Muv-Luv 〜フェアリィより降り立つ戦闘妖精〜 <改>   作:ジェームズ・スミス少佐

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前回のおさらい
結果として、「出雲奪還作戦」は失敗し、奮戦虚しく奪還には至らなかった。
だがこの作戦の結果として、日本帝国のBETA前線は中部地方で一旦膠着することとなり、避難民を北へ逃すことと、前線に補給を回す余裕ができたのである。


第2話 撤退、そしてその後

──恭子サイド

 

 現在、帝国斯衛軍の2個中隊は前線を離れて撤退してる。

2個中隊と言っても先程の戦闘で多くが負傷、もしくは死亡した上に、本人は動けても機体が駄目になってしまい殿下から預かった武御雷を戦場に投棄する衛士もいた。

恭子の機体もまた同じで、要塞級の溶液によって重要なパーツなどを溶かされたことにより武御雷を捨て、唯依の瑞鶴に乗っている。

「恭子様、本当にお身体は大丈夫なのですか?」

「えぇ大丈夫よ、唯依。でも、殿下には本当に申し訳ないわね。折角賜った武御雷を、あのような様にしてしまうなんて。本当に情けない……鬼姫の名が泣くわね」

「いいえ、恭子様は悪くありません。命があり、ここに生きていることに意味があるのです」

「……そう…ね」

 

──武御雷と瑞鶴が編隊を組みながら、後方の仮設基地へ低空で飛んでゆく。

機体の殆どが損傷を受けているか、機体を捨てた衛士を乗せて飛んでいるため、とてもゆっくりだ。

だが、その編隊には通常時の編隊とは違うところがある。

編隊を組みながら飛んでいる斯衛機の上を、ゆうゆうと飛びながらエスコートしている機体があることだ。

未だにあの機体はIFF-Unknown- つまり識別信号は更新されず不明機のままだが、敵意はないらしく大人しくエスコートしている。

 私達が戦っていた時には明け方だったというのに、今の空は憎らしいほど清々しく晴れている。

それにより、まだ夜の帳が下りている時は見えなかった、不明機の全容が見れた。

 

 上面を灰色、下面を鮮やかな青緑色の2色で塗り分けられ、機体各所に細かい塗装が塗られた珍しい塗装の機体。背面の可動兵器担架システムを、2つとも使ってまで搭載された大きな黒い背負い物。

 

「(あれはなにかしら?戦闘の際に大き過ぎて邪魔になるのではないかしら?)」

 

と、恭子は思った。

そしてどこの国のものとも違う突撃砲。

 

「(見たことが無い物ね)」

 

それもそのはず。不明機の持っている突撃砲は砲門が一つしかなかったのだ。

通常、突撃砲とは36mmの連射できるチェーンガンのユニットと、120mmの滑空砲のユニットを組み合わせた物のことだ。

なのにあの突撃砲は滑空砲ユニットしか積んでいないようだ。

 

「(我が帝国も、チェーンガンユニットのみの87式支援突撃砲を所有している。けれどあれは、チェーンガンユニットで精密射撃をするためのもののはず。そもそも、本来小隊のうち打撃支援と砲撃支援の衛士のみが持つ物では……?)」

 

加えて、恭子が九死に一生を得たあの時に、機体が装備していたミサイルと爆弾。

 

ミサイルは米軍のF-14 トムキャットに搭載されるAIM-54と使用感は似ているようだが、ミサイルの形状が異なる上に聞いていたよりフェニックスミサイルよりも速く、おまけに直接相手にぶつけている様に見えた。

似て非なる物のようだ。

 

爆弾は、今では旧式と化した爆撃機で投下するのものに似ていたが、どうやらこちらも違う。

不明機の爆弾は機体から投下後、尻のほうに4つの羽が生え、その後に先が割れて小型の爆弾が降っていた。

普通のクラスター爆弾とは、一つの爆弾の中身に小さな爆弾が大量に詰まっているものだが、あの機体のは一つの爆弾を軸にして、その周りに少し小型の爆弾を並べていた。

無差別に対象を攻撃する従来のクラスター爆弾とは違い、対象を正確に、かつ精密に爆撃する用途のようだ。

 

そして何よりも目を引くのは、不明機の胸部、コックピットの真上に機体を象徴するように書かれた文字。

"雪風"

旧大日本帝國海軍の駆逐艦、陽炎型駆逐艦8番艦。それが雪風だ。

佐世保の時雨と並んで呉の雪風と言われた武勲艦であり、戦後まで沈むこと無く生き残った"奇跡の駆逐艦"と呼ばれる。

恭子にとっては馴染みの薄い話ではあるが、なんとなく名前は覚えていた。

 

「(達筆な漢字ね。あの機体の衛士が書いたのかしら?)」

「(それにしてもあの機体はいったいどこの所属なの?無線で何者かに報告していたようだったけれど、聞き取れなかったわ。どこの国の言葉かしら?)」

 

結局恭子は基地に到着するまでの間、不明機のことばかり考えていて、隣の唯依の言葉に虚ろな返事を返すばかりだった。

 

──ジェームズサイド

 

 不明機に乗っている男の名は、ジェームズ・スミスという。

ジェームズは苛立っていた。

援護を要請された時は、雪風が自分を求めてくれたことに対する歓喜によって忘れていたが、奴ら帝国軍は自分を扱き使った上に、ボロボロでろくに速度を出せない屑共のおもりを押し付けてきたのだ。

 

「巫山戯るなよ……。こんな奴らの引率をしなけりゃ、ろくに補給もさせてやらないというのか?この腰抜け毛玉の屑共が……!」

 

ジェームズは憤っていた。

かつて彼がフェアリィ空軍(FAF)に所属していた際は"ブーメラン戦士"と呼ばれ、フェアリィ最強の兵士達が選別される特別な部隊『戦術空軍団・フェアリィ基地戦術戦闘航空団 特殊戦第5飛行戦隊』(以下特殊戦)の一員だった。

特殊戦の任務はただ一つ。敵であるJAMの情報収集である。

敵機であるJAMを撃墜する時など、自機が襲われて逃げられなくなった時のみだ。

 

特殊戦にいた頃のジェームズは、心が死んでいた。

そんな様でいながらも彼は、心の何処かで特殊戦であることを誇りに思っていたのだ。

 

それに、FAFは国連の組織から独立した1種の軍事国家だった。

だからFAFは国連を通じて、各国と軍事条約を結んでいた。その内容とは、FAF機が補給を要請した場合は、各国軍機よりも優先され、各国はそれを拒否できないという旨の物だ。

地球をジャムの脅威から守る代わりに、FAFには優先権と地球を絶対に守る義務が。

FAFの地球における優先権を認める代わりに、地球側はFAFに対し食料プラントの建設禁止と、食料を地球から調達するなどの枷を。

そうやってFAFと地球は摩擦を起こしながらも、ギリギリのところでなんとかなっていたのだ。

 

なのに、人知れずFAFがジャムとの戦いに明け暮れていたある日、地球へBETAが侵攻を開始。

BETAが飛来して、国連とFAF間の条約は破棄。

やがてFAFは解体、フェアリィからの撤退命令が下された。

ジェームズを含め、FAFの軍人たちの頑張りの全てが音を立てて壊れた。

そして惑星フェアリィという敵地で死に、故郷に遺骨を帰すこともできなかった者達の死は、本当の意味で犬死となったのである。

 

──諸々のことを踏まえれば、ジェームズが地球人に対して向ける憤りは当然のものである。

現在、地球に帰還できた元FAFのパイロット達は、その多くがオーストラリア海軍に配属されたが、その他の兵士は国連軍に配属されて何処かの辺境の地へ散り散りになった。

オーストラリア海軍に配属された兵士たちも、アリス・スプリングスという僻地に送られて燻ぶっていた。

 そしてFAFの軍人達は、日頃の戦闘や最後のフェアリィ撤退戦でPTSDなどの心理障害を皆が大なり小なり負ってしまっている。

フェアリィに行っても地獄だったというのに、地球帰還後も地獄が待ち受けている。こんなのはあんまりだ。

だからこそジェームズは、自国の領土を守るために指揮下に無い自分に勝手なことばかり命令した帝国軍に久し振りに本気で怒っていた。

 

さて、現在は昼前。

後方の鳥取県日南町に設置された帝国軍・帝国近衛軍の仮設基地まであと少しのフライトである……。

 

        TO BE CONTINUED?

 




おさらい
FAF(フェアリィ空軍)
国連によって設立された地球防衛機構を前身とする組織。
惑星フェアリィにある6大基地のうちフェアリィ基地を本部とする超国家組織である。地球本部はオーストラリアにあり、フェアリィに送られてくる兵士達はそこで訓練を受ける。
BETAが来る前はジャムが人類の敵だった為、人類はジャム殲滅に乗り出したが、いざジャムを通路の向こうに押し戻すと、今度は通路の所有権を巡る各国の主張が始まった。
結果として国連は、ジャムを殲滅するために組織した地球防衛機構に通路の所有権を与え、国家規模の組織にした。
これにより各国は通路を諦め、地球防衛機構はフェアリィ空軍と名を改めた。
だが国連は、フェアリィ空軍が全ての物資を自給自足できるようになると、地球の軍よりも圧倒的な技術を持つフェアリィ空軍が謀反を起こすと考えて、食料を地球に依存させることにした。
因みに、フェアリィ空軍の軍人たちの将官以外の下っ端の殆どが元犯罪者である。つまりジェームズもなにかあるかも。

FAF語(フェアリィ英語)
これは正式な言語ではありません。元々FAFでは、英語が公用語だったのですが、聴き取りにくい無線や、急がなくてはいけない時に、簡単で直ぐに意味が伝わるよう短縮&早口になっていったもののことです。英語圏の人たちはFAF語を聞いて、何を言ってるのか大体分かる程度で、完璧な翻訳はかなり難しいそうです。
本編では、ジムの無線を聞いた恭子が言葉を理解できていない描写がありましたが、それはジェームズがFAF語を使っていたからです。

JAM(ジャム)
惑星フェアリィから地球を侵攻してきた存在。
生物なのか、機械なのかは不明。
ただ、人を襲うことはないが、人の作った機械には容赦無く攻撃する。この攻撃は一説によると、JAMがその機械を理解しようとしているというのもある。
そしてJAMには様々なタイプが存在し、変幻自在に形状や形質を変えられる可能性もある。
この作品では主にお話の過去の回想に出てくるヤベーやつだと思って下さい。マブラヴにいたら「絶対戦術機壊すマン&戦術機パクるマン」になると思って、今は出してません。
というかジャムが戦術機を鹵獲して、理解してしまったら……BETA以上の脅威になりかねないですね。はい、出禁。
※今後次第ではバチバチに戦闘する可能性もあり。

BETA
宇宙の何処から火星に飛来し、次に月、そして地球を侵攻してきた異星起源種。
ハイヴという巣の様な大型の建造物を作ること、種類が多いこと、太陽系外から来たとされることくらいしかわからない生物。Muv-Luvシリーズを一作でもやってたり、アニメを見た人に必ずトラウマを植え付けることで有名。
「炭素系生物絶対殺すマン&資源採掘マン」だと思って下さい。

日本帝国軍
第二次世界大戦後、GHQにより解体された大日本帝國陸・海軍を、BETAの地球侵攻により復活させた感じである。
残念ながら本作の作者はマブラヴ本編をやってないニワカなので、詳しくはわからない。
でも大体こんな感じだよ。

帝国斯衛軍
日本帝国軍とは違う指揮下にある独立武装組織である。
その正体は日本帝国政威大将軍直々の指示で動く、独立した指揮系統のヤベーやつである。

機体紹介

FFR-31mr/d スーパーシルフ
全高…22.20m
搭載エンジン…FNX-5011-B/C フィーニクスMk.X
最高速度…マッハ3.0
巡航速度…マッハ1.65 ※戦闘時はマッハ0.98
武装…腕部20mm多砲身機関砲 最大積載量3000発
  ※機関砲は固定武装です。
   127mm支援突撃砲 所持数は作戦次第 最大4丁
   短・中距離空対空ミサイルAAM-Ⅱ 最大6発
   長距離空対空ミサイルAAM-Ⅶ 最大4発
   高速空対空ミサイルHAM 最大4発
   高速空対地ミサイルAGM-ⅢD 最大6発
クラスター爆弾GBU-2A 最大2発
   CIWS-1K 脚部格納スペースに2本×2
 その他…戦術航空偵察ポッドシステム(TARPS)、赤外線カメラ、コンフォーマル・マルチバンドESMセンサー

はい。主人公機にして、私の機体でもある可愛い子ちゃんです。
FFR-31mrは4種類くらいあって、その内d型はラムジェットブースターを搭載した逃げる事に特化した機体です。

きっと皆さんは、1に全高、2に速度、3に武装の3つについて聞きたいことがあるはずなので答えます。
1.全高はOVA版スーパーシルフのまんまです。かなりデカイと思いますが、FAFが地球に帰還後初めて造った戦闘機のエンジンを流用できる戦術機を造ったとかなんとかで納得してください。

2.次に最高時速ですが、戦術機サイズで音速超えるのは可笑しいだろと思う人もいると思います。でもね、私はこれでいきたいんだ。私は戦闘妖精雪風の設定もマブラヴの設定も、ちょっと掠るくらいの二次創作を作ったつもりなので許してね。

3.最後に聞きたいのは腕部の機関砲の口径でしょう?
何故36mmではなく、20mmなのか?についてですが、単純に航空機の機銃で最もメジャーだから選んだ次第です。
後、他にも理由(言い訳)がありましてね。機体に搭載された全ての兵器を使い果たした場合や、近接防衛火器として使う最後の切り札として、小口径かつ最低限BETAに損傷を与えられる機銃にしたかったのでこうなりました。
因みに弾薬は20×102mm弾です。
それと、武装のほとんどに元ネタがあります。

腕部20mm機関砲は、現代の戦闘機の機銃をイメージしました。撃つときになって機関砲の前の蓋がスライドしてマズルが見えるかなりエッチなギミックがあります。そして現代戦闘機と同じく、弾薬が切れた場合は補給に帰って再装填しなければいけません。まぁ使う機会なんてほぼ無いです。多分、恐らく(Maybe)

127mm支援突撃砲は、中の人が小銃は大口径のほうが好きなので127mmになりました。127mmの大きさの元ネタは現代艦(イージス艦など)の艦砲に使われるオート・メラーラ127mm砲が中の人のお気になので、127mmです。
支援突撃砲の形状のイメージは、アメリカのkel tec社製のブルパップ・ライフルであるRFBです。

そして、CIWS-1K(シウス-ワン クルツ)。これはMUV-LUV本編には存在しないオリジナルのナイフです。近接格闘戦用として携行している設定です。
ほかのナイフと違うのは、クルツ(ドイツ語で短い)と書いている通り、普段は2つ折りにして収納している事です。2つ折りの為、剛性は弱くなり、基本使い捨てです。
数は膝の前、片側で2本ずつ、合計4本装備しています。取り出す時は、第08MS小隊の陸戦型ガンダムやEz-8のビーム・サーベルみたいに、膝のユニットが展開して中から柄が飛び出てきます。

因みに後付け設定ですが、このナイフの他にCIWS-1Lという少し長めの銃剣もあります。もしかしたら支援突撃砲につけるかも?今後に期待。
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