サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「マシュ……本当に久しぶりだな」
「はい、先輩。私もまたお会いできて嬉しいです」
マシュは少し照れくさそうに微笑む。あの頃と変わらない笑顔だ。
そしてマシュは絶花の方を向き、ぺこりとお辞儀をした。
「初めまして、絶花さん。私、マシュ・キリエライトと申します」
「え、あ、はい!初めまして!宮本絶花です!」
絶花も慌てて立ち上がり、深々とお辞儀をする。
マシュはそんな絶花をじっと見つめていた。
「先輩からお話は伺っていました。先輩の幼馴染で、とても大切な方だと」
「ちょ!?太郎!?あなた何を話したのよ!」
絶花の顔が真っ赤になっている。
「いや、別に……普通のことだけど……」
「普通のことって……具体的に何よ!」
「えっと……強い剣士だってこととか……」
「それ以外にもあるでしょ!?」
絶花が詰め寄ってくる。
一方、マシュはニコニコしながら言った。
「絶花さんのこと、先輩はいつも嬉しそうに話していましたよ。特に絶花さんが最強の剣士で、宮本武蔵さんの子孫だということは」
「武蔵ちゃんの子孫だってことも話してたんですね」
マシュがそう言うと、絶花の眉がピクッと動いた。
「ちょっと待って……今"武蔵ちゃん"って言った?」
「はい。私たちはそう呼んでいました。先輩もそうですよね?」
マシュの言葉に絶花が俺を見る。
「ああ……そうだよ。絶花」
俺は頷いた。
「カルデアにいた宮本武蔵は……女性だったんだ」
「はぁ!?」
絶花が素っ頓狂な声を上げる。
「嘘でしょ!?武蔵ちゃんって、あの宮本武蔵!?男の武蔵じゃなくて!?」
「いやいや本当だって!マシュとドラコーも知ってるだろ?」
俺が二人を見ると、マシュは優雅に頷き、ドラコーは肩をすくめた。
「はい。カルデアの武蔵さんは女性でした。凛々しいお方でしたよ」
「余も見たぞ。なかなかに面白い女であった」
二人の肯定に、絶花はますます混乱している様子だ。
「で、でも……私のご先祖様は間違いなく男だって記録に……」
「それがカルデアの面白いところなんだよ」
俺は得意げに説明を始める。
「カルデアでは、英雄や伝説の人物が異なる形で召喚されることもあるんだ。性別が違ったり、性格が違ったり……まあ、色々だな」
「性別が違うのが……当たり前……?」
絶花が信じられないといった顔で呟く。
「ああ。だから絶花のご先祖様が男でも、カルデアの武蔵ちゃんが女でも、どちらも間違いじゃないってわけだ」
「そ、そんなことあり得るわけ……」
絶花はなおも疑わしそうに俺たちを見ている。
すると、マシュが静かに口を開いた。
「絶花さん。先輩のおっしゃることは本当です。私たちが共に戦った多くの英霊たちの中には、様々な『可能性』の姿で顕現する方もいらっしゃいました」
マシュの真摯な言葉に、絶花は押し黙ってしまう。
ニヤリと笑うドラコーに、絶花はゴクリと唾を飲み込んだ。
そして、ついに……
「………………うそぉ……」
絶花は完全に絶句し、呆然と俺たちを見つめるのだった。
絶花が武蔵ちゃんの性別ショックから少し立ち直った頃、マシュが改まった様子で口を開いた。
「絶花さん」
「は、はい!何でしょう?」
まだ少し混乱しているのか、絶花はやや緊張した面持ちで返事をする。
マシュは真剣な眼差しで絶花を見つめると、意外な言葉を口にした。
「もしよろしければ……私と模擬戦をしていただけませんか?」
「……え?」
絶花の目が点になる。俺も思わず「え?」と声が出た。
「模擬戦……ですか?私がマシュさんと?」
絶花は信じられないといった表情で聞き返す。
「はい。先輩から絶花さんの剣術の腕前については伺っています。ぜひ一度お手合わせをお願いしたいのです」
マシュの声は落ち着いているが、その瞳には確かな闘志が宿っていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれマシュ。いきなりどうしたんだ?」
俺が慌てて二人の間に割って入る。
「いえ……私も英霊の端くれとして、同年代の女性剣士の実力に純粋な興味があります。それに……」
マシュは少し言葉を選ぶように間を置いた後、続けた。
「それに?」
「いえ、なんでもありません」
絶花が不思議そうに首を傾げる。マシュはそれ以上は何も言わず、ただ静かに絶花を見つめているだけだ。
絶花はしばらくマシュの顔を見つめ返していたが、やがてふっと息を吐いた。
「……わかりました。でも、今日は学校があるので、放課後でも構いませんか?」
「ありがとうございます!よろしくお願いいたします!」
マシュがぱあっと顔を輝かせた。その屈託のない笑顔に、絶花も少しだけ表情を和らげる。
「でも、なんで私なんかと……?他にも強い人いっぱいいるんじゃないですか?カルデアには」
絶花が素朴な疑問を投げかける。確かに、カルデアには古今東西の英雄たちが集まっていた。わざわざ俺の幼馴染と模擬戦なんてしなくても……
マシュは穏やかに微笑むと、首を横に振った。
「いえ、絶花さんだからこそお願いしたのです。詳しくは……模擬戦でお伝えできればと思います」
マシュの言葉には何か含みがあるように聞こえたが、当のマシュはそれ以上の説明をする気はなさそうだ。絶花はまだ腑に落ちないといった顔をしていたが、「そうですか……」とだけ呟いた。
「さて、話はまとまったようだな」
今まで黙って成り行きを見守っていたドラコーがニヤリと笑う。
「学校が終わったら余も見に行くとするか。楽しみだな、騎手よ」
「え、ドラコーも来るのか?まあいいけどさ……」
俺が答えると、ドラコーは満足そうに頷いた。
こうして、絶花とマシュの模擬戦が急遽決まったのだった。
放課後が待ち遠しいような、少し不安なような……複雑な気持ちで俺は二人のやりとりを見守るのだった。
次回の王は
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