サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
放課後。俺と絶花、そしてマシュとドラコーは、人気のない採石場跡にやってきた。
広大な敷地は模擬戦にはうってつけの場所だ。ゴツゴツした岩場が点在し、かつて石を切り出していたであろう平坦な部分も広がっている。
「さて、準備はいいかしら?マシュさん」
絶花が二本の木刀を構え、真剣な眼差しでマシュを見据える。いつもの制服姿だが、その佇まいは既に剣士のそれだ。
マシュも静かに頷き、自身の盾――デカくて分厚い十字架型の盾を両手で構えた。その姿はまるで歩く要塞だ。
「はい。いつでもどうぞ」
ドラコーが俺の隣で腕を組み、「ふん、見物させてもらうぞ」と楽しそうに呟く。
俺も固唾を飲んで二人の対峙を見守った。夢の中で数々の英雄たちの戦いを見てきたが、この二人の戦いはどうなるだろうか。
最初に仕掛けたのは絶花だった。
「いきます!」
掛け声と共に地を蹴り、一瞬でマシュとの距離を詰める。さすがの速さだ。
絶花の得意とする二天一流。大刀と小刀が鋭い軌跡を描き、マシュに襲いかかる。
しかし――
ガキン! ゴン!
鈍い音と共に、絶花の木刀はことごとくマシュの巨大な盾に阻まれた。
「くっ……!」
絶花が悔しそうに歯噛みする。マシュの盾は見た目通りの頑丈さで、絶花の剣撃をいとも容易く受け止めていた。
マシュ自身も小さく息を吐きながら、しかし一切の隙を見せずに盾を構えている。
「絶花さんの剣技、素晴らしいです。ですが……!」
マシュが反撃に出る。盾の下部を大きく振り回し、まるで薙刀のように絶花を薙ぎ払おうとする。
「なっ!?」
絶花は咄嗟に飛び退いて回避するが、マシュの攻撃はそれだけでは終わらない。盾ごと体当たりするようなシールドバッシュが絶花を襲う。
「ぐっ……!」
絶花はそれを大刀で受け流そうとするが、予想以上の衝撃に体勢を崩してしまう。
「さすがは英霊ね……盾を使って戦うなんて初めてだわ」
絶花が忌々しげに呟く。
マシュのような、盾と一体化して戦う相手は経験がないのだろう。
マシュの戦い方は一見守備的だが、その盾を活かした攻撃も非常に厄介だ。リーチもあるし、何よりあの頑丈さが心理的なプレッシャーを与える。
「どうした絶花!もっと気合を入れろ!」
俺が声をかけると、絶花はハッと顔を上げ、再びマシュに挑みかかった。
今度は小刀による細かい牽制と大刀による渾身の一撃を織り交ぜた連続攻撃だ。二刀流の真骨頂とも言える動きでマシュを翻弄しようとする。
マシュも負けじと盾を巧みに操り、時には身を捻って躱し、時には盾で受け流す。
激しい攻防が続く。
「おお……これは見応えがあるな」
ドラコーが感心したように呟いた。
確かにすごい戦いだ。絶花の華麗な二刀流と、マシュの重厚な盾戦法。まるで水と岩がぶつかり合っているかのようだ。
だが、戦闘が長引くにつれて変化が訪れた。
当初はマシュの盾の扱いに戸惑っていた絶花だが、徐々にその動きに目が慣れ始めていた。盾が来るタイミングを予測し、わずかな隙を突いて剣を滑り込ませる。
マシュもまた、絶花の剣速と手数の多さに少しずつ対応し始めていた。盾だけでなく、自身の体術も織り交ぜて絶花の攻撃に対応している。
「絶花さん、素晴らしいですね!徐々に私の動きについてこられています!」
「あなたこそ!その盾……本当に厄介だわ!」
二人の間に火花が散る。
絶花の剣撃がマシュの盾の表面を掠め、マシュの盾が絶花の木刀を弾き飛ばす。どちらも譲らない激しい打ち合いだ。
絶花の動きは先ほどまでとは明らかに違う。マシュの盾の死角を狙い、フェイントを織り交ぜるなど、より洗練された攻撃になっている。戦いながら学習し、対応策を見つけ出しているのだ。
マシュもまた、絶花の成長を肌で感じているのだろう。盾の扱いにさらなる磨きがかかり、攻撃と防御の切り替えが以前よりも速くなっている。
「ふむ……さすがは宮本武蔵の血を引く娘と、円卓の騎士に連なる者か。見事な戦いぶりよ」
ドラコーが満足そうに頷く。
俺も思わず拳を握りしめていた。絶花のあの戦闘センス……さすがだ。そしてマシュも、こんな激しい戦いの中で冷静さを失わず、着実に力を発揮している。
二人の実力は伯仲しているように見えた。
次にどちらが仕掛けるか。いや、もう次の攻防が始まっている。
絶花が地を蹴り、マシュが盾を構える。
夕日が二人の影を長く伸ばし、採石場全体がまるで巨大な武道館のようになった。
俺は息を殺して、その熱い戦いの行方を見守り続けた。この戦いが、一体どんな結末を迎えるのか……。そしてマシュが絶花との模擬戦を望んだ本当の理由とは何なのか……。
その答えは、きっとこの戦いの中に隠されているのだろう。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王