ、新しい身体でもう一度生を謳歌する。そんなことを期待していたらしい。……まあ、確かに記憶は引き継げた。ただし、前世の僕がそのまま生きることはできなかった
言ってしまえば、僕が七歳の時点で自己の形成はある程度終わっていた。そんな時期に急に記憶が流れ込んできて、自分の人格が塗り潰される様な感覚がした。……そんなの、抵抗するに決まってるだろ?
抵抗した末に、僕は僕という人格をそのまま残すことができた。まあだから、引き継いだのは本当に記憶だけってことだ
僕は僕。
「ユウター! ご飯よ!」
「うん。今行く」
今世の僕の名前は、乙骨ユウタ。奇しくも、呪術廻戦0の主人公である乙骨憂太と同じ名前と、同じ容姿を持っているんだから、この記憶が役立つ場面があるかもしれないしね