贋作にも、澄んだような青空を   作:チキ・ヨンハ

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"天才"と"怪物"

 

 

 

「まずはこっちから行くよ!」

 

(速い!)

 

先に動いたのは天才。長年の枷から解き放たれた様に、その身体を躍動させる。全てを置き去りにする様なスピード。その身体から放たれる蹴りは、只人であれば為す術なく屠られてしまう威力

 

「……あはっ」

 

だが、彼女が相対している者は"怪物"。全てを置き去りにしても、彼はそれに追い着いてくる。彼女の蹴りを受け止め、受け止めた手でその脚を引き、彼女の顔を自身の方に引き寄せながら、容赦なくその顔へと拳を振り抜く

 

「……それ、人間の身体でできる動きかなぁ?」

 

「いやー、お生憎様。身体は大分柔らかいんだ」

 

その拳を、身体を地面ギリギリまで反らすことで回避し、地面に手をつき、掴まれていない方の足で彼の手を蹴りあげることで拘束を解き、そのままバク転の様な動きで後方へと下がる

 

(私のスピードに対応し、更には反撃までしかけてくる始末。この人、やっぱり)

 

(あそこから拘束を解くか。スピードもとんでもないが……パワーも凄まじい。次手への組み立ても速いし……この子、やっぱり)

 

 

 

((強い!))

 

お互いが感じるのは、今相対している者への賞賛。今まで会えなかった事への憤り。今会えた事への感謝、充足感。そして……

 

(けど)

 

(だけど)

 

 

 

((絶対に負けない!))

 

そんな相手に負けたくない、今まで奥底に隠していた、自分へのプライドだ

 

「銃、使わないの?」

 

「ん?……ああ。私は使わないんだ。銃より自分の身体の方が強いからね」

 

「ふーん。まあなんでも良いけどさ。負けた時の言い訳にしないでよ?」

 

「……上等!」

 

同時、疾駆。互いが一瞬で拳が届く距離へと接近し、天才は勢いのまま蹴りを放ち、怪物はそれを受け流す。そこで勢いを載せた拳を顎へと振り抜く。それを飛び跳ねることで回避、彼に向けてそのまま頭に向けて踵落としをするが、半身の姿勢になりそれを躱し、そのまま流れる様に彼女の顔に向けて蹴りを放ち吹き飛ばす

 

「〜〜ったぁ!女の子の顔面容赦なく蹴るね!」

 

「加減してほしかった?」

 

「っ!?後ろか!」

 

彼女が受け身をとった時、視界の中に怪物の姿は無い。直感を信じ振り返ると、そこに彼は居た

 

これまでの、どんな攻撃にも対応できる様にした構えではない。拳を引き、腰を落とした、次の一撃に全力を込める様な、そんな構え

 

(できるかは分からない。……でも、なんだか今ならできる気がする)

 

─"それ"を狙って出せる術師は存在しない。その場の環境、自身のコンディション。様々な要素が偶然重なり起こる現象。打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み、その威力、平均して通常時の2.5乗!

 

 

 

(これは……不味い!なんでかは分からない。でも、本能が言っている!このまま受けたら……)

 

彼女は直感で感じとった。その異質さを。故に

 

「『神秘解放!』」

 

─彼女の象徴が光を放つ。その輝きは、いっそ神々しい程の光を放ちながら、彼女の身体へと流れていく。"それ"は、一部の者にしか許されない、自身の身体機能を強引に引き上げる力

 

今の自身の全力。それを以てして、"天才"は"怪物"を迎え打つ

 

「『黒閃』!!」

 

「『障壁』!!」

 

─『障壁』彼女が持つ力の内の一つ。本来であれば身体全体を囲うようにしてバリアを展開する力だが、今回は向かってくる拳に対応するために局所的に展開されている。そして、その効果は

 

「なっ……がはっ!?」

 

『障壁』へと与えられた衝撃を吸収し、その衝撃を指定した方向へと打ち出すこと。これにより、彼は自身が放った『黒閃』を自身も受ける事になった。……しかし

 

「がっ……」

 

(『障壁』でも威力を……殺しきれなかった!)

 

その威力は、彼女の『障壁』をも貫通した。これにより、両者共に少なくないダメージを負うことになる

 

「ぐふっ……やるね。まさか自分の力が仇になるとは」

 

「そっちこそ。っ……まさか『障壁』を貫通してくる程の威力とは思わなかったよ」

 

─『黒閃』と『神秘解放』これにより、両者のボルテージが上がる

 

(次こそ……)

 

(今度こそ……)

 

 

(私/僕がぶち込む!)

 

その場の緊張がピークへと達した、その時

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!やめやめ!」

 

緊張感など全く感じさせない声が響く

 

「っ……青野さん」

 

「お姉ちゃん……」

 

突然聞こえた知り合いの声。二人はその声に反応し動きを止めた

 

「ちょっと、良いところだったんだけど?」

 

「うんうん。分かるよ、二人ともすっごく楽しそうだったもん」

 

「なら「け!ど!もう少し周りを見た方が良いんじゃない?」……周り?」

 

そう言われ、辺りを見渡す。目の前の同類に意識が向いていなかった為気がついていなかったが、二人が立っている整備されていたグラウンドはクレーターができ、近くの建物は衝撃で窓が割れてしまっていた

 

「「……あちゃー」」

 

「ようやく分かった様で何より。……じゃ、二人とも」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

 

 

「そこに正座ね?」

 

「「……はい」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






─天才と怪物の戦績、グラウンドに刻む!(ブチ切れ)
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