深く考えない人(婉曲表現)なので大人相手は「生徒に悪さをしたら潰す」で動くことが多いです
今回の話の時間軸は4話の中間、チトセがアビドスに向かう数日前になります
「私とチトセ嬢の関係性、ですか?」
「先生としてそこは聞いておかないとね。てか何さその呼び方」
「先生もいずれ分かると思いますよ」
ククク......と怪しげな含み笑いを浮かべる───表情が読めないからこの表現は間違っているかもしれないけど───大人。
......私と同じく、キヴォトスの外からやってきた存在。
「というか、ゲマトリア?だっけ。そもそも君たちは何の集まりなの?」
「おや、私どもの活動に興味がおありで?」
「(興味)ないです」
「つれないですね───私とチトセ嬢の関係性は云わば、ギブアンドテイクですよ」
並べられたつまみの数々に目をやり、「少々食べ過ぎでは?」とデリカシーのない小言を吐く。お前は私の母親か何かか?
「私と彼女の間に上下関係は存在しませんし、一方的な貸し借りもありません。
インスピレーションと新たな知見を交換しつつ時には協力し、各々が勝手に己の目的達成のために動く」
先生にも理解できるように説明するのであれば......と小馬鹿にしながらネギまを手に取る。キレそう。
「ネギまはネギと鶏の間に上下関係など存在しないでしょう?2つの食材による相乗効果が、シンプルながらも奥深い味を生み出しているのですよ」
なるほど理解した。確かにネギまは美味いし、ネギと鶏の間にあるのは美しい協力関係だけで上下のそれはない。
「───てかそれ、私のネギまじゃん!!」
「大変美味でした。いい店ですね、先生が贔屓にするのも頷けます」
「こいつぅ!!!(追加注文)」
というかこの人いつネギま食べたんだろう。そもそも口あんの?
「支払いは割り勘でよろしいですか?」
「仕方ないなぁ(爆速恩赦)」
「ところで先生のおすすめは何でしょうか」
「楽しむ気満々じゃん、私は塩が好きだけど」
てかさ。
「なんで私が晩酌してるとこに相席してきたの?席空いてるよね?」
「おや、先生は私に会いたくなかったと?」
「......まあ、聞きたいことはあったけどさ」
「であれば好都合でしたね。私もまた、こうして先生とお話できる機会を待ち望んでいたのですから」
「こんなに嬉しくない告白は生まれて初めてだよ......」
そもそもこの人に性別とかあるのだろうか。キヴォトスの外という定義だけで語るのであれば別の惑星から来た正体不明な生命体とかであってもおかしくないんじゃ......
「私は生物学上の分類では男性とされる存在ですよ。あなたにとって未知の生命体などではない、とだけ」
「しれっと思考を読むな、そういうとこやぞ」
「これは失礼致しました───」
さて、と
順に話せば少しばかり時間が掛かってしまいますが───と前置きしてから、淡々と過去を並び立て始める。
「......私とチトセ嬢の出会いは2年半ほど遡ります」
◇
当時のチトセ嬢はアビドス高校に在籍していました、ここまでは先生もご存じでしょう。
では、彼女が行っていた非人道的な人体実験とは何か。
......"喋っても構わないのか"ですか?ご心配なく、彼女との取り決めのうち外部へ漏洩してはならない情報には厳密な規定が為されているのですよ。その意図を
失礼、話が逸れてしまいましたね。チトセ嬢が行っていた実験は、彼女の研究テーマのうち1つを計測、検証し立証するためのものです。
神秘とは何か。恐怖とは何か。生徒とは何か。彼女はキヴォトスに存在する多くの謎のうち、この3つを解き明かそうと日々研究に勤しんでいるのですよ。
......"神秘と恐怖について知りたい"ですか。そうですね───
神秘とは大気を巡り、生徒という器を満たす
そして対極に───この表現は適切ではありませんね。その
あなたも見たでしょう?彼女の極彩色に輝くヘイローを。彼女は生徒でありながら、
......話を戻します。先述した研究テーマのうち、恐怖についてはチトセ嬢自身が最も理解していると言えるでしょう。なにせ、彼女自身が扱う力ですから。
ですが、神秘と生徒に関しては外部の力を頼るほかありません。そもそも特異な力を有しているとはいえ彼女も廃校寸前の学校に通う生徒でしかないのですから。
───ですので、私が彼女をスカウトしたのです。
そんな怖い顔をしないでください。あくまで私は声をかけただけであり、乗ったのはチトセ嬢自身の意志によるものです。
それに、あなたも彼女も騙すつもりは毛頭ありませんよ、効率よく研究を進める為には
しかしゲマトリアも一枚岩ではありません。仮にも生徒である存在を迎え入れることに反発するメンバーも居ましたが......チトセ嬢は力と情報を以て自身の価値を証明しました。
彼女との関係性は契約ではなく、他のメンバーと同様のものです。個々の目的達成のために、大きく分けて3点のルールを設けています。相互に施設、機材、物資の提供を行い、特定状況下以外で呼び出しに応じて協力し、情報を交換する。そしてチトセ嬢は今や、我々の中でも一歩先を常に歩んでいると言わざるを得ません。
......"チトセ嬢の行った実験について知りたい"ですか。せっかちですね、ここからが面白いところなのですが......
そうですね───
そもそも、
いえ、哲学的な話ではなく。もっと直接的で物質的な話ですよ。
......彼女はこの問題に対する最初のアプローチに、
軟組織に打撃、銃撃を加える。粘膜組織への攻撃───口に銃口をねじ込み、体内から喉を撃つなどいくつもの手法で検証しました。
結果から言えば、これらの実験により全員のヘイローが一撃で消えましたが致命傷どころか大怪我にすら至っていません。全員が数日後には完治し、日常生活に復帰できる程度の軽傷で済んだのです。
また攻撃が加わる寸前の身体の様子や神秘の振る舞い、ヘイローの挙動から独力で我々と同様の結論に至りました。たった数か月で、という枕詞が付けばあなたにもこの特異性が理解できるかと。
そして次に、彼女は神秘を
ある程度噛み砕いて説明しましょうか。
ヘイローが顕現している一般的な生徒の耐久力を100としましょう。100以上のダメージが蓄積、あるいはそのラインを超過した際にヘイローが消えると考えてください。
この生徒のヘイローは、どの程度の攻撃であれば一撃で破壊できると思いますか?
───いえ、
話を戻しますと......なんと1万を超えるのです。もっとも、ヘイローを消した後に行う攻撃であれば数百、数千で破壊できると推定されるのですが。
要約すると生徒は
これを掻い潜る方法も存在するのですが......今は置いておきましょう。
そこで彼女は、一般的な生徒のヘイローを数回砕くエネルギーを一瞬で与えながらも生存させる実験を行い───成し遂げたのです。
彼女自身が持つ能力なくして得られない現象───あの一瞬の間だけでしたが、器の大きさを超えて迸る膨大な神秘を視認し、また同時に完全な空白状態を作り出すことに成功しました。
......そうして逆説的に神秘の本質を掴んだのですよ。真空を生み出すことで大気の質量を証明するように、私達は神秘を観測する術を得たのです。
"実験体にされた生徒はその後どうなったのか"ですか。先生としてはどうしても確認しなければならない点でしょうが、ご心配なく。数日間昏睡しておりましたが後遺症なく目覚め、こちらで記憶を処理し現在も元気に不良活動に勤しんでいますよ。定期的な経過観察の度に金銭的な援助を行っていますので良好な関係を築いているとすら言えます。
またこの実験は再現性が高く、得られるデータは多岐に渡るため結果的に計11回行われました。
その過程で彼女だけでなく私も含めたゲマトリア全員の研究を数手進める結果となりましたが───
───チトセ嬢がうっかり記憶処理と隠蔽を忘れた9回目にてゲヘナ情報部に実験の存在が露呈し、バレたのならと開き直って神秘の共鳴と発散を観測するため地上で、かつ同時に数人で実施した10回目にて彼女の情報が共有され。
......彼女の身柄を押さえようと追跡していた各校の治安維持部隊を実験対象とした11回目にて、キヴォトス全土にて指名手配されることとなりました。
チトセ→黒服 同好の士!!いつも協力してくれてありがとナス!!
黒服→チトセ いつも助かっています(研究者としては優秀なのですが......)
次に書くかもしれないもの
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アビドス編
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アビドス(過去)編
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エデン条約編の後