アイエエエ!?センセイ!?センセイナンデ!?   作:湊咍人

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日常パートは終わりだ
せいぜい噛み締めろ、小僧......(呪いの王並感)

そういえばキヴォトス外部の人はヘイローを持たないと制作者に断言されてたらしいっすね(唐突な話題転換)
まあ本作の設定と矛盾することはないので「はぇ~」で済んだんですけど、これ見落としてるだけで幾つか重要な公式設定とかあったりしそうだなって思います()



ある従者の悩み

 

『メンテナンスなどという見え透いた嘘で持ち出したからには、秘匿したい内容ということですか?』

「そゆこと。まあアリスちゃん達に連日振り回されてるからメンテナンスしたいってのは本当なんだけどね」

『はぁ......』

 

 場所はお馴染みの実験場。ミレニアム郊外の廃墟で"偏在"を使い監視を撒いてから黒服さんに連れてきてもらいました。

 

 以前ミレニアムの敷地を出た後もずっと小型ロボによる監視が続いて厄介だったし、どうせ"偏在(これ)"は見せたところで大して困らないのでね。

 戦闘に使うのは本当に切羽詰まった時だけだし、使わずに腐らせるくらいなら普段から使い潰す方がよかろうなのだ!

 

「以前話してたアレが完成したからね、今のうちに渡しておこうかと」

『......随分と早いですね』

「私も"仲間"も優秀だからね」

『......仲間、ですか』

 

 懐から取り出した容器に収まっていたのは、何の変哲も無い黒い小さなチップ。

 金メッキ加工が施された端子だけが電子機器のパーツであることを示している。

 

「I.S.Cモジュール。私達は頭文字をとってそう呼んでる」

『ふむ......』

「他のパーツを小型化しといてよかったよ。余剰スペースにこいつが余裕で入るからね」

『......少々オーバースペックでは?』

「性能と事前準備は過剰なくらいが丁度いいんだよ」

『理解』

 

 こいつの本質は演算装置であり、想像を絶する集積度を誇る集積回路(IC)でもあります。

 現在のキヴォトスにおける技術水準では到底再現不可能な代物───技術力が追い付いて実現可能になる雷帝の遺産や、威力だけは再現不可能な巡行ミサイルなどとはカテゴリーの異なるガチな遺物。

 

 そんなものを使っていいのかって?まあそれだけ私がKeyに賭けているってことですよ()

 

「ほい接続完了。試運転してみようか」

『了解───限定解除、Protocol:ATRAHASIS起動』

 

 差し出したのはそこら辺のスケバンから逆カツアゲした無線機。スマホ取り上げるのは流石にかわいそうだからね、命が惜しいなら二度とアビドスに来るんじゃないぞ(温情)

 私の手のひらの上でそれはテクスチャが崩れるように変質し───一丁の拳銃に変化する。

 

 試しに撃ってみるけどなかなかに悪くない使い心地。これは貴重なサンプルとして預かっておきましょ。

 

「お見事。使い心地はどう?」

『この規模の行使で熱が発生しないのが気持ち悪いです。どんな細工をしたのですか?』

「私の能力の一つが自動で発動するようにしてあるだけだよ。ただKeyは恐怖としての格が私より()()()()だからこれしかできないけどね」

『......一部引っ掛かる表現がありましたが、熱暴走の危険性が無いのは助かります』

 

 ちなみにこれ滅茶苦茶試行錯誤した結果の産物だったりします。褒めて褒めて。

 

 私の恐怖再現(Terror Reproduce)をKeyに発動させるのは不可能。タブレットの中にいるKeyのコピーはそもそも恐怖を持たない純粋なAIなので話にならないんですね。

 アリスちゃんはどちらも扱える(少なくとも現在は神秘を扱っている)ハイブリット型であり出力も高いですが、インストールされたKey(本体)はその力の大半が恐怖によるもので出力も微々たるものです。

 

 そこで恐怖再現(Terror Reproduce)を私の手を加えず自動で再現するとかいうトンチみたいな案、或いは可能ではなかろうかというその試みは発想の転換により何とか成功しました。

 

 再現できなかった理由はシンプルにリソース不足。私というタンクが離れてしまうと恐怖が拡散してしまい、"再現"に至るための必要量を満たしていなかった、それだけの話なんですね。

 Keyが独断で運用できる恐怖の量ではI.S.Cモジュールから発生する熱を"代謝"で神秘に変換するくらいしかできませんが......まあ十分でしょう。

 

「分かりやすく説明すると......小さいタンクから燃料を供給して動くエンジンがあるとするじゃん?これがKeyね。

 そんで私はそのタンクから燃料を勝手に貰って、熱制御したり余分なエネルギーを還元するってワケ」

『まるで寄生虫ですね』

「他に何か言い方とか無いの......?」

 

 なんというかこう、手心というか......

 

『しかしこれで最低限の準備は整いました。───チトセはこの状況をどう見ますか?』

「まあ待機かな。アクションを起こすには時期尚早ってやつだよ」

『理由を尋ねても?』

「シンプルに言えば、今行動を起こしても勝てない。それだけだよ」

 

 ここ一か月近く、私達はプロトコル:ATRAHASISについて検証と研究を重ねていた。

 結果として浮き彫りになったのはいくつかの明確な弱点。

 

 その一つが、スキャンとリソース化の範囲は演算能力及び行使可能なエネルギーに比例するという事。

 

「現状だとミレニアム内でリソースが散逸しすぎているし、大電力で大型演算装置を動かそうとすれば間違いなく妨害が入る。無理矢理アトラ・ハシースの箱舟を作ろうとしても酷く不完全で小規模なものになっちゃうだろうね」

『......一理あります。しかし、チトセは何かを待っているようですが"それ"が訪れるという確証があるのですか?』

()()。彼女は───いや、彼女たちは間違いなく来る」

 

 それが二つ目。

 リソースは、原作より遥かに早いペースでとある場所に集中しつつある。

 

「こちらから仕掛けるのか、あるいはあちらの思惑に乗るのか。

 そのどちらにせよ時期尚早かな」

『......』

「逆に聞きたいんだけどさ、Keyはなんで急いでるの?」

『......質問の意図が分かりません』

「いやね、別に急ぐ必要ないんじゃないかなってさ」

 

 立ち止まって考えてみれば誰でも分かる話だ。

 プロトコル:ATRAHASISをこのタイミングで発動することによるメリットは一切無い。

 

「各校の最強格も、リオ会長も某全知も来年には卒業してキヴォトスを去るから物理的な脅威度は明確に下がるはず。

 対してこちらはこっそりリソースをかき集めるだけで難易度が大きく下がる。そのどちらも時間が掛かるけど、そもそも数百年以上起動していなかったわけだし一年なんて誤差みたいなものでしょ」

『それは......』

「当ててあげようか、Keyが焦っている理由」

『......』

 

 認めたくないのか、はたまた本当に自覚が無いのか。

 Keyが焦る理由なんて一つしかない。

 

「───悩んでるんでしょ、プロトコル:ATRAHASISを本当に実行すべきかどうか」

『......私は』

「このままではいずれ、その答えすら出せないまでに絆されてしまうんじゃないかって。

 そりゃ気掛かりだよね、自分が作られた理由でもある計画を実行にすら移せない可能性なんてさ」

『チトセは......あなたはどう思うのですか?』

「おん?」

 

 無機質なレンズの奥に、確かな理性の光を煌めかせて彼女は続ける。

 

『あなたの目的はアトラ・ハシースの箱舟を見る事だったはずです。もし......万に一つでも、私がプロトコル:ATRAHASISを放棄した場合あなたはどうするのですか?

 与えられた役目を無視したら、私は───』

「......まあ、どちらでもいいかな」

『え......?』

 

 正直、アトラ・ハシースの箱舟を見るというのは目的の一つであるものの最終目的ではありません。観光地に向かう途中の有名なラーメン店に立ち寄るくらいのノリです。

 定休日だったらしぶしぶ近くのコンビニで買ったおにぎりで妥協しても構わないくらいの。

 

「それは私が答えるべきじゃないし、ヒントを出すにしても今じゃない。

 だからまあ───」

 

 私にできることは、せいぜい外からヤジを飛ばすだけ。

 とはいえ耳に届いたそれは確かな力を持つでしょう。

 

「───悩めばいいんじゃないですか?まだ時間は十分にある事ですし」

 

 迷える子羊を応援するくらいはやぶさかではありません。

 さてさて、これから一体どうなる事やら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




時計仕掛けの花のパヴァーヌ編におけるチトセの最終目的は殆ど達成していたりします

感想、待ってるぜ!!

次に書くかもしれないもの

  • アビドス編
  • アビドス(過去)編
  • エデン条約編の後
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