割と分かりやすい矛盾点でしたが皆さんお気付きだったでしょうか
"うーん......"
『どうされましたか?』
"その、チトセがどう動くのかなと思ってさ"
『チトセさんですか......』
うーん、とアロナと共に腕を組み考え込むが答えは出ない。
チトセ本人に聞いても以前聞いた以上の情報は得られないだろうし、ケイに聞く機会も無かったんだよね。
このままじゃ私だけ何の対策もせずに予定の日を迎えることになっちゃうじゃんね。
......てかさ。
"そういえば、チトセだけはアロナの事を認識しているよね"
『そうなんですよ!!以前からずっと考えているんですけど......何故でしょうか?』
"駄目だ、サッパリわからん!!"
と口では言いつつも......本当は一つだけ思い当たる節がある。
ホシノ曰くチトセは連邦生徒会長と個人的な関わりがあったらしく、彼女が残したシッテムの箱のOSであるアロナはチトセにも認識できるのでは......?と。
その場合、連邦生徒会長はチトセにアロナ───つまり私と共に何かを為す事を望んでいるのでは?いやでもそれならアロナに情報が共有されていないのは不自然では?
うーん本当にどういう事だってばよ......
でもその場合、アロナは連邦生徒会長やチトセに関するデータを
その意図が読めない以上、あるいはこの推論が正しいと確信できていない以上は言うべきじゃないよな......
こういう頭脳労働は私の仕事じゃないんだけどなぁ。
"とりあえず今日は早めに寝るね。明日寝坊したら本当にシャレにならんから"
『先生が早寝......!?明日は槍が降るんですか!?』
"せめて明後日にしてほしいかな......"
◇
「準備はできたかしら」
『ええ。あの───椅子に座ればいいんですか?』
「何故言い淀んだのか理解できないけれど、その通りよ」
「デザインが悪趣味なので形容するのを避けたのでは?あなたよりもよっぽど情緒豊かですね」
「......合理的なデザインよ」
部屋の中央に備え付けられた椅子。何故か円筒状のガラスに覆われており、どこかホラーゲームに登場する培養槽を思わせるその中央に誂えられているのはやけに豪奢な椅子。
配線や機構等が効率的に収められていることは一目見て理解できましたが、外装の......この何とも擁護しがたいセンスは何とかならないものでしょうか。
こう、私が言うのもなんですが───
「魔王の玉座みたいです!!」
『......ッ!(失笑)
───王女よ、正確な表現であれば何でも言っていいわけではないのです』
「......合理的な、デザインよ」
「リオ先輩、どうしたのですか!?」
「(笑いを堪える)」
"フフッ......"
......さて、と。
ここから先、チトセによる援護は期待できません。元よりそのつもりでしたし、チトセ本人も助力は困難であると予め説明を受けています。
───というよりも、ここまでお膳立てされるとは正直思っていませんでした。初対面の際は施設を破壊され消滅させられる可能性まで想定していたことを考えれば、よくもまあここまで長期的・多角的に支援してくれたものです。
改めて整理しましょう。
目的はプロトコル:ATRAHASISの実行。
手順としてはトリガーAIである私が一時的に主人格となることで「王女からの承認」という過程を省いて起動。このコンソールルームをハッキングし電力及びI.S.Cモジュールをリソースとして要塞都市エリドゥの中枢区画をアトラハシースの箱舟に変質させます。
その際にこの場にいる全員を無力化し、第二段階としてエリドゥ全域をアトラハシースの箱舟に変質。そのままキヴォトス中央に向け移動しつつ箱舟を完全なものにする。
問題点は幾つか存在しますが、最大のものはリオとヒマリによる妨害でしょう。
この椅子、見たところ王女でも抜け出せないほど強固な拘束を行うことが可能なようですが───
もし彼女たちが王女ごと私を破壊して事態を収拾させようとしているのなら拒否して帰るつもりでしたが......やはり考えが甘いですね。この期に及んで直接的な手段を講じることを避けるとは。
───まあ、私も強くは言えないかもしれませんが。
この規模の装置ですし電力は必須でしょう。起動に際し問題が発生するとは思えませんが、最大の不確定要素である先生が控えています。
何度か接触するたびに彼女が持つタブレット───シッテムの箱という名のオーパーツらしい───を解析しようとしましたが全て失敗に終わりました。露呈しないよう迂遠なやり方でしたが、恐らく本気で挑んでも軽くあしらわれてしまっていたでしょう。
セキュリティはまるで底なし沼。伸ばした手がどこまでも飲み込まれ、気付けば取り込まれてしまいそうな不気味さ。
完全体となったアトラ・ハシースの箱舟を以てしてもアレをリソースとして用いるのは困難でしょう。未知であるが故に対策が練れないのなら考えるだけ無駄、そう言って初見のボスに突撃し玉砕したチトセの姿が脳裏に浮かびますが......まあ、なるようになるでしょう。
「始めるわよ」
『ええ、お願いします───』
───王女よ。
あなたとの対話も、或いは最後になるかもしれません。
『では、王女よ───』
「はい、ケイに交代します」
ですのでどうか、私を許さないでください。
貴女を裏切り、その思いを踏み躙り、この箱舟を地獄に
『───プロトコル:ATRAHASIS、起動』
───どうか、どうか赦さないでください。
◇
"プロトコル、アトラハシース......?"
「───リオッ!!」
「分かっているわッ!!」
一瞬でブラックアウトしたことを確認し、即座にコンソールの中央に据え付けられたボタンへカバー越しに拳を叩きつける。
蓄光素材で縁取られた、あまりにも原始的な機構のそれは一切の電気を介さない。有する機能はたった一つ、物理的に動作した雷管が導爆線を通して発破装置を起動する。
爆轟の伝達速度は毎秒5500m~7000m。エリドゥ外部に設置された発破装置は即座に火を噴く。
破壊するのはエリドゥ
即ち───
『......!?』
「残念よ、ケイ」
「まあ私はこうなる気はしていましたがね......」
天井や床に散りばめられた蓄光素材が、ケイの輪郭を仄かに示す。
───照らし出されたその表情は、驚愕に彩られていた。
「それでも、私は一度信じてみるべきだと思っただけよ」
「......まったく、本当に頑固なんですから」
『まさか───』
その質問は、目の前で起こっている現実を認めざるを得ない従者の最後の抵抗。
「───そのまさかよ、名前こそ今知ったけれど。あなたが実行しようとしているそれがどのようなものなのか、おおよそ
『この施設そのものがブラフであった、ということですか......』
「ええ。ここまで電力に依存した建物が、まさか機能の大半を捨ててあなたを閉じ込める檻になるとは想定していなかったでしょう?」
一拍おいて拘束装置が起動。こちらも電力を介さず、アナログな手法で稼働し華奢な機体を豪奢な椅子に縫い付ける。
「取引よ。あなたの目的を明かせば───危害は加えないわ」
『......おや、「新しい体に移れ」とは言わないのですか?』
「───何を勘違いしているのかしら、ケイ。私は
『え?』
ガラス越しに視線を向けるのはKey───ではなく。
「聞いているのでしょう?チトセ」
【......いやはや、まさかここまでとは】
一触即発といった雰囲気に似つかわしくない、そのとぼけた声。
今や主の居なくなった小型デバイスから響いていたそれの正体に皆が気付くまで、そこまで時間を必要としなかった。
"『......チトセ!?』"
【いやーすまん寝てたわ。大体状況は把握してるつもりなんですけど───リオ会長は、私に何を聞きたいんですか?】
「とぼけなくてもいいわ。───あなたの本当の目的を教えてちょうだい」
【それならKeyが知っていますよ。ほら答えてあげな】
『......プロトコル:ATRAHASISの実行と、それに際して顕現するアトラハシースの箱舟の観測───』
「それは嘘ね......ケイ、あなた騙されているわよ」
溜息交じりに突きつけられたのは、あんまりな事実。
『......その可能性は常に考えていましたが、具体的にどの点で騙されていますか?』
【信用ゼロで草】
「どうせチトセのことだから日常的にくだらない嘘を吐いていたのでしょう?」
『本日0時の時点までに128回嘘を吐いています』
【え!?そんなに!?まだ青い松ぼっくりには毒があるとか、あんなお茶目も嘘にカウントされるの!?】
『こんな下らない嘘の真偽判断に消費したリソースが存在することが腹立たしいですが......』
「......まあ、ケイが知らないのも無理はないわ」
「───チトセの背後に存在する組織の正体も、その規模も把握していないのでしょう?」
『......』
「私も彼らについては詳しく知らないわ。恐らく、知りすぎれば引き返せなくなるから」
【......推理の続きを聞こうか、探偵さん】
「探偵......?まあいいわ。
私が調べている存在───そこに関わっている情報の範囲だけでも断言できるのは、プロトコル:ATRAHASISとやらを実行するために
『......つまり、私を騙してリオとヒマリに差し出したと?』
【いや信用無さすぎない?】
「そういった取引は行っていないわ。ここから読み取れる事実は一つ───」
カツン、とヒールが硬質な床を打ち付ける音が反響する。
一切の電子機器が停止し、蓄光素材によってのみ明かりが確保された空間に音の残滓が消えた頃。推論というには否定できない事実の羅列から導き出された一つの結論を提示する。
「プロトコル:ATRAHASISを本気で実行し、キヴォトスを滅ぼすなら"彼ら"の手を借りればいい。でも彼らは......いえ、彼ら
であれば───あえて
【......面白い推理だね、探偵さん。その芸術的なセンスと組み合わせて漫画家でも目指してみたらどうだい?】
「そうかしら......」
「リオ、そんな見え透いたお世辞に引っ掛からないでください。
......それで、実のところどうなんです?」
【まあ九割正解ってとこですね】
「おや、不正解だそうですよリオ」
「......どこが間違っていたのかしら」
いやはや、ほんまここまでメタられているとは思いもしませんでしたわ。
カメラで見る感じとんでもない技術が用いられた拘束具と強化ガラスですし、まさかエリドゥそのものに供給される電力を内部から物理的に遮断するとは......
今はコンソールルームだけ徹底的に切り離してるみたいで、機械の作動音は聞こえるのにKey(アリスちゃんボディのセンサ)でも認識できていない様子。これワンチャン私が以前使ったチャフが利用されてるんじゃ......まあええか()
とはいえ付け入る隙はあります。そう、私ならね。
【一つ目は......まあ別にエリドゥを選んだことで得られるメリットなんてないということです。理由はあるんですけどまあ個人的な話になるんで......】
「二つ目は何かしら」
【Keyとあなたとの間に取引が成立しないように、私とリオ会長の間に取引も成立しないということですよ───ッ!!】
「───ッ!!」
さて、本日のマジックショーは......
「行きますよぉ、いいですかぁ!?」
「ええ、いつでもどうぞ」
「
ほな行きまっせ!!
◇
"これ黒服の転移で凸ってくるんじゃ───!!"
「いえ、
「その通りよ、しかも防爆扉は電力が遮断されているから無理矢理破壊するしかないし、私のAMASが迎撃を行うわ」
"何だろう、フラグにしか聞こえないよ───!!"
「正っ解!!」
"ほらー!!"
扉から向かって右手側、万が一の襲撃に備えて入り口近くで待機していた私たちの斜め後方から響く声。
リオが、ヒマリが、そしてトキとエイミが反射的に銃口を向けた先に存在したのは───
「「「「───ボイスレコーダー!?!?」」」」
空中に緩い放物線を描くそれ。
その起点は───ちょうど、今の私達の真後ろ。
「......かかったな、アホ共が」
全身を真っ赤に染め、両足と右腕はあらぬ方向を向き、額から流れた血で片目を閉じ。
───それでもなお余裕は崩さず。ズタボロの右手でグレネードを握りしめた彼女は蚊の鳴くような声で悪態をついたその口で、ピンを噛み締めて引き抜いた。
「
火刑に処される魔女のようだと、不謹慎にもそんな考えが一瞬脳裏を過った。
───轟轟と燃え盛る火炎の奥で息を吹き返すその姿に、生唾を飲みこむ。
ここから先の展開は、もう
寒いぜ!!(自室に暖房器具なし)
あと感想待ってるぜ!!
次に書くかもしれないもの
-
アビドス編
-
アビドス(過去)編
-
エデン条約編の後