アイエエエ!?センセイ!?センセイナンデ!?   作:湊咍人

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チトセ目線での出来事は基本的に描かれることが無いので先生(プレイヤー)が知ることは無いです
どこが描写されているのかは想像にお任せするということで......あと掲示板回の内容から察して下さい()


おい、その先は地獄だぞ

 

「あはっ、ここに水が入ってるのなんて久しぶりに見たな―。もしかしてこれから泳ぐの?それともみんなでプールパーティー?」

"全部終わったら、そういうのもやってみたいね。ミカも一緒にどう?"

「......えへへ。その時はよろしくね」

 

 こちらの事情を知ってか知らずか、今朝私の端末に脈絡もなく届いた通知。

 送信者は聖園ミカ、会って話がしたいという旨の内容だったからもう一度トリニティ中枢まで行くことになるかと思ってたんだけど......

 

(......付き人も無し、それに合宿が始まってからずっと居た監視も反応がない───)

 

 その行動はティーパーティーの一人ではなく一個人、一人の生徒として先生()の元に訪ねてきてくれたということを示している。

 つまり───え?どういうこと?

 

"用件を聞いてもいいかな"

「先生は上手くやってるかな、って思って」

 

 悪戯っぽく、それでいて無邪気に笑う彼女の姿は───どこか、この場には居ない誰か(チトセ)と重なって見えた。

 

 その瞳の奥に何を宿しているのか、皆目見当がつかない所も。

 ......押し殺した"何か"を背に覆い隠したまま、ごく平然とこちらに笑みを向けられる所も。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「ところで合宿の方はどう?毎日チトセちゃんの手料理おかわりしたりしてない?」

"た、食べ過ぎないようにはしてるから......"

「私も久しぶりに食べたいなぁ、チトセちゃんの料理」

 

 ちなみに昨日の夕食は中華風のあんかけチャーハンでした。おかずのナムルはニラが良い味出しててこれがまあ美味かった。

 おかげで体重は微増だけどなチクショウ!

 

"......本題に入ってもいいかな"

「まあ、あんまり長い前置きを楽しめる状況じゃないよね。

 じゃあ本題に入るとしよっか」

 

 一拍おいてから、彼女は語り始めた。

 

「......先生、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?」

"......!!"

「やっぱり。ナギちゃんらしいけどさぁ......他に何か聞いてることはある?」

"───その、セイアの事は少し"

「......ふーん」

 

 その返答はどこか予想外だったようで、その大きな瞳が一瞬揺らぐ。

 

「ナギちゃん、思ったよりも弱っちゃってるみたいだね」

"補習授業部そのものについても、それなりに把握しているつもり。今のナギサをこれ以上追い詰めるようなことはしたくないけど、(先生)としてもアクションを起こさない訳にはいかない"

「......そっか」

 

 ナギサが「トリニティの裏切り者」と呼ぶ存在。補習授業部の中に居るのかすらナギサにはもう関係ない、「居る可能性が存在する」という事実だけで過分なのだろう。

 

 次の標的はナギサ自身か、或いはミカか、或いはトリニティ、ひいてはキヴォトスそのもの。迫るエデン条約を前に突きつけられた究極の選択。

 それを前にナギサは致命的な過ちを避ける為、自身すらも疑いながら決断した。

 

 100を守るために10を切り捨てる。為政者としては的確だろう、合理だけで見るなら正解だろう。

 ───それでも、彼女は生徒だ。まだ子供なのだ。

 

"......その取引は、断ったよ"

「......うん、だよね。先生ならそうすると思ってた、そんな気がしてたから」

"というと?"

「先生は、チトセちゃんとよく似ているから」

"ええ......"

 

 ......まあでも。チトセなら同じ立場でも絶対に断るだろうという確信はある。

 色々と理由は違っても、交わす言葉が異なっていても同じ決断をする。確かにそんな気がする。

 

"私は、生徒たちの味方だから"

「......うん。本当によく似てる」

"そうかな......?"

「ってことは私の味方でもあるってことで良いのかな?私も一応生徒ではあるんだけど」

"もちろん、ミカの味方でもあるよ"

「......わーお」

 

 そこで、ふと思い至る。

 

 チトセは本当に重要な場面では誰かの味方というポジションに収まるっぽいわけで。

 私も同様に生徒の味方に付くわけだけど。

 

(......チトセが私の味方をしたり、私がチトセの味方になれたりする日は来るのかな?)

 

 情けない話だけど、チトセが居なかったら私はここに居ない可能性も高い。

 ケイとアリスが一つ屋根の下、一緒に過ごす未来に辿り着くことなんて不可能だっただろう。

 

 

 私にはチトセが必要だけど、チトセは私を必要としていない。

 

 

 ずっとモヤモヤしてた理由はこれだった。

 その非対称な関係が、貰ったものを返そうにものらりくらりと躱されてしまうもどかしさが。

 

 ......大人である私が、子供であるチトセに助けられっぱなしという不甲斐なさが引っ掛かってたんだ。

 

(───まあいつか私がチトセをスタイリッシュに助けるから別にいいけどね!!)

 

「さらっとすごい事を言うね、先生は」

"本心だからね"

「じゃあ、そんな生徒の味方な先生にお願いしたいことがあるんだけど......」

"お願い......?"

「そう、お願い。忙しい先生に、それでも気に留めていて欲しい───そんなお願い」

 

 ミカが視線をプールに落とす。

 つられて向けた先......木々の影と別館の姿が水面に揺らめいていた。 

 

「───守ってほしいの。ナギちゃんも、チトセちゃんも、補習授業部の子たちも。

 ......そして、"トリニティの裏切り者"も」

"!?"

「ナギちゃんが血眼になって探してるトリニティの裏切り者の名は───白洲アズサ」

"......"

「これはきっと、先生にしかお願いできない事だから」

 

 現時点ではミカの意図は読めない。それでも一つ、理由もなく確信できることがあった。

 彼女の瞳もまた、親友だというナギサとどこか似た意志を───そしてその奥に強い感情の渦が感じ取れた。

 

(ミカ、()()なんだね。きっと君も、誰かのために戦おうとしている)

 

「私では手が届かないかもしれない。だから、お願い───みんなを守ってほしいの」

"分かった、任せて"

 

 私がやることは変わらない。

 ただ先生として、大人として責任を果たすだけだ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「......駄目だ、やはり位置が掴めない」

「仕方ないでしょ。アイツがそうそう弱点を晒すとは思えない」

「で、ですが......」

「この件に関しては外部に頼るしかない。悔しいが私たちで対処できる範疇を超えている」

 

 トリニティ、そしてアリウス自治区外縁の地図。

 

 どれだけ頭を回せど、必死で学んだ知識を動員しても掴めない。

 こればかりは、仕方のないことだ。

 

 ......と、以前であれば諦めていただろうか。

 

(───vanitas vanitatum et omnia vanitas......全ては虚しいと言うのなら、それを突きつけるだけの言葉ほど無価値で非生産的なものはない、か)

 

 いつか向けられた言葉。いつもの軽薄な言動とは打って変わって、選ぶことを恐れて虚しさに甘えて溺れていた私をそれは貫いた。

 

 何処までも真っ直ぐに、目を逸らすことなど許さないと言わんばかりに突きつけられたそれ。

 

 

 

 ───お前が抱いている虚しさは、誰しもが同じように抱いている訳じゃない。

 虚しいと目を背けて切り捨てた何かは、きっと虚しいだけのものじゃない筈だ。

 誰かにとって、虚しさ以上の何かを向けられていた筈だ。

 

 一度立ち止まって隣を見てみろ。お前が手を引く仲間の姿を見てみろ。

 ......その先は地獄だぞ。

 

 

 

「......いや、妥協は許されない。ここで諦めるようではアズサに顔向けできない」

「姉さん......」

「もう一度見直そう。あいつに連絡をとる、或いは別の案が浮かぶかもしれない」

 

 私は無力だ。どこまで行っても私一人では解決できない事ばかりで、また間違えるかもしれない。

 だから───

 

(───付き合ってもらうぞチトセ。私の選択を最後まで見届けてもらう、それがお前の......希望という極光で私達を焼いたお前の責任だ)

 

 

 

 

 

 

 

 




ミカ視点ではチトセと先生は似ている部分が多くあります
チトセの失敗は、ミカの前で先生というか大人として振る舞い過ぎたことですかね......
カスムーブしてもバランス取れてねえぞカス、真面目にやれカス、真面目にやり過ぎだぞカス

次に書くかもしれないもの

  • アビドス編
  • アビドス(過去)編
  • エデン条約編の後
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