アイエエエ!?センセイ!?センセイナンデ!?   作:湊咍人

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リオネルセイア......好きだ......(鳴き声)
いつも感想と誤字脱字報告ありがとナス!



全部チトセさんのお陰じゃないか!

 

「───調子はいかがですか?」

「そりゃ上々よ。最高にハイってやつだ!!」

「クククッ......」

 

 反響し鼓膜を揺さぶる警報音も、薄暗い通路を一定のリズムを刻みながら照らす赤色警告灯も。

 場は最高潮。さながら観客の熱狂とレーザーライトを浴びるアーティストの気分です。

 

「にしても()()()か。黒服さんとしてはいいの?またあなたの研究対象が減っちゃうけど」

「問題ありません、活動を全体的に縮小したとしてもおつりが来ます。あなたの存在はそれだけ大きいのですよ」

「そ!!そんなこと言われても嬉しくねーぞコノヤロー♥」

「とても嬉しそうですが」

 

 通信機越しにクックックと楽し気に笑みを浮かべる様が思い浮かびますが、まあそれもそのはず。

 だって今から行うのは───

 

「約束まであと何時間?」

「あと57時間です。こちらで調()()するために10時間頂きたいのですが......」

「───無問題。移動食事休息ソシャゲのログイン諸々含めて十分に余裕を持つなら......15時間ってとこですかね」

「クククッ......!!」

 

 振り返った先に準備してあるのは呆れるほどの重武装。

 使い慣れたトーラス・レイジングブル(回転式大型拳銃)は脇のホルスターに。重機関銃から携行型無反動砲、果てはどこかで見覚えのある火炎放射器まで。

 

 そしてメインウェポンは───一振りの()

 

「じゃあ演算補助よろしくぅ!!」

「承りました」

 

 それはこの世界において()()()()()()()()

 ───たった15時間の饗宴に、ただこの身を委ねるのだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「迎えに来たわ、アリス───それに、ケイ」

「お疲れ様です、リオ先輩!!」

『......』

 

 話があると切り出した日から数日。

 予定時刻ちょうどに彼女はゲーム開発部の部室を訪れました。

 

「その......頑張ってね!!」

『なんですか、その無意味な励ましは......』

「うっ......だってこう───何て言えばいいか分かんないけどさぁ!!」

『あなたは仮にもシナリオライターでしょうに......』

「その......ずっと悩んでたからさ」

『......』

 

 どこか歯切れの悪いモモイと。

 

「えっと......戻ってきたら一緒にゲームしようね」

『上手くいけばの話ですが』

「そ、そうだね......」

 

 こんな時はモモイによく似ているミドリと。

 

「......今度は一緒に、スタファイしようね」

『......ええ』

 

 言葉こそ少ないものの、しっかりと目を合わせて送り出すユズ。

 

「準備はできたかしら?」

『......ええ』

「出発するわ、乗ってちょうだい」

 

 ミレニアム学園内ではよく見かける自動運転車両。

 多少の改造が施されているとはいえ、それなりに見慣れた筈のその扉はまるで───

 

(───この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ、でしたか)

 

 鬼が出るか蛇が出るか。

 パンドラの箱の底に眠る希望は、どちらにとっての絶望になり得るか。

 

「緊張していますか、ケイ?」

『......はい』

「大丈夫、きっとうまくいきます!!」

『───ええ、そうですね』

 

 今更引き返せはしない。選んだのは間違いなく私で、どう転んでも"そうなる運命だった"だけの話。

 でも───そうですね。

 

(思い返せば、チトセには随分と助けられました)

 

 あの廃墟から今日に至るまで。物資も情報も彼女の世話になりっぱなしでした。

 私一人では王女の傍に侍ることすら厳しかったかもしれません。

 

 チトセの思惑も本当の目的も分かりませんでしたが───

 

("悩めばいい"───答えではなく悩むことそのものを肯定する姿勢は理解できませんでしたが、今なら少しだけチトセの意図が分かる気がします)

 

 もしチトセが居なければ、悩むことを肯定されなければ私はどんな結論を下していたか。

 そんなもの考えるまでもありません。何も為せないか、或いは考えるまでもなくをプロトコル:ATRAHASISを実行に移し───失敗していたでしょう。

 

 よしんば成功したとしても、チトセが望むような血沸き肉躍る闘争も無く、苦悩も思索も経ずにキヴォトスは機械的に破壊されるだけ。

 おそらく───彼女が避けたかったのはそんな未来。

 

 チトセにとって耐え難いそれは、言うなれば()()()()()未来。

 

(この選択はチトセが望むものであるか、未だに分かりません。でも───)

 

 ───きっと、あなたは笑って肯定してくれるのでしょう。

 そんな、根拠のない確信を胸に乗り込みます。

 

 向かう先は要塞都市エリドゥ。

 現時点で一万エクサバイトを超えるリソースが存在すると試算される、巨大な一つの罠。

 

 白と黒。勝者と敗者。

 進む者と去る者。その全てを決し───

 

 ───今日を以て、全てが終わるでしょう。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「では概要を説明します」

「よろしくお願いします、ヒマリ先輩!!」

『......よろしくお願いします』

 

 リオとヒマリから同時に連絡が来た時には何事かと思ったけど、話を聞いてみればなるほど重要な案件。

 ゲーム開発部の部室で何度か会話したケイちゃんの新しいボディが完成したらしい。

 

 ......らしいんだけどさ。

 

(なんかあの二人曰くめっちゃキナ臭いらしいのがなぁ......)

 

 明らかに戦闘を意識して作られたアリスの体。

 そしてトリガーAI?らしいケイちゃんの存在。

 

 なんかケイちゃんがあれこれして、アリスちゃんに眠る力を開放するとガチでヤバイらしいとかいう話らしい。

 "私にも分かるように説明して!?"とお願いしたらめっちゃ噛み砕いて教えてくれたけど......

 

(最悪キヴォトスが滅ぶってマジ......?アリスもケイちゃんも普通にいい子なんだけどなぁ)

 

 ゲーム機に直接接続して猶予2Fの技で完璧な即死コンボを連打された時は流石に吠えたけど、夜更かしする皆をたしなめたり委員長気質というか保護者枠というか......

 

 ただ、今回のボディに移動すればその危険性はなくなるらしい。メカニズムに関してはちんぷんかんぷんだったけど頭のいい二人がそう言ってるなら多分そうなんでしょ、うん。

 アリスは今まで通り。ケイちゃんは新しく自由に動かせる体を得て活動できるようになる。なるほど完璧なハッピーエンドっすねぇ!!

 

 ───気掛かりは二つ。ケイちゃんの真意と、チトセの介入。

 

 前者に関しては本当に分からない。"困ったことがあればいつでも相談してね"とは言ったものの、『ではまず王女に悪影響を及ぼすこのバカを叱責してください』と切って捨てられてしまった。

 ゲーム開発部のみんなにモモトークで聞いたところ、どこか思い悩んでいるように感じたって話だからケイちゃんにも事情がありそうなんだよね......

 

 そして......チトセは本っ当に読めない。

 

 前科があるから私が居る間だけでも動向を注視していたけど、結果として分かったのはバレないようにゲーム開発の手助けをしていたってことだけ。

 C&Cやリオからの報告だと幾つか怪しい動きがあったらしいんだけど決定的な尻尾を出すことはついぞ無かった。

 

 何が目的なのか、何ができるのか、どんな手段を取るのか殆ど把握できていないから対策のしようがない。

 リオ曰くチトセの取りそうな行動の幾つかには対策しているらしいけど......目的が分からないのでは根本的な解決にはならないわ、と溜息交じりに視線を落としていた。

 

 そしてシッテムの箱による探査にも引っ掛かってない。

 昨日はミレニアム郊外の廃墟で何度か確認できたけど今は全く反応しない。ミレニアム内に潜伏しているのかとも思ったけどリオとヒマリが共同で開発した監視網に引っ掛かっていないからその線は薄いらしいし......

 

 まあ、今は目の前の事を一つずつ片付けていこうか!!

 

「───以上のプロセスを経てケイをこちらの素体に移植するのが今回の目的です」

「現時点で何か質問はあるかしら?」

『───具体的に、私は何をすればよいのですか?』

「アリスと主人格を一時的に交代してもらうだけでいいわ。こちらから素体とアリスの間にパスを通すから、それに沿って移動する......そういう流れよ」

『......理解』

 

 ......そして、これは"罠"でもあるらしい。

 もちろん指示通りに動けば問題ないし、ボディだってリオかヒマリ、あるいは私(というかアロナ)が機能を一時的に制限させることができるだけで何か仕込んでいるわけじゃ......これ孫悟空の頭に付けられた輪っかみたいなものっていう説明を受けたけど認識合ってるよね?

 

 もしケイちゃんが指示に従わずに暴走したり、よからぬ動きを見せたら制圧できるように準備されてるらしい。

 ......そうならないのが一番なんだけどね。二人の真剣な眼差しを見れば本当に大事だってことは理解したから私は頷いたよ。

 

 でも一つだけ。どこか切羽詰まった様子の二人にお願いした。

 もしケイちゃんが指示に従わなかったとして。あるいは予期せぬトラブルが起きたとして。

 ───最悪の想定を上回る、最悪の事態に陥ったとして。

 

 ()()()()()()()()()()が必要でしょ、と。

 

 何かあれば一緒に全力を尽くすし、責任は私がとる。

 

("だから、私は二人を信じて見守るよ"......か。ちょっとカッコつけすぎちゃったかな)

 

 とはいえ私が実際に役に立つかと言われれば......()

 ならせめて大人として。彼女たちを教え導く先生として。

 

 信じて背中を押すのが私の役目ではないでしょうか、ぶい。

 

「......では機材の最終チェック後、五分後に開始するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この大事な局面で油売ってる主人公いるってマジ?

次に書くかもしれないもの

  • アビドス編
  • アビドス(過去)編
  • エデン条約編の後
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