どうしてこうなったのだろうか……
「という訳でよろしく~!!」
「「"......"」」
これでもかってくらいニコニコなチトセの笑顔の裏には下心が見え隠れしており、流石の私もアロナに真偽判断をしてもらいました~!!
「......いえ、チトセさんの言葉には嘘がありません。解釈の相違を加味したとしても───」
"......マジ?"
先程、謎の機械による身元チェックでマヌケにも見つかったチトセ。
彼女は渋々といった様子で物陰から姿を現すと、私たちに向けて2つの情報を開示した。
1つ目は、彼女と私たちの探し物が同じであるということ。
そして2つ目が───
"それさえ見つかれば、ミレニアムプライスを受賞することが出来る、か"
どーにも胡散臭い。尋常じゃなく。
まずここは本来立ち入り禁止区域だ。連邦生徒会長の不在によるゴタゴタで規制出来てないだけで以前は厳重に閉ざされていたらしい。
そして、規制を指示していたのは連邦生徒会長その人だという。彼女の代理として一部権限を有する私はともかく、なぜ一般生徒であるチトセにも権限があるのだろうか。
しかも探し物が一緒?彼女もG.Bibleを探している?まるで訳が分からんぞ!!
......しかも当の本人は───
「モモイちゃんにミドリちゃん、よろしくねー!」
「「......」」
誰なんだろうこの人、と。
こちらに目で訴えかけてくる2人を前にして、私はどう説明すべきか迷っていた。
想像したことある!?ずっと追いかけていた問題児と一緒に廃墟探索する羽目になることを!!
......そもそもチトセの情報が出回ったのは私がキヴォトスを訪れる少し前のこと。
治安の悪化に伴いニュースは連日連夜、犯罪発生率の増加や大規模な暴動を報じていた時の話らしい。
そして、その期間中もゲームに勤しみ廃部という事態を招いてしまった2人は当然知る由もないだろう。
───目の前の彼女が七囚人の中でも最悪最強とされる、キヴォトス全土で絶賛指名手配中の生徒だということを。
「あの、名前......」
名乗ってないですよね?と問うミドリの勇気を私は讃えよう、先生としてね?
だがしかし相手が悪かった。
まるで意に介さず、彼女は私の肩を後ろから掴み奥へと進むように促す。
「いいじゃんそんな細かいことは!!早くしないとG.Bibleが逃げちゃうよ!!」
「え!?G.Bibleって逃げちゃうものなの!?」
"......チトセ、適当なこと言わないの"
「お姉ちゃんさぁ......」
促されるままに歩を進めながら思索に耽る。
......別の意図があるのは間違いない。彼女は嘘をつかずに人を騙す"大人のやり方"を熟知している。
だが彼女は生徒であって敵対者ではない。
先生としてそこを履き違えてはならない。
少しばかりおいたが過ぎたとしても、私にとっての生徒であることに違いは無いのだ。
───まあ、ちょうどいい機会だと考えればいいか。
"……チトセ"
「……?なんですか?」
"せっかくだから、少し話でも───"
「あっ、そこ落とし穴ですよ(笑)」
"……へっ?"
・慣性の法則
運動の第一法則。
すべての物体は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。
Wikipediaより引用
ト〇とジェ〇ーよろしく空中で静止した私は、つい先日教育BDで生徒と共に視聴したそれを思い出した。
これが走馬灯か、(体)壊れるなぁ。
てかチトセ気付いてたよね?何故?何故?
"アーーーーー!!!!!!♂"
「ガチ悲鳴でウケるwww」
"こいつぅ!!!!!!"
前言撤回!!(n回目)このガキには一度、大人の何たるかを教えてやらねばならぬ!!メロスは決意した!!
いや、そんなこと考えてる場合じゃない!
チトセなら自力で何とか出来るだろうけど、モモイとミドリは───
───ダメそう!!泡吹いてる!!
"......クッ"
「いやいや、そこは逆でしょうよ先生。
なんでヘイローも持たないあなたが生徒を庇うんです?」
"私が先生だから、だよ!!"
「......ま、そう答えるでしょうね。あなたは"先生"ですし。
おそらく問題ないんですけど手を貸してあげましょう」
落下中にも関わらず器用にも逆さまに胡座をかいていたチトセは、脇腹のホルスターから一丁の回転式拳銃を取り出す。
私の襟首を左手で掴み、右手には飾り気のないシンプルなそれを力強く握り。
───流れるような所作で、滑らかな内壁へとグリップを突き立てた。
"えぇ......"
「何か文句でも?手、放しますよ?」
人間4人分の体重を受けながらも、悲鳴をあげるのは壁面だけ。激しく火花を散らすものの銃に損傷は見受けられない。
それら全てを支えるほっそりとした手もまた余裕で満ちていた。
───彼女もまた規格外なのだと、否が応でも思い知らされる。
落とし穴は何度かうねりながらも、徐々に緩やかな傾斜となった。出口の一歩手前で完全に静止するとチトセは拳銃を収めて2人を抱え、数メートル下の出口へと軽く飛び降りる。
......正直に言うと腰が引けていたが、ビビってる姿を見せるのは癪なので余裕を装って飛び降りた。五点着地法は偉大だ。
え?落とし穴に落ちた時点で情けない姿を晒しまくってた?(記憶に)ないです。
着地した隣では、チトセが2人を起こし服に着いた汚れを落としてあげていた。まるで手のかかる後輩を気に掛けるように、衣服の解れなども確認して歩き始める。
......そういえばチトセはホシノと同じ3年生なんだった。
「なんですか?何か言いたげな顔して」
"......ホシノのことを思い出していたんだよ"
「うへぇ......私をあんなバケモンと一緒にしないで貰いたいんですけど」
"聞いたよ、アビドスを退学する時にホシノと戦って勝ったんだってね"
「......変なとこで律儀なのは変わってないんですね」
先に膝をついたのがホシノさんなだけであって、あのまま続けていれば私が先に倒れていたのに。
───そうボヤく彼女の横顔に浮かぶのは、紛れもない郷愁とほんの少しの安堵。
「......アビドスの件、ありがとうございました」
"お礼を言われるほどのことじゃないよ。
───解決したのはあの子たち自身の力によるもので、私は先生として少し手を貸しただけだからね"
半ば追放という形で去った母校とはいえ、数年間過ごした青春の跡なのだ。
……大人の世界に片足を踏み入れている彼女もまた、それらを謳歌した子供なのだ。
「......どうせ先生のことだから"アビドスに行ってもう一度話をしてみて"とか言うんでしょうけど」
"まあ、そうだね"
「そうですね......ちょうど予定もあるので近日中に行きますよ」
"それはよかった、ホシノもきっと喜ぶよ"
「だといいんですけどね......さてと」
くるりと。
芝居がかった所作で振り返る彼女。
無機質な電灯を反射し黒曜石のように煌めく髪が翻る。
「着きましたよ、先生」
マスターでありドクターであり旅人であり先生でありスマブラ―である私はちょくちょく更新サボってゲームばかりしているときがあります
許してください......
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後