獣人オリ主ちゃんは何処へ消えた。A:虚空です   作:ナナの四六三

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遅れました、まだまだ遅れます。


そういえば獣人オリ主ちゃんて今の所出る気がしないけどいる?

「で、アルファ。この子どこで拾ってきたのかな」

「ムコウノ村から王都へ向かうディアボロス教団の馬車に乗せられていて──」

 

 前回からしばらく経った。私たち兄妹の前にはそこそこ強くなったアルファともう1人、銀髪のエルフが片膝をついている。シャドウガーデンの末席に加えて欲しいとかなんとか言ってきた子である。

 

 連れてこられた時は原型を留めているだけまだアルファよりマシかとも思ったが魔力暴走状態だと体がめっちゃ痛いんだよね。まだ肉塊になる前、痛覚がたくさん残っている一番辛い時期だった彼女をものの数秒で治療してしまった我が兄上に秒速で心酔してしまったのである。さっき(あるじ)様……って呟いてたし。

 

 アルファの説明に脳みその片方を裂きつつもう片方で脳内会議。内容はもちろんアルファが連れ帰ってきたエルフの処遇について。

 

「(どうするよ?)」

「(どうしようかなぁ)」

 

 もう既に1人いるんだしもう1人くらい増えても変わらない、のかもしれないが私たちで管理できるのかという問題がある。まあ今現在ほぼ放置気味で育てられているアルファを私たちが育てていると言えるのかどうか甚だ疑問ではあるが。

 

「(もうアルファも自力で盗賊くらい倒せるだろうし、もう1人を養うのに不都合はないんじゃないかな)」

「(そうかな……?そうかも)」

「(一応シャドウガーデン(自警団)としても人員を増やしていきたいしね)」*1

「(アルファもそのつもりで連れてきたみたいだし、それでいきますか)」

 

 脳内会議を打ち切り、目を閉じてアルファの話を静かに聴いていた兄は目を開いた。

 

「……話はわかった、受け入れよう。それじゃ……そういえば君も名前を変えるの?」

「ぜひともお願いいたします」

「そう、か。なら──ベータ。君は今日からベータと名乗るといい」

 

 兄の言葉に喜ぶベータ。光栄です!とニコニコしている。対して私は兄のセンスに感心していた。なるほどなるほど、そういう感じね?コードネームみたいでかっこいいじゃんね。

 

「ええと、それであなたは?」

 

 命名法が判明して色々納得した私に、ベータが問いかけてくる。実は待ってた。前回の名乗りが微妙だと思ったのでいい感じのを考えてきたのである。ウンタラカンタラ聞かれたら答えてあげるが世の情け!ってコジローが言ってた!ムサシだっけ

 

「我が名はアイシャ・カゲノー!シド・カゲノーの妹にして失われし奇跡!魔法を(あやつ)りし者!」

 

 ついでに火花(見た目だけで熱くない)を散らせてみせる。お〜、パチパチと控えめな賛辞が返ってきた。今後この名乗りで行こうかと一瞬考えるも、本名をばら撒いたら両親にも迷惑だと思い直す。せめてコードネームに変えなきゃな。兄はシャドウという名前を用意してるらしいし、私も何か考えてもらおうか。

 

「えっと、そういうわけだからとりあえず訓練をして、十分に力がついたら盗ぞ、ゲフンゲフン。えー、盗賊に扮しているディアボロス教団について調べたりなんだりしてもらうことになるかな。それじゃ、アイシャはいつも通りに、アルファは一応先輩だし、僕たちがいない間にでも色々教えてあげてね」

「お任せあれ」

「分かったわ」

 

 

◇◇◇

 

 

「それじゃあアルファ。まずは軽く打ち込んできて」

 

 アルファとベータの住む家の整備もあらかた終わり、今日から訓練週間である。と言っても私は致命的に教えるのに向いていないので兄とアルファの訓練風景をベータと一緒に眺めているだけであるが。さっきまで兄の相手をしていたベータの汗を拭いつつ、アルファにがんばえ〜と念を送る。

 

「ふっ!」

 

 アルファの攻撃。まだちょっと教えてもらっただけなのにすでにいつかの盗賊ボスAよりも鋭い一撃が兄へと襲いかかる。これが才能か(白目)。軽くいなされるがすぐにもう一歩を踏み込んで転倒を回避。攻撃に繋げる。隙を減らそうとする努力が垣間見える動きである。

 

 しなやかな体を生かした鞭──というよりはどちらかといえば輪ゴム()と言った方があってる気がする──のような動きでミヨンミヨンと攻める攻める。しばし攻防が続いたが流石に実力差がひどい。それに何と言っても──

 

「遅いね」

「──っ!」

 

 ガッ、とアルファの木剣が弾き飛ばされ、反対に兄の木剣がアルファの喉元へ突きつけられる。技術は簡単に吸収できるみたいだし、今はフィジカルと魔力操作の方を鍛えた方がいいんじゃないかなこれは。

 

 そうそう、なんか幼い頃からの過度なトレーニングは発達障害がどうのこうのと聞いた覚えがあるがそれは前世の話。この世界では一般貴族家庭でも魔力でどうとでもなる。

 

 そんなわけで、任せたまえ、トレーニングメニューの計算ならなんか知らんが得意だ。意気込む私、そして隣で全然分からん、と青い顔をしているベータである。目にも止まらんかったか。

 

「技術面はどうとでもなるみたいだし、実戦で磨きながら癖を矯正していく方針でいこうか。技術はそれでいいとして、とりあえず今は体を鍛えていこうね」

 

 兄も同意見のようだ。私たち通じ合ってるね///とまあ冗談はさておき、──まあちょっとは嬉しかったけど──差し出された兄の手に訓練を見ている間に書き出したトレーニングメニューを渡した。サッと目を通した兄の満足げな気配を感じる。

 

「完璧だよ、我が妹(マイシスター)。2人にぴったりのスケジュールだ。……ねえこれ僕らはしばらく遠征で狩るの?」

「そだよ。まあしばらく休んでもいいと思うけど」

「んん……まあひとまずの予定貯金額までもうちょっとだし、急ぐことでもないか……アルファ、ベータ。しばらく昼間はこれに、夜はこっちに従ってトレーニングだ。終わったら自由行動かな」

 

 頷いて、手渡された紙を見るアルファとそれを覗き込むベータ。じっと真剣に見ている2人を見てそういえば文字は読めるんだ、と思って聞いてみる。村長さんにでも教えてもらった?

 

「……読めない」

「読めませんね……」

 

 読めないんかい。アルファ&ベータ育成計画に文字を覚える、が加わった。計算とかも教えようか。頭の方は任せろ!

 

 そんなわけでまた別の日、深夜。明るい魔法の光球に照らされた部屋、揺り椅子に横並びに座ったアルファとベータの膝の上でこんなふうに絵本を読み聞かせているのである。ちょっと見ずらいと思うんですケド。

 

「────こうして、おじいさんとおばあさんとおじちゃんとおばちゃんと犬のジョンとネコとネギの冒険は幕を閉じたのでした。おしまい。……こんな感じで読めるようになるの?」

 

 上を伺えば同時に頷く2人。

 

「もう少し他のものもお願いできるかしら?」

「ん〜じゃこれかな」

 

 言葉を覚えてるから文字を覚えるのも早いのか、それとも2人が天才なだけか──まあ十中八九そうだと思うが、こんな適当な教育でサクサク文字を覚えていくものだから育成ゲームみたいでちょっと面白い。

 

 ちなみにこの間一体どんな頭してんだと思ってちらっと頭の中を覗いたらなんかスゴイ文量とロジックで思考をしていて眩暈がした。この天才共め……明日は算数を教えてあげよう。

 

 読み終わったら就寝。私や兄は魔力操作により超絶ショートスリーパー化しているがベータはもちろんアルファも魔力操作技術的にはまだ難しいので今はまだ私がこうして睡眠導入をサポートしている。こういうところもちょっとずつ教えてやらないとな。

 

「いい?ここからこうしてこうやって魔力を流していくの」

 

 かなり慣れてきたアルファの方をささっと眠らせて、ベータの柔らかなお腹に手を這わせながら魔力を操作する。こっちに引っ張ってこうしてこう、ここで輪っかにして……と寝る時の魔力の流し方を教えていく。ええい変な声を出すな。無視だ無視。

 

 ……別に変な気分にはならないんだからねっ!?流石にこんな小さい子には前世でも欲情しないわ!お前の方が小さいだろって?うっせえわぼけ!

 

「すぅ…………」

 

 しばらくして、寝入った2人の天使のような寝顔を見つめながら私はぼんやりと考えごとをしていた。今日の議題はもしかしたら兄は元々鬼畜系主人公だった可能性がある、である。

 

 親の名前からして主人公なのはほぼ確定として、なんか思考がマッドだし(兄の口癖は盗賊を実験台にしよう!である)、都合のいい実験台になりそうな美少女が現れるし(それはなろう系全般に言えることだが)、鬼畜系主人公の可能性が……いやないか、兄はあれでいてそこそこいいやつなのだ。証拠も少ない。

 

 ならばやはりシャドウガーデンを作って女の子を侍らせるこの流れが原作通りと見るべきか、私も単純に原作キャラなのか、などと暇な時はこうやって答え合わせの出来ない不毛な原作考察をぼーっとしているのだ。そんな折、突然アルファの肩がビクッと跳ね上がった。

 

「ひっ、あ゛」

 

 そのうちボロボロと涙が溢れ出してごめんなさいごめんなさいと唱え始めた。

 

「いや、いや゛ぁ捨てないで……」

 

 最初の2、3日は何もなかったから安心していた。しかしながら両親か、村の大人か、子供か、はたまたその全部か、ともかく近しい人に裏切られ、傷つけられた記憶はかなりのトラウマモノだったらしい。

 

 そりゃあそうだろう。()だって幼少期に捨てられたら世界の全てが崩壊したかのように錯覚することだろう。そして子供にとってそれは実際錯覚ではないのだ。

 

「よしよし、大丈夫、大丈夫、私はここにいるから、どこにも行かないから」

 

 アルファの肩を抱き寄せ、ぎゅーっと抱きしめる。包み込むように意識してトントンと背中を叩く。縋り付くアルファには普段のちょっぴり大人びた雰囲気のカケラもなく、ただただ幼子のように泣くばかり。頼むからあんまり庇護欲をそそるのはやめてくれ。ん゛可愛いな゛あ゛もう!

 

「ッ!!──ッ!!」

 

 …………………

 ……………

 ………

 

 ──落ち着いたか。いや、放り出さなくて正解だったかもしれない。アルファの背を撫でながら私はあり得たかもしれない未来を想像する。ごめんね、置いておけないんだ、とアルファを追い出す私たちを。

 

 食料やナイフなんかを与えられて追い出されたアルファ。村への道を歩く彼女はしかし足を止めてナイフを首元へと──そんな可能性がなきにしもあらず。そこまで想像してしまって思わず身震いする。

 

 恐ろしい妄想を振り払い、私はすやすやと、今度は安心したように眠るアルファの頭をそっと撫でた。

 

「う゛ぅぁ」

 

 次はベータか。ぐずるベータの背をトントン叩きながら何だか夜泣きに対処するお母さんのようだと考える。そしてまだ見ぬ未来の旦那様()との悍ましい結婚生活を想像してしまい、ゲボ吐きそうになるのが最近の常なのであった。

*1
盗賊狩りを自警団活動であるとオリ主ちゃんには言っています。本編に入れ損ねた。というか追加設定。

・シド「この世界を僕たちの手で守るんだ!」(建前)

・オリ主ちゃん「お兄ちゃんかっけー!」(本心)




オリ主ちゃんはむっつりスケベ(確信)

 とまあこんな感じじゃないすかね多分。オリ主ちゃんのコードネーム考えてたらもっと遅くなりました。思いつきませんでした。なんかいいのあったらこちらにお願いします。
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