【遍く絶望の終着点】
「いやー色々とお疲れ様でした!」
"補習授業部の方は何とか無事に終わったけど......ティーパーティーの方は大丈夫なの?"
「......たぶん?」
第三次試験から一晩明けて。
先生には"セイアちゃんが無事であること"だけは昨日の朝に伝えていましたが、それ以外は「こっちで何とかしておきます」とだけしか言っていなかったんですね。
説明するのがダルいってのが9割だったんですけど、余計な事伝えて集中を削ぐのもアレなので。
「......今のナギサさんには、ちょっと時間が必要なのでね。
私から説明できるのはあくまで"私視点"での顛末になります」
"───聞かせてもらえるかな"
とはいえ、全部話すつもりは毛頭ありませんがね。
ご存じでしたか?実は私の発言のうち27.4%が嘘なのです!!(非公認果実畜生並感)
「アズサちゃんの出身校であるアリウス......ここのトップを気取ってるババアが色々と良からぬことを考えておりまして。
今回ナギサさんを狙った襲撃をあらかじめ察知していたので、誤った情報を流してこちらで"処理"しておきました」
"......なるほど?トリニティで身柄を押さえたってわけでもないみたいだし、どう対応したの?"
「利き手をこう......ね?」
"───なんだかチトセらしくないね、何か隠してることあるでしょ。
そもそも補習授業部を結成した理由も分からずじまいだし"
「......」
なんでこういう時に限って頭が回るんだよこの人は......
いつも業務が終わった瞬間に冷蔵庫からビール取り出すくせに!!着替えずに寝て翌朝体バキバキにしながらシャワー浴びてるくせに!!
「......ま、予め言っておくと今の先生に全部話すことはできません。それを踏まえて聞いてもらえれば」
"うん、それでいいよ"
「アズサちゃんの存在はアリウスでは異端ですが......彼女のみが特別ということではありません。スクワッドと呼ばれる精鋭部隊や、一部のアリウス生徒は穏健派......現体制に疑問を持っています」
"つまり、現体制はそうでないと?"
「ええ。いい年こいて支配者気取りのイタいババアは穏健派の対極に位置するようなやつでして......知り合いなので分かるんですけど、今回もロクなこと考えてないですよアイツ」
"待って!?つまりアリウスのトップは───"
「ゲマトリアの一人、名前はベアトリーチェ。
......あなたは今一度気を引き締めた方が良い。今回の相手はこれまでとは違う───」
......あいつとは既に三度目の付き合いです。
原作においては生徒を連れて敵対。前回は一対一の殺し合い。
そして今回は───
「あなたが理想を貫く覚悟を持っているというなら、同時に"それ"も覚悟するべきでしょう。
......排除すべき相手を手に掛ける、という覚悟を」
───きっと、あいつは私の想定を何かしらの方法で超えてくるでしょうから。
◇
これまでの疲れと、昨日の一件が重なり泥のように眠ったところまでは覚えていました。
「......ミカ?」
「どうしたの、ナギちゃん?」
「いえ、何でも......」
真っ先に目に飛び込んできたのは、意外にも器用にリンゴの皮をナイフで剥くミカさんの姿。
閉め切っていたはずのカーテンは盛大に開かれ、朝日と呼ぶには少々高いそれを迎え入れて───
「......ミカさん!?わ、私の部屋で何を......!?」
「あ~、もしかして覚えてない感じ?」
確か、チトセさんと別れた後に一度自室まで戻って、それから───
「一緒に寝たい......だなんて。初等部の時にホラー映画を見た夜以来だっけ?」
「───わ、忘れてください......!!」
「予知夢でこうなることは分かっていたからね。予めミカの寝間着を補佐官の生徒に頼んで持ってきてもらっていたんだ」
「セイアさん!?」
「やあ、ナギサ。気分はどうだい?」
「どうもこうも、羞恥でおかしくなってしまいそうなのですが!?」
まあまあ、とりあえず朝食を摂ってから話そうじゃないかと。
セイアさんにそう促されてしまい、ミカさんにリンゴを差し出されるのですが......
「......とりあえず、着替えたいので部屋の外で待って頂けますか?」
「え~、別によくない?一緒に寝た仲じゃん」
「よくありません......っ!!」
これだからミカさんは......!!
◇
「......なるほど。一度、時系列順に整理しましょうか」
「ああ、助かる。やはりナギサが居ると話がスムーズに進むよ」
「どういう意味かなー?☆」
......全ての始まりはミカさんが以前から話していたアリウスとの交流の中にあった。
「ミカさんがアリウスの生徒と交流する中で、セイアさんへの襲撃が計画されていることを知ったと。
止める手段を持ち合わせていなかったので迎撃する予定でしたが......実行犯が顔見知りの生徒、つまり白洲アズサさんであり彼女もセイアさんのヘイローを破壊するつもりはなかったため協力することにした......ここまで間違いはありませんか?」
「うん、間違いないよ」
タブレット端末を操作し、簡易的な相関図を書き込んでいく。
「......セイアさんへの襲撃が成功したという体で報告、身を隠す為に護衛としてミネ団長に同行してもらいトリニティの外に潜伏していたと」
「ミネには随分と世話になった。この一件が片付いたら正式に礼がしたいものだ」
「何度かこっそり抜け出そうとしてたって聞いたんだけど?」
「はて......何のことやら」
この一件はまだ終わっていない。
セイアさんへの襲撃が失敗していることも、私への襲撃がミカさんとチトセさんの手によって妨害されたこともじきに伝わるでしょう。
───全てを計画した、首謀者の元へ。
「元凶はアリウスの指導者、名をベアトリーチェ。
チトセ曰く"いけ好かないババア"とのことだが......ゲマトリアの一員であり手段を選ばない残忍さは最大級の警戒に値する」
「調印式でちょっかいかけてくるかも~ってチトセちゃんも言ってたし、警戒はしておかないとね......」
「......トリニティ、ひいてはキヴォトスを守るため。そして私を守る為だったと理解はしています。しては、いるのですが......」
お二人の顔を見れば分かります。結果的に騙す形になりましたが、私を謀るつもりなど微塵も無かったと。
それでも......
「私には、相談して下さらなかったのですね......」
「うっ......」
「......それについてはぐうの音もでない。頭を下げればいいというものでないと思うが、この通りだ」
「いえ、お二人の気持ちは分かっているつもりです......ですがチトセさんにはお話ししていたんですよね?」
「えっと、そのぉ......」
「私よりも、チトセさんの方が信頼できるのですね。私は、ミカさんとセイアさんの事を大切な友人だと思っていたのですが......お二人にとって私は、守るべきお姫様であったと」
柄にもない意地悪な言い方をしてしまいましたが、目に見えて慌て始めるお二人を見ていると......何だか、昨日まであんなに追い詰められていたことが嘘のように思えて。
───戻ってきたんだなって、そう思えてしまいます。
「セ、セイアちゃん......!!何か上手いこと言ってごまかして!!」
「今の私達にできる事は、この後ナギサの詰問を受けるチトセの負担を減らす事だけ......そうは思わないかい?」
「すっごく居た堪れないんだけど~!?」
......全て聞こえているのですが。
私の知らないうちにミカさんとセイアさんが随分と仲良くなっていて。
チトセさんと何度も会っているようですし、私の知らない二人が増えていくのはこう......少しモヤモヤしてしまいます。
「......話を戻しましょうか。今回の件については理解しましたが、いくつか疑問点があります。
きっと、それも踏まえての答えになると思いますが───」
襲撃の成功を偽装するため潜伏する。誤情報を流すために内通する。
小言の一つでも言いたくなるほど大胆で、相談の一つくらいしてもらえると助かるような内容ですが......今はもう済んだことです。
しかし、補習授業部を結成した意味。そして先生とチトセさんをこのエデン条約を間近に控えたトリニティに呼び込んだ理由。
───きっとそこに、本当の目的があるのでしょう。
「ミカさんとセイアさん、そしてチトセさんの最終的な目的についてお話しして頂けますか?」
「......ああ、構わないとも。ナギサ───君には知る権利がある」
「ごめんね、ナギちゃん。もう一回......私たちの我儘を聞いてもらえないかな?」
エデン条約編第三章はこれまでとは空気が多少変わります
面白さよりも書きたいものを優先するので好みは分かれるかもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後