サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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盾兵の思い

あれはまだカルデアに来て間もない頃のことだった。人類最後のマスターとして奔走する先輩の背中を見つめながら、私はその傍らに控えていた。

 

「マシュ!お疲れ様!今日の特異点も無事に修復できたな」

 

戦闘を終え、疲労感の中にも満足そうな笑顔を浮かべる先輩。その笑顔を見ていると、私も自然と笑顔になれた。

 

「はい、先輩もお疲れ様でした」

 

「ああ。でも今日の戦闘はすごかったよなぁ……やっぱり英霊ってのはすごいよ」

 

先輩は興奮した様子で今日の戦いを振り返っていた。その中に、ふと聞こえてきた名前。

 

「絶花だったらどう戦うかな……」

 

「え……?」

 

思わず首を傾げてしまう。

 

「ああ、ごめん。つい癖で。絶花っていうのはさ、俺の最強の幼馴染みなんだ。なんだって宮本武蔵の子孫でさ」

 

先輩は少し照れくさそうに笑いながら話を続けた。

 

「絶花は俺にとって……剣術の師匠でもあり、最高の友達でもあり……えっと、とにかくすごいんだ。あいつがいたらあの敵も簡単に倒せたかもって、時々思っちゃうんだよね」

 

先輩の顔が優しく緩む。その目はここにはいない「絶花」を見つめているようだった。

 

「……先輩にとって大切な方なんですね」

 

私は微笑みながら言ったつもりだった。けれど、胸の奥が少しだけチクッと痛むのを感じた。なぜだろう?

 

「ああ!もちろんさ!絶花がいなかったら俺はここまで強くなれなかったと思う。剣術だけじゃなく、メンタルも鍛えてもらったんだ」

 

先輩が絶花さんについて話す時は、いつも本当に楽しそうで、そしてどこか誇らしげだった。

 

「絶花はさ、本当に強くて頼りになるんだ。でも可愛いところもあって……あ、これは内緒だぞ!?」

 

先輩が慌てて人差し指を口に当てる仕草をした。私は小さく笑いながら頷いた。

 

「先輩がそう仰るなら、きっと素敵な方なんでしょうね」

 

その時の私は、まだ自分の感情をはっきりと理解できていなかった。先輩が楽しそうに話す絶花さんという名前に、なぜかモヤモヤとしたものを感じる。けれどそれが何なのか分からなかった。ただ、「先輩がとても大切に思っている人なんだ」という事実が、なぜか胸に引っかかるだけだった。

 

それからも先輩は時々「絶花」の話をした。

 

「絶花だったらあの局面をどう打開するかな」

 

「絶花に見られたら怒られるな……」

 

「絶花がここにいたら……」

 

先輩の口から出てくる「絶花」という名前。それは私の知らない世界の名前だった。

 

彼女がどんな人なのか、どんな顔をしているのか、どんな剣を使うのか……。先輩の話から想像するしかないその「絶花」が、いつしか私の中で特別な存在になりつつあった。

 

先輩が絶花さんを想う時、その横顔はとても柔らかい。その柔らかさを見ていると、私は……なぜか胸がキュッとなるのを感じた。

 

(この気持ち……なんだろう?)

 

まだ感情というものに不慣れだった私は、自分の胸の奥で静かに波立つ感情の正体が掴めずにいた。

 

月日が流れ、多くの特異点を共に駆け抜けた。数々の英霊たちと出会い、時には共に戦い、時には彼らの伝説や想いに触れていく中で、私も少しずつ成長していった。

 

そしていつしか、あの頃感じていた胸の奥のモヤモヤの正体に気づき始めていた。

 

それは嫉妬だったのだ。

 

先輩が絶花さんのことを語る時、その瞳は私ではない誰かを映していた。その瞳の先にいる「絶花」という存在が、私には眩しすぎた。

 

(私も……先輩にとって特別な存在になりたい)

 

その願いは日に日に強くなっていった。

 

そして同時に、絶花さんに対するもう一つの感情も芽生え始めていた。

 

それは「憧れ」だった。

 

先輩が語る絶花さんの強さや優しさ。宮本武蔵の子孫としての誇りと責任。それら全てが、私にはないものだった。先輩にあれほど信頼され、時に守られ、時に導く存在。そんな絶花さんに、私は純粋な憧れを抱いてしまっていたのだ。

 

(先輩にとって絶花さんは特別……)

 

その事実を受け入れようとしても、心の奥底で納得できない自分がいた。

 

(でも……それでも私は……)

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
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