サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
少し前の平和な日常
これは、俺達がまだ駒王学園に入学する一年と少し前の出来事。
俺が王様を目指そうとした出来事。そして、初めての家来が出来た出来事。
小学校を無事に卒業した俺達。
中学生活にもある程度に慣れた頃。
「はぁ、それにしても、この辺は本当に何もないなぁ」「にゃぁ」
中学と言っても、小学生時代と比べたら、俺の生活はあまり大きな変化はなかった。
学校を通う時には、少し窮屈と思ってしまう制服を初めて来ての登校。
この辺は田舎と都会の中間と言える場所。
それに伴ってか、歩いても知り合いと出会う確率は、あまりに多くない。
「それにしても、まさかこんな事を頼まれるとは思わなかったぞ」「にゃぁご」
俺は現在、幼馴染みのお母さんから頼まれた物を届けに来た。
それは、とある道場。
この辺ではある程度大きな道場ではある。
目的の人物は、いつもこの道場で稽古を行っている。
「おーい」「にゃぁ」
そう、俺は道場に入る。
道場には、目的人物以外にも稽古しているのは分かる。
本来ならば、練習を行っている音が周囲にあるはず。
だが、そこで聞こええるのは、竹刀を振るう音。
その中心は間違いなく、彼女だろう。
「ふっふっ」
腰まで伸びている黒髪。赤い髪が時々入り交じる。
そして、そんな彼女を象徴するように、着物では納められない程の大きさの物。
竹刀を振る度に、それは揺れている。
本来ならば、それを見る者はいるだろうが、それを行う人物はいない。
「おい、絶花、弁当を持って来たぞ」「にゃぁあぁ」
俺がそう話しかけると、彼女、絶花がこちらを見る。
「・・・太郎」
宮本絶花。
俺の幼馴染みであり、最強に拘っている人物。
なぜ、最強になろうとしているのか、以前聞いた話では、最強になれば沢山の人に認められるという理由らしい。
「・・・来ていたの」
だが、それ以上に、彼女の、その最強を求める目は、あまりにも鋭かった。
現に、周囲の人間は、彼女に見られなくても怯えているのは分かる。
「今、さっき来た」「にゃ」
そう、俺は弁当を絶花に渡す。
「・・・ありがとう」
「別に、暇だったしな」「にゃ」
「そうだったの、所で」
そんな俺に対して、絶花の視線はなぜか俺の顔を見ていた。
より正確に言えば、俺の頭の上に。
「・・・なんで、黒歌がここに」
「・・・えっ?」
その言葉に、俺はすぐに頭を探る。
すると、ふわふわとした何かがあった。
それを掴み、見ると。
「お前、何時の間に」「にゃぁあ」
そこには、少し前から頻繁に俺の所に来ている野良猫の黒歌がいた。
怪我をしていた所を助けはしたが、なぜか懐いており、時折、なぜか俺の頭に乗っている事が多い。
「なんというか、本当にただの猫なの?」
「さぁ?別に良いんじゃない」
ここまでの道中、特に違和感はなかったので、とりあえず、黒歌を頭に乗せた。
「・・・それよりも、太郎、相談があるの」
「相談?お前が珍しいな」「にゃぁ」
俺は、それに対して、腕を組んで、話を聞く。
「・・・私は幼い頃に夢描いた通りなら、今頃は沢山の友達に囲まれていたはずなの」
「ふむふむ」
「・・・剣の腕だって、この辺では負けない自信がある」
「むしろ、この前、木刀で熊を退治した時にはびっくりしたよ」
普通の人間では不可能な事を行った時点で可笑しいと思う。
「・・・最近では、可笑しなコートを着た人間もいたけど、とりあえずは気絶させたし」
「まぁ、すぐに逃げられたけどな」
「・・・だけど、最近になって、気づいたんだ」
すると、絶花は、手を見つめる。
「・・・最強になっても、友達、出来ないんじゃないか」
「ようやく気づいたか」「にゃぁ」
幼い頃、宮本武蔵が最強であった故に、周囲に認められた。
それを聞いた絶花は、必死に剣の腕を磨いた。
幸いと言うべきか、不幸と言うべきか。
絶花は剣術の才能があった。
まさしく、天性の才能だろう。
現代に蘇った宮本武蔵と言っても、可笑しくないだろう。
故に、彼女が培ってきた努力は無駄ではないだろう。
「・・・友達が欲しかったのに、なんか、むしろ遠ざけられているような」
「・・・まぁ、なんだ、まだ中学生活が始まったばっかりだからな」
「反対に太郎はどうなの」
「・・・別に」
少しの雑談程度ならば行う。
困っていたら、手を伸ばす。
けど、それだけだ。
「俺自身、絶花のようにやりたい事、今はないからな」
むしろ、羨ましいぐらいだ。
そんな俺達の日常は。
「・・・あれがターゲットか」
既に非日常へと、ゆっくりと進んでいこうとしていた。
道場から少し離れた場所。
そこから、俺達を見つめていたのは、1人の男。
黒い衣服、ターバンを被っている人物。
その人物の腰には日本刀があった。
「いずれ、ULの邪魔となる存在である宮本絶花。彼女を暗殺する」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王