アイエエエ!?センセイ!?センセイナンデ!?   作:湊咍人

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その分だけ更新頻度は......(増え)ないです


勇者との邂逅

 

「おや先生。この前はどーも」

"......元気そうで何よりだよ、チトセ"

「はっ、どうだか。あんな言葉巧みに(アビドスへ)誘っておいて......この淫行教師め」

"待ってめちゃくちゃ語弊がががが"

 

 数日振りにチトセと再会したのはいつぞやの廃墟。以前と変わらない姿にも見えるが、どうやら戦闘で負った傷は完全に治っているらしい。

 一方で私はというと、くねくねと身を捩らせるチトセにツッコミを入れつつも内心ではかなり冷や汗をかいていた。

 

 ......おそらく、以前ここで出会った時にチトセが探していたのはアリスだ。エンジニア部からスーパーノヴァ(レールガン)を譲り受けた際の言葉が否応なく脳内で反芻される。

 

(アリスの体は明らかに"戦闘"を意識して設計されている。そしてヒマリですら予想していなかった存在を、チトセはあの時点で何らかの確信を持って探り当てていた)

 

 情報の入手元だとか、合流前後で何をしていたのかはひとまず置いておいても気掛かりな点。それはチトセの目的だ。

 もしそれが、アリスやゲーム開発部の面々に被害を与える可能性のあるものであれば私は───

 

 ───生徒を信じることが出来ない私は先生失格だろうか。チトセだって私にとっては生徒の一人で、彼女が困っていれば迷いなく手を貸すだろう。

 それでも私には()()()()()。信じようにも私は彼女についてあまりにも無知で、彼女は私を必要としていない。

 

 相互不干渉でいいじゃないかと言われてしまえばそれまで。ただそれでも、私は何故か彼女を放ってはおけないのだ。

 生徒としてだけではない。もっと何か引っかかるモノが、私と彼女の間にあるような......

 

(......まあ、細かいことは考えなくてもいっか!!何か起きたらその時に対処すればいいし!!)

 

 問題の発生防止?完璧な対策?

 そんなものがいつでも万全に準備できる人間なんているわけねーでしょ。

 

 今はそれらに必要な情報すら集まっていないし、何も分かっていないからって隅で縮こまっていたとこで問題は解決しないからね!!

 "とりあえず行動"が私のモットーなんだよ!!

 

 ......というわけで。

 

"で、チトセは何をしに来たワケ?"

「そろそろ先生方が来る頃かと思いまして。結局G.Bibleが必要になったんでしょう?」

"......答えになっていないよ、チトセ。()()()()()()は何?"

「先生方のお手伝いがしたくって......」

"アロナ?"

『嘘ですッ!!(食い気味)』

「チッ」

 

 あっこいつ舌打ちしやがった。

 

「なんすか。なんで正直に言わなきゃいけないんすか」

"開き直るんじゃないよまったく......"

 

 ......こんなこと本当はやりたくないんだけど仕方ないね、うん。

 

「......誰にモモトーク送ってるんです?」

"ホシノ。「次はミレニアムで何か企んでるみたい」って───"

「すいません。許してください!何でもしますから!!」

"ん?今何でもするって───"

「(何でもするとは言って)ないです......とりあえずそちらの二人に私を紹介してくれませんか?」

"それもそうだね。アリス、ユズ、こちらが......"

 

 ちょっと待って。アリスとユズにチトセのことをなんて紹介すればいいの?

 七囚人の一人?目的不明だしいつ裏切るかも分からない協力者?本当の事言っていいものなのかなこれ、アリスの教育にも良くないんじゃ......()

 

 適当に誤魔化す?それは大人としていかがなものか......というか後で普通にバレそう。

 あ~~~~~~(葛藤中)

 

「アリスはアリスです。あなたの名前は何ですか!?」

「私の名前は西水チトセ、よろしくねアリスちゃん!!」

「西水、チトセ......?」

 

 あっこりゃ()

 

「───懸賞金付きの手配書で見ました!!!!キヴォトス全土にて指名手配中の七囚人の一人"感興の瘋癲"......序盤にボスが登場するイベントですね!?!?」

「ふふふ......そう我こそはキヴォトス最強とされる小鳥遊ホシノ(の戦績)に土を付けた、七囚人の中でも♰最強♰の賞金首だ!!」

「「「えぇ~!?!?」」」

"ちょっ!!、チトセ!?!?"

 

 どうする!?ここで戦闘に発展したらG.Bibleを手に入れるっていう目的が───そもそもゲーム開発部のみんなの身が危なくない!?

 

「ここを通りたければ私に力を示すのだ......」

「分かりました!!(チャージ開始)」

「ちょっと待てぇ!?ここは穏便にその......腕相撲で勝負だ~!!」

「......!!腕試しですね、分かりました!!」

 

 ん?アリスって確か推定握力一トン以上でレールガンの反動を受け止められるフィジカルのはずじゃ......

 これ逆にチトセの心配した方が良い?

 

"チトセ、知ってるかもしれないけどアリスは......"

おや、心配してくれるんですか?以前はあんなにボコボコにしてくれたのに

"それはそれ、だよ。それにアリスが誰かを酷く傷付けるようなことは避けたいし"

まあご心配なく。私らしくズルして勝つので

 

 前言撤回。やっぱり少しは痛い目を見た方が良い気がしてきた。

 やっちゃえアリス!!

 

「さて、お姉さん少し本気出しちゃおっかな───恐怖滲出(Terror Exudation)、続けて恐怖露出(Terror Exposure)

「......!!チトセは変身できるんですか!?後でアリスにも教えてください!!」

「アリスちゃんが勝てたなら構わないとも───じゃあ先生、カウントお願いします」

"いいよ。二人とも準備はいい?"

「いつでも大丈夫です!!」

「いいよ、来いよ!!」

 

 チトセの髪色は一度透き通るような白を経てから緑がかった黒へと変化していた。

 ホシノの話によると恐怖露出(Terror Exposure)状態では妙な能力を複数使うらしい。そして今回使う能力は恐らく───

 

"じゃあカウントするね。

 3...2...1...「恐怖再現(Terror Reproduce)、"施錠"」始めっ───!!"

 

「ほいっ」

「......?」

 

 ぺちっと。

 

 アリスは何の抵抗も無く、まるで腕相撲という行為そのものを知り得なかった子供のように敗北した。

 チトセはほとんど力を入れてすらいない様子で、しかも始まる前からこの結末が分かり切っていたような口ぶりだった。

 

 理由は考えるまでも無い。始まる直前にチトセが発動した六つ目の能力。

 

("不運"に"代謝"、あとは"必中"と"気絶"と"偏在"。今回使った"施錠"はおそらくホシノが気絶していた瞬間に使用した能力かな)

 

 効果も名前の通り、接触した機械に対する強制的な施錠といったところだろうか。

 それも偶発的な事故や作動不良を確実に引き起こす、非科学的で証明不可能な何か。

 

 その証拠の一つとして戦闘後にホシノは安全装置(セーフティ)を外して射撃したのだが、一発目が不自然に排莢不良(ジャムった)を引き起こしたのだ。

 ......これに対処するならゼロ距離では銃を使わない方が良いけど、中距離より遠いと余程強固な包囲網を形成していない限り一瞬で逃げられちゃう。

 ホシノが言っていた"逃げの一点においてはキヴォトス最強"の意味が良く分かる......

 

「......っ!?何が起こったのですか!?」

「アリスちゃん大丈夫!?」

「なんか急に動かなくなっちゃって───」

「ふふふ、これが私の能力"施錠"だ......ということで、敗北したゲーム開発部の皆さんはここを通れませーん!!www」

「そんな......G.Bibleがないと私たち───」

 

 おいコラ大人げなさすぎだろ!!幼気なアリスを初見殺しに誘導しといて卑怯ってレベルじゃねえぞ!!カス!!悪魔!!外道!!畜生!!

 ......やはり"大人"として私が責任を持って分からせるしか───

 

「......なーんて狭量な事は言いません。とはいえ少しばかり力不足なので私も同行しましょう」

「!!パンパカパーン!チトセがパーティーに合流した!」

「通ってもいいんですか!?」

「おうとも、お姉さんがしっかり背中を守ってあげるから安心しなグヘヘ」 

「お姉ちゃん、やっぱりこの人信用できないんじゃ......」

 

 ......やっぱり、チトセの意図は読めない。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 今回私が出向いた理由は大きく三つ。

 ゲーム開発部及び先生の護衛、アリスちゃんへのKeyインストール、そしてちょっとした実験です。

 

 一つ目はまあ、一種の保険のようなものと思ってもらえれば。あくまで残り二つのおまけであり、どうせなら確実を期するほうが良いというだけの話です。

 

 そして二つ目、これが最大の目標です。

 原作ではモモイちゃんのゲーム機にデータをコピーし、後に登場するDivi:Sionとの接触によるゴタゴタに紛れて起動という流れでした。

 こうして見てみると、はい皆さんもうお分かりですね。このチャート、普通に不安定すぎます!!

 

 世界の強制力さんに期待するにしても流石に無理があるというものです。そして私もまた研究者の端くれ、実験を行うのであれば不確定要素をできる限り排除し完璧~な結果を求めたいもので。

 

 手元にあるタブレットに存在するのはKeyのコピー、しかしそこからアリスちゃんに直接インストールすることは可能であっても良い選択ではありません。

 何故かって?Keyを起動した瞬間にアリスちゃんが"懐かしい感覚"に気付き、それを流し込もうとしている私に先生がめちゃくちゃ警戒する可能性があるからです。

 

 理想はできる限り原作をなぞること。それが最も自然であり、良い結果が得られる可能性が高いでしょう。

 

 ということで今回は謎の端末を私が補助することにより「アリスちゃんに対するKeyの直接インストール」を試します。

 今後の展開が分からない以上、"モモイちゃんの携帯ゲーム機が手元にある状態で起動できる"なんてラッキーに期待して迂遠な方法を取るのは普通に駄目です。

 

 成功した場合そのまま待機しつつ機を窺い、失敗した場合はモモイちゃんのゲーム機へ(その後アリスちゃんにデータ移行)。それも失敗し原作を完全に逸脱しそうになったら私の端末で休眠中のKeyを起動させることなくインストールします。完璧な計画っすねェ~!!

 

 そしてちょっとした実験についてですが......これはもう()()()()()()

 勝負という形をとり、敗北したパーティーの護衛として一時的に参加。この流れであれば純粋なアリスちゃんが疑うことはないでしょう。

 先生?知らん。

 

"ところでチトセ、さっきの質問なんだけどさ"

「......チッ」

"やっぱり有耶無耶にしようとしていたんだね......

 で、結局チトセがここに来た目的は何なの?"

 

 目的ですか......

 

 結局のところ、Keyのサポートをするのもちょっとした実験も全ては一つに集約されます。 

 推進剤は知的好奇心、目的地はまだ見ぬ未来と真実。

 

 つまり───

 

「どうしても見てみたいものがあるんですよ。私がそれを見るにはいろんな人の力が必要で、その中の一人がアリスちゃんなんです」

"......アロナ"

『嘘は吐いていません』

「先生、私は"感興の瘋癲"ですよ?私利は求めず私欲だけで進む、そういう人間なんです」

"うん、それに関しては私もよく理解しているよ......チトセ、一つだけ聞かせてほしい"

「何ですか?」

"君は、今回もまた誰かを傷つけたり、苦しめたりはしないと約束できる?"

「───何を言うのかと思えば」

 

 そんなもの、決まっている。

 

()()()()()誰も悲しまない結末になりますよ、私の名前に誓っても構わないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チトセの座右の銘は「終わりよければ全てよし、己が愉しめれば尚よし」
この理論を常時振りかざすので全方位から銃口を向けられています(カス)

次に書くかもしれないもの

  • アビドス編
  • アビドス(過去)編
  • エデン条約編の後
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