この辺りは丁寧かつテンポよく書き進めていきたいンゴねぇ!!
「あら、先生。お疲れ様です」
"ナギサもお疲れ様"
ナギサに何とかアポを取れたのは翌日の夜。ティーパーティーとしての業務もあるだろうに時間を割いてくれたのは......きっと、この後に私が切り出す内容に大方予想がついているからだろう。
補習授業部のみんなが───合格できなかった場合について。
"それは......チェスかな?"
「ええ。おそらく、見慣れないタイプですよね?」
盤上に並ぶのは見覚えのある駒。だけど───
「白はキング、ルーク、ビショップ、ナイトがそれぞれ3~4個ずつ......きっとあまり見ない形でしょう」
"黒はキングとクイーンとポーンと......騎馬?"
「ナイトライダーという特殊駒です。特別に作ってもらったものでして」
ナギサが座っているのは───黒側。
盤面はある程度進んでいるみたいだけど駒の数も種類も不均一、そして何より───
(───局面を進めるために動いているようには見えないんだよね)
消極的という訳ではなく、互いに何か機会を伺っている......あるいは状況を作ろうとしているようにも見える。
"これ、一人でやってたの?"
「はい、今は私一人で」
......どこか、その盤面は彼女にとってチェス以上の意味を持っているように思えた。
その歪な盤面へ注ぐ視線の意味を、今の私が推し量る事は難しいかもしれない。
───それでも。
"......ナギサ。君と話がしたかったんだ"
「ええ。私もですよ、先生」
"あの日、初めて顔を合わせた時から何となく感じ取っていた違和感。君はずっと───"
彼女は、幼馴染だというミカと談笑しながらも。
"───ずっと、何かに囚われているように見えた。
聞かせて欲しいんだ。あるいは、私が力になれるかもしれない"
「......本当に、伝え聞いた通りの方なのですね」
目を伏せ、その長い睫毛が彼女の相貌を覆い隠す。
「おそらくは先生の想像通りです。私はずっと、とある存在を恐れ続けています。
より正確に申し上げるのであれば、その毒牙が他の方々に向けられる事を」
"......相手は誰?"
「それをお伝えする為にはまずエデン条約というものについて説明する必要があるのですが......どうやら、既にある程度の情報をお持ちのようですね」
"まあね"
「チトセさんから───いえ、あの人からヒントだけ受け取った後に自力で調べたといったところでしょうか」
───おおこわ、全部バレテーラ。
"チトセから聞いた情報はあくまで機密に当たらない部分と"所感"だけだから、そこは問題ないよ"
「あの人らしいですね。奔放でありながら絶対に一線を越えることなく立ち回る、まるで───いえ、話が逸れてしまいましたね」
それでは、エデン条約そのものについての説明は割愛させて頂きます、と前置きしてからナギサは語り始めた。
「エデン条約とは一種の平和条約です。トリニティとゲヘナ、キヴォトスにおける三大校のうち二つが無為にその力を消耗させる現状を憂い、連邦生徒会長の指揮により締結される予定でした」
"うん。一度は白紙に戻りかけたそれを、ナギサが頑張ってここまで漕ぎ付けたって聞いたよ"
「......ええ。エデン条約は必ず締結させなければなりません。ですが───」
顔を上げる。
その端正に整った顔に浮かぶ表情は紛れもない覚悟。
キヴォトスに来てから幾度も目にしてきた、信念の炎を灯した瞳。
(やっぱり君もそうなんだね、ナギサ。なら私は───)
「───この平和条約を破壊し、ようやく訪れる平穏に弓引く者が居ます。
トリニティとゲヘナに留まらず、キヴォトス全土を争いの渦に巻き込まんとするテロリストが」
"......ナギサ、現にその存在の被害を受けた生徒が居るんだね?"
「っ、ええ」
"もしかして、セイアが......?"
「......その通りです。セイアさんは昨年、何者かに襲撃を受け───ヘイローを砕かれました」
"......!?"
───そうして、腑に落ちた。
チトセはきっと
だから、トリニティに来ることを選んだんだ。
自分の手で今回の、未だ全容すら掴めない巨大な事件に対応するために。
「......この一件はトリニティ内部における最高機密となっています。くれぐれも漏洩などは───」
"もちろんだよ。......質問を重ねるようになるんだけど、その何者かと補習授業部にはどんな関連性が───いや、まさか!?"
「......そのまさかです。補習授業部とは云わば廃棄口であり、彼女たちは"その存在"の容疑者───即ち」
一拍おいて。
彼女はその言葉を口にした。
「トリニティの、
彼女たちにその言葉を向けられてしまえば、もう私は全面的に君の味方をすることは出来ない。
......全ての生徒の味方である以上、君の選択に最後まで寄り添うことが出来なくなってしまうかもしれない。
でも、止めることは出来ない。
それもまた彼女の選択なのだから。
自身を、あるいは幼馴染であるミカを。
トリニティを、ゲヘナを、キヴォトス全土を守るために下した結論なのだから。
◇
「......セイアちゃんは、ヘイローを壊されたの」
「うんうん、それは彼氏が悪いね。───で、本題は何ですか?」
まったく、出会い頭で大嘘こく悪い子になっちゃってまあ......
友人関係に問題があるんじゃないかしら!?七囚人とかと知り合いだったりしてな!!
「......え?」
「いやだから本題は何ですか?そんなバレバレの嘘に引っ掛かって単純に動くほどバカじゃないですよあたし、ミカさんじゃあるまいし」
「今私のことバカって言った?」
「(言って)ないです」
いやこっわ!!ハイライトなくなったミカさんこっわ!!
「ま、どうせバレてると思ってたけどね......黙って騙されてくれれば良かったのに」
「ミカさんがグレてる!!」
「うるさーい!!もう!!私に騙されていたって形にすれば後でチトセちゃんが不利にならないと思ったの!!」
あーもう、こういう細かい事考えるの向いてないのに余計な気を回すから......
原作ぶっちぎってとんでもねえ大問題が発生してんのかと思ったらコレですよ。
......まあでも、ミカさんは
「で、セイアちゃんはいずこへ?」
「トリニティの外、ミネ団長が護衛兼お目付け役って感じかな。今のセイアちゃんはちょっと元気すぎるくらいだから」
「あー確かに、"これは私の目で見届けなければならない事象なんだ!!"とか言って窓から飛び出しそう」
「ぷっ、こ、声マネけっこう上手いじゃん......」
セイアちゃんは無事、言い出しっぺはミカさんでしょうがセイアちゃんも乗っていると。
あえて身を隠す意味は───ベアトリーチェから逃れる為だけじゃないですねこれ?
「......もしかしてナギサさんが補習授業部、あるいはそれに類するシステムを作ることを
「正解!!存在しない"トリニティの裏切り者"を炙り出して排除するなら先生が必要でしょ?」
「うわぁ......」
トリニティにも退学に関わる規定は存在しますが、とてもではありませんが"トリニティの裏切り者"とやらを見つけた瞬間に退学させて排除するなんて不可能です。
煩雑な規定や手続きを省略し速攻で脅威を事前に処理する為には超法規的権限を有する存在───つまり、先生が要る。
「......エデン条約という重要な案件を前に先生を呼ぶとなればナギサさんは当然警戒する。ましてやそれに二人が賛同し多数決で押し通したとすれば猶更」
「だから一番狙われやすいセイアちゃんには安全なとこに隠れてもらって、荒事に向いてる私が残ったってワケ!!」
言うなれば、一年前に私が敢行したミカさん誘拐事件のグレードアップ版。
セイアちゃんが身を隠し、ミカさんが流れを誘導することでエデン条約締結直前のトリニティに
「なるほどね......結局、二人は何が目的なんです?完全に騙されて疑心暗鬼になってるナギサさんがちょっと可哀そうですよこれ」
「うっ......それを言われると耳が痛い......」
「......ま、ミカさんは悪い子ですけど悪い事をする子じゃないのは知っていますから」
「もう、何それ───」
原作とは比にならない頻度でアリウス自治区に顔を出し、時には私の知恵も借りながら地形の把握や出入り口の変化パターンを読み解き。
正義実現委員会の訓練に混ざり、ツルギさんとガチで撃ち合って腕を磨いていた日々を。
───その綺麗な瞳に募っていく、静かな怒りと覚悟を。
「チトセちゃんに見届けて欲しいの。
これは独善かもしれない、身勝手な自己満足かもしれない。......それでも、私は決めたの」
きっと大丈夫。
「アリウスをあるべき姿に戻す。あの子たちが不当に奪われてきた"当たり前"を取り戻す。
───それが、私の目的」
「覚悟」とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開く事だッ!
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後