そんな感じで原作と展開が違うので各生徒の出番が増減するわけですが、物語の中心に深くかかわっている生徒に関してはある程度バランスを取っていく所存です
つまりは暖かく見守ってクレメンスってことで......
時刻は午前二時。
トリニティ中心部から遠く離れており、豊かな自然に閉ざされた別館を照らすのは幾つかの常夜灯のみ。
そんな中、私はとある生徒に呼び出されて別館の裏手で待機中です。
筆跡から"誰が呼んだか"は分かっても"何故呼んだか"は分かんねえです。
より正確に言えば呼び出される理由が多すぎて特定ができないっていうか......
「ほんで話ってのは何ですか───コハルちゃん?」
「......」
「普段ならもう寝ている時間なんじゃ───「私、バカだから分かんなくって」───ん?」
「だから、直接聞くことにしたの」
意を決したように顔を上げ───そして、はたと気付く。
思い至る。ここ数日のうちにコハルちゃんに起きた変化、その原因の因果関係に。
「───あんたは、みんなの敵なの?」
「......ああ、そういう」
これ、たぶんナギサさんの差し金ですね。
原作では試験範囲の拡大、合格ラインの引き上げ、そして駄目押しにゲヘナで試験を行い温泉開発部に試験会場を爆破させましたが......今回は"そういう"やり方で来ると。
(私が裏切り者だとか、まあ他にも色々吹き込んだみたいっすね。なるほどえげつないやり方ですが......)
「そう思ったなら、何でツルギさんやハスミちゃんに連絡しなかったんです?」
「そ、それは......」
面談から丸一日経った後、連絡手段も当然持っていますし、現在は正実の所属でないとはいえ通報という形であればいくらでも私をとっ捕まえることもできたでしょうに。
試験まで時間も無い。退学という事実を知っている可能性も高いでしょうし、さっさと動くのが自然ですが。
「......分かんなくなっちゃったから。
「(......5人?)」
「───分からない事があったら聞けって、そう言ったのはチトセだから。答えて!」
「ふーむ......」
さて、どうしたもんですかねぇ......
◇
「チトセさんの事が知りたい、ですか......?」
「う、うん......」
「どうしてまた急に......コハルちゃん以外は全員チトセさんと顔見知りだったみたいですし、知りたいと思うのは自然なことですが───」
「そういうのじゃないから......でも、チトセについて知りたいってのは本当」
「そうですね......」
真っ先に話を聞いたのはヒフミ。
特に理由はないけど......一番チトセと親しげに話してたから何か分かるかもしれないと思った。
「以前その......危ないところをチトセさんに助けてもらったんです」
「......助けてもらった?」
「はい、チトセさんはまあ色々とやらかしてますし、各学園のトップの方たちからも睨まれていますが───悪い人じゃないんですよ?」
「悪い奴じゃないなら七囚人の中でも最強最悪なんて呼ばれてないでしょ」
「あ、あはは......」
......まあ、エプロン付けてご飯を振舞ってくれる時とか、水鉄砲で撃ち合ってる時も思ったけど───悪意は一切感じないのよね。
トリニティは
「捕まった罪状の人体実験だって、きっと何かの理由があると思うんです。でもチトセさんはなんというか───潔いというか......」
「......?」
「きっと、私達よりも大人なんです。平和な時には好きに振舞ってますけど、重要な場面では私達の意志を尊重してくれるし責任を取ってその場を収めてくれる。何かあっても最後まで付き合ってくれるんだろうなっていう安心感があるというか......」
「そうなんだ......ありがと」
......私には、よく分からなかった。
◇
「チトセちゃんとの関係......ですか?」
「......うん」
「そうですねぇ......どこから話せば良いものでしょうか───」
次に話を聞いたのはハナコ。
驚いたような表情は一瞬。すぐに顔を伏せ、続いて窓の外に視線を向ける。
「───私がチトセちゃんと出会ったのはその......すこし、落ち込んでいる時で」
「......そうなんだ」
「その日は特に何かをしたという訳でもなく、連絡先だけ交換して別れました。そこから何度か偶然顔を合わせて、その度に他愛のない話をして、少しずつ予定を合わせて一緒にご飯を食べたりするようになった───ただそれだけの関係ですよ」
「───それだけ、って言うような顔じゃないけど」
「......バレてしまいましたか」
悪戯っぽく笑って、再び顔を伏せる。
まるで───作り切れなかった表情を覆い隠すように。
「今のチトセちゃんは......ちょっと、心配です」
「心配?何が?」
「嘘を吐く事に慣れ過ぎてしまっているんです。誰かにではなく、
「......どういうこと?」
「───コハルちゃんには少し難しすぎましたかね♡」
「は!?どういう意味!?」
......やっぱり、私には分からない。
◇
「チトセは───何と言えばいいのか......憧れ?」
「憧れ......?どういうこと?」
「───正直、よく分からない。私にとってチトセは強くて優しくて......それでいて理解できない存在だった」
聞けば、アズサがチトセと知り合ったのも一年以上前の事だという。
なんか私だけ初対面ってのも変な感じね......
「チトセは私が元々居たところに突然現れて、気に入らないと言いながら全てを
他の誰にも出来なかった事を、一人で容易に成し遂げたんだ」
「アズサは、チトセに感謝してるの?」
「もちろん、チトセは私たちに知識とチャンスをくれた。だから───いや、なんでもない」
「......」
ナギサ様はアズサの事を裏切り者って言ってたけど、もしそうであっても"誰にとっての"裏切り者なんだろう。
少なくとも、私はアズサのことを友達だと思ってるし補習授業部の仲間だと思ってる。
......アズサも、きっとそうだと思う。
「───アズサは、私たちに何か隠していることとかある?」
「あ、いや───うん......確かにある」
「二人だけの秘密にするって言っても、話せない?」
「うん......でも、きっといつか話すから」
......少しだけ、分かってきた気がする。
◇
"チトセ?見ての通りの問題児だけど?"
「えぇ......」
"キヴォトスに来てからというもの、あの子について考えなかった日は赴任からの数日間だけだからね。これってもしかして:恋?"
「先生と生徒の恋愛!?!?えっちなのは駄目!!」
"なーんて冗談だよ。まあでもチトセについてずっと考えてるってのは本当"
最後に話を聞きに行ったのは先生。
チトセを一番よく知っている人だと思ってたけど「たぶん元同級生のホシノの方がよく知ってると思うよ」とのこと。
それもそっか、七囚人なんて言われても途中までは普通に生徒として過ごしてたんだもんね。
"私が見てきたのはあくまでチトセの一側面。まあ誰しもそうなんだけど、チトセについてよく知っている子が
「え?ここには私と先生しか───」
"ケイ、ちょっといい?"
『何かありましたか?』
「うわっ!!」
先生が持つ二つのタブレットの一方が急に喋り出したかと思えば、画面に見知らぬ生徒が表示される。
───ミレニアムの制服?それになんでタブレットの中にいるんだろう......?
"コハルがチトセについて知りたいんだって"
『チトセについて、ですか......?それなりに長い話になりますが......』
「そ、そもそもあんたは誰なの?見たところミレニアムの生徒みたいだけど......」
"まあそこからだよね......"
───そこから先に語られたのは、私の知らないお話。
知らない場所で、知らないうちに起きていたキヴォトスの存亡を左右する戦い。
「そんなことがあったんだ......」
"ここだけの秘密ね"
『......今になってチトセについて知ろうとした辺り、何かしらの情報に辿り着いたか───吹き込まれたか。
経験者として忠告すると、意図の読めないまま情報を吹き込んでくる輩は信用しない方がいいですよ』
"すっごい説得力あるなぁ......"
───先生に話すべきか。
先生は変な大人だけど、きっと悪い人じゃない。そんな気がする。
でもこんな情報、先生に伝えても信じてもらえるか───ただ、混乱するのが二人に増えるだけなんじゃ......
......友達を疑ってるって、思われちゃうんじゃ───
"ごめんね、コハル"
「なっ、なんで謝るのよ」
"面談の後からちょっと様子が変だったことに気付いていたけど、こうしてコハルが話を聞きに来てくれるまで何もできなくて、ごめん"
「それは───」
"ほら、話すだけで楽になる事もあるって言うじゃん?それに、私が力になれるかもしれない"
「......うん」
先生に、あの日ナギサ様に教えてもらったことを全部伝えた。
途中で険しい顔になったり、何とも言えない顔になったりしたけど最後に「話してくれてありがとう」って頭を撫でて───そして、先生が知っていることも教えてくれた。
みんなから話を聞いて、私の知らないチトセの一面をいくつも知って。
......そうして、ようやく分かったかもしれない。
チトセはきっと───
◇
「あんたが何か企んでるってのは、みんな思ってる。でもみんなあんたの事を信じてた」
「えっ、急に何?」
もしかしてみんなに私について聞いて回ってたりした?
特にハナコさんとの出会いとか恥ずかしすぎて隣で聞いてたら顔真っ赤になっちゃうんすけど......流石に全部は話してない、よね?
「また何か企んで、一人で突っ走って、無茶するんじゃないかって心配してる。
......あたしはまだ、あんたのことは信じられない。でも───」
所詮は元七囚人。
前科はドカ盛り、疑われて当然の存在ですが。
コハルちゃんは、何も分からなくなった時に人を信じることが出来る。
困っている人がいれば勇気を出して助けることが出来る。
......そういう生徒だと、知っていましたからね。
「───そこまで悪い奴じゃないって思ってるから。また誰かのために危ない事をするって言うなら、わ、私は正義実現委員会の一員として見過ごせないから!」
「......なるほど?」
「でも、悪い事を企んでるなら絶対に許さないから!」
「───まあどちらにせよ試験に合格して正実に戻ってからの話ですがね」
「わ、分かってるから!」
「じゃ、さっさと戻って寝ましょうかね」
私はともかく、コハルちゃんがこんな時間に起きてたら明日の朝はアズサちゃんにもみくちゃにされてしまうかもしれませんし。
もう手遅れかもしれないですけどね()
もしもの時は誰かのために飛び出せる、そんなコハルが好きなんだな(岡田斗〇夫風味)
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後