あらすじのとこに挿絵として貼ったから見ろよ見ろよ~
いやしかし野獣ママと抱き合わせになるとは伺っていたものの抱き合わせ(物理)になるとはこのリハクの目をもってしても......
キヴォトスの「七つの古則」はご存じかい?......いや、その顔を見ればわかったよ。
その五つ目は「楽園」に関する質問だったね。
「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか」
この問いは他の古則と等しく、難解で理解に苦しむ言葉の羅列ではあるが───ある解釈としては「楽園の存在証明に対するパラドックス」であると見ることもできる。
もし完成された楽園が存在し、至上の満足と幸福を抱くことが出来るのであれば誰も楽園の外に出ることはない。
楽園の外に足を踏み出す者が居れば、その者にとってそこは真の悦楽を得られる「本当の楽園」ではなかったということだ。
であれば、楽園に到達した者が楽園の外で観測されることはない。
楽園に到達したと嘯く者の言葉を信じられるのであれば、話は変わるがね。
しかしここで同時に思うことがある。
果たして証明できない真実は無価値だろうか?
この冷笑にも思える問いは、何か真に問いたいことがあるのではないだろうか?
この甘い虚像、夢物語かのような名を冠した条約に対して、君はどう思う?
......
そもそも楽園の定義が曖昧すぎる、外部に情報が漏洩しないほどの拘束力を有して自由が許されない環境を"楽園"と呼称するのも些か無理があるというものです。
んな面白い空間があったらTwit●erで拡散して深夜にクッソ美味いラーメンの画像拡散したいでしょ、どうせ太らないんだし。
......とはいえ、あなたが聞きたい答えはこういった類のものではないでしょう。
カルネアデスの船の乗員全員に救命胴衣を着せたところでパラドックスは解消しませんし。
仕方ないので少し真面目な話をしますか。
以前生きていた世界では、とある宗教において"菩薩"と呼ばれる存在がありましてね。
悟りを開いて涅槃───あらゆる煩悩が消え去り苦痛から解き放たれた、そんな状態になれるにも関わらず他者を救うため現世に留まる。
完璧に満たされたとかいう煩悩まみれの楽園とは正反対の価値観ですが───まあ要は、"誰かの為に動く善人"に楽園は不適合なんですよ。この時点で楽園の存在意義が失われてる気がするのは私だけなんですかね。
で、楽園の存在証明でしたっけ?私の答えは"小さな楽園は存在する"です。
遠く離れた異国の子供と、隣で一緒にパフェ食ってる友人にとっての"楽園"は当然違います。
あらゆる動物がのしのし歩いてて超美味い肉が食べ放題の場所があったとしても、肉に飢えた奴らが群がっている光景をヴィーガンの方々が見たら「なんて悪夢だ......」って吐き捨てるでしょ。
全員の需要を満たす楽園を作るなら、「楽園の外ってどうなってんのか気になる!!」とか言い出すバカタレの需要も満たすために外に出られる必要がある訳ですし。
つまりね、人類全員がハッピーに一生を過ごせるような楽園なんてどこにもないんですよ。
そもそも人間ってのはより高次な幸福と進歩を求める為に変化し続ける生き物ですし。
言ってしまえば絶滅するまで絶対に歩みを止められない、ブレーキはあっても停止することのできないマグロみてえな生き物で、知的生命体と呼ぶには不完全すぎるアホの集団です。
死ぬかもしれないと分かっていても知的好奇心だけで一歩踏み出してしまう、合理性も何もかもかなぐり捨てて行動できてしまう、そんな───
プラトン的なイデア世界に感化されて捻くれた古則を残した古の頭でっかちは知らなかったんだろうなぁ......退屈は猫をも殺すっていう言葉をさ。
もし人間が誰一人出てこないようなサイコーな楽園があるとしたら、きっとそれは不完全な楽園です。
だって全ての人間が楽園の外に出るという選択肢を忘れて、ワクワクするような刺激を提供し続けるために常に変化する楽園が「完全」であるはずがないでしょう?
きっとそれは狭い場所でしょう。誰かの幸福を誰かの不幸で賄わずとも、その幸福に眉を顰める人もいるかもしれないですからね。不快感を抱かない程度に価値観の合致した人間だけが集まるのであれば、そこは比較的小さなコミュニティのような空間になるでしょう。
そして不完全な場所でしょう。イベントや季節、或いは新しい参入者により移り変わる環境に身を置き、
でも、きっと面白い場所ですよ。
身を置いている内は楽園だとは気付けないかもしれない。それでもそこは楽園なんです、
きっと楽園は想像よりもずっと小さくて、不完全で、そして───すぐ近くにある。
この答えで満足ですか、セイアちゃん?
◇
「こんにちは、先生。こうしてお話するのは初めての事になりますね。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。
そしてこちらは同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」
初めて味わうお茶の風味と、見るからに高そうなティーカップ。
並べられたお菓子の数々は私のお給料でも余裕でダメージを受けるレベルの有名店ばかり。
......なぜだろう、甘いものは大好きなのにほんの少しだけ帰りたくなってきたナー
「あらためまして、お初にお目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです」
「へー、これが噂の先生かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね?
なるほどー、ふーん......」
「......ミカさん、初対面でそういった不躾な視線を向けるものではありませんよ?」
ティーパーティー。
キヴォトス三大校の一つであるトリニティの生徒会長であり、各派閥から権限を有する三名が選出され交代制でホストを務めるという特異な構造。
チトセからかなりの食わせ者たちの集まりと聞いていたから身構えていたけど......
(思ったより普通......というか、なんか普通の学生って感じで安心したなぁ)
まったく、チトセが怖いこと言うから警戒しちゃったじゃんね。
「......ということで、私たちから先生にお願いしたいことがあるのです」
「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!?もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの?ちょっとした小粋な雑談とかは?
天気が良いですねとか、昨日は何を食べたのですかとか、そういうの挟まないの?ほら、ティーパーティーって基本的には社交界なんだし?」
「......」
「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー!きちんとしないと!」
......うーん、幼馴染のじゃれ合いだと分かっていても胃がマッハ()
美人のキレ顔は迫力あるなぁ......(小並感)
「ミカさん、後でお話があります。
話を戻しましょうか、私たちから先生にお願いしたいことは一つ───補習授業部の、顧問になっていただきたいのです」
"補習授業部......?"
......って何!?
「......落第の危機に陥っている生徒たちを救っていただきたいのです。"部"という形ではありますが、今回は顧問というよりも"担任の先生"と言った方がより正確かもしれません」
"なるほどねぇ......"
どうやら文武両道を掲げているにもかかわらず、エデン条約という大事なものが控えているこの時期に成績が振るわない生徒が四名居るらしい。
忙しくて手が足りないが手を打たないという訳にもいかず......と手詰まりだったところでシャーレの存在を知ったらしい。
シャーレの超法規的権限も組み込んできちんと構築されているらしいし、困っている生徒を助けるっていうなら私から断る理由はないね!!
「いかがでしょう、先生?助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べていただけませんか?」
"私にできる事であれば、喜んで"
「やった!ありがとー先生!」
「......ふふ、きっと断らないでしょうと思っていましたが......
ありがとうございます。ではこちらを」
手渡された生徒たちの名簿に目を通す。
ふーむ、あっ()
(ヒフミ......)
カイザー側に手を出させるための最後のピースとして行った銀行襲撃。その立役者となった(立役者にされた)子が......
まさかペロロ様のイベントの為に試験ブッチとか......流石にしてないか、うん!!()
そういえば......
"ティーパーティーは三人って聞いてたんだけど、もう一人の生徒会長は?"
「......」
「それは......」
......ん?何だ今の沈黙。もしかして聞いちゃいけないことだった?
「セイアちゃんは今、トリニティにいないの。入院中で......」
「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが......そういった事情で不在のため私がホストを務めているのです」
"そっか......早く良くなるといいね"
ちょっと話しにくいこと聞いちゃったなぁ......
キヴォトスの子はみんな元気だし頑丈だけど風邪とか引くし、体が弱い子も居るのかもしれない。
すぐには治らない怪我をすることだってあるし、私も先生として彼女たちのために頑張らないとね!!
"今聞きたいのはこれぐらいかな"
「承知しました、また何かあれば聞いてください。
では準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形で来ていただければ」
「ありがとね、先生!」
「先生のご協力に感謝します」
◇
「そんで話ってなんすか?あとこのクッキー☆食べていい?」
「ええ、どうぞ」
「久しぶりだね、チトセちゃん」
呼び出しの時間的に先生との話が終わった直後に呼び出されたんですが、うーん......
こんなこと言うと怒られそうなんすけど、あてくしティーパーティーの方々は少しばかり苦手意識がありまして......
いやね、ホシノさんと組んで色々派手に暴れまわってたり学園単位で宣戦布告されそうになった一件とかで交友はあるんすよ。
それはそれとして、ねえ......
セイアちゃんは仲良しなんすけど恐らく私の未来を見てから対応がこう、少し丁寧になったというか......軽口叩き合ってちょっとバカな事やってた時期もあったりしたのでちょっと寂しいというか。
ミカさんは......なんだろう、きっと彼女の中で"良くない意味で"特別になってしまっている気がします。過干渉が過ぎた身で言うのもアレですが、エデン条約編のゴタゴタを回避する為とはいえ
あ、ナギサさんは普通に怖いっす。まあ過去の行いが最悪に近かったから、仕方ないね()
「で、わざわざお二人揃ってどうしたんですか?何か大事な話でも?」
「相変わらず話が早くて助かります、チトセさん。単刀直入に申し上げますが───」
その先に続くのは、ある意味で予想できた───そして、一番聞きたくなかった言葉。
「───あなたに、
「......トリニティの裏切り者、ですか」
(───やっぱり始まってしまうんですか、あの悪夢が)
ただ救いを求め無我夢中に藻掻く手が互いを押さえつける、予定調和じみた悲劇の連鎖。
......エデン条約編が。
チトセ目線だと気楽にバカやれる関係性が一番楽で心地いいので、気を使われたり守られたりすると後ろめたさと申し訳なさが出てきて苦手意識を持ってしまうんですね
カスやってる理由の一つがこれだったりします
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後